2017年11月27日月曜日

「大学病院の奈落」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 まったく気が重くなる群馬大学の医療事故問題の総括究明書の
 ご紹介です。
 ことの本質を一緒に考えましょう。


ねらい:
 大病院のガバナンスの改善に期待しましょうか。

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「大学病院の奈落」は読売新聞社の記者である
高梨ゆき子さんの大力作です。
文章もたいへん読みやすくできています。
「こんな気が重くなる事件をよく追いかけ切ったな」と
感服・脱帽です。



本書は読売新聞の以下のスクープ記事からスタートします。
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スクープ記事

〈腹腔鏡手術後8人死亡 高難度の肝切除
     同一医師が執刀 群馬大病院〉


群馬大学病院(前橋市)で2011~2014年、
腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者約100人のうち、
少なくとも8人が死亡し、病院が院内調査委員会を
設置して調べていることがわかった。


8人を執刀したのはいずれも同じ医師。
同病院ではこれらの手術は事前に院内の倫理審査を
受ける必要があるとしているが、
担当の外科は申請していなかった。


病院関係者によると、
手術が行われたのは第二外科(消化器外科)。

死亡した8人は60代~80代の男女で、肝臓がんなどの
治療として腹腔鏡を使う肝臓切除手術を受けた。


手術と死亡の因果関係は現時点では不明だが、
8人は術後に容体が悪化し、
約3ヵ月以内に肝不全などで亡くなった。


事態を重く見た病院側は現在、同科肝胆膵(肝臓、胆道、膵臓)
グループの全手術を停止している。


腹腔鏡を使う肝臓切除手術は、
比較的実施しやすい「部分切除」などに限り、
2010年4月に保険適用された。


しかし、高度な技術が必要な「区域切除」などは
有効性や安全性が十分に確認されていないとみなされ保院適用外だ。


同外科ではこうした保険適用外の手術を多く手がけており、
8人が受けたのも同様の手術だったとみられている。


これらの手術は、
病院の倫理審査委員会に臨床研究として申請しなければならなかったが、
第二外科は行っていなかった。


今年4月には千葉県がんセンターで、
膵臓などの腹腔鏡手術を受けた患者が
相次ぎ死亡していたことが明らかになり、
10月時点で計11人の死亡患者について調べている。


群馬大病院の小出利一・総務課長は
「倫理審査を受けずに治療したことは問題で、
あってはならないことと重く受け止めている。

院内で様々な側面から調べており、まとまり次第、
ご遺族や社会にきちんと説明し、さらに本格的な調査をしたい」

とし、執刀医については

「医師個人への取材には応じられない」としている。


群馬大病院は、725の病床を持つ北関東の医療拠点。
重粒子線治療など最先端の医療も導入している。


消化器がんに詳しい
がん研有明病院の山口俊晴・消化器センター長の話


「一般的には腹腔鏡による肝切除を受けた悪者が
短期間で死亡することは非常にまれだ。

8人が亡くなるのはきわめて多いといえる。
調査委員会は原因を究明し、再発防止に努めるべきだ」
(2014年11月14日 読売新聞朝刊東京最終版一面)

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こんな大惨事が起きた原因は、本書によれば以下のとおりです。
番号は上野が付番。


1.医師の技能未熟

弁護団の独自調査において、協力医が手術の録画映像
(内視鏡手術の場合は手術の状況がすべて録画される)を見ての
コメントが紹介されています。

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 「(執刀医の)手技はななり稚拙である。
 鉗子のハンドリングもよくなく、
 剥離操作、止血操作にしても全部悪い。相当下手。
 術野も出血で汚染されており、血の海の中で手術をしているような状態。
 腹腔鏡の技量についてはかなり悪いといえる。
 無用に肝臓に火傷させるなど、愛護的操作がない。
 助手のカメラ操作も下手」
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2.インフォームドコンセント不足(医師の責任)
3.医師の手抜き(カルテ記載の粗雑さ)


4.医師の院内規則無視
5.患者の事前検査不足(医師の責任)
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 2014年11月14日、
 読売新聞の初報当日の午前、群馬大学病院の記者会見が
 病院長、医療安全管理部部長、事務部長が参加して行われた。


 そこで明らかになった事実は以下のとおり。
 手術と患者の死亡との因果関係は不明。 
 診療内容の詳細に問題があったかどうかは調査中だが、 
 手術の前に、肝臓の機能が切除後も持ち堪えられるかどうか
 を評価するための検査がほとんど行われておらず、
 カルテの記録が不十分で、
 インフォームド・コンセントが適切に行われたかどうかも
 把握できないほどだった。


 死亡した8人が受けた保険定期用外とみられる手術。
 基本的には安全性や有効性がまだ十分確立していない
 研究段階の治療法だった。
 
 本来は病院の倫理委員会に申請し、
 倫理的に問題ないかどうかの審査に通ってから実施し、
 結果を検証するというステップを踏むべきだったと
 病院側は判断しているが、その手続きはとられていなかった。


 保険適用外とみられる腹腔鏡下肝切除は、
 患者が死亡した8例を含め56例行われていた。
 この内、倫理審査の申請がされていたのは7例だけだった。
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6.術後のフォロ不備
こういう記述があります。
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 ところが、手術は、事前の説明から予想したものとは
 かなり違っていた。



 当日、朝一番で病室から運ばれていった栄子さんと
 次に対面したのは、夜になってからだった。

 栄子さんを送り出してから一〇時間以上たっていたはずだ。
 
 その間、途中の追加説明は何もなく、
 父をはじめ親族と不安な気持ちで待ち続けていた充博さんは、
 夜になってようやく姿を見せた早瀬から説明を受けたという。

 
 「がんが思った以上に広がっていて、
 全部はとりきれませんでしたといわれました。

 手術前、『いま、切れば大丈夫』と聞いていたから、
 話が違うと思いました。

 
 そのことを話したら、親父は『ええっ』と言って
 それ以上言葉を続けられない状態でした。
 ショックが大きかったんだと思います。

 
 しかし、そんな深刻な事態にもかかわらず、
 術後の栄子さんは、胆知るが漏れたり発熱したり、
 腹痛を訴えたりしても、
 これといった検査を受けることのないままに過ごしていた。

 
 その間血液検査やCTが十分に行われた様子はなく、
 手術から一週間後退院の話が出た。

 「お母さんはもう大丈夫ですよ。
 クリスマスには退院できるので、
 抗がん剤の投与について考えましょう」


 病院でそんな話を聞いた充博さんはその後、
 実家に寄って父を訪ね、そのことを報告した。

 父はニコニコしながら、「そうかい、そうかい」
 と頷いていたという。


 よほど嬉しかったのか、父は翌朝一番で病室を見舞った。
 その後まもなく、病室のトイレに入った栄子さんは突然倒れた。


 物音に気づいて扉を開けた父が見たのは、
 白目をむいた状態でその場に崩れた栄子さんの姿だった。

 (中略)

 
 後に日本外科学会が行った検証によると、
 栄子さんの事例は、トイレで意識を失って倒れ、
 蘇生を受けているときに行われた腹部超音波検査から、
 腹隆内で出血が起こっていた疑いがあった。

 
 術後の経過を注意深く診てタイミングよく
 必要な検査と処置を行うべきだったのに、
 行われていなかったことも指摘された。

 
 死因としては、
 縫合不全で腹陸内に漏れ出した胆汁により
 血管が損傷されて出血が起こったと推測されるものの、
 解剖が行われていないため確証が得られない
 と結論づけられている。
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こんな惨憺たる唖然とする状況だったのです。


7.医師の功名心

当該医師(資格は助教(助手))は、中堅技術者で超多忙だったようです。

その中で、なぜそんなリスクを冒して次々と難しい手術をしたのでしょうか。


その点に関しては、本人に対する調査(「尋問」)が実施されていないので
不明ですが、著者も医師の功名心であったのだろうと推定しています。
以下の記述があります。
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 肝臓に遅れること2年、2009年12月には、
 新たに結成された膵臓内視鏡外科研究会も、
 最初の学術集会を東京都内で開いている。

 
 肝胆膵外科の領域における腹腔鏡手術は、
 「外科のトレンド」として、注目を集めるテーマになっていた。

 特に若手外科医の目には、とても魅力的に映ったであろう
 ことは想像に難くない。


 外科系学会の学術集会では、
 肝胆膵外科の腹腔鏡手術に関するセッションはどこも盛況で、
 関心の高さを物語っていた。


 その流れに乗り、腹腔鏡下肝切除は2010年4月、
 比較的難易度が低いとされる「部分切除」と
 「外側区域切除」に限り保険適用された。


 2012年4月には、腹腔鏡下膵切除のうち
 「膵体尾部切除」も保険の利く手術として認められている。

 
 若手外科医たちがこの分野に注目し、
 新しい手法の導入に意欲を持った動機としては、
 もちろん、医療の進歩を目指し、社会に貢献するという、
 医師としての向上心や探究心、使命感があったに違いない。

 
 ただ、おそらくそれだけでもないだろう。

 従来の開腹手術では、数々の経験を積んでいる
 ベテランにはなかなかかなわないが、
 新しい手法であれば、
 外科医として他人より一歩抜きんでるための
 早道になるかもしれない。



 また、もともと患者の集まりやすい旧帝大など
 都市部の有力な大学病院などと違い、
 特色を出したい私大や地方の大学病院、
 市中病院にとっては、新たな手法を採り入れることが、
 病院としてのアドバンテージにもなりうる。
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8.教室間の対抗意識

当時、埼玉大学病院外科には、
明確な役割分担がない二つの外科教室がありました。


教室間の対応意識があり、
それぞれが実績を競うという状況にありました。
本書ではその問題に1章を割いていますが、
当ブログでのご紹介は割愛します。


9.上司(教授)の無責任(放置)
10.大学の無責任

前掲の記者会見後の記述の続きはこうなっています。
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 記者の多くが、このようなずさんで危険なやり方が
 なぜ何年もまかり通っていたのか疑問を抱いた。

 
 執刀医や教授は、このことをどう考えていたのか。

 記者会見で野島(病院長)らが明らかにしたところによると、
 患者が死亡していることは認識していたものの、

 問題だとは思っておらず、
 保険適用外で安全性や有効性が確立していない手術をする際、
 病院の倫理委員会に申請すべきであるということについては、
 「申請が必要であるという認識が甘かった」
 と当人たちは話していたという。

 
 倫理や安全を確保するための意識が、
 極めて低かったということになる。

 病院長はじめ
 病院の安全管理部門は把握できなかったのだろうか。



 野島は
 「把握が不十分なところがあった。
 診療行為を実施する側の問題もあり
 医師がきちんと申請してくれないと、病院は把握できない」
 と話し、
 判断は現場任せで野放し状態なのが実情だったことを認めた。



 そのうえで、
 (「必要な手続きをとるよう)各診療科、医師個人に
 しっかり周知させる、守らせるための取り組み方が
 少し甘かった側面はある」と、
 病院として管理体制に甘さがあったと述べた。



 執刀医がこうした手術を続けた動機については、
 「そこは何ともわからない」(野島)、
 「明確には……」(永井医療安全管理部部長)とあいまいな
 受け答えに終始するばかりで明らかにされなかった。

 
 保険適用されていない高難度の手術であることの
 インフォームド・コンセントは、執刀医の言い分では
 「患者に話している」ということだったが、
 記録としては残っていなかったという。
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私が見たあるブログでは、
「担当医師は悪くない、悪いのはそういう状況に追い込んだ
上司(教授)と大学である」と主張している医師がいました。

この無責任経営の一環で、「健康保険請求の不正」が行われています。

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 群馬大学病院による最初の記者会見の内容には、
 よく考えると一つおかしな点がある。


 記者会見した病院長の野島らは、病院の内部調査により、
 第二外科で、保険適用外とみられる腹腔鏡下肝切除手術が、
 2010年12月から2014年6月までの間に
 56例(注・後に58例と訂正)行われていたことが
 わかったと説明している。


 このうち、患者が死亡した8例も含め多くの例が
 倫理審査を通さずに実施された。


 保険が利かない手術だったとすれば、
 費用の支払いはどうしていたのか、
 何ら言及がなされていないのである。


  保険適用されるということは、原則として、
 全国の病院で幅広く行って差し支えないと考えられるほど、
 安全性や有効性が確立された標準的な治療法と
 見なされたということである。


 だからこそ公的な医療保険が利き、
 病院は保険から診療報酬を受け取れるので、
 患者は一部の自己負担(一般的には、かかった医療費の三割)
 だけで治療を受けられる。


 それでは、保険適用外の手術であればどういうことになるか。
 当然、その治療に保険は利かない。

 となると、費用負担の方法は三通りに限られる。


 一つは、美容整形と同じように、
 患者が医療費の全額を自己負担する自費診療として行う方法であり、
 もう一つは、臨床研究の一環として、
 病院側が全額を研究費などから支払い、
 患者に負担を求めない方法である。


 いずれの方法でも、倫理審査は通さなければならない。
 しかし、第二外科で実施した手術の多くで、
 倫理審査手続きは行われていなかった。


 遺族への取材によって、そのからくりは鮮明になった。


 取材に応じた遺族は誰一人、
 自分たちの家族が受けた手術が高難度の術式であり、
 いまだ保険適用もされていない手術だったということを
 知らなかったのである。


 遺族は診療に対する支払いの請求書や領収書を保管しており、
 それを確認すると、患者側に請求されていたのは、
 保険の自己負担分だけだった。



 それは、病院側が、保険適用外の手術を保険診療だった
 ことにして診療報酬を不正請求していた
 疑いがあることを意味する。


 群馬大学病院は後に、
 このことで厚生労働省の監査を受け、
 多額の診療報酬を返還させられることになる。

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以上について、2015年3月3日に行われた病院長による
「群馬大学医学部付属病院 
腹腔鏡下肝切除術事故調査報告書(院内調査)」
の結論はこうなっています。
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【結論】

1.新規医療技術の導入に際し、
 IRB (臨床試験審査委員会)への申請を怠る等、
 診療科として組織的取組が行われていなかった。


2.術前評価が不十分であり、
 過剰侵襲から予後を悪化させた可能性が考えられた。


3.手術に関する説明同意文書の記載が不十分であり、
 適切なインフォームドコンセントが取得できているか
 確認ができなかった。


4.主治医による診療録記載が乏しく、手術適応、
 術後の重篤な合併症等に対して主治医がどのように判断し
 対応したかという思考過程等を診療録から
 把握することが困難であった。



5.カンファレンスなどによる診療の振り返りが十分に
 行われておらず、手術成績不良に対する診療科としての
 対応が不十分であった。



6.院内の報告制度は設けられていたが、
 診療科からの報告がなされておらず、
 病院として問題事例の把握が遅れた。


7.保険診療制度に対する理解が浅く、
 不適切な保険請求がなされた。



8.1~6の問題点は、8例全てで共通に認められた。
 さらには、腹腔鏡手術の適応、術中の処置、
 術後管理等においてもそれぞれに問題が指摘された。
 
 以上のことから、全ての事例において、
 過失があったと判断された。
(上野注:自分たちの責任を素直に認めているようですが、
見方を変えると
すべてを医師の過失責任であることにしようという意図が
丸見えということになります)



9.病院全体の管理体制として、問題事例の早期把握、
 倫理審査の徹底、適正な保険請求、
 医療事故の届け出等に不備が認められた。

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この「事件」の状況は、経営のガバナンス問題としてみると
きわめて程度の低い問題です。



企業の営業担当にたとえるとこうなります。
多くのまともな企業では今や考えられない状況です。



1.どこに何の営業で行くかを事前に上司に連絡しない。


2.お客様に、商品の有効性を吹聴するが、
 会社で定められている商品の有効範囲や会社の責任範囲については
 まったく説明しない。


3.お客様に対する技術的プレゼン(説明会)に対して、
 技術部門が的確なフォロをしない。


4.営業状況の日報を具体的に記述していない。
5.いい加減な日報に対して上司は何も指導しない(放置)。


6.商品の使用法や効能の疑問点に対する
 お客様からの問い合わせに営業担当が答えない。
 (コールバックもしない)


7.営業担当および上司の指導のずさんな状況や、
 お客様からのクレーム状況を会社が把握していない。


8.実質的に激しい超過勤務状態なのに
 会社はその状況を把握していないし
 ましてや改善の対策をとっていない。


要するに、営業を完全に営業担当任せで、
実績が上がっていればよいという無責任体制です。


最近は、日本の伝統的産業である製造業における不正が
次々と発覚しています。


しかし不正や不備が
人間の命にかかわる世界で起きているのですから、
大問題なのです。


まさにこの「人の命にかかわる」という点が医療の特異性です。



11.医師の人間性(人間軽視)

最後はこれだと思います。


この事件の当事者である医師は、
自分の職業の対象がモノではなく生身の人間であるという点の認識が
まったくないか希薄なのです。


生身の人間には感情があるし生きたいという意志があり、
生きてほしいと思う家族がいるのですが、
そういう面を捨象して、単なる施術あるいは治療対象としての物体として
客観的に見ているのです。


医師が患者をそのように客観視してみるという経験を、
私は40年前に父親の死に際して経験しました。


父は今で言うC型肝炎(劇症)に罹り
2週間の闘病生活の末に亡くなりました。


父は当時69歳でしたが、発病と同時に意識不明になってしまいました。

当時は,C型肝炎は認知されていなく、治療法も不明で試行錯誤でした。


父は大学医学部の名誉教授でしたから、
身内を含む内科の先生たちが
医師団をくんで治療にあたってくださいました。


当時試作段階であった人工肝臓機能装置も使っていただきました。
その効果があっていったん意識回復しました。

そのおかげで米国出張から急きょ戻ってきた私は
父と会話をすることができました。



家族は交代で付きっきりでした。
家族たちは病気は適切な治療があれば治るものと思っていましたし、
何としても治ってほしいと思っていました。


ところが、闘病生活2週間めになったときに、
先生たちが「もうダメかもしれない」
というようなことを話しているのを聞いてしまいました。


そのとおりなのでしょうが、
何としても治ってほしいと思っている家族からすると、
「父を治療対象物としてしか見ていないのだ」
とショックを受けました。


そのような特別な関係の医師団でも、
そのような見方になるのですから、
普通の関係の「患者さん」ならなおのこと
「単なる1物件」としてしか認識しないのでしょうね。


患者ひとりひとりに患者や家族の立場になって診ていたら
体も精神も持たないでしょう。



しかし群馬大学のこの医師は
その限界のはるか手前で患者との交流を遮断しています。
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 裕美さんが亡くなった朝、
 急変の知らせで駆けつけた家族に、
 その場にいた早瀬(担当医の仮名)は
 全く言葉をかけなかったという。


 「 私、待ってたんです。先生、何か言ってくれるかなって。
 別に私を励ますような言葉じゃなくても、
 こういう経過でしたとか、
 何か話しかけてくれてもいいじゃないですか。
 でも、何もありませんでしたね。
 目を合わさないようにして、そこにいただけ」

  
 看護師たちは、泣き続ける裕美さんの娘の肩を
 抱えるようにして、慰めようとしているのが伝わったが、
 早瀬は何も言わず、何もせず、見送りの一群に付いてきた。

 
 娘は、裕美さんの遺体に寄り添って車に乗り込み、
 病院の出入り口に目をやった。

 
 早瀬は、車が走り出すとすぐ、くるりときびすを返して
 病院の中に消えていった。

 一瞬、白衣の裾がひらりと舞うのが目に入った。


 それが冷徹な割り切りのようにも感じられ、
 裕美さんの娘は一層悲しい気持ちにさせられた。

 「次の人がいるから、患者が一人亡くなったからといって、
  いちいち構っていられないのかな。
  
 これが大学病院なのかな。
 そう思って、なんだかすごく寂しくなったのを覚えています。
 お母さん、あんなに苦しんだんですよ。
 ほんとに、すごく苦しんだんですよ」
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これが遺族の気持ちです。
医師は、患者・家族の気持ちに寄り添っていただきたいですね。
そうでない医師は免許返上でしょう。

2017年11月21日火曜日

「超予測力」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 難問に対する予測の精度を上げる方法を探求したレポートの紹介です。
 予測の精度を上げるためのガイドの
 ビジネスのガイドとの共通性を検討してみました。

ねらい:
 予測に関心のある方は、この貴重な実験レポートをご覧ください。
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「超予測力」は、
ペンシルバニア大学のテトロック教授と
カナダのジャーナリストであるガードナー氏が書かれたものですが、
小島寛之帝京大学教授の書かれた日本経済新聞の書評を見て
読んでみました。



ですが、この書評以上の簡潔で要領を得たご紹介はできませんので、
まずはその書評をご覧いただきます。

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鉄板だと思われた予想がみごとはずれることがしばしば起きる。
今年で言えば、イギリスのEU離脱や
トランプ氏の大統領選勝利がそれだ。

株価の暴落が大多数の人の読み違いを裏付けた。
本書は、このようなままならない地政学的予測・経済的予測に
長けた「超予測者」が実際に存在することを明らかにし、
彼らの特徴を分析した本である。

著者テトロックらは数千人のボランティアを集め、
「優れた判断カプロジェクト(GJP)」なるものを組織し、
彼らに、「朝鮮半島で戦争が勃発するか」
「金相場は暴落するか」といった膨大な予測間題を課した。

日本に関する予測では「安倍晋三首相が靖国神社を訪間するか」
などがある。

これらの予測問題について、一般人よりも、
また、専門家と呼ばれる人々に対してさえも、
成績が有意に優れた人々が見つかったのである。

こう聞くと、慎重な人は、単なるまぐれじゃないの?
とかんぐることだろう。

O×クイズに莫大な人が参加すれば、
統計的に全間正解者が存在する。

でも大丈夫、著者はちゃんとこのツッコミヘの回答を用意している。

統計学の観点でも、超予測者はまぐれではないのだ。

彼らは学歴も職業もさまざまだ。
その特徴は人物ではなく方法論にある、と著者は説く。

方法論的な特徴は多数ある。
彼らは複眼的であり、数字に強い。
思想・信条に固執せず、反対意見を重んじる。

確率論的な視点を持ち、情報によって予測を更新する。

本書を読むと、まるで我々誰もが超予測者になれるか
のような錯覚に陥るが、そう甘くはないだろう。

何より彼らは、膨大な予測問題に、タフな情報収集と
詳細な論理的考察で回答するエネルギーを持ち合わせている。

これだけでもう生まれ持った特殊能力と呼べるだろう。

でも、超予測者の仲間入りは無理としても、
並予測者くらいにはなれるかもしれない。

超予測者の方法論は、どれもが常識的であり、突飛ではない。
高度な数学も必要ない。

ただそれは、我々が面倒がって無意識に避けている考え方なのだ。

これらを表層意識に刻むだけで、
予測能力はだいぶ改善されることだろう。

さらに本書を同僚みんなで読み込んで議論すれば、
会社の雰囲気が明日から変わるかもしれない。

とりわけ、第9章のチームワークの議論は、
管理職の方々に溜飲下がるものだろう。

そんな時間がない、と嘆く超多忙者は、
付録「超予測者をめざすための10の心得」を
斜め読むだけでも十分に役立つ本である。

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本書には驚きの事実が紹介されています。
株価等の予測に関心のある方はぜひご覧ください。

この中に、
第10章にリーダのジレンマという項があり、
以下の記述がありました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リーダーは決断しなければならない。
それには予測を立て、使いこなす必要がある。

予測は正確なほど良いので、
超予測力に関する知識には強い関心を持つべきだ。

ただリーダーには行動し、日標を達成することも求められる。
つまリリーダーたらねばならない。

これまでリーダーを務めたことのある人なら、
超予測力の知識がどれほど役に立つのかと
疑間を感じているかもしれない。

有能なリーダーに必要な資質を周囲の人や
リーダーシップ研修の専門家に聞いたり、
あるいはこのテーマに関する文献を読んだりすれば、
基本的に三つ挙がるはずだ。

「自信」は誰もが挙げるだろう。

リーダーは健全な自信を持ち、
周囲にもそれが伝わらなければならない。

できるという信念がなければ、なにごとも達成できないからだ。

「決断力」も欠かせない。
優柔不断ではリーダーは務まらない。

状況を評価し、決断し、前に進まなければならない。
そしてリーダーは「ビジョン」を語らなければならない。
みなが一致団結して達成しようとする目標である。

超予測者の思考スタイルを思い出し、
リーダーに求められる資質と比べてみよう。

確実なものなどひとつもないと考えていたら、
揺るぎない自信を持ち、
周囲にそれを伝播させることなどできるだろうか。

時間をかけて複雑かつ自己批判的に思考をする人間が
決断力を持てるか、そして「考えすぎて身動きがとれない」
状態に陥るのを避けられるだろうか。

新しい情報が出てくると意見を変え、
自分は間違っていたと認めるようでは、
断固たる決意を持って行動するなど不可能ではないか。
なにより超予測力の根底にあるのは謙虚さだ。

現実はあまりに複雑で、それを理解するにはわれわれの能力に
は限界があり失敗は避けられないという意識である。

ウィンストン・チャーチルやスティーブ・ジョブズのような
傑出したリーダーが「謙虚」と評されたことなどあっただろうか。

ガンジーはあるかもしれないが、
あと一人か二人思い浮かべようとしても難しい。

またスーパーチームの特徴を思い浮かべてみよう。

有効なチームのあり方について説明は受けたものの、
ヒエラルキー、ルール、正式なリーダーなど
何も押しつけられなかった。

このようなちっぼけなアナキスト的集団は、
超予測者らが好む徹底した議論には適しているが、
一致団結して事を成すのには不向きだ。

後者に必要なのは組織力と責任者たるリーダーである。

これは重大なジレンマに思える。
リーダーは予測者であると同時にリーダーでなければならないが、
一方の成功の条件は他方での成功を阻害しかねない。

幸い、超予測者であることと傑出したリーダーであることは、
現実にはそれほど矛盾しない。

むしろ超予測者の行動モデルは、
優れたリーダーを傑出したリーダーに変え、
そして彼らの率いる組織の力量、適応力、有効性を高める。

ここでカギとなるリーダーシップ論と組織論は、
19世紀プロイセンの参謀総長が生み出し、
第二次世界大戦でドイツ軍が完成させ、
その後現代アメリカ軍の土台となり、
今日の成功企業の多くで取り入れられているものだ。

みなさんの近所の大手スーパーマーケットチェーンも
実践しているかもしれない。

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なるほどと思う面もありますが、
私は、超予測者の資質とリーダの資質は異なると思います。

それは、ビジネス界では常識と思いますが、
スペシャリスト(専門職)とマネージャの違いです。
共通点があるという言い方よりも、
異なる資質であると言った方が適切だと思います。

書評にあった
「超予測者を目指すための10の心得」の項目は以下のとおりで、
その項目に対して
ビジネスでの心得との共通性について私がコメントしてみました。

◎ ビジネスでも非常に重要、〇 重要、△ 一面で適合、
☓ ビジネスでは該当しない
と判断しましたが、皆様はどう思われますか?


△1.トリアージ(選別格付け)
  ビジネスではこちらの都合で案件を選択することはできません。
  ビジネスポートフォリオの考え方であれば、合致します。


◎2.一見手に負えない問題は、手に負えるサブ問題に分解せよ
  重要な考え方ですが、ビジネスでは常識でしょう。
  システム企画研修社の提供する解決策検討手法では、
  まず問題領域を「部分に分解」せよ、としています。


◎3.外側と内側の視点の適度なバランスを保て
  どんなにトップを行くビジネスでも
  内向き志向になったら終りです。
  その例は多数ありますね。


〇4.エビデンスに対する過少評価と過剰反応を避けよ
  エビデンスであると示されても、疑わしければ、
  安易に受け入れず徹底的に確認すべきです。


◎5.どんな問題でも自らと対立する見解を考えよ
  これも先入観で決めつけることへの警句として有効です。


〇6.問題に応じて不確実性はできるだけ細かく予測しよう
  リスクを検討すべきことはビジネスでは常識です。
  ただし抜かりから問題が起きていますね。


◎7.自信過少と自信過剰、
   慎重さと決断力の適度なバランスを見つけよう
  バランスを欠いた自信過剰と決断力で小池百合子氏は自滅しましたが、
  日本人全般の傾向からすると、自信と決断は強化されるべきです。


◎8.失敗したときは原因を検証する。ただし後知恵バイアスにはご用心
  失敗に対する原因分析・反省がなければ進歩はありません。
  授業料を無駄にしていることになります。
  日本では失敗を隠す傾向があるので改善しなければなりません。


〇9.仲間の最良の部分を引き出し、自分の最良の部分を引き出してもらおう
  本来ビジネスではこうありたいですね。


☓10.ミスをバランスよくかわして予測の自転車を乗りこなそう
  ビジネスでは「チャンスをうまく掴んで発展しよう」でしょうね。


〇11.心得を絶対視しない
  ビジネスでは、
  チェックリスト過信や形骸化は避けるように戒められています。


2017年11月17日金曜日

日本を凋落の危機から救う対策は??

【このテーマの目的・ねらい】
 目的:
  日本の良さを明らかにし、それを通すことを主張されている
 「日本のものづくりを救う!最強のすり合わせ技術」
  をご紹介します。
  その延長で日本が生き残る道を検討してみます。

ねらい:
  何とか安倍総理の力で
 この方向が実現できることを期待いたします。
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津曲公二さんと酒井昌昭さんの書かれた
日本のものづくりを救う!最強の「すり合わせ技術」
を読ませていただいて考えました。



本書は、日本の国民性、優れた資質を活かして、
日本頑張ろうというメッセージを発信しておられます。
思いがたいへん重いメッセージです。

大賛成で、これを機会に
日本を凋落ならぬ没落の危機から救う方法を検討してみました。
まず日本人の国民性についてこう書いておられます。
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【わが国だけにある資源】

他の国にはなく、わが国だけにある資源、
それは日本だけを見ていると見えにくいかもしれません。
海外に旅行すれば、はっきりとわかってきます。

階層意識が低くオープンな社会構造
約束を守る、
時間を守る、

協調性にすぐれ、
勤勉で誠実な国民性、
黒か白か決着を付けずにあいまいさを許容する、

職場で上司が部下を育成する気風、
必ずしも儲けだけを追求するのでなく誰かの役に立ちたいという経営、
リクツはともあれまずはやってみようという技術(実践)志向。

技術大国日本の資源はヒトであり、
ヒトを大切にする文化だと思います。
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ビジネス風土についてはこういう主張をされています。

1)社会の階層意識が低い。
2)カネ儲けより誰かの役に立ちたい。
3)いいとこどり(クリスマス、除夜の鐘を聞く、神社に初詣する、
  TQC,QC、シックスシグマ、PM、TOC,VE,VA)

して「経済と道徳を融合させた渋沢栄一」
「行き過ぎた儲け主義を否定したソニー創業者の信念」を紹介された後で、
「誠実で真摯な努力が世界で味方をふやす」を結びとされています。

途中で、現代日本の弱点も指摘されています。

企業間で階層意識がある。
見せかけの安心で、ほんものの安全をごまかしている。
効率性重視で効果性軽視の傾向がある。

しかし、日本の良さを見直して原点回帰しようと主張しておられます。.
そのとおりだと思います。

しかし私の見るところ、
現代日本が苦境に陥っている原因は大きく二つあります。

1.技術がそして社会生活が革新の
  時代に入っている。

これはご承知のとおりのことですが、日本人には逆風です。
日本人の思考法には全般的に見ると、
千年に亘る農耕文化によって醸成された以下の傾向があります。

1)先進性がない(過去の延長で物事を考える)
2)集団の和を重んじ独自意見表明を嫌う。
3)その延長で、リーダシップを発揮したがらない。

この思考法は、
過去の延長で改良をしていけば良かった高度成長期まで、
日本の製造業が世界を制覇するのに貢献しました。

今はその時代ではありません。
ダイソンに掃除機で負ける時代になってしまったのです。
この掃除機には
技術で負けたのではなく発想・企画で負けたのです。

製造技術で生き残れる日本の製造業はあるのでしょうか。
今や自動化・ロボットの時代でしょう?
自動車だってEVになると
すり合わせ技術は不要になると言われています。

この時代は、新しいモノ、コトを考える発想力が求められているのです。

2.精神風土は米国流に毒されて、
  日本的良さ・美徳を失いかけている。

「失いかけている」と言うのは、こういうことです。
戦前生まれの旧世代人およびその旧世代人に育てられた日本人は
日本的良さを失っていません。

しかしその後の世代は、
都会の核家族育ちでその良さが伝承されていません。

東北大震災の時に、
自分のことを置いて他人を助けた多くの美談が
世界の人たちに感銘を与えました。

これは「田舎」であるから実現したことなのです。
都会ではマンションの隣人を助けたりしないでしょう。

この2点を要約すると、
日本人の思考特性の良い部分を失って
苦手な部分で戦わなくてはならない時代になってしまっている
ということです。

どうしたらよいのでしょうか。
同書では、「すり合わせ」を知の世界に持ち込んで、
知のすり合わせ」をしたらよいと言っておられます。

「知のすり合わせ」は、
部門間とか機能間での調整ということになります。
私の勉強不足かもしれませんが、、モノのすり合わせ技術と

部門間の調整技術とは全く異質のものではないでしょうか。
部門間の調整が日本でやりやすいとすれば、
縦割り意識よりも企業一家主義で
協調意識があるという面かもしれません。

残念ながらこの点も、
米国流に毒されて弱くなってきているのではないでしょうか。
もう一度言います。どうしたらよいのでしょうか。
あらためて日本の特性を評価してみましょう。

 1)高齢化先進国である
 2)きめ細かい気づきが得意 
 3)地道な努力をする
 4)自然との共生

この2)~4)は日本人のDNA的な特性で今も活きています。

日本が得意な技術は、2)と3)を活かして

5)ロボット
6)ゲーム、アニメ
でしょう。

この特性から考えられるのは、
以下の領域のビジネスではないでしょうか。  

A.ロボットを積極的に活用する介護・医療の世界
 
 この点の認識は一般的かと思いますが、
 国家戦略として他の領域は捨ててここに重点投資すべきです。

B.ロボットとゲームを融合した
     老人を元気にするもの・スポーツの世界
 
 老人が元気に活動すれば、
 健康寿命が延びて医療費の削減になります。
 
 老人たちが家にこもらずに毎日外で楽しめる
 ゲートボールより断トツで素晴らしいものを開発するのです。
 AIの活用なども有効でしょう。
 ヒントはSONYが今年の6月に13年ぶりに出した玩具
 と言われる、学べるロボ「トイオ」です。
 これを人体大に大型化して、チームでロボットを作り
 お互いに戦わせるのです。

C、老人が社会貢献できる働きの場を作る世界
 
 老人が遊んでばかりの社会は成り立ちません。
 老人の知識・知恵を活用する働き場を作る必要があります。

 たとえば、
  ロボットの助けを借りての介護関係
  ゲーム・アニメの力を借りての小学校の社会科の先生
  同じく体育や音楽、家庭科の先生

  ロボットの力を借りて植物(お花や果実)を育てる農業
  (お花や果実は心を込めるといいモノができるのです)
  自然との共生心を活かす道はもっとたくさんあるでしょう。
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途中から、私の主張になってしまいましたので、
あらためて、本書の主張をご紹介しておきます。
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本書では、すり合わせ技術を使いこなすだけにとどまらず、
技術者の生き方や日本のビジネス道などを
6つの章(観点)にして、述べています。

第1章 効率一辺倒はやめる。

わが国は「見えない資産(無形の資産)」の宝庫であり、
社会の安定を維持していること、
これはどこの国もなし得ない優れた特質です。

すべてにおいて効率指標をもちこむことをやめれば、
わが国はもっと発展できます。

第2章 国際標準に振り回されない。

国際標準にはホンネがある。
物ごとには、もっともな建前や美しいかけ声の裏に
必ず都合のよいホンネがあります。

これらを知り、自らが提案できるためにはどうすればよいか。
筆者たちが企業で体験した事例を加えています。
注:津曲公二さんは日産自動車、酒井昌昭さんはソニーのご出身です。

第3章 「すり合わせ技術」

わが国でなければできないことは、「見えない資産」を知り、
他社がまねできないやり方を生みだすことです。
いまそこにあるさまざまな資源の活用を考えます。

第4章 戦略に強くなるカギも
     「すり合わせ技術」

わが国は戦略で負けています。
マクロよりもミクロが気になり、手法に関心を寄せるが、
残念ながら、その背景にある思想(ベースになる考え方)は
あまり気にしない傾向があります。

すり合わせ技術を上手に使えば、
戦略と戦術は同時進行できることをみていきます。

第5章 チーム力を磨くために
     技術者がはたすべき役割

技術者はやりがいのある仕事です。
とくに日本においてはそうだと思います。

職場で仕事をしながら自分はどう成長するか、
技術者のリーダーシップとは何か、
いざというとき判断がぶれないための軸にしたいことなど、
技術者の器量について述べます。

注:お二人は技術者です(でした?)。

第6章 日本のビジネス道

積極的に世界に向けて発信すべきことを提案しています。
誠実で真摯な努力を基本にする日本のやり方は、
世界の各国から信頼されています。

いま世界中でカネ設け第一のやり方が広まっています。
日本のビジネス道がこれからも
世界で信頼され続けることを述べます。

日本のように共存や共生に重きを置く国は、
世界にもっとあったはずですが、
今ではほとんど日本だけになりました。

自分の企業の利益だけしか考えないやり方、
市場を独占するのがベストという考えかたなどは、
いずれは破綻してしまうことでしょう。

日本のやり方は世界に広めるべきすばらしいもの、
という認識を、技術者にかぎらずすべての人たちに
強くもってもらいたいと思っています。
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お二人の言われるとおりです。
しかし、最近の製造業で起きている複数の不正は、
まさに「効率重視」に毒されて起きてしまっていることで、
世界に対して日本の信用を大きく傷つけてしまっています。
お二人の悩みは大きいでしょう。

2017年11月15日水曜日

今年の流行語大賞は何でしょうか!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 今年の流行語らしきものを知っていただきます。
 どれが大賞になるか予想していただきます。
 (宝くじよりは当たるでしょう!)

ねらい:
 楽しみにしていただきます。
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今年の流行語大賞の候補30語が発表されました。
大賞が発表されるのは12月1日だそうですから、
どの語が大賞になるか予想してみましょう。


2017年流行語大賞候補

1.アウフヘーベン
11けものフレンズ
21.ハンドスピナー
2.インスタ映え
12.35億
22.ひふみん
3.うつヌケ
13.Jアラート
23.フェイクニュース
4.うんこ漢字ドリル
14.人生100年時代
24.藤井フィーバー
5.炎上○○
15.睡眠負債
25.プレミアムフライデー
6.AIスピーカー
16.線状降水帯
26.ポスト真実
7.9.9810秒の壁)
17.忖度
27.魔の2回生
8.共謀罪
18.ちーがーうーだーろー
28.○○ファースト
9.GINZA SIX
19.刀剣乱舞
29.ユーチューバー
10.空前絶後の
20.働き方改革
30.ワンオペ育児


流行語と言えば、「はやり言葉」ですから、
本来は多くの人が使った言葉ということなのでしょう。

しかし候補を見ると、
話題になったけれども一般の会話の中では使われてはいない言葉も
多く登場しているようです。
例えば、「藤井フィーバー」「線状降水帯」「GINZA SIX」などです。

うんこ漢字ドリルは、このままの言葉では使われなくて、
「うんこ」という言葉が、
日常会話の中であまり抵抗なく使われるようになった
という面があるかもしれません。
そういう意味でこの語は、あるとすれば特別賞でしょう。

その意味で、
会話の中に登場したのではないかと思われる言葉としてみると、
炎上、35億、忖度、ちーがーうーだーろー、ファースト
せいぜいが、働き方改革、でしょう。

その中からどれが一番でしょうか。

どうもこれが1番とはっきりしているのはなさそうです。
私としては、35億やちーがーうーだーろーも面白いのですが、
多くの人が政治や社会に関心を持っていただくという意味で
忖度であってほしいと思います。

因みに、過去3年の大賞は以下のとおりで、
2014年の以外は、そうかなあ、という程度ではないでしょうか。
 2014年 ダメよーダメダメ
 2015年 爆買い
 2016年 神ってる

皆様はどう予想されますでしょうか。