2013年4月29日月曜日

「日本消滅」 これはタイヘン!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的 
 情報検索サービスの国家戦略的意義を確認する。
 
 それ以外の牧野二郎弁護士の主張を知る。

ねらい
 情報検索サービスの利用について再考いただく。
 日本の情報検索サービス実現に力を貸していただく。

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「日本消滅」は、
牧野二郎さんというIT弁護士と言われる方が
2008年に出された本です。

IT業界の外れにいる私が、
不勉強にも知らない大事なことが示されていました。

グーグルの検索エンジンを基にした情報検索サービスの
産業発展上の戦略的価値を知らされました。
「たかが情報検索サービス」ではないのです。

世界中のWeb上の情報が、数千台・数万台といわれる
グーグルのサーバに集められています。

その情報は
基本的にはフィルタリングなしで提供されているようですが、
フィルタリングも可能です。

その例として、中国では天安門事件に関する情報は
一切提供されないようになっているのです。

いうなれば、
その気になれば情報統制が可能になるということです。

日本は、
それに対抗する情報収集・提供の仕組みを持っていません。

実は、グーグルの事業開始より先に
早稲田や東大で、
素晴らしいアイデアの検索エンジンが開発されていたのだそうです。

ですが、日本の著作権法の制約で、
原著作権者の承認がなければ
事業目的でのコピーを作成できなかったのです。

そのために、日本には日本の風土に合った、
日本人向けの検索サービスが存在しないことになったのです。

中国や韓国でも、日本と同じような著作権法があるのですが、
運用や解釈で合法化しましたので、
両国には、中国百度(バイドゥ)や韓国2社の
強力な検索サービスが存在します。

フランスでの
情報検索サービス開発の取り組みも紹介されています。

日本での著作権法改正の動きは遅々としているようです。
こうしてみると、いかに日本が保守的か、
ITに対する国民的レベルでの洞察力がないかが分かります。

今からでも遅くないでしょう。
国家の威信と予算をかけて取り組めば、
いずれは追いつけるのではないでしょうか(上野見解)。

この他に、興味深い主張がいくつかありました。

アウトソーシングの危険性
 松下電池工業のリチウムイオン電池のトラブルでの
 4600万個の無償交換事件、
 三洋電機子会社が三菱電機に納入した電池が事故を起こし
 130万個交換した事件、
 の例を引いて、
 無責任なアウトソーシングに警鐘を鳴らしています。
 

 そのキャッチフレーズが
 「正社員でも管理できないものを、
 なぜ他者が管理できるのか」です。
 「言い得て妙」と思います。

 「アウトソーシング先は、技術は専門家かもしれないが、
 管理は必ずしも得意ではないので、
 そこをしっかりコントロールする必要がある」
 と主張しておられます。
 そのとおりです。

豚の餌で人を育てる教育思想
 「昭和30年当時、小学校の給食で
 脱脂粉乳のミルクが提供された」
 まずくて飲めたものではなかったようですが、
 これはアメリカで豚の餌にするもので、
 余っているので「いただいた」ものだったようです。

 これで著者が言いたいのは、
 「誇りがない人間に何が教えられるのか」
 ということです。

 
 著者はそのあとで,
 PISA(世界的規模で実施されている学習到達度調査)
 の成績低下に対する
 文科省の対策の不備(日本の教育行政の弱さ)
 を指摘しています。

個人情報保護について「なぜそんなに委縮するのですか」
 私も同感です。
 「個人に関する情報は
 本人の同意がなければ利用できない」
 を考え直してみる必要がある。

 例えば、医療情報。
 固有名詞を外してしまえば、「本人の情報」であっても
 利用していいのではないか。

 そのとおりでしょう。
 今は個人情報保護が、いろいろ行き過ぎているのです。


さて、結論です。
日本はどうすればよいのか。

「まじめさこそが日本再生の手立て」
 として、
 物づくりの世界に誇る技術、
 信頼を追求してきて獲得した日本ブランド、
 これを武器にして世界で戦う、

 それをするのは政治不信の政治ではなく、
 民間の力である。

 と主張されています。

この結論は残念ながら無難のレベルです。
そう簡単に特効薬が見つかるわけがないですものね。
  
 
 
 

「日本の自殺」に反論」!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的
 日本の将来の悲観説の一つをご紹介します。
 その「日本の自殺」説は、日本には当てはまらない
 面があることを確認いただきます。
 ではどう考えたらよいのかを考えていただきます。

ねらい
 いろんな角度から日本の現状を見る材料にしていただきます。

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「日本の自殺」は、
文芸春秋誌1975年2月号に掲載され、
当時話題になった論文のようですが、
最近その存在を知り、読みました。

最近は、日本の危機を訴える論調に溢れていて、
またかとうんざりです。

しかし、当時はまだバブル景気前で、
エズラ・ヴォーゲルの「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
が出たのは1979年ですから、
「まだまだ日本はこれから」という時代でした。

著者は、匿名で「グループ一九八四年」となっていますが、
当時学習院大学教授だった香山健一氏だったようです。

私が読んだのは、
2012年5月に出版された復刻版風の同名の新書本です。

「日本の自殺」は、
日本は他国に滅ぼされるのではなく、
自壊していくという意味です。

その根拠を、古代ギリシャ・ローマ帝国の崩壊の分析
に基づいて挙げています。

以下のとおりです。
1.巨大な富を集中し繁栄を謳歌したローマ市民は、
 次第にその欲望を肥大化させ、
 労働を忘れて消費と娯楽レジャーに明け暮れるようになり、
 節度を失って放縦と堕落への衰弱の道を歩みはじめた。

2.ローマ帝国各地から繁栄を求めて流入する人口によって
 ローマ市の人口は適正規模を超えて膨張に膨張を続け、
 遂にあの強固な結束を持つ小さくまとまった
 市民団のコミュニティを崩壊させてしまったのである。

 こうして一種の「大衆社会化状況」が、
 古代都市ローマの内部に発生し、急速に拡大していった。

3.ローマ市民の一部は、
 1世紀以上にわたるポエニ戦争その他の理由で
 土地を失い経済的に没落し、 
 事実上無産者と化して、市民権の名において救済と保障を
 つまりは「シビルミニマム」を要求するようになった。
 
 
 これが「パンとサーカス」と言われる状況である。

 こうして権利を主張するが責任や義務を負うことを忘れて
 遊民化したローマの市民大衆は、
 その途端に
 恐るべき精神的、道徳的退廃と衰弱を開始したのである。

4.市民大衆が際限なく
 無償の「パンとサーカス」を要求し続けるとき、
 経済はインフレーションからスタグフレーションへと
 進んでいくほかはない。

5.文明の没落過程では必ずといってよいほどに
 エゴの氾濫と悪平等主義の流行が起こる。

以上の状況はかなり現在のというか、当時の
日本の状況に当てはまると言えるようです。
当てはまらないという点もあります。

しかし、それは大同小異のレベルかと思います。
基本的に異なるのは、その状況が続いた期間の長さです。
ローマ帝国が、記述されたような状況だったのは、
何世紀間か少なくとも1世紀は続いています。

その間に人間の心の中には、
それが当たり前というマインドが生まれます。
今はやりの言葉で言えば、そのDNAができてしまうのです。

ところが、日本の繁栄はどうですか。
残念ながら、1970年からバブル崩壊までの
せいぜい20年です。

DNAができるだけの時間が経っていません。
むしろ、頂上に上り詰める前にこけてしまっているのです。

成功体験が通用しなくなったにもかかわらず、
社会での主役交代が進まずに
産業が停滞してしまっているのです。

従来型の大企業がほとんどダメでしょう?
成功体験をした部長以上が
会社を動かしているからなのではないでしょうか。

今発展している企業は例外なく新興企業か
創業者経営者が仕切っている会社です。

創業者経営者が引退するとすぐにダメになるので、
いったん引退した経営者が、
第一線復帰していることが多いことも
この論拠を示しています。

ではどうするか、です。

それなりの歴史があるのに大企業状態を維持している
リクルートの経営方式に学ぶことが一つです。

偉大な創業者江副さんが先日亡くなられましたが、
事件で江副さんが急に引退する羽目になったにもかかわらず、
その後25年間発展しているのは驚異です。

自律的・自発的な社員の行動を促す
組織風土を支えている一つが、
自発的な早期引退です。

これは制度ではありません。
慣習なのです。

他にリクルートグループが発展している要因の一つは、
原点が人材を扱う事業だということだと思います。
事業ドメインは大事です。

あらためて別の機会に、
リクルートの経営を研究してみましょう。

ところで、「日本の自殺」のついでに、
「日本消滅」も研究してみました。
牧野二郎さんというIT弁護士と言われる方が
2008年に出された本です。

この内容のご紹介は別項にいたします。


2013年4月25日木曜日

教科書検定のことを少し考えてみませんか?

【このテーマの目的・ねらい】
目的
 教科書検定の現状の問題点の片りんを知っていただく。
 

ねらい
 この問題について、積極的に主張や意思表明を行っていただく。

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4月20日土曜日の午後に、
「新しい歴史教科書をつくる会」http://www.tsukurukai.com/
の春のシンポジウムが開催されました。
 

スピーカは、中山成彬衆議院議員、藤岡信勝教授、
福地惇さん(元教科書調査官)、西村幸祐さん、
杉原誠四郎さん、でした。

2千円の会費でしたが、300人は集まっていました。
高齢者が多かったのですが、
こういうテーマに関心がある人が多いことは、
嬉しいことでした。

若者の情動・思考は学校教育で決まります。
教育は教科書に基づいて実施されますから、
教科書は非常に重要です。当然です。

当日の論調はこうです。

今の教科書には問題がある。
さすがに、左翼偏向ということは薄らいできているが、
筋が通っていない。
基本理念が欠けている、愛国心や、
国というものをどう考えるのかという國家観がない。

教科書が発行されるまでには、
ご承知のように教科書の検定があります。
その検定を担当するのは「教科書調査官」です。

教科書調査官は、
大学の教授または準教授クラスの学者だそうです。
専門家なのです。

教科書調査官の募集要領には、
その専門能力の次に
「視野が広く、人格が高潔であること」となっています。

しかし、多くの専門家を見てきた経験からすると
「視野が広く」の条件は極めて高いハードルだと思います。
「専門バカ」と言われる人が多いのですから。

偏った指導をして不思議ではありません。

不当な検定の例として、藤岡信勝教授が提示された資料を
そのまま掲載させていただきます。


 
このように中国側に配慮した内容とする指導の根拠があるのです。
それは「近隣諸国条項」と言われ、
1982年に宮沢内閣が決めた「教科書検定基準」にある
以下の内容です。

「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに
国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」

宮沢総理は他にも失政がありますが、
これはとんでもないことでしたね。

この条項を盾に、日本のためということを捨て、
近隣の国家に配慮した教科書指導になっているのです。

したがって、当日の論者すべてが、
この近隣諸国条項の廃棄を訴えていました。
廃棄を行おうとすると中国・韓国から
たいへんなクレームが来るでしょう。
難題です。

当日の数日前に、
中山議員が国会で安倍総理に質問をして
「この問題の改善の言質を取った」ようでした。
さあ、どこまでやれるでしょう。

この日に知ったことですが、
教科書調査官の他に、教科調査官という職があって、
この方々が「学習指導要領」を作られるのです。

その学習指導要領には、
「愛国心を育てる」という条項があるそうです。
当日の講演者のお1人が、
「現在の教科書はすべて学習指導要領違反である」
と言っておられました。

教科書の検定で不当な変更・削除の指導を受けた場合は、
学習指導要領を盾に争えばよいのでしょうが、
そんなことをすると検定に通りませんから
しぶしぶ従っているのでしょう。
まずいことですね。

当日の結論の中で
たいへん有意義ではないかと思ったことがありました。
それは、
「現在使用されている教科書の内容をすべて公開する」
ことです。

そうすれば多くの国民が、
学校でどんな教育・指導がされているかが分かり、
改善提案もできます。

ぜひそうしてほしいですね。


選挙制度の抜本改革は可能か???

【このテーマの目的・ねらい】
目的
 0増5減問題を考えていただく。
 現在の選挙制度成立の背景を知っていただく。
 選挙制度の抜本改革はありうるのか考えていただく。
 

ねらい
 今の選挙制度は変えられないという前提で行動しましょう。

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最高裁が前回衆議院選挙の無効判決を下しました。

昨年12月の衆議院選挙について
大阪高裁東京高裁それぞれ違憲判決下し
広島高裁広島1区2区選挙無効とし、
岡山支部岡山2区選挙無効としました。

これらを含めて全国で「選挙無効」が2件、
憲法違反」は14件に上ります

いくら違憲という判断が出されても、
自分達の利害がからみますから、
手を付けられず先送りしてきたのです。

でも今回は違憲だけでなく、選挙の無効まで踏み込んでいます。
格差の是正対応の期限を半年後
と設定した判決もありましたから
このまま7月まで行くと、
何人かは衆議院議員の資格を失うことになります。

そこでようやくしぶしぶ「一票の格差是正」に
取り組むことになりました。
しかし、ご承知のようにもめているのです。

少し、現在の衆議院の選挙制度について
確認をしておきましょう。

「小選挙区比例代表並立制」と言われる
現在の衆議院の選挙区制度は、
中選挙区と小選挙区の併用制度です。

小選挙区は。1区から1人しか選出されませんから、
その選挙区で最大得票を得た者が当選し、
その他の候補者に投票した国民の意思はムダ玉となります。
ムダ玉を「死票」というようですが53%もありました。

今回選挙の小選挙区では、
自民党は、得票率では43%しかなかったのに、
当選者数の比率では79%になったのです。

したがって、2大政党が覇を争い、
どちらがよいかを国民が選抜する
という状況に向いています。

少数派政党はよほどの人気候補者でもなければ、
当選できません。
ですから、少数政党は、小選挙区制度に反対です。

国民の平均的な意向を反映させる選挙制度なら、
大選挙区制度です。
参議院の全国区がその例です。

では、なぜ小選挙区制があるかというと
地元の状況や意向を国政に反映させようという意図です。

そのため、地元=都道府県ということから、
現在の区割りはどんなに小さな県にでも1区(=1人)は与えよう、
ということで、これが1票の格差を生む原因の一つとなっています。

その点を踏襲して、
複数人数を与えている県への割り当てを減らそうという
「0増5減」案ですから格差是正にも限界があります。

基本的には小選挙区制度の踏襲ですから、
少数派政党は反対で、抜本改革を主張するのです。

従来の中選挙区制度は、
大選挙区と小選挙区の妥協の産物で
日本らしい制度です。
4-5人の選挙区なら少数政党も多少は潜りこむことができます。

選挙制度の改革は、選挙で選ばれている議員たちは
利害が相反しますから、決定できるわけがないのです。
お手盛り方式です。

0増5減のような微調整でももめるのですから、
抜本改革などできようはずがありません。

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中選挙区制度から
小選挙区制と
比例代表制としては若干中途半端な全国11ブロックの
比例代表制部分を設けたのは、妥協の産物です。

全面的な中選挙区制度から、
1994年1月末に成立した「政治改革関連法案」に基づく
現在の制度に変更(改革)ができたかというと、
細川内閣のどさくさだったのです。

細川内閣の参謀役をしていた田中秀征氏が
「さきがけと政権交代」(1994年4月発行)
の中でこう語っています。

(それまで、反自民を政権の最大方針としていたのに)
「細川政権は会期末の土壇場で、
自民党と妥協して政治改革法案の成立を図った」

私は直接彼からこう聞いています。
もう時効でしょう。
田中氏は大学時代の空手部の後輩です。
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あれは細川内閣の最大の失政だ。
「政治改革で自民党と妥協してはいけない。
中選挙区制を残すことは絶対にしてはなりませんよ」
と細川さんに厳しく釘をさしていた。

ところが自分が参加していない場で、
細川さんが一晩で自民党と決めてしまった。
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こういうことだったのですね。

田中秀征氏としては、
小選挙区と全国区またはブロック単位の比例代表
の併用を考えていたようです。

自分達の利害が相反する問題を
自分達の合意で解決できるわけがないではありませんか。

では、誰だったら、あるいはどういう方法だったら
変えることができるのでしょうか????


国民背番号制度には誰が反対するのか?

【このテーマの目的・ねらい】
目的
 国民背番号制度の歴史を振り返る。
 誰が何のために反対してきたかを確認する。
 今回のマイナンバー制度の特徴と問題点を理解する。

ねらい
 一般的に「反対派」の利害関係を考えるようにしていただく。

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マイナンバーという名称は今回付けられたものですが、
客観的な名称は国民総背番号制度です。

国民総背番号制度は、
何度も名称を変えながらその都度お蔵入りになっています。
国民総背番号制度という名称はイメージがよくないので、
今はあまり使われません。

「批判分子」朝日新聞の4月4日号には
マイナンバー制度を紹介する記事に
こういう見出しを使っていました。

 共通番号消えぬ不安
 利便性向上の反面、不正利用も

とネガティブで「不安を煽る」姿勢です。

蛇足ですが、
第2次大戦中の朝日新聞は
戦争強力で戦争参加を煽っていたそうです。

[グリーンカードに対する反対]

初めはグリーンカードと言いました。
1980年代初頭のこの時は、税務当局主導でした。
きっかけは、こうです。

国民1人400万円までの預貯金の利子に対しては
無税という「丸優」制度がありました。

ところが、
偽名を使ったり、1人で複数口座を設けてもチェックできず
高所得者優遇だという批判がありました。
この批判にに応えるためと増税目的で立案された制度です。

この制度が公表されると、
大量の預貯金が海外に流れました。
そのため、
郵政省(貯金)、金融業界が猛反対をしましたので、
政府はこの法案の成立を諦めました。

実際に、大量の資金が流出したということは、
現実に不正利用が大規模にあり、
「正常化」を恐れた層の反対で
制度がつぶれたというまったく不当なことだったのです。

【住基ネットに対する反対】

こちらの反対はもう少し複雑です。

次に2000年台に登場した背番号制度は、
住民基本台帳ネットワーク(略称:住基ネット)です。

国民全体の番号制度を諦めて、
地方起点の行政事務の効率化・住民サービスの向上
をねらいにした番号制度です。

その名のとおり、市区町村の住民基本台帳に記録されている者に
11けたの住民票コードが振られ、
この番号が記載された「住民基本台帳カード」が発行されます。

この番号は住民票コードと呼ばれますが、
この番号に付随して以下の情報が登録されます。
 氏名、生年月日、性別、住所、
 とその変更履歴(変更年月日、変更理由)

これを使って、以下のサービス等が可能となっています。
 
 全国どこでも住民票の取得
 パスポート申請・年金の請求・各種検定試験の申し込みに
  住民票添付の不要化
 年1回の年金の「年金受給者現況届」の不要化
 国民年金・厚生年金の照合作業への利用

これらの個人情報の利用を正当化する法律である
「住民基本台帳法」は2003年6月に成立しています。

しかし、この有効と考えられる制度に対しても、
個人のプライバシーの侵害であるとか、
不当な経費支出であるとかの訴えが
数多く出されました。

この住民基本台帳システムの運営主体は、
市区町村であるため、このシステムに参加しないと表明する
市区町村も出ました。
その不参加を不当とする訴えも出ました。

泥仕合の様相を呈したこの争いは、
2008年3月6日の最高裁判決で決着しました。
非常に常識的・合理的判決であると思われます。
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個人の情報は
公権力に対してもみだりに第3者に開示または公表
されない自由を有する(憲法13条の規定)。

しかし、住基ネットで使用される情報(前掲)は、
秘匿性の高い情報とはいえない。

その利用は法令等の根拠に基づき
住民サービスの向上及び行政事務の効率化という
正当な行政目的のために限定されている
(民間での利用は許されていない)。

さらに、容易に第3者がこのシステムに侵入して
情報を取得できるようにはなっていない。
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つまり、
利用目的と個人の情報公開のリスクを考えた時に
住基ネットは正当化できる、というものです。

どう見てもそうとしか考えられないのに、
誰が反対したのでしょう。

一つは、(地方の)政治家です。
国民側にこのシステムに対する不安があることを見て、
このシステムに反対ということで
住民からの支持(投票)を得ようということです。

弁護士達の場合は、
名を売ろうということでしょう。
これも動機が分かります。

ですが、それ以外に市民の集団が訴訟を起こしています。
その人たちは、
何を目的にこの訴訟とかを起こしているのでしょう。

正義感だけで行動する人が
そんなに多数いるとは思えません。
反対だと思ったとしても、
特別の利害関係がなければ
訴訟とかの行動には至らないはずです。
謎です。


【マイナンバー制度】

そういう経緯を経てきた
国民総背番号制度です。

今回のマイナンバー制度はどうなっているのでしょう。

3月1日に安倍内閣は
「社会保障・税番号制度に関する法案(マイナンバー法案)を
国会に提出しました。
4月中にも成立の見通しで、
政府は16年1月からの利用開始を目指しています。

今回の制度は、
住基ネットをベースにしていますが、
以下の点が異なります。
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日本全国一元化された番号制度
(住基ネットは地方単位の運営)
利用目的は、社会保障、税務、災害対策
(住基ネットは狭い範囲の行政事務に限定、税務は対象外)
ネットワークを通じて行政機関が連携する
(他の行政機関との連携は制限されていた)
将来的に他の目的への展開、民間での利用も視野に入れている
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

住基ネットに比較するとかなりの拡大・前進です。
住基ネットでの最高裁判決も踏まえ、
政府側も自信を持って取り組んでいるのでしょう。

今度は反対派もいないことでしょう。
「情報保護は完全か」などと「知識人」やそのお先棒かつぎが
騒ぐ程度だと思われます。

最近のサイバーテロの動きなどをみても、
機密保護の完全ということはありえません。
そのリスクは覚悟をして臨まなければならないでしょう。

機密保護に完全を期すると、
そのためのコストは幾何級数的に上がっていきます。
コストと情報漏えいのリスクのバランスで
現実解を判断しなければなりません。

今回の仕組みでも
2000億円~3000億円の経費が必要と言われています。
情報サービス業界には特需ですが
青天井の対策費投入は正当化されるののではありません。

リスクを煽る人はその背景に情報サービス業界がいるのか、
と疑われます。

現実解で運営すれば、必ずある程度の問題は起きるのです。
問題が起きた時に
一方的に騒ぎ立てるマスコミ報道は止めてもらいたい
と思います。

2013年4月21日日曜日

ふるさとを守れ活動のすすめ!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的
 農業を生業にしている地域のふるさとをなくさない
 案について考えていただきます。

ねらい
 この案の実現に力を貸していただきます。
 ふるさとの維持が進むようになる。

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故郷(ふるさと)はいいものです。
都会に出てきている人が年に1度か2度、
ふるさとに帰って一族の交流を行うことができます。

帰るふるさとが無くなることは
たいへん寂しいものです。
一族が集まる機会もなくなってしまいます。
せいぜい誰かのお葬式ということになります。

今、故郷の生業だった農業が衰退して
存亡の危機状態です。
主(あるじ)も高齢化して、その世代が亡くなると
その「家」は終わりで、その一族は帰るふるさとがない
ということになってしまいます。

農業が衰退すること自体は、
経済的な問題ですけれど、
故郷が無くなることはお金に換えられない
日本人の心の支えをなくす大きな問題です。

そこで、
日本人にとって非常に大事なふるさとを維持できる
方策を考えようではありませんか。

次のような一石二鳥のアイデアはどうでしょうか。
目的はふるさとの維持と結婚の推進です。

独身の男女を募集します。
男女3人ずつ6人のチームをいくつも作ります。
そのチームを、
村おこし・町おこしを希望する村や町に派遣します。

そのチームを村や町で住む人のいなくなった古民家に
宿泊させます。

当初資金は最低の分しか渡しませんので、
自分達で工夫して
生活できる状態を作り上げる必要があります。

その後の生活費補助も最低限度とし、
自ら工夫しないと生きていけないようにします。

そのチームは、「ふるさと救援隊」と名付け、
1年間の期限付きで、
その村や町で働き手が必要な仕事を作りだすことが
基本使命です。

チームは、男女2人ずつの組で地元の家を回り、
何が必要か、どんなサービスがあれば
お金を出すかのニーズ調査をします。

そのニーズ調査の中から
実現可能な事業・仕事を立案します。
その過程では、プロが支援します。

そのような事業が創造できれば、
地元出身者がUターンして地元に住むことができ、
一族の里帰り先が確保できるということになるのです。

この検討の6人の共同生活の過程で、
カップルができたら、その家の居住権を渡します。

2組め、3組めもカップルができたら、
自分達で住むところを探させ、それなりの補助をします。

そうすると、運悪くしかるべき事業・仕事が作れなくても
少なくとも何組かの夫婦がその地に住むことになるのです。

この案は、政府・安倍総理に提案します。

【以下詳細条件】

新規事業を考えるには、
無手勝流ではいけませんので、
初めに1ヶ月間の研修を行います。

事業開発のプロセスはどうすればよいか、
ヒアリングはどう行うか、などのほか、
多数の成功例をビデオで見てもらいます。

男女3組がよいのは経験則です。
2組だと1組ができた時に、
残り2人が気まずい・居心地悪い思いになります。

その点、残り4人だとまだまだ切磋琢磨が可能です。

人員募集の際は、
50歳(仮)以下の独身者という条件しか付けませんが、
失業者・求職者を優先します。

1年間の給与は、失業手当程度しか支給しません。
あとは自給自足をしてもらう、という考えです。

そういう中から
地に足のついた本当に地元で必要なアイデアが
出てくるのではないでしょうか。

そのため、失業保険費を払う代わりと考えれば、
教育訓練費を除くとそれほど経費はかかりません。

独身者たちは、
仮に結婚することができなくても、
失業状態で無為に過ごすことに比べて、
非常に前向きな人生体験をすることができるのです。

と、こんなことを書いていましたら、
4月21日の夜のフジテレビで限界集落の活性化に挑む
2世タレントの話が放送されていました。

限界集落というのは、65歳以上の人の比率が半分以上の
集落のことを言うそうです。
その村ではほとんど人が歩いていませんでした。

彼は空き家に住んで、
これから活性化に取り組むのです。
人間は、似たようなことを考えるのですね。

TPP交渉の見どころは?

【このテーマの目的・ねらい】
目的
 TPP問題の再整理をしていただく。
 TPPの交渉に関心を持っていただく。

ねらい
 
 TPPの交渉を自分ごととしてフォロしていただく。
 別項「ふるさとを守れ活動のすすめ」を読んでいただく。
 その実現に力を出していただく。

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4月20日にTPP交渉中の11カ国が
正式に日本の交渉参加を認めました。

この間、ずい分もめました。

少しこの間の経緯を振り返り
今後の課題を整理してみましょう。

まず,TPPの大原則はこういうことです。

TPP環太平洋戦略的経済連携協定は、
2006年5月28日に
シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国で
発効した経済連携協定です。

ご承知のように、
単なる貿易の自由化協定ではありません。
以下,Wikipediaからのご紹介です。

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2006年1月1日に加盟国間のすべての関税の90%を撤廃し、
2015年までに
全ての貿易の関税を削減しゼロにすることが約束されており、
産品の貿易、原産地規則、貿易救済措置、衛生植物検疫措置、
貿易の技術的障害、サービス貿易、知的財産、
政府調達(国や自治体による公共事業や物品・サービスの購入など)、
競争政策を含む、
自由貿易協定のすべての主要な項目をカバーする包括的な協定です。

当初の目的の一つは、
「小国同士の戦略的提携によって
マーケットにおけるプレゼンスを上げること」でした。
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今回日本の交渉参加を認めたのは、
当初参加4国の他、交渉参加中の以下の国です。

アメリカ、オーストラリア、ベトナム、ペルー、マレーシア、
カナダ、メキシコ(この2国は2012年11月から交渉参加)

ご承知のように、
日本はTPPへの交渉参加の是非で揉めていましたが、
管総理の参加意思表明を経て
安倍内閣になって
TPPへの参加ではなく、「交渉への参加」が固まり、
米国との事前協議を始めました。

米国はまだ参加国でもなく、
日本に注文を付ける権限はないのですが
今後の交渉での作戦を打ち合わせたという位置づけです。

米国は、自動車特にトラック類の保護をしたい以外は
原則自由を望んでいます。
日本は、農業の保護を望んでいます。
御互いにそれを認めようという作戦で合意したのです。

ところが、NZ、豪州、カナダが
この日米の事前協議に異議を唱えました。

当然でしょうね。
自由にしましょうという協定で
特定の2国が談合するのはけしからん、ということです。

しかし、どういう交渉が行われたか分かりませんが、
(おそらくアメリカが手を回したのでしょう)
日本の7月会合からの交渉参加が認められたのです。

日本国内でのTPP参加反対意見は
ご承知のように農業保護の観点からです。

日本の農業はこれまで高関税で守り、
(なんとコメは778%&の関税率です)
長い間の減反政策を以ってしても、
需給がバランスしない供給過剰状態なのです。

以下、江田憲司さんの
2011年10月27日のブログからの引用です。
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日本の農業は、手厚い保護政策の下で発展してきたか? 
結論は真逆である。

ウルグアイラウンド交渉の結果、6兆円の予算をばら撒いても、
778%の高関税をコメにかけても、
日本の農業は衰退の一途をたどってきた。

この50年間で岩手県分の耕作地が失われ、
埼玉県分の耕作放棄地が出現したことに象徴される。

そして今や、農業生産額はGDPの1.5%、就業者人口は3%だ。
そのうち、65歳以上が6割以上を占め、
35歳未満はたったの3%にすぎない。

このまま、TPP反対派のいう保護政策を採り続けていたら、
確実に10年後、日本の農業は消えてなくなるだろう。

「TPPで農業は壊滅する」のではなく
「このまま放っておけば農業は壊滅する」のである。
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それだけの規模しかない産業をなぜ保護するのでしょうか。
本当に保護が必要なら生活保護制度を利用した方が
良いのではないでしょうか。

そうではない、という根拠が食糧安保です。
現在の食糧自給率は40%と言われています。
(もっと低いという説もあるようです)

食料自給率を高めておかないと
将来の地球規模での食糧不足時代に
日本が生きていけなくなる、というものです。

そのためなら、
食料の促成栽培法、工場生産法等
食料を確保するための研究開発の助成に
予算を投入した方が安上がりでしょう、と思います。

私は、日本の農業の保護には
もっと大きな意義があると思います。

それは、農業ではなく農村の維持です。
農村は人々の生活の場です。
多くの人にとっての故郷(ふるさと)です。

故郷が無くなるのはたいへんなことです。
一族の心の支えが無くなるのです。

今でも、先ほどの江田さんのレポートにあるように、
65歳以上が6割です。
何年かすると、その家はあるじがいなくなります。

その孫子達は帰るふるさとが無くなるのです。
これこそ何とかしなければならない
大問題ではないでしょうか!!

この対策の試案は、別項「ふるさとを守れ活動のすすめ」
をご参照ください。
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本題に戻り、これからのTPP交渉、どうなるでしょうか。
日米の保護方針は通るのでしょうか。

大国のエゴを通してはいけないでしょう。
もともとの基本精神である
「小国同士の戦略的提携によって
マーケットにおけるプレゼンスを上げること」
にも反することになります。

各国がどのような主張をして行くのか見ものです。

日本は、農業保護の方針を
全面的には認めてもらえない時に、
どういう案を国内に対して示すのでしょうか。

アメリカの絶大な金融や情報処理の世界の力を
各国は「自由に」認めるのでしょうか。

これから数か月、見ものとしては
こんな興味深いネタはないでしょうね。

是非、この機会をバネに
日本の将来の発展につながる
政策を実現していただきたいと思います。