2012年6月30日土曜日

福島原発事故の本当の原因は?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
福島原発事故発生の真の原因を知っていただく。
原子力発電は危険であるという「誤解」を緩めていただく。

ねらい:
感情的な原子力発電反対をやめていただく。
強大な堤防造りなど無駄な投資をやめていただく。
原子力発電維持に必要かつ有効な対策を強化していただく。

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関西電力管内の大飯原発が再稼働にこぎつけました。

東京電力管内の13%の供給力を持つ柏﨑刈羽発電所は
地元の新潟県知事が、
「福島原発の最終事故調査報告書が出て
事故原因が確定するまでは
再稼働検討の土俵に上がれない」
と言っていて再稼働のめどがついていません。

事故原因の究明は焦眉の急です。

このレポートは「誰が悪かったのか」の悪者探しを
目的とするのではありません。

福島原発事故以来、
「原発の事故は原発設備自体の危険性に由来するものであり、
原発をやめるしかない」
という誤解が一般化していることに対する反証をしよう
ということが目的です。

この「誤解」は、
私も応援している某「橋下市長」でさえも
そう信じておられるようですので、かなりの影響力です。

(以下の約20行は7月3日に追記です)
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以下のような私の分析に対して、
「素人が何を言っているか」と
原子力発電の専門家、あるいは
多少その技術を勉強している人が言われることがあります。

以下に私が述べるような「本当の原因」について、
原子炉の専門家は、何が分かるのでしょう?
未だに、各種調査等を見ても
私のような分析をしているものはありません。

せいぜい、7月1日のフジテレビの新報道2001で、
猪瀬東京都副知事が
「今回の事故は地震のせいではない。
津波のせいでもない。
それらは引き金になったが、基本的には人災である。
(例として、狭い場所に密集して原子炉を配置している)」
ということを言われたくらいです。

その指摘は私の分析と基本は同じですが、
「その人災が何か」については猪瀬さんも
指摘できていません。
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福島原発事故(放射能の流出)は、
地震で設備が損壊したからではない、のです。
これはほぼ全国民に了解が得られているようです。

大きな津波が来ただけで事故になったのでもない、
のです。

津波(海水)を想定して、
重要な設備を防水状態にしていなかった、からなのです。
津波が来ても、
防水になっていれば大丈夫ではないですか。
これは、小学生でも分かることでしょう。

私は、2011年6月のブログ161号で、
原発事故の1次原因(真の原因)は、
予備用の電源であるディーゼル発電機を
防水状態ではないタービン建屋に置いたことである
(そのために「予備」が冠水して使用不能になった)、
と述べました。

さらに、
その後、福島第2原発建設の際には、
予備用電源を
防水が完全な原子炉建屋内に設置したにもかかわらず
(ということは冠水のリスクを想定したということです)、
第1原発分はそのまま放置したことが
2次原因である、としました。

福島第2原発は、
津波の被害を受けて冠水したにもかかわらず、
予備電源が稼働できたために
冷温停止できて何も問題は起きなかったのです。

目的論でいえば、
原発が放射能漏れなどの事故を起こさないようにする
ことが目的です。

その目的達成のために、
津波(海水)が原発の設備に押し寄せないようにする
(たとえば、堤防を高く強固にする)ことよりも
津波が来ても機器が浸食されないようにする(完全防水にする)
ことの方がよいのです。
この方が安上がりでかつ全く事故の心配がないからです。

なぜこんな単純な理屈が皆様お分かりにならないのか、
不思議でなりません。
堤防工事をやりたい土木建設業界のお先棒を担いでいるのか、
と思いたくもなります。

繰り返しますが福島第2原発は事故を起こしていないのです。
福島第2は、第1よりも少し高い位置に立地していますが、
それでも冠水しているのです。

この1年間、各種の調査が実施され報告書も出ています。
そこで、その内の一つである
「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」
(2012年3月11日)を読んでみました。

この報告書(以下、当報告書)は、
民間版事故調査委員会の報告だと言われていますが、
その位置づけは定かでありません。
野中郁次郎先生が委員で参加しておられることを
評価しておきましょう。

当報告書でも、私のような分析はしておりません。
ですが、私として新たに分かったことがありました。

それは、ディーゼル発電機だけでなく
冷却用の海水をくみ上げる海水ポンプと
(このことは、私もだいぶ前に知りました)
非常用電源を原子炉につなぐための非常用電源盤
も冠水して使用不能になったことです。

当報告書には、
その非常用電源盤が、ディーゼル発電機と同じく
タービン建屋に置いてあったことが記載されていました。

なお、6号機の非常用電源盤は、なぜか不明ですが
防水が完全な原子炉建屋に設置されていたために
使用不能とならなかった、と記載されていました。
そりゃそうでしょう!

ですから、1年前の私のレポートは、
以下のように訂正する必要があります。

予備用電源で原子炉を冷却するために必要な
予備用電源であるディーゼル発電機
非常用電源盤
海水ポンプ
のすべてが海水をかぶって使用不能となったことが
原子炉の冷却不能を通じて
大惨事につながったのです。

このことが、明確に認識できたら、
原子力発電の安全性を高める対策も
無駄なく的確に実施できるのではないでしょうか。

この関係を以下の連関図に示しました。

クリックすると拡大できます。




この図の3次原因については、
2011年5月の「福島原発事故およびその被害拡大要因」を
ご参照ください。

この報告書で分かったことが他にもあります。


1.ディーゼル発電機は、
当初は水冷式(冷却用の水が必要)でしたが、
1995年に追加補強した分は空冷式になっていました

リスクを想定したのです。
ですが全部を切り替えるまではしませんでした。
この際に、全般的なリスク分析を実施していれば、
予備電源系のリスクは認識されたはずです。
2.2008年にIAEA(世界原子力機関)が出した
「経年劣化指針」では、
「構造物、系統、機器の旧式化の影響を検討せよ」
となっているようです。

当報告書では、こう述べています。
「(福島原発ではこの観点からの検討を
十分していないようだが)
経年劣化対策の観点から、
プラント全体の旧式化への対策を強めていれば、
全電源喪失の危険性に意識が向けられていた可能性は
否定できない」

全体を見渡せば、第1原発の中でも新旧方式があり、
まして第2原発と比較すれば、
予備用電源系を防水状態に置くことに
気が回ったのではないでしょうか。

このように、
2回のチャンスを活かすことができなかったのです。

それができなかったのは、当報告書にもある
「絶対安全神話の罠」
(原子炉は絶対安全なのだから、
「より安全にする」などという発言があってはならない)
だったのでしょうか。

いずれにしても、
原子炉または原子力発電自体が危険なのではなく、
その建設・運用に抜けが起きることが危険なのです。

それはとてつもなく、たいへんなことではなく、
落ち着いて考えれば誰でも気がつくようなことを
確実に実行することでよいのです。

実は私は、
原子力発電の究極のリスクは、
テロ攻撃だと思っています。
これは防ぐことができるのでしょうか。

これを防ぐことができないなら、
原子力発電はやはり危険ですね。

でも、原子力発電反対派は
このことについて触れていません。

(2012年7月3日追記)
原子力発電先進国のフランスの最新の原子力発電施設は、
核シェルターのような造りになっているそうです。
さすがですね。こうすれば、
核攻撃だけでなく飛行機の墜落等にも耐えられるのですから。

そうまでしても、シェルター内で今回私が指摘しているような
抜けがあればダメですが。
そこまでいけば、
国民全員が安全だと認めるのでしょうかね。

2012年6月29日金曜日

生活保護問題について考える

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
生活保護問題のほぼ全貌の概要を知っていただく。
生活保護問題について考えていただく。
生活保護問題発生原因の因果関係を知っていただく。
悲惨な事故が無くなることを願っていただく。
河本準一の母親は、
必ずしも「不正受給」ではないことを知っていただく。

ねらい:
生活保護に関して公正な判断・行動をしていただく。
できれば、生活保護問題の改善に尽力していただく。

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生活保護問題は、私の分類では、
4つの側面を持っています。
1.財政面の負担の問題
2.不正受給問題
3.生活保護を必要とする人が生活保護費をもらえないこと
4.他の制度等とのアンバランス・矛盾があること
これについて、順番に明らかにしていきましょう。

ぜひ最後の因果関係の連関図をご覧ください。

1.まずは、財政面の負担の問題です。
生活保護費用は国自治体を合わせて
約5兆円(国負担分は4分の3の3.7兆円)です。

国の社会保障予算(平成24年度)は、
26兆4千億円(一般歳出予算の中で51%を占める)の中で、
14%を占めています。
東京23区では総予算の中でこちらも14%を占めています。

生活保護費用の中で医療費補助が半分を占めています。
生活保護者の医療費は健康保険とは関係なく、
全額無料だからです。

無料はまずいです。歯止めがかかりません。

「看護師の宮子あずさ氏はこう言っている。
医療に関して生活保護の利点は特に大きい。
各種健康保険や高額医療助成を使っても、自己負担は発生する。

この自己負担がない分、費用度外視で治療を選択できる。
そんな現実を見てきた。

例えば、抗がん剤の効果がなくなっても、
中止を拒絶した男性がいた。
元が路上生活者だったので、
病状よりも居場所を目的とした社会的入院の期間も長かった。
彼にかかった医療費は総額で1000万円を超える。」
(東京新聞2010年10月18日本音のコラム「生活保護と医療」)

生活保護を受けている世帯は、
ここ数年大幅増加傾向で
現在は150万世帯、人数では210万人です。

ご承知のように生活保護の対象は個人ではなく
単身世帯を含め世帯なのです。

対象人口の中でどのくらいの世帯数が
生活保護の対象になっているかを「保護率」と言うようですが、
この全国平均は約29世帯(1000世帯当たり)、
人口比では15.2人(1000人当たり、2011年)です。

この保護率は都道府県によってずいぶん開きがあります。
出典「社会実情データ図録」



大阪がダントツです。
次いで北海道、その次はなぜか高知です。

また、生活保護受給者の年齢構成比・男女比は以下のとおりです。
出典:Wikipedia「生活保護」


30代から60代までずっと単身男性がトップですが、
70代から単身女性がトップになっています。
70代以上の男性は生きていないか、
年金で生活できているのでしょう。

30代・40代でその他世帯女性が多いのは、
母子家庭でしょう。
50代になると減っているのは、
子が親の面倒を見るようになって
生活保護から脱却できているのでしょうか。

2.生活保護の問題の2番めは、不正受給問題です。
タレントの河本準一氏の母親が生活保護を受けていたと
問題になりました。
不正受給ではないかとマスコミが騒いだのです。

不正受給というのは、
受給資格がない(=収入や資産がある)のに
生活保護を受けることを言います。
河本さんの場合は厳密には不正受給ではありません。

不正受給は、2010年度の全国の実績で
25,355件、128億円強でした。
賃金収入がありながら無いと申告(44%)
年金受給の無申告(28%)   (厚生労働省)

生活保護法では、
生活保護が受けられる条件はこうなっています。

第4条
「生活保護は、資産(預貯金・生命保険・不動産等)、
能力(稼働能力等)や、他の法律による援助や扶助など
その他あらゆるものを生活に活用してもなお、
最低生活の維持が不可能なものに対して適用される」

扶養義務者(親族等)の扶養義務が
この「あらゆるものを生活に活用してもなお」に、
含まれそうですが、違います。

1946年制定の旧生活保護法では、
「扶養義務者が扶養をなしうる者は
実際に扶養援助がなされていなくても保護の要件を欠く
(保護の対象にならない)」とされていました。

しかし、1950年制定の現行生活保護法では、
この欠格条項が撤廃されました。
そのことからしても、生活保護法が
親族の扶養義務を前提にしていないことは明らかです。

また、生活保護の申請者(河本さんの母親)が
20歳を超えて成年になっていると、
(未成年の場合は親に子の扶養義務がある、ということです)
申請者の親族(河本さん)が援助する余裕があっても
援助したくないと主張した場合は
扶養義務を強制することはできない、
と解釈されています。

それはそうでしょう。
親に見捨てられた状態で親に恩義を感じていない子は、
親を扶養する気にならないでしょうから。

なお、第4条には、
「民法に定められた扶養義務者の扶養、
その他の扶養は生活保護に優先して実施される」とあり、

扶養義務者の扶養が前提となっているようですが、
その意味は、
「扶養義務者の扶養が得られる場合は、
その金額が控除される」ということであって、
「扶養義務者の扶養が得られる場合は、
生活保護の受給資格がない」
といことではないのだそうです。

生活保護の申請時点で、
扶養可能な親族はいないのか、
その親族に扶養の意思はないのか、
を窓口で確認するそうですが、
実際に本人にその意思がないことを確認するまでは、
あまりできていない、のだそうです。

河本さんの場合、
15年前に母親が病気になって働けなくなり、
その時点では自分に十分な収入もなかったので
生活保護を申請しました。

その後、扶養の意思について
本人への直接確認はなかったものと想定されます。
そうだとすると、このケースは
「不当」受給だったかもしれませんが、
不正受給ではなかったことになります。

しかし河本氏は、
それなりの収入が得られるようになった時点で
何らかの対応をすべきであったと、「道義的責任」を感じ、
受給額の一部数百万円を返還した、と公表しました
(2012年6月25日)。

参考までに、本来の不正受給は以下のようなものです。

所得隠しによる不正受給
友人の名義を借りた不正就労による賃金の受給、
オークションや中古リサイクル店などへの売却金、
仕送りの受け取り、
世帯主ではない未成年受給者(主に高等学校在学生)
のアルバイト収入、
生命保険解約返戻金や事故などによる賠償金、
犯罪被害者給付金、
ギャンブルによる配当金、
株取引や先物取引、外国為替証拠金取引など、

これらは本来、生活保護法の規定によって、
全て収入として福祉事務所に申告するべきものであり、
通常はその収入分を減額した金額で保護費が支給されます。
 

不当又は虚偽の申請による受給
例:2006年、首謀者である暴力団の組員が札幌市から滝川市へ転入。
その際に、病気を理由に生活保護の認定を受けた。
やがて病気の治療に滝川市から北海道大学附属病院まで
介護タクシーで通院を要するという名目で
1回当たり約30万円の移送費(交通費)を滝川市に請求し、
受給するようになった。

請求額は、2007年11月までの間に約2億円に達し、
ほぼ全額が回収不能となった。

組員は滝川市に居住していた実態はなく、
札幌市内の温泉付豪華マンションに居住しながら通院しており、
組員の妻とともに滝川市から支給された金を
不動産の購入や遊興費、覚醒剤の購入代金に充てていたという。

3.3番めの問題は、
生活保護を必要とする人が生活保護費をもらえないことです。

片やで不正受給がありながら、
こういうことが起きるのは非常に残念なことです。

生活保護を必要とするであろう生活困窮者は641万人、
うち受給者は211万人(3分の1)だそうです
(2012年6月15日日経新聞学習院大学教授鈴木亘氏)。

所得が生活保護支給基準以下となるケースの内、
実際に支給している割合を「捕捉率」というようですが、
イギリスで87%、ドイツは85-90%なのに対し
日本はわずか10-20%となっています。
この数字は基準が曖昧であるという批判があるようです
(Wikipedia)。

厚生労働省の推計では、2007年時点で
世帯所得が生活保護基準以下の世帯 597万世帯
実際に生活保護を受けている世帯   108万世帯
(2011年時点では150万世帯)
(2007年の捕捉率18%、全世帯の2.2%)

その内訳
高齢者世帯  141万世帯中49万世帯 35%
母子世帯     46万世帯中 9万世帯 20%
その他世帯  410万世帯中50万世帯 12%

この数字から何を読み取ればよいのでしょうか。

生活保護が必要な対象者全員に
生活保護を実施したら、
単純計算で5倍の経費がかかります。
国の社会保障費予算の70%を使わなければなりません。
国家予算の35%になります。
とてもそんなことはできません。

今のレベルでもたいへんですから、
申請を受け付ける福祉事務所では
「水際作戦」と言われる選別・絞り込みを行っています。

以下Wikipediaより転載です。
生活保護行政における「水際作戦」とは、
一部地方自治体で採られた、
保護申請の受付窓口である福祉事務所において
保護申請の受け取りを拒否することで、
生活保護の受給を窓口という「水際」で阻止する方策をいう。

保護請求権を行使する具体的な方法である保護の申請は
権利として保障されており、
このような方策の多くは不適法なものであるが、
生活保護扶助費用の1/4および現業員の給与は
自治体予算から支出されるため、
生活保護受給者の増加が財政の大きな負担となっていること]や、
生活保護費の不正受給問題(後述)が背景に存在するといわれている。

1987年に札幌市白石区で“保護受給申請をさせず相談に留める”対応が
行なわれていたことが確認されている。
これが原因で、母子家庭の母親が餓死した。

2007年7月10日、北九州市において生活保護受給者が
「就職した」と市職員に虚偽報告を強いられ
生活保護を打ち切られた結果、
「おにぎり食べたい」と書き残して孤独死した事案が発覚、
大きな問題となった。
以上,Wikipedia

さらに、
以下の例も報道されています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
例1 出典不詳 2012年1月25日報道
札幌市白石区(前掲と同じ地区です)のマンションで
知的障害のある妹(40)と姉(42)とみられる遺体が
見つかった問題で、
この姉は約1年半前から3回にわたり区役所に生活相談に訪れ、
生活保護申請の意向をみせていたことが、
市役所への取材で分かった。

姉は自身の仕事や妹の世話をしてくれる施設も探していたようで、
その最中に急死し、連鎖的に悲劇が起きたとみられる。

札幌市保護指導課によると、
姉は10年6月、11年4月、同6月の計3回、
区役所を訪れ「生活が苦しい」と訴えた。

2人の収入は
中程度の知的障害がある妹の障害年金だけだったとみられる。

昨年6月、姉は
「今度、生活保護の関係書類を持ってくる」と言って
必要な書類を聞いて帰ったが、その後は相談がなかった。

北海道警の調べでは、
姉妹の部屋に求職に関するメモがあった。
姉とみられる遺体の死因は脳内血腫。
姉は3年前に脳外科を受診した記録があり、
体調不良を自覚しつつ職探しをしていた可能性がある。

区内の民間障害者施設によると、
姉は約1年前に妹の通所の相談に来たが、
決まらないまま連絡が途絶えたという。

一方、妹とみられる遺体の死因は凍死で、死後5日~2週間。
料金滞納のためガスは11月末に止められており、
室内は冷え込んでいたとみられる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
悲惨すぎますね。

例2 2012年2月23日日経新聞
さいたま市のアパートで、
60代の夫婦と30代の息子一家3人が
ミイラ状態で餓死しているのが見つかった。

周囲の証言によると
「面識もないのにお金を貸してくださいと頼みに来た。
夫の体調が悪くなり仕事ができなくなった、
と言っていた。
民生委員のところへ連れて行こうとすると
『いいです』と断った」
ということのようで、
本来なら生活保護の対象でしょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これらの例を知って
福祉事務所の対応は冷たい、不当だ、
と一方的に責めるわけにはいきません。

体制が追い付いていないのです。
公表データは知りませんが、
昨今の受給件数増大傾向からすると、
かなりの人手不足であると思われます。

審査体制が不足していますから、
「なるべく早く切り上げよう。諦めさせるのが1番早い」
という考え方になっていくのは容易に想定できます。

私どものような業務改善屋からみると、
申請対応業務は、
ずい分改善の余地があるのではないかと思われます。

先ずは、窓口対応のチェックリストの作成です。
例えば、生活保護の緊要性を判断するチェック項目
不正受給を見抜くチェック項目、などです。
前者の内容例では、
年齢が70歳以上か
病気状態ではないか
家族に重度の障害者がいないか
などです。
おそらくこれは作成されているところが多いかと思われますが、
各項目の具体例をどんどん蓄積して、
参照しやすくしておけばよいのです。

ところが、福祉事務所も民生委員も自治体に所属しています。
自治体の枠を超えた情報共有は
おそらくされていないのではないでしょうか。

4.最後の4番目の問題は、
  他の制度等とのアンバランス・矛盾があることです。

生活保護費は地域によっても異なりますが、
以下がその代表的支給例です。

                      東京都区部など  地方郡部など
(1級地-1)     (3級地-2)
標準3人世帯(33歳、29歳、4歳)  234,980円      199,380円
高齢者単身世帯(68歳)         80,820円        62,640円
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳)   121,940円        94,500円
母子世帯(30歳、4歳、2歳)     177,900円      142,300円


年金受給額より高い。

出典:厚生労働省の「厚生年金・国民年金情報通」
自営業など国民年金だけしかないような人は、
たとえ満額でも月に老齢基礎年金が6万5千円ほど・・・。
生活保護との金額的な不均衡は確かに存在します。
次の数字は、公的年金の平均年金月額です。
  • 老齢基礎年金の平均年金月額=5.8万円(平成17年3月末時点)
  • 厚生年金の平均年金月額=16.9万円(平成17年3月末時点)
年金保険料を支払わない人が出ておかしくありません。

パート・アルバイトより高い
母子家庭の女性が、
1000円の時給だとしても1月180時間働かないと、
前掲の母子家庭の生活保護支給額の金額になりません。

生活保護対象者は、税金や保険料の控除がなく、
医療費が無料ですから、
実質価値はさらに大きいということになります。 

同じく、厚生労働省の「厚生年金・国民年金情報通」に
こういう情報が載っていました。

2010年8月21日、BS11「田中康夫のにっぽんサイコー!」で放送していた
生活保護と労働賃金の簡易比較の表をそのまま転載します。

生活保護と労働賃金
生活保護 月額 137,400円(東京都・単身者・家賃込み)
教育、医療、出産、介護、葬祭など無料!
労働賃金 800円×8時間×20日間=128,000円
税金、健康保険税(料)、国民健康保険を引くと、
月額 87,300円
地方の最低賃金の場合 約65,000円

モラル面はともかく、
先述の「年金よりも生活保護の方がいい」
状況が存在していることと同様に、
一定以下の条件で働かざるを得ない人にとっては
「働いて稼ぐよりも生活保護をもらっていたほうがいい」
という状況にあるのです。
(ここまで引用文)

「法定最低賃金で週40時間働く」が金額的にに負ける、
生活保護を受けた方がまし、と思う人がいておかしくない。
そういう人たちが生活保護窓口に押し寄せる、のです。

要約
以上の問題の因果関係を連関図に整理してみました。
クリックすると拡大できます。


問題の根源は、左端の問題で
1.経済環境が悪い
2.脱「生活保護】対策が不十分である。
3.生活保護支給額が高い
4.生活保護者の医療費が無料である
5.不正受給がある。
なのです。

そのために捕捉率が低いのに
生活保護費が財政的に大きな負担になっている、
福祉事務所の体制が追い付かずに、
不正受給や本当に必要としている人を保護できない
という問題が発生している、

ということになっているのです。

そこで根本原因である上掲の1.から5.を
改善しなければなりません。
しかし1.はすぐには何ともなりません。

3.から5.については、
改善すべきであるということで委員会等もできているようです。

それらはどちらかというと後ろ向きの対策になってしまいそうです。

2.の生活保護を受けている人が、
受けなくてもいいようになる支援対策が必要です。
これについては、前掲の鈴木亘教授が
かなり多方面に「亘って」意見を述べておられます。
(2012年6月15日日経新聞「自立促す「出口対策」必要)



自立する資金を貸す「総合支援資金貸付」制度の見直し。
受給者が働いて得た収入を「凍結預金口座」に預け
自立するまで使えなくする。
保護の受給者を雇用する場合、最低賃金に特例を設ける。
などです。

長くなりましたので、
ここではその内容紹介は割愛させていただきます。

ここまでお読みいただいた方は、
たいへんお疲れさまでした。

2012年6月19日火曜日

病は「気」で治るの例ーその3

以下は、雑誌「致知」の編集部から送られてきたメールの内容です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ベストセラーとなった『がんばらない』や『あきらめない』の著者
としても知られる諏訪中央病院名誉院長の鎌田實先生。

37年間の医師生活の中で出逢った、
絶望を希望に変えて生きる人々の感動実話をお聴かせいただきました。

* * *

僕が看取った患者さんに、
スキルス胃がんに罹った女性の方がいました。

余命3か月と診断され、
彼女は諏訪中央病院の緩和ケア病棟にやってきました。

ある日、病室のベランダでお茶を飲みながら話していると、
彼女がこう言ったんです。

「先生、助からないのはもう分かっています。
だけど、少しだけ長生きをさせてください」

彼女はその時、42歳ですからね。

そりゃそうだろうなと思いながらも返事に困って、
黙ってお茶を飲んでいた。

すると彼女が、
「子供がいる。子供の卒業式まで生きたい。
卒業式を母親として見てあげたい」
と言うんです。

9月のことでした。
彼女はあと3か月、12月くらいまでしか生きられない。
でも私は春まで生きて子供の卒業式を見てあげたい、と。

子供のためにという思いが何かを変えたんだと思います。
奇跡は起きました。

春まで生きて、卒業式に出席できた。

こうしたことは科学的にも立証されていて、
例えば希望を持って生きている人のほうが、
がんと闘ってくれるナチュラルキラー細胞が活性化する
という研究も発表されています。

おそらく彼女の場合も、
希望が体の中にある見えない3つのシステム、内分泌、
自律神経、免疫を活性化させたのではないかと思います。

さらに不思議なことが起きました。
彼女には2人のお子さんがいます。
上の子が高校3年で、下の子が高校2年。

せめて上の子の卒業式までは生かしてあげたい
と僕たちは思っていました。

でも彼女は、余命3か月と言われてから、
1年8か月も生きて、
2人のお子さんの卒業式を見てあげることができたんです。

そして、1か月ほどして亡くなりました。

彼女が亡くなった後、娘さんが僕のところへやってきて、
びっくりするような話をしてくれたんです。

僕たち医師は、
子供のために生きたいと言っている
彼女の気持ちを大事にしようと思い、
彼女の体調が少しよくなると外出許可を出していました。

「母は家に帰ってくるたびに、
私たちにお弁当を作ってくれました」
と娘さんは言いました。

彼女が最後の最後に家へ帰った時、
もうその時は立つこともできない状態です。
病院の皆が引き留めたんだけど、どうしても行きたいと。

そこで僕は、
「じゃあ家に布団を敷いて、
家の空気だけ吸ったら戻っていらっしゃい」
と言って送り出しました。

ところがその日、彼女は家で台所に立ちました。
立てるはずのない者が
最後の力を振り絞ってお弁当を作るんですよ。

その時のことを娘さんはこのように話してくれました。

「お母さんが最後に作ってくれたお弁当は
おむすびでした。
そのおむすびを持って、学校に行きました。
久しぶりのお弁当が嬉しくて、嬉しくて。
昼の時間になって、
お弁当を広げて食べようと思ったら、
切なくて、切なくて、
なかなか手に取ることができませんでした」

お母さんの人生は40年ちょっと、とても短い命でした。
でも、命は長さじゃないんですね。

お母さんはお母さんなりに精いっぱい、必死に生きて、
大切なことを子供たちにちゃんとバトンタッチした。

人間は「誰かのために」と思った時に、
希望が生まれてくるし、
その希望を持つことによって免疫力が高まり、
生きる力が湧いてくるのではないかと思います。

……さらに詳しくは『致知』7月号150ページで!

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素晴らしいご報告ですが、やはりとても悲しいことです。

何とかもっともっと生きられるように、
医学や「気」の持ち方が進歩するといいですね。

2012年6月16日土曜日

苦節13年 プロジェクトマネージャ試験に合格しました!

【このテーマの目的・ねらい】
目的
苦節13年の反省を知っていただく。
努力を継続する成功例を知っていただく。
人の教えには耳を傾けるべきだという例を知っていただく。

ねらい
何らかの参考にしていただく。
「お祝いをしようか」と考えていただく???

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「なんで今更」と言われながら、
受け続けて13年目の今年、
IPAの情報処理技術者試験のプロジェクトマネージャの部
に合格しました。

この試験の合格率は7-8%ですから、
13回受験すれば丁度合格率100%になります。
受かって当り前ですね。

受験のきっかけは、こういうことです。
1999年に当社で
本格的なプロマネの育成を目指す”超”プロマネ養成研修
を始めました。

私がその校長でした。
「校長がプロマネの資格を持っていないのでは様にならない」
と軽い気持ちで受け出したのです。

ずいぶん前にシステムアナリストの試験は
1回で合格しました。
20年ほど前には、お客様サービスで
受験対策講座を開いたりもして、
受験の勘所は分かっているつもりでした。

実務的経験もそれなりにあり、
プロマネの最新ノウハウは、
”超”プロマネ学校で一流講師の研修を何度も
オブザーブしていて把握していました。

ところが、なかなか受からないのです。
選択問題に〇を付けなかったなどの不注意もありました。

初めのころは、
受験することを周囲に公開していました。
受かるつもりだったからです。

2回ほど落ちて公開をやめました。
しかし、日曜日が試験なので家族には言わざるをえません。
あまりに受からないので、
家族には呆れられ、専門能力について疑いの目を
向けられたりしました。
「それだもの、会社は儲からないよね」とか。

その内には、ここで止めてたまるかと
意地になりました。

「やると思えばどこまでやるさ、
それが男の魂じゃないか」という
「人生劇場」の一節が頭に浮かんだりもしました。

試験では、最後の論文試験で
「自らの経験に基づいて述べよ」となっています。

私は、
コンサル案件のプロマネはずい分経験がありますが、
システム案件では、大昔に経験しただけで
最近では経験がありません。

経験がないので、
各種の研修で発表された
受講生の「テーマ」と枠組みをいただいて、
内容は自分で創作するのです。
作家気分です。

テーマと枠組みは、3代あります。
初めは自分の経験で、
某食品卸殿のシステム再構築案件です。

2番目は、
”超”プロマネ研修の受講生の実践報告のものです。

3番目は、
某大手情報サービス業殿で7年続いている
「要件確定力強化研修」の受講生の実践報告ものでした。
今回はこのネタを使っています。
大手宅配業者の情報系システム整備案件です。
今回はこのネタで合格しました。

最近は、
各種目(今は4種目)の成績を
照会できるようになっているのですが、
論文は「出題の要求から著しく逸脱している」
という最低の結果だったこともありました。
創作しそこないです。

ぴったりの創作ができないので、
少し自分の得意な土俵に引き入れて回答しましたが、
それを見破られてしまった、ということです。
自説の主張が強すぎたのかもしれません。


総じて言えば、
長い間、自分の思いこみで解答していたのです。

そこで、今年はあらためて受験参考書を購入して、
解答要領を勉強してみました。

その著者(三好康之さん)は百発百中の方で、
同じ試験を何度も受けて合格しているのです。
「なるほど」ということが多く、
早速取り入れました。

試験での論文のテーマは3つあるのですが、
そのどれかにぴったり合う経験をしている人は
いるわけがないのです。
いれば、そういう人はタマタマ運の良い人です。

皆何らかの創作をしているのです。
私がしたのと同じように、
論述対象の場だけは用意しておいて、
自分が料理できそうなテーマを
3問の中から選んで解答内容は創作するのです。

その創作の方法を教わったのです。
「出題説明に書いてあること
(これが出題者側が期待している解答のヒントです)
を使って膨らませればよいのだ」と。

その方が創作は容易で合格もしやすいのなら
従わない手はありません。

方法論や手法を「自己流では限界がある」と、
皆様にお教えしている立場でありながら、
自らはその教えに反していたのです。

反省が直ちに成果に結び付いたということになります。

若干脱線
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今回の受験前に整理をした
過去十数年間のプロジェクトマネージャ試験午後Ⅱの部の
出題テーマは以下のとおりでした。
何らかのご参考までに示します。

テーマ名の冒頭の数字は出題年(平成)です。
グルーピングと配列は,一応PMBOKに準拠しています。
重複して計上しているテーマもあります。

これを見ると、出題傾向が分かりますが、
プロジェクトマネジメントにおける重要性を反映しているとは、
必ずしも言えないようです。

私は、プロジェクト成功の最後の砦は
リスクマネジメントだと思っており、
山かけもこのテーマで解答を用意したりしましたが、
このテーマは意外と少なくうまく当りませんでした。

毎年出るテーマはありませんから、
 何に絞っても、山かけは難しいということになります。

プロジェクト編成その他
7.プロジェクトチームの編成とその運営
13.要員交代
14.問題発生プロジェクトへの新たな参画
15.開発支援ソフトウェアの効果的な使用
16.プロジェクトの機密管理
17.プロジェクト遂行中のチームの再編成
20.情報システム開発プロジェクトにおける利用部門の参加
20.情報システム開発における問題解決
21.業務パッケージを利用した情報システム開発プロジェクト
22.システム開発プロジェクトにおける業務の分担

 プロジェクト評価
9.プロジェクトの評価
20.情報システム開発プロジェクトの完了時の評価

スコープマネジメント(変更管理)
8.システム開発における仕様変更の管理
9.システムの業務仕様の確定
14.業務仕様の変更を考慮したプロジェクトの運営方法
18.業務の開始日を変更できないプロジェクトでの変更要求への対応

タイムマネジメント(進捗管理)
7.進捗状況と問題の正確な把握について
12.開発システムの本稼働移行について
14.クリティカルパス上の工程における進捗管理について
14.問題発生プロジェクトへの新たな参画について
15.プロジェクト全体に波及する問題の早期発見について
17.稼働開始時期を満足させるためのスケジュールの作成について
19.情報システムの本稼働開始について
20.情報システム開発における問題解決について
22.システム開発プロジェクトにおける進捗管理について

コストマネジメント
7.システム開発プロジェクトにおける生産性について
8.費用管理について
11.プロジェクトの費用管理について
12.開発規模の見積りにかかわるリスクについて
18.情報システム開発におけるプロジェクト予算の超過の防止について
23.システム開発プロジェクトにおけるコストのマネジメント

品質マネジメント
8.ソフトウェアの品質管理について
10.システムテスト工程の進め方について
10.第3者による設計レビューについて
11.アプリケーションプログラムの再利用について
11.設計レビューについて
13.テスト段階における品質管理について
14.問題発生プロジェクトへの新たな参画について
15.プロジェクト全体に波及する問題の早期発見について
16.請負契約における品質の確認について
19.情報システム開発における品質を確保するための活動計画について
21.設計工程における品質目標達成のための施策と活動について
23.システム開発プロジェクトにおける品質確保策

人的資源マネジメント(要員マネジメント)
12.チームリーダの育成
18.情報システム開発におけるプロジェクト内の連帯意識の形成
21.システム開発プロジェクトにおける動機付け
23.システム開発プロジェクトにおける組織要員管理

コミュニケーションマネジメント
17.プロジェクトにおける重要な関係者とのコミュニケーション
19.情報システム開発プロジェクトにおける交渉による問題解決

リスクマネジメント
9.システム開発プロジェクトにおける技術にかかわるリスク
12.開発規模の見積りにかかわるリスク
14.クリティカルパス上の工程における進捗管理
14.業務仕様の変更を考慮したプロジェクトの運営方法
15.プロジェクト全体に波及する問題の早期発見
22.システム開発プロジェクトのリスク対応計画

調達マネジメント
10.請負契約に関わる協力会社の作業管理
13.新たな協力会社の選定
15.社外からのチームリーダの採用
16.オフショア開発で発生する問題
16.請負契約における品質の確認
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
13年間の努力の成果は以下のとおりです。

1.まずは、この報告ができることです。
私のモットー「継続は力なり」を
示すことができました。

2.試験の午前の部は
幅広くITの知識を含め問われます。
日頃は必ずしもそのような知識を使うわけではありませんので
勉強せざるをえません。
最新のIT関連知識の勉強になりました。

3.1年に1度、
「勉強させられる」という「弱い立場」を経験しました。
そういう立場に置かれたときの心理状態を学びました。

投入資源は以下のとおりです。
費用:受験料1回5千円なので合計6万5千円、
時間:毎年20―30時間程度勉強したのと
試験当日の時間で約400時間
信用失墜ロス:測定不能

皮肉なことに、
受験のきっかけになった“超”プロマネ養成研修は、
その使命を終えたということで、
今年の1月に完了のイベントを行いました。
世の中、そういうものでしょうね。