びっくりしましたね。
警察や検事は取り調べに対して
かなり強引な誘導をしている、
被疑者は疲れ果てて警察や検事の言い分どおりに
調書にサインしてしまう、
ということは公知の事実でした。
そういうケースでは公判になると
被告人は一転否定ということになっていました。
ところが、今回の件はそうではありません。
証拠品を改ざんしてしまうという
れっきとした犯罪を犯してしまったのです。
なぜこういうことになってしまったのでしょう。
検事の仕事は「悪を暴き、不正を犯した者が処罰される」
ように証拠を準備することです。
検事の仕事の目的(職責)は有罪を立証することです。
前田氏は「はかせ屋」と言われ敏腕の検事だったのです。
とにかく「有罪を立証すること」を目的として仕事をするうちに、
次第に「有罪であることにする」に転化し、
手段を選ばなくなってしまったのだと思われます。
倉本聡さんのテレビドラマ「歸國」の解説の時に
http://uenorio.blogspot.com/2010/08/blog-post.html
「どこで間違ってしまったのでしょうか」
という大変示唆に富むセリフをコメントしましたが
前田氏もどこかで間違えてしまったのです。
第一、目的が正しくても、
選択する手段が何でもよいわけではありません。
企業であれば、
コンプライアンス(社会的・倫理的責任)条件
を守らなければなりません。
食品偽装事件は利益追求目的のために
手段を選ばなかった典型的事例です。
目的達成には、選択する手段に対して
前提条件・制約条件があるのです。
この点は、当然のこととして明示されない場合が多いので
注意が必要です。
「売上予算を達成すること。ただしコンプライアンス条件を満たすこと」
などと言いませんからね。
検事の職務規定でも
「被疑者に対して
不正・犯罪行為につながるような強制等を行ってはいけない」
などと書いていないでしょう。
だんだんこのような当然の論理が通用しなくなってくるとすれば、
一いちこのような前提・制約条件を明示しなければならなくなります。
そうなると面倒なことになりますね。
今度は、「前提・制約条件に記述されていなかったからやった」
などということが起きかねません。
以上、要約しますと、
「目的達成には、前提条件・制約条件の明示も必要である」
「どこまで前提条件・制約条件を明示すべきかは悩ましいところがある」
ということです。
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