2010年9月30日木曜日

多忙は怠け者の遁辞である

 これは徳富蘇峰氏の言葉のようです。
 遁辞は言い逃れ・言い訳という意味です。
 私のジョギングコースにある神社の掲示板に載っていました。

 「(時間がないというが)時間は作るものだ」
 というのも同じことを言っています。

 短時間で仕事をさばくのが「できる人」です。
 このことで思い出すのが、
 当時日本電気の専務であった西垣浩司氏です。
 私の友人の紹介でお昼に食事をしながらお会いしました。
 こちらからの頼みごとだったのです。

 話を聞かれた西垣氏は直ちにその場で部下に電話をしました。
 お昼休みでしたから、いませんでした。
 その日の午後、その部下の方から電話がありました。
 西垣氏の責任は果たせたのです。

 普通であれば、「お昼であるから連絡は後にしよう」
 と考えるではないですか。
 そうすると、仕事の在庫が増えてしまいます。

 仕事の在庫を増やさないで
 テキパキさばく人が仕事ができる人です。
 西垣氏はその後社長になられました。
 やはりそうか、と納得がいった次第でした。

 西垣氏以外にも
 多数の友人知人に頼みごとをしました。
 できる人は行動してくれました。
 「分かりました。考えます」のタイプの人は
 結局偉くなっていませんね。

 この時、西垣氏を紹介してくれたのは
 大学で同級のH君でした。
 H君も優秀で幹部候補生でした。
 行動の人だったのです。
 残念なことに体を壊して、
 奥さまは社長夫人になり損ねました。

 もう一人の優秀な同級生K君は
 一流商社の社長候補でしたが、
 非常に残念なことにガンで「夭折」してしまいました。
 その時は、子会社の社長でした。
 医者から寝ていないと命を落とすと言われながら、
 株主総会を優先して、亡くなったのはその次の日でした。
 壮絶な戦死の印象でした。
 彼も私のために動いてくれました。

 仕事を全うするには健康が第一ですね。

 話を戻します。
 その場で判断せずに待つ場合は
 判断するために何の情報が不足しているのか、を考えます。
 情報不足では的確な判断ができません。
 
 その不足情報はどうすれば入手できるか、を判断し、
 不足情報の入手の手配をします。
 こうすれば、情報が入手できた時には判断が可能となります。

 「そのうち、考えよう」は致命的です。
 行動しましょう。

2010年9月27日月曜日

わが子虐待、親の責任放棄、どうする?

 最近次々と、親が親の責任を放棄して  
 何日も小さい子供を放置して死に至らしめたとかいう
 悲惨な事件が報道されています。

 「何というむごいことを!」と、
 その親を張り倒したい気にかられる位とんでもないことです。

 どうすべきなのでしょうか、
 連絡を受けた生活指導員や警察がもっと積極的に介入すべきだった、とか言われています。

 そうでしょうか?
 そういうことが起きている背景・事情は千差万別です。

 そうして、これを起こしている親は
 基本的には一般社会の常識からいうと異常者なのです。

 昔だってこういう人はいたのでしょう。
 報道されなかっただけのことです。
 自然に淘汰されたのです。

 そういう異常事件を
 社会の仕組みとして救済するのは基本的に無理です。

 その発生率はどのくらいあるのですか?
 マスコミがとりあげるので
 さも多くの事例があるように見えますが
 コンマコンマ以下の発生率です。

 そのために国や自治体が何とかしようというのは、
 その発生原因が多岐に亘るのですから、
 手間ひまがかかり過ぎです。

 異常者はある率で発生するのです。
 これは受け入れざるを得ない社会的リスクです。
 そういうことがある、ということを社会が知ることは
 それなりの意味があるでしょう。

 そうして本人たちにとっては大変なことだし
 何とかしてあげたいとは思いますが、
 これを救う、あるいはそういうことが起きないようにするには、
 気の遠くなるほどのことを実現しなければむりでしょう。
 その前にやるべきことはたくさんあります。

 何万人という求職難民を救う方がはるかに大事です。
 そのような価値判断をして
 マスコミも社会も行動してほしいですね。

鈴木宗男氏の有罪確定

 鈴木宗男氏がとうとうあっせん収賄罪等での有罪が確定し、
 収監されてしまいました。

 氏は、利益誘導型の政治家で
 豪放磊落的な性格もあり地元では人気者でした。

 この方も、職業倫理の不備です。
 地元の発展に貢献するという目的は結構なことです。
 特にその地元は北海道という低開発地域でしたから。

 その目的を達成するに当たっては、
 その政策の実現によって利益を受ける事業者等から
 接待等を受けてはいけない、ということは承知していたでしょう。

 しかし、頻繁に接触していたりすれば
 「その辺で一杯やりますか」というところから始まって
 次第にエスカレートしていったことは想像に難くありません。

 「その辺での一杯」はそれだけであったら、
 起訴されることにはならなかったでしょう。
 連続的な変化だと歯止めが効きにくいでしょうね。

 「ゆで蛙現象」
 「どこで間違えてしまったのでしょう?」
 です。
 
 相撲界の賭博問題もそういう点があるでしょう。
 賭け麻雀は誰でもやっていることです。

 そこから次第にエスカレートする時に
 どうやって踏みとどまるかは、
 理屈でそう簡単に割り切れるものではないでしょう。

 結果からみると
 明らかに大きな不法行為をしているのですが、
 マスコミが一方的に糾弾するのはどうかと思います。

 賭けマージャンをやったことのある多くの国民は黙っています。
 裏ではいい加減なのに
 表では「建前論の通る日本」と言われる所以です。

 以上を要約しますと、以下のようになります。

 「目的達成には、前提条件・制約条件がある」
 「当然ながら、法を守らなければならない」
 「建前論が強く裏表のある日本では微妙な点もある」

検事の不正

 びっくりしましたね。
 
 警察や検事は取り調べに対して
 かなり強引な誘導をしている、
 被疑者は疲れ果てて警察や検事の言い分どおりに
 調書にサインしてしまう、
 ということは公知の事実でした。

 そういうケースでは公判になると
 被告人は一転否定ということになっていました。
 
 ところが、今回の件はそうではありません。
 証拠品を改ざんしてしまうという
 れっきとした犯罪を犯してしまったのです。

 なぜこういうことになってしまったのでしょう。

 検事の仕事は「悪を暴き、不正を犯した者が処罰される」
 ように証拠を準備することです。
 検事の仕事の目的(職責)は有罪を立証することです。

 前田氏は「はかせ屋」と言われ敏腕の検事だったのです。
 とにかく「有罪を立証すること」を目的として仕事をするうちに、
 次第に「有罪であることにする」に転化し、
 手段を選ばなくなってしまったのだと思われます。

 倉本聡さんのテレビドラマ「歸國」の解説の時に
 http://uenorio.blogspot.com/2010/08/blog-post.html
 「どこで間違ってしまったのでしょうか」
 という大変示唆に富むセリフをコメントしましたが
 前田氏もどこかで間違えてしまったのです。

 第一、目的が正しくても、
 選択する手段が何でもよいわけではありません。
  
 企業であれば、
 コンプライアンス(社会的・倫理的責任)条件
 を守らなければなりません。

 食品偽装事件は利益追求目的のために
 手段を選ばなかった典型的事例です。

 目的達成には、選択する手段に対して
 前提条件・制約条件があるのです。
 この点は、当然のこととして明示されない場合が多いので
 注意が必要です。

 「売上予算を達成すること。ただしコンプライアンス条件を満たすこと」
 などと言いませんからね。

 検事の職務規定でも
 「被疑者に対して
 不正・犯罪行為につながるような強制等を行ってはいけない」
 などと書いていないでしょう。

 だんだんこのような当然の論理が通用しなくなってくるとすれば、
 一いちこのような前提・制約条件を明示しなければならなくなります。
 そうなると面倒なことになりますね。

 今度は、「前提・制約条件に記述されていなかったからやった」
 などということが起きかねません。


 以上、要約しますと、
 「目的達成には、前提条件・制約条件の明示も必要である」
 「どこまで前提条件・制約条件を明示すべきかは悩ましいところがある」
 ということです。

「マニフェストは何が何でも守る?」

 民主党代表選挙で敗れた小沢氏は
 「国民に約束したマニフェストは
 (何が何でも)守らなければならない」
 と主張していました。

 基本的にはマニフェストは守らなければ
 何の意味もありません。

 ですが、もう一歩踏み込んで考えてみるとどうなるでしょう。
 マニフェストは何のためにあるのか(マニフェストの目的は何か)
 を考えなければなりません。

 マニフェストの最終目的は、
 その党が異常でなければ
 最終的には「国を良くするため」です。

 民主党の衆議院選挙の時のマニフェストは
 財源の裏付けのないばらまき政策で、
 その後の政権運営の中でそのままでは実現不可能と分かって
 修正しつつあったものです。

 マニフェストの少なくともその一部は、
 総合的観点からは国を良くすることに必ずしもつながらない、
 という現実的判断をしていたのです。

 それは国民も理解を始めていました。
 それだからこそ、
 消費税増税についてもやむを得ないという世論が起きてきていたのです。

 その1年間の動きを無視して
 国民に約束したマニフェストは守らなければならない 
 と建前論だけを押し通すやり方は
 説得相手を愚弄したものです。

 小沢さんの主張が通らなかったということは、
 相手(投票権を持っていた人)が賢明であったということになります。

 マニフェストを通すという目的は、何のためですか、
 それを「ねらい」と言います。
 「マニフェストを通すねらいは何ですか」という問いかけになります。

 目的自体が価値を持っていないものは
 目的の目的(ねらい)が何であるかを考える必要があるのです。

 「マニフェストを通す」こと自体では
 価値を評価できません。
 マニフェストの中の「子供手当を満額支給する」とかになると
 価値を認める人と認めない人が出てきて、
 それは検討対象となりえるのです。

 以上を要約すると、こうなります。

 目的自体に価値がない時は、
 「その目的の実現は何のためか?」
 と考える必要がある。

 その目的の目的(=「ねらい」)を明らかにして
 「ねらい」で是非を判断しなければならない。

 ということです。

「雇用、雇用、雇用!」の間違い

 ご存じのように、「雇用、雇用、雇用!」と叫んだ
 菅直人氏が民主党代表選で勝ちました。
 雇用を重視することは、間違いではありません。
 
 参議院選挙の時には、菅総理は
 経済・産業の強化、社会保障の安定・充実、財政の破綻回避
 の3領域をすべて重視する、と言っていました。

 ところが、今回は「雇用」を前面に出したのです。
 何が最もアピールできるかという菅氏らしい「機」を見たのでしょう。

 しかし、雇用を真っ先に考えるという考え方は
 社会党や共産党の発想で、政策の優先順位としては正しくありません。

 この点につきましては
 10年7月号の「政策の優先順位」
 http://uenorio.blogspot.com/2010/06/blog-post_26.html
 で詳しく述べました。

 雇用を重視するなら、まず経済成長を考えなければならない
 ということです。
 
 雇用重視優先で、
 最低賃金を上げたり、製造業派遣を禁止したりすれば、
 日本の産業は海外に逃げ出し
 雇用減につながり逆効果です。

 目的を雇用増大に置くなら、
 経済成長を第1に政策を実施すべきだということです。
 
 目的=雇用増大→手段(打ち手)=経済成長

 という関係なのです。

 「菅総理は経済に弱い」と言われているようですが、
 そのくらいのことは分かっていただきたいものです。

岩倉具三氏の死を悼む

 岩倉具三氏は2010年9月10日に急逝されました。
 心から哀悼の意を表します。

 氏は明治維新の元勲と言われる岩倉具視氏の曾孫です。
 同じ曾孫には、直木賞作家の有馬頼義氏、
 哲学者の森有正氏、女優の小桜葉子さん(加山雄三氏の母)
 などがおられる華麗なる一族の出です。
 
 氏は、東大空手部で私の2年後輩でした。
 苦労して入学されたので、私より年長でした。
 気品のある風貌をしていましたが、
 年長ぶることもなく、
 大変人懐っこく誰からも愛されていました。
 
 氏も政治家を目指し、
 まずは自民党政務調査会に勤務しました。
 主として農林領域で活躍をし、
 まさに政治主導の政策・法律の立案に大きな業績を上げられました。
 (私は、氏を知る前には、
 政党にそのような組織があるのだということを知りませんでした)

 残念ながら諸般の事情から国会議員にはなれませんでしたが、
 自民党議員の全員から評価される存在でした。
 四谷の聖イグナチオ教会で実施された葬儀には
 谷垣自民党総裁も参加されていました。

 若干余談ですが、この葬儀ミサのときに
  「各お祈りの後、ご列席の皆様も
  『神よ、わたしたちの祈りを聞き入れてください』
  と唱えましょう。」
 という式次第の記述がありました。

 そこで気がついたことがありました。
 購読している雑誌「到知」の10月号に
 行徳哲男氏の言葉として、
   ケネディ大統領は就任式の時に
   「私たちに困難と闘う勇気をください」と言い
   「守ってくれ」とは言わなかった。 
   そのケネディの勇気に恐れをなして
   ソ連はキューバに核ミサイルを持ち込むのを
   諦めたんですよ。

 なるほど、ケネディは神様に受身のお願いをするのではなく、
 能動的な発言をしたのですね。
 受身のお願いが教会の指導からきていたのだということが
 分かったのです。

 やはり、ケネディは偉大ですね。
 そのような強さを国のトップには期待したいですね。
 (別項の「尖閣諸島問題」をご参照ください)
 「政治主導」を叫んでも、
 政治家自体は動き回る活動が忙しいですから
 具体的な政策立案は無理でしょう。
 どうしても官僚スタッフに頼らざるを得なくなります。

 しかし、政務調査会のようなところに優秀な職員が集まれば、
 有効な政策検討が可能となります。
 氏はその走りだったのでしょうが、
 誠に残念なことでした。

 その後はどうなっているのでしょう。
 政治主導を実現するには、
 まずは政務調査会等の存在をアピールして
 有為な人材を集めることから始めるのが
 早道なのではないでしょうか。


 氏は毎朝2時に起き、近所で空手の稽古をしていました。
 当日もその日課をこなして帰宅し
 家族のために朝食の準備をしている4時ころに
 突然死が襲ったのです。

 脳梗塞でした。
 ご家族はじめ周りの人たちはみんな
 「信じられない!!」ショック状態だったのです。

 今日お彼岸のお墓参りに行ってきましたら
 51歳で亡くなった方の納骨がありました。
 ご遺族たちは落胆の極みの表情でした。

 我々はどうしたらよいのでしょう。
 定期的に人間ドックに行く。
 日常、健康管理に留意する。
 ということ以外に、
 いつお迎えがきてもよいように
 身辺の整理をしておくことも必要なのでしょう。

 たぶん、これが一番重要なのでしょうが
 なかなかできませんね。

尖閣諸島問題

 大事件が起きています。
 日本の力を中国から試されています。 
 日本の領海で不当な行為をした中国漁船を
 海上保安庁の巡視船が取り締まろうとしたら
 その漁船がぶつかってきたというものです。
 
 その時の状況写真もあるようですから
 公務執行妨害での立件は十分可能なようです。
 
 中国側が強硬策に出なければならない国内事情もある
 という解説もありますが、
 それは重要なことではありません。

 「中国側が強く出ると、日本は妥協する」
 ということが前例になれば
 (すでに小さいことでは起きています)、
 中国側は味をしめてどんどん強気で出てきます。

 現に、被疑者の船長を釈放したら、
 「謝罪と賠償」を要求してきました。
 この先は領土・領海問題等でどんどん攻め込んでくるでしょう。

 中国と国境を接している東南アジアの国々は
 もっと中国の伸張を恐れています。
 その国々は日本の対応をかたずを飲んでみていたことでしょう。
 結果はがっかりでしょうね。

 レアアースの輸出を止めるとか、
 閣僚級の交流停止とか、
 日本への渡航の自粛措置とか、
 そんな一時的な影響を気にしていてはいけないのです。
 
 このまま行くとどうなるかの先を読む必要があります。
 もちろん強硬策を採った場合の影響も考慮が必要ですが、
 証拠写真があれば堂々と国際世論に訴えることが可能です。

 中国を重要な市場であると考えている国は多いのですが、
 かたやで脅威も感じています。
 必ず筋の通った強硬策は国際社会で受け入れられたでしょう。

 この際、前原外務大臣と岡田前外務大臣・現民主党幹事長が
 強硬策だったことは評価できます。

 しかし、それをだれが曲げたのでしょう。
 「検察の独自の大局的政治的判断だ」
 などの言い訳は通るわけがないでしょう!
 
 さらに問題を抱えているのは海上保安庁です。
 違法行為があっても取り締まれない、
 ということでは、現場の士気の維持はできませんね。
 日々どうやって業務に取り組むのですか。

 この件は、
 歴史的に見て間違いなく大きな転機です。
 そのつもりで、国のトップは信念を持って
 この問題に取り組んでいただきたいと思います。