2017年11月21日火曜日

「超予測力」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 難問に対する予測の精度を上げる方法を探求したレポートの紹介です。
 予測の精度を上げるためのガイドの
 ビジネスのガイドとの共通性を検討してみました。

ねらい:
 予測に関心のある方は、この貴重な実験レポートをご覧ください。
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「超予測力」は、
ペンシルバニア大学のテトロック教授と
カナダのジャーナリストであるガードナー氏が書かれたものですが、
小島寛之帝京大学教授の書かれた日本経済新聞の書評を見て
読んでみました。



ですが、この書評以上の簡潔で要領を得たご紹介はできませんので、
まずはその書評をご覧いただきます。

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鉄板だと思われた予想がみごとはずれることがしばしば起きる。
今年で言えば、イギリスのEU離脱や
トランプ氏の大統領選勝利がそれだ。

株価の暴落が大多数の人の読み違いを裏付けた。
本書は、このようなままならない地政学的予測・経済的予測に
長けた「超予測者」が実際に存在することを明らかにし、
彼らの特徴を分析した本である。

著者テトロックらは数千人のボランティアを集め、
「優れた判断カプロジェクト(GJP)」なるものを組織し、
彼らに、「朝鮮半島で戦争が勃発するか」
「金相場は暴落するか」といった膨大な予測間題を課した。

日本に関する予測では「安倍晋三首相が靖国神社を訪間するか」
などがある。

これらの予測問題について、一般人よりも、
また、専門家と呼ばれる人々に対してさえも、
成績が有意に優れた人々が見つかったのである。

こう聞くと、慎重な人は、単なるまぐれじゃないの?
とかんぐることだろう。

O×クイズに莫大な人が参加すれば、
統計的に全間正解者が存在する。

でも大丈夫、著者はちゃんとこのツッコミヘの回答を用意している。

統計学の観点でも、超予測者はまぐれではないのだ。

彼らは学歴も職業もさまざまだ。
その特徴は人物ではなく方法論にある、と著者は説く。

方法論的な特徴は多数ある。
彼らは複眼的であり、数字に強い。
思想・信条に固執せず、反対意見を重んじる。

確率論的な視点を持ち、情報によって予測を更新する。

本書を読むと、まるで我々誰もが超予測者になれるか
のような錯覚に陥るが、そう甘くはないだろう。

何より彼らは、膨大な予測問題に、タフな情報収集と
詳細な論理的考察で回答するエネルギーを持ち合わせている。

これだけでもう生まれ持った特殊能力と呼べるだろう。

でも、超予測者の仲間入りは無理としても、
並予測者くらいにはなれるかもしれない。

超予測者の方法論は、どれもが常識的であり、突飛ではない。
高度な数学も必要ない。

ただそれは、我々が面倒がって無意識に避けている考え方なのだ。

これらを表層意識に刻むだけで、
予測能力はだいぶ改善されることだろう。

さらに本書を同僚みんなで読み込んで議論すれば、
会社の雰囲気が明日から変わるかもしれない。

とりわけ、第9章のチームワークの議論は、
管理職の方々に溜飲下がるものだろう。

そんな時間がない、と嘆く超多忙者は、
付録「超予測者をめざすための10の心得」を
斜め読むだけでも十分に役立つ本である。

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本書には驚きの事実が紹介されています。
株価等の予測に関心のある方はぜひご覧ください。

この中に、
第10章にリーダのジレンマという項があり、
以下の記述がありました。
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リーダーは決断しなければならない。
それには予測を立て、使いこなす必要がある。

予測は正確なほど良いので、
超予測力に関する知識には強い関心を持つべきだ。

ただリーダーには行動し、日標を達成することも求められる。
つまリリーダーたらねばならない。

これまでリーダーを務めたことのある人なら、
超予測力の知識がどれほど役に立つのかと
疑間を感じているかもしれない。

有能なリーダーに必要な資質を周囲の人や
リーダーシップ研修の専門家に聞いたり、
あるいはこのテーマに関する文献を読んだりすれば、
基本的に三つ挙がるはずだ。

「自信」は誰もが挙げるだろう。

リーダーは健全な自信を持ち、
周囲にもそれが伝わらなければならない。

できるという信念がなければ、なにごとも達成できないからだ。

「決断力」も欠かせない。
優柔不断ではリーダーは務まらない。

状況を評価し、決断し、前に進まなければならない。
そしてリーダーは「ビジョン」を語らなければならない。
みなが一致団結して達成しようとする目標である。

超予測者の思考スタイルを思い出し、
リーダーに求められる資質と比べてみよう。

確実なものなどひとつもないと考えていたら、
揺るぎない自信を持ち、
周囲にそれを伝播させることなどできるだろうか。

時間をかけて複雑かつ自己批判的に思考をする人間が
決断力を持てるか、そして「考えすぎて身動きがとれない」
状態に陥るのを避けられるだろうか。

新しい情報が出てくると意見を変え、
自分は間違っていたと認めるようでは、
断固たる決意を持って行動するなど不可能ではないか。
なにより超予測力の根底にあるのは謙虚さだ。

現実はあまりに複雑で、それを理解するにはわれわれの能力に
は限界があり失敗は避けられないという意識である。

ウィンストン・チャーチルやスティーブ・ジョブズのような
傑出したリーダーが「謙虚」と評されたことなどあっただろうか。

ガンジーはあるかもしれないが、
あと一人か二人思い浮かべようとしても難しい。

またスーパーチームの特徴を思い浮かべてみよう。

有効なチームのあり方について説明は受けたものの、
ヒエラルキー、ルール、正式なリーダーなど
何も押しつけられなかった。

このようなちっぼけなアナキスト的集団は、
超予測者らが好む徹底した議論には適しているが、
一致団結して事を成すのには不向きだ。

後者に必要なのは組織力と責任者たるリーダーである。

これは重大なジレンマに思える。
リーダーは予測者であると同時にリーダーでなければならないが、
一方の成功の条件は他方での成功を阻害しかねない。

幸い、超予測者であることと傑出したリーダーであることは、
現実にはそれほど矛盾しない。

むしろ超予測者の行動モデルは、
優れたリーダーを傑出したリーダーに変え、
そして彼らの率いる組織の力量、適応力、有効性を高める。

ここでカギとなるリーダーシップ論と組織論は、
19世紀プロイセンの参謀総長が生み出し、
第二次世界大戦でドイツ軍が完成させ、
その後現代アメリカ軍の土台となり、
今日の成功企業の多くで取り入れられているものだ。

みなさんの近所の大手スーパーマーケットチェーンも
実践しているかもしれない。

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なるほどと思う面もありますが、
私は、超予測者の資質とリーダの資質は異なると思います。

それは、ビジネス界では常識と思いますが、
スペシャリスト(専門職)とマネージャの違いです。
共通点があるという言い方よりも、
異なる資質であると言った方が適切だと思います。

書評にあった
「超予測者を目指すための10の心得」の項目は以下のとおりで、
その項目に対して
ビジネスでの心得との共通性について私がコメントしてみました。

◎ ビジネスでも非常に重要、〇 重要、△ 一面で適合、
☓ ビジネスでは該当しない
と判断しましたが、皆様はどう思われますか?


△1.トリアージ(選別格付け)
  ビジネスではこちらの都合で案件を選択することはできません。
  ビジネスポートフォリオの考え方であれば、合致します。


◎2.一見手に負えない問題は、手に負えるサブ問題に分解せよ
  重要な考え方ですが、ビジネスでは常識でしょう。
  システム企画研修社の提供する解決策検討手法では、
  まず問題領域を「部分に分解」せよ、としています。


◎3.外側と内側の視点の適度なバランスを保て
  どんなにトップを行くビジネスでも
  内向き志向になったら終りです。
  その例は多数ありますね。


〇4.エビデンスに対する過少評価と過剰反応を避けよ
  エビデンスであると示されても、疑わしければ、
  安易に受け入れず徹底的に確認すべきです。


◎5.どんな問題でも自らと対立する見解を考えよ
  これも先入観で決めつけることへの警句として有効です。


〇6.問題に応じて不確実性はできるだけ細かく予測しよう
  リスクを検討すべきことはビジネスでは常識です。
  ただし抜かりから問題が起きていますね。


◎7.自信過少と自信過剰、
   慎重さと決断力の適度なバランスを見つけよう
  バランスを欠いた自信過剰と決断力で小池百合子氏は自滅しましたが、
  日本人全般の傾向からすると、自信と決断は強化されるべきです。


◎8.失敗したときは原因を検証する。ただし後知恵バイアスにはご用心
  失敗に対する原因分析・反省がなければ進歩はありません。
  授業料を無駄にしていることになります。
  日本では失敗を隠す傾向があるので改善しなければなりません。


〇9.仲間の最良の部分を引き出し、自分の最良の部分を引き出してもらおう
  本来ビジネスではこうありたいですね。


☓10.ミスをバランスよくかわして予測の自転車を乗りこなそう
  ビジネスでは「チャンスをうまく掴んで発展しよう」でしょうね。


〇11.心得を絶対視しない
  ビジネスでは、
  チェックリスト過信や形骸化は避けるように戒められています。


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