2010年4月29日木曜日

サマランチ氏逝く

オリンピックのシンボル的存在だったサマランチ氏が
4月21日、89歳で亡くなりました。
氏は国際オリンピック委員会の委員長を21年間、務められました。
こういう組織は定年制はないのかと思いましたら、
定年制はあったのです。

元は70歳が定年だったのをサマランチ氏が75歳に引き上げ、
さらに80歳まで引き上げて、そこで引退されたのだそうです。

皆様どう思われますか?
定年制は、何のためにあるのですか。
そのねらいは、組織が発展することでしょう。
そのねらいのために、組織の発展に貢献できる人にチャンスを与える
ことが、目的のはずです。

単に、多くの人にチャンスを与えることが目的ではありません。
多くの人にチャンスを与えても、
その人が適任ではなく、組織をダメにしたのでは意味がありません。

したがって、IOCの定年延長の審議のときに
「サマランチ氏が引き続き委員長をされるのが
オリンピックの発展のためによい」と
委員たちが思われたから、
定年制延長に賛成されたのでしょう。
目的思考の考え方でよい、と思われます。

――――――――――――――――――――――――――

ところが、日本でこういうことがありました。
ある法人で、
サマランチ氏よりもその組織の発展に貢献したと
周辺のだれもが認める方が
その組織の運営責任者の職から退くことになりました。

その方は72歳でした。
実は、70歳だったそのポストの定年を
その方の働きかけで72歳に引き上げていました。

そしてサマランチ氏がなさったように
もう一度定年延長をしようとされたのですが、
会長の反対で実現しませんでした。

その会長は大企業の出身者です。
大企業は目的よりも「大義」が優先します。
決まりを守ることが大事なのです。

たしかに、大企業は人材が豊富ですから、
優秀な人が引退しても次の方がおられるでしょう。

小さな組織は人材が豊富ではありません。
その組織は、その方の力で大発展をしましたが、
特殊な組織ですから、適任な後継者の獲得は困難でしょうね。
会長は、そのことを正しく認識されていたのでしょうか。

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私の会社も人材難です。
当社の一番のネックは営業です。

以前、営業担当に退職されて穴があいたときに
株主総会でそのことを報告しました。
「退職の影響で売上が落ちた」と。

そうしましたら、
大企業出身の株主から
「コンティンジェンシプラン(代替案)を用意していないのはいかん」
と言われてしまいました。

私は一瞬何を言われたか分かりませんでした。
その意味が分かったときに
「たしかに大企業ではそういうことだろうな」と思いました。

前提認識の違いに今さらながら愕然としました。
零細企業は、可能な範囲でダッシュして
うまくいけば生き延び発展する、
何か致命的な問題が発生してそれを乗り越えられなかったら
終わりになるのです。

だから零細企業の生き残りには歩留まりがあります。
その中から僅かな率で大企業に発展していくのです。

大企業はそのようなリスクがあったら大変です。
大企業と中小・零細企業は行動原理、マネジメント原理が異なります。

大企業で優秀だった方が小企業に行くと、
ほとんど役に立たない人が多いのはそのためです。

大谷正夫先生"超"プロマネ養成研修講師引退!

大谷正夫氏は、
三井造船株式会社で、海外のプラント建設に長い間従事された後、
三井造船システム技研株式会社の社長を4年間務められました。

社長になられたとき、この会社はかなり厳しい経営状態だったようです。
4年間で、社員にやる気を起こさせ、
何とか黒字体質に転換され、
これから本腰入れて優良会社に持っていこう、
というときに
「はい、ご苦労様!」となってしまいました。

私は、外からその人事を見ていて
「えーっ。本社は何を考えているの?
何を見ているのか。だれがやっても同じと思っているのか」
と憤慨しました。

その後の社長は1期2年ずつでしたが、
大谷社長の路線を強化することなく、
また、元の道に戻ってしまったようです。

改革には信念と実行力が必要です。
リスクを取らない大企業体質の方には
改革は無理ですね。

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本題に入ります。

大谷様が社長をされていたときに、
「大谷社長が、エンジニアリング業界のプロマネ手法を
自社に技術移転しておられる。夜の飲み会もお好きだ」
ということを聞きつけて
夜、大谷社長にお会いしました。

そして、
「プロマネ手法の技術移転を、業界全体に広めるために
お力を貸してください」
とお願いして実現したのが
MM式“超”プロマネ養成研修だったのです。
この研修の基本資料となっている
PMM(プロジェクトマネジメントマニュアル)は、
大谷先生自らが半分以上執筆されました。

MM式のMMは、三井造船システム技研のMと
当時の当社の社名マインドリサーチのMをとったものです。

この研修のスタートは1999年でした。
爾来、大谷先生には
「契約マネジメント」という講座をご担当いただきました。
 
当時の情報サービス業界では、
契約に対する認識は薄く、契約は営業が手続きとして担当するもので、
形式的なものだという考えが主流でした。
 
しかし、契約不備が原因のトラブルも起こり出していました。
その代表例が「内示」でした。

大谷先生は、契約問題を単なる契約書問題としてではなく、
両者の取り決め事項というとらえ方で、
プロマネも、法や契約の本質を理解したうえで
的確な対応を行うべきだという指導をされました。

そのご指導は、このような観点での契約に無関心であった
受講生に大好評で、評価アンケートで長く最高得点を獲得
されていました。

このたび、足掛け12年続いたこの研修を大幅モデルチェンジ
しました。
 現在のプロマネの対象となる案件の変化(小型・短納期化)
 への対応
 発注者と受注者の連携の強化
などがモデルチェンジの軸です。

ご関心ある方は、以下のURLでご覧ください。

http://www.newspt.co.jp/data/epm/epm.html


これを期に大谷先生には、
かねてから希望されていた「ご退任」のご意向に
副わせていただくことにいたしました。

大谷先生にご指導いただいた基本理念は
いくつかの講座に埋め込みました。

大谷先生、本当にお世話になりました。
別の講座では引き続き
よろしくお願いいたします。

警杖ってご存じ?

私は、時々横須賀線の西大井の駅から帰宅します。
駅前に交番があり、その前を通ります。

その交番の前にお巡りさんが立っているのですが、
そのお巡りさんが長い棒を持っているときがあるのです。
富士登山のときに使った金剛杖(棒)のような長さです。
金剛棒は八角ですが、こちらは丸い棒です。

初めのとき、通行人を威嚇しているようで気になるので、
「それは何ですか?」と聞きました。

お巡りさんは「え?」と言ってから
「けいじょうです」と答えてくれました。
けいじょう? ああ警杖か、と分かりましたが、
そのときの質問はそれで止めました。

次の機会は、別のお巡りさんでしたが、
警杖を自分の前に立てて両手を重ねて上端に置き、
そこに体重を掛けて
あたりを睥睨しているのです。

駅前の交番で示威行為をする必要性も感じられないので、
「どうして警杖を使っているのですか?」と聞いてみました。
そうすると、「いやこちらの警棒でもいいのです」と腰を指します。

太めのお巡りさんでしたが、体重を杖に懸けて楽そうなので、
「杖は楽でしょうね」と言うと、
「いや、こうやっていると手が痛くなるのです」
と赤くなっている掌を広げて見せてくれました。

話が全然かみ合いません。
手が痛くなるなら使わなければいいのに、
警棒でもよいのに、勝手に警杖を使っていて、
「いや手が痛くなる」はないでしょう。

第一、「なぜ警杖を使うのか」
という質問には全く答えずにはぐらかされています。
やはり後ろめたいことがあるので、答えなかったのでしょう。

想定では、警杖を持って偉そうに立っていたかったのでは
ないのでしょうかね。
今度また、もう一歩踏み込んで聞いてみようと思いました。
ただの意地悪爺さんですね。

早速その機会がやってきました。
今度は、東急線の戸越公園駅の近くの交番です。

警杖は使っていませんでしたが、聞いてみました。
「警杖を使うことはないのですか?」
「ありますよ。中に置いてあります」という答えでした。

でも使っている様子はありません。
そこで聞いてみました。
「どうして警杖は必要なのですか?」と。

そうしたら、「交番に拳銃を奪りにくるのがいますからね」。
だから示威も必要だ、という主張のようでした。

そのお巡りさんは物分かりがよさそうな人だったので、
「あちらの交番でこうやって立っているお巡りさんがいますよ。
なぜですかね」と聞いてみました。

詳細のやり取りは省略しますが、
彼の結論は「偉そうにしたいのでしょう」ということでした。
やはりそうか、と納得でした。

少し酔っていたこともあって、
「あなたはしっかりしていらっしゃる。警部補になれますよ」
と余計なことを言ってしまいました。

しかし、通行人に印象の悪い道具を使うことについて
はっきりした使用基準がなく、
現場の判断に任せていてよいのでしょうかね。

使用「目的」があいまいなのです。

配偶者殺人、殺人事件の状況

ある友人から教えてもらいました。
殺人では、配偶者に殺されるのが一番多いのだと。
えーっ!ですね。
親子など含めた家族全般ではないのか?と聞き返しましたが、
配偶者なのだそうです。

これは怖い話です。
そう言えば、保険金殺人など、時々新聞を賑わせています。
可愛さ余って憎さ百倍と言います。

そこでデータを調べてみました。
警察庁が出している犯罪白書「平成18年の犯罪情勢」です。
平成19年版も出ているようです。

それによると、こういうことでした。

平成18年の全殺人事件認知件数  1,309件
 被疑者と被害者の関係(以下は検挙件数)
  被害者が親   154件
      子    143件
      配偶者  179件
      兄弟    38件
      知人友人 290件
      職場関係  71件
      その他  114件
      面識なし 132件

私は知りませんでしたが、
殺人事件件数には、既遂だけでなく、未遂や
殺人を意図して準備をする殺人予備罪も含まれているようです。

このデータによると、配偶者は、親族の中ではトップということです。
確認しないで「配偶者がトップである」とお伝えしたら
間違ったことをお伝えすることになるところでした。

通り魔や強盗のような「面識なし」はそんなに多くないのですね。

殺人事件はこのくらいしかないから
ニュースになるのでしょう。
 
配偶者殺人の被害者の年代別のデータも出ていましたが、
64歳までが130人で減少傾向なのに、
65歳以上は49人で、増加ないしは横ばい傾向でした。
嘱託殺人などの気の毒なケースも多いのではないでしょうか。

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なお、日本の殺人事件率は先進国の中では、
アイルランドと並んで最も低いのだそうです
(Wikipediaによる)。

高い準で並べると(ICPO 2002年の調査)
 人口10万人当たりの発生件数
  ロシア    22.21    
  イギリス   18.51
  スイス    18.45
  アメリカ    5.61
  イタリア    3.75
  フランス    3.64
  オーストラリア 3.62
  ドイツ     3.08
  スウェーデン  1.87
  日本      1.10
イギリスやアメリカの順位が不思議ですね。

このWikipediaにこんなことが書いてありました。

「日本の殺人認知件数は毎年減少傾向にあり、
1958年(昭和33年)には2,683件だったが、
2009年には戦後最低の1,097件を記録した。
(上野注:社会が安定してきたのですね)」

「他の先進国に比べて低いとされる日本の殺人発生率は、
殺人発生率の増加を恐れる警察が、不審な死であっても
解剖に回さず自殺や事故にしたがるため、
殺人が見逃された結果であるという説がある」

たしかに、鳥取県で起きた元スナック従業員女性による
睡眠導入剤を使用した連続殺人事件は
発生時には事故死と認定されていました。

その中には、浅い川で溺れて死んでいたケースもありました。
これなどは、どう見てもおかしいですね。
前掲のような疑いが持たれても仕方のない面がありそうです。

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当社システム企画研修株式会社で実施している研修のモチーフの一つに
「問題とは(何か)」というのがあります。

答えは「目標または期待と現状の差」です。
ちなみに、この設問に対して正解を出す方は1割以下です。
分かっているようで的確に理解している方は多くないのです。

この設問での指導は、以下の内容です。

「目標がなければ問題はないのです。
目標をはっきりさせることが問題解決のスタートです。
目標を明確にしましょう。
問題意識を持ちなさいとよく言いますが、
正しくは目標意識を持ちなさい、です。
問題意識は後ろ向きです。
問題意識は必ずしも前向きの改善に結び付きません。
下手をすると「これはいかん。それはいかん」となって、
評論家になり、挙げ句の果ては「不平不満居士」となって
最後は窓際族です。
前向きの目標意識に切り替えましょう」

――――――――――――――――――――――――――

少し脱線しました。
配偶者殺人はなぜ多いのか、に話を戻します。

「問題とは」のフレームで考えると、
相手に対する不満がある(問題意識がある)ということは、
相手に対する「こうあってほしい」という期待があるからです。

人間は個性の塊ですから、
自分の期待するようになるわけがないのです。
期待や要求が大きければ、不満も大きくなります。
毎日一緒にいるのですから、
そういう「期待・要求→不満→期待・要求→不満」という循環に入ると、
どんどんエスカレートしてしまうのです。

私は、先程の研修のときには、
「夫婦関係では、目標を下げなさい。
そうすれば問題はなくなります」
と申しあげています。
 
そのようなコントロールの効かない方が破局に至るのでしょうね。

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先日ある会で、佐々木毅氏(元東大学長)の講演を聞きました。
その中で氏はこういうことを言われました。
 
「評価には事実に基づく評価と、期待に対する評価がある。
事実は変えられないので、評価は限定される。
これからのことは不確定であり、期待に基づく評価が自由にできる」

これは、前回の衆議院選挙にからめて言われたのです。

自民党の状況は事実として見えて、これは駄目だと引導を渡した。
しかし民主党については、これからということで期待ができた。
それで多くの国民が民主党に期待票として投票したのである。

ところが段々に事実が出てくると、
国民も事実に基づく評価ができるようになった。
期待のベールが剥がれて支持率の急降下ということになったのだ、
というのです。(後半は私の解釈が混じっています)

これも「目標と現状の差」モデルで説明できますね。

2010年4月28日水曜日

毒入り餃子事件被疑者逮捕!

ご承知のように、2008年2月に発生した中国産の
毒ギョーザ事件の被疑者が3月に逮捕されました。

中国側は、毒は中国で入れられたものではない、
と言い張っていました。
それでも捜査を継続していたのは、
どういう考え方に基づくのでしょう?
日本人の思考法では理解できません。

いずれにしても、中国で被疑者が逮捕されたことは 
日本人にとっては「それ見ろ」という気持ちであると同時に
中国の警察も偉いな、という感想でしょう。

ところで、事件発生以来、日本では中国の食品は買われなく
なりました。
消費者が原産地を確認するようになったのです。

我が家でも、
中国産のラッキョウ(家内の好物)とフルーツ缶詰(私の好物)
を買わなくなりました。

このように、中国の食品に対して日本人が防衛していて、
中国人は気にしていないのかと思っていました。

ところが(またもや)日曜朝のテレビでは、
中国の人たちも残留農薬等を大いに気にしていました。
そして、日本の食品は安全だと高い評価を得ていました。

日本の工業品は中国製に取って代わられようとしていますが、
「中国に売れるのは、次は食品か!」と思いました
(何か順序が逆な感じがします)。

現に、中国進出に力を入れている食品提供者も多いようです。
当社の近くにあるお弁当屋さん「ほっともっと」も、
すでに中国に13店の進出計画があるようです。

ところが、
当社の社員が恩恵に与っている近所のほっともっと店が
閉店予定になっています。
社員たちは「どうしよう」と言っています。

不採算店は閉めて
有望な市場に経営資源を集中するということなのでしょう。
仕方のないことですね。

このテーマの結びです。
私が日本の産業復興の柱7Kの一つとして挙げたときの
米(日本食)は、
美味しくヘルシーという面が売りだと思っていました。

それが、
中国や新興国には
安全が強い売りになるということが分かりました。

禁酒法再来?

何とWHO(世界保健機構)は、
5月の総会でアルコールの規制案を採択するのだそうです。

何の目的・ねらいで、飲酒を止めるのでしょうか。

タバコは、喫煙者の周囲に悪影響を与える(受動喫煙)という点で、
「ガンになるのは本人の勝手でしょう!」ではすまない面があります。

アルコールには、
飲酒を規制しなければならないほどの害があるのでしょうか。

飲酒規制提唱者の主張はこうなっているようです。

  アルコールの害は世界で年間250万人の死因に関係している。
  本人の健康だけでなく、交通事故や暴力、自殺などにも注目、
  とくに若者への悪影響を心配し、
  広告や販売のあり方を改めるべきだとして、
  コストを下回るような安売りや飲み放題を
  禁止または制限するよう求めている。
  (asahi.com)

250万人という数字は、世界の餓死者1500万人の6分の1です。
世界人口の0.04%でしかありません。

飲酒運転を引き起こすのは、飲酒運転を罰すればよいことです。
未成年者の飲酒は許されていません。
それらが完全に守られていないから元を断とう、
というのは早計ではないでしょうか。

アルコールにはプラスの効用がたくさんあります。
コミュニケーションが円滑になる、とか
気分転換ができる、とか
大胆なことができてしまう、とか。
我が夫婦はアルコールのおかげで結婚したようなものです。

物事の判断は、
プラス面・マイナス面双方のバランスを評価することが基本です。
プラスかマイナスしかないという単純なことは、
判断問題の対象にならないでしょう。

WHOの指導層は、アルコールの効用を知らない人達なので
しょうかね。
WHOの委員達が、そんな変人達の主張に加担するのは
なぜなのでしょうか。

悪名高い米国の禁酒法だって失敗しているのです。

 
この案件は、私がこのメルマガ上でしつこくご紹介した
「公園に犬を入れないでください」と同じ論理です。

公園に犬が入ったらいけないのではなく、
人間に噛み付いたり、脅威を与えたり、
糞尿を放置することがいけないのです。

したがって、
「犬を放さないでください」
「糞尿の始末をしてください」
という指導が筋です。
犬と一緒に公園を散歩したいというプラス面の効用があるからです。

その指導が守られないから、あるいは守られそうにないから
入れないようにしてしまえ、
というのは極めて安易な対応です。

飲酒の規制も同じことです。
禁煙がほぼ定着してきたので、
次の標的をアルコールにしたのではないでしょうか。

2010年4月16日金曜日

トヨタ頑張れ!(続き)

 先月号の「トヨタの反省すべき点」をご覧になった
 名古屋在住の読者から、3月1日の当メルマガ発行当日に、
 以下のご意見をいただきました。
 
 ①トヨタのJITは納入者に負担を押し付ける
 とんでもない仕組みである。

 高速道路のトヨタインターの駐車場は、
 トヨタへの納入時間を待つトラックでいっぱいである。
 トヨタのJITは、
 あのソニーでさえ、真似しようとしたが
 (そこまでの「力」がなく)できなかった仕組みである。

 ②トヨタ主催で、お客様(ディーラ)をお招きして
 ゴルフコンペを実施したときのこと。

 若い社員たちがゴルフ場の入り口で整列している。
 お客様が来られても、この人たちは頭を下げない。
 ところが、自社の「偉い」人たちが来ると一斉に頭を下げていた。

 ②は事実とすれば、
 前号私の主張「トヨタが偉いという傲慢意識の表れ」
 の一つの証拠です。

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 ここでの改善方向は、
 私の年来の主張「目的・ねらいを明らかにする」
 の観点からするとこうなります。
 
 「何のためにそこに並ぶのか(並ぶは何かの手段です)」
 ですが、「参加者を出迎える」が直接目的です。
 
 しかし、これで終わりにすると、
 挙げられたようなまずいことが起きるのです。

 「出迎えるのは何のためか(そのねらいは何か)」
 ということをさらに追求しなければなりません。

 そうすると、「参加者に気持ちよく、嬉しく思っていただき」
 「ゴルフの会の目的(参加者との親睦を深める)を達成する」ことが
 最終目的(ねらい)だということになるでしょう。

 そうなれば、だれに対してどのような出迎え方をするか、
 ということが方向づけされ、
 お客様を放っておいて「偉い」さんにぺこぺこする、
 などということにはならないはずです。

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 ①は、自社の在庫をなくすために、
 相手に自分の都合のよいときに納品を要求するものです。

 確かに、「どれだけの物を買います」という予定が分かることは
 納品者にとってのメリットです。
 
 しかし、納品時間まで指定されると、
 それに遅れないようにするには渋滞・事故等のリスクを考えて
 余裕を見る必要があります。
 
 これは納品側の負担となります。
 悪く言えば、納品側への在庫負担しわ寄せの仕組みなのです。
 
 しかし、この「しわ寄せ」は、
 小売りと流通卸業の間では当たり前のことになっていて、
 業界全体の商慣行として確立してしまっています。

 流通業界での「しわ寄せ」といえば、
 「小口配送」があります。

 「小口配送」は、小売りへの配送をケース単位
 (複数個の商品を運搬等のためにまとめて収納している箱)
 ではなく、
 ケースの中に入っている単品の「バラ」の単位で行うことです。

 多品種少量生産・消費の今でこそ当然の仕組みですが、
 この要求を始めたのは約30年前のイトーヨーカドーです。

 当時の卸売業では、
 「小口」の取り扱いに対応する倉庫の仕組みも
 配送の仕組みもありません。
 従来のケースを取り扱う仕組みの例外処理として、
 たとえば倉庫の片隅のスペースで対応していました。
 
 卸売業には大変な負担がかかり、
 このコストは、
 イトーヨーカドーから十分な上乗せはもらえませんでしたから、
 間接的にイトーヨーカドー以外のお客様の負担となっていました。
 
 現に、その負担はできないと言って
 イトーヨーカドーとの取引を断った大手卸売業もいました。
 
 そのときに、食品卸売業界に偉人が登場します。
 ㈱菱食の廣田正氏(当時専務、のち社長)です。

 私が感服した、廣田氏の名言は多数あるのですが、
 ここに関係するものは以下の二つです。

 「私は、大事な案件に遭遇すると、
 何週間も四六時中そのことを考えている。
 寝ても覚めても考えている。
 そうするとあるときフッと答が出てくる」

 「投資をしなければ新技術はものにできない。
 高いお金を払うから、
 無駄にしてはいけないとみんな一所懸命やるのだ」
 
 話を戻します。

 廣田氏は、
 「世の中は多品種少量生産・消費の時代になる。
 その時代の要請に対応するには、
 例外扱いではなく、基本の処理として対応できるシステムが必要である」
 と考えられて、

 厳しい経営環境の中で大変な投資をされ、
 独自の小口配送のシステムを作り上げられました。
 

 そのシステムは、流通業界全体として発展してきています。

 その意味では、イトーヨーカドーは、
 当時の流通業界では自己中心思考の「悪者」扱いされましたが、
 結果的には社会の発展に貢献したことになります。
 
 ちなみに、イトーヨーカドーとの取引を断った大手卸売業は、
 その後、時代の要請に対応できずに没落してしまいました。

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 そう見ると問題は、トヨタ側に「共存共栄でいきましょう」
 という意識があって運営されているかどうかでしょう。
 
 たとえば、一方的な仕様や納期の変更といったことはしないで、
 相手のことも配慮した対応を行う、とかです。
 その意識があれば、納入者は不満を言わないでしょうし、
 そのシステムが業界の進歩につながるのです。

 現状はどうなのでしょうか。
 豊田章男社長のお考えは、僭越な言い方ですが正当です。
 この精神が現場まで浸透するかどうかです。
 
 「慢心」に毒された現場はなかなか変わりません。
 社長のリーダシップ、組織のガバナンスがどこまで効くか、
 経営学者やコンサルタントの大きな関心事でしょう。

日本の針路の舵取り

日曜朝のテレビ番組で、
 政党各派の基本政策を評価するのに、
 興味深い方式をとっていました。
 
 今風の言葉で言えば、政策の「見える化」です。
 基本政策を、縦横2軸・4象限で見るのです。

 縦軸は、高福祉・重税と低福祉・軽税、
 横軸は、経済成長重視と財政再建重視です。

 これはある面での見識を示しているとらえ方です。
 「高福祉なら重税しかないですよ」と二つがセットになっていて、
 「高福祉・軽税などという選択肢はありません」と、
 国民の甘い期待とそれに迎合する政策のまやかし
 を否定していることです。

 その意味で縦軸は納得がいきますが、
 横軸は納得しにくい面があります。

 当日の座談会の出席者たちも、
 自分たちの政策をどこにプロットすべきかを迷っていました。
 経済成長の結果で財政再建を行うという選択肢だってあるからです。

 過去の自民党の基本政策は
 「経済成長の結果で財政再建を行う」でした。
 
 しかし、経済成長を期待する対象が
 「伝統的産業やコンクリートと言われるハコ物」でした。
 これが時代の変化に対応できず財政破綻を招いたのです。

 もし、短期的に財政再建を優先させるなら、
 日本の将来のためになる投資も絞ることになります。
 そうすれば、経済は縮小し税収は減ることになります。

 縮小均衡でバランスが保たれるようになるには、
 サッチャー首相時代のイギリスのように、
 10年単位の長い時間がかかるでしょう。

 下手をすれば、
 悪循環でいつになっても財政再建は実現しないでしょう。

 やはり、
 まずは経済成長を実現させるための施策を優先させるべきでしょう。

 問題は、経済成長の基をどこに期待するかです。
 私は、当メルマガ今年の新年号で,
 経済成長のネタを7Kと言いました。

  1.環境維持技術
  2.工作(製造技術)
  3.高齢化社会
  4.工芸
  5.景観
  6.米(日本食)
  7.コミュニティ
 
 いずれにしても、
 その重点対象事業を明確にして国の事業計画を立てることです。

 どの領域でいくらGDPを稼ぐのか、
 その結果いくらの税収増となるのか、
 そうすると、いくら負債(国債)償還ができるのか、
 それを見通して税の体系はどうすべきか、です。

 困難に直面した企業はみなやっていることです。
 税金は取りやすいところから取ろう、
 などというご都合・迎合主義は日本を滅ぼします。

 また、基本方針の無い小手先の「事業仕分け」ではどうにもなりません。
 日本の科学技術の振興という観点さえないのですから。

 是非、これから始まる各党のマニフェスト検討の場で
 真剣に検討してほしいものです。

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 その際の検討指針は、
 「日本はどういう国を目指すのか」、
 言い換えれば「何のための施策を検討するのか」です。

 それはこういうことです。
 「国民が生きがいを感じられる」
 「将来に不安が無い・希望を持てる」
 ということが究極の「ねらい」で、

 そのためには
 「生きがいの感じられる働き場がある」
 「自分や国の将来が見える」
 を実現しなければなりません。
 これが国の事業計画の「達成目的」でしょう。

 「年を取ったら、若い世代の世話になるしかない」
 ということでは、生きがいが実現しませんし、
 若い世代の負担が大きくなるばかりです。

 その意味で定年制の延長は大変よいことですし、
 もっと国としてそれを支援する制度を用意するべきでしょう。
 
 医療面でも、医療費の負担をどうするかと考えるのではなく、
 健康を維持するための社会インフラを強化する
 制度・仕組みの強化のほうが有効です。

 私の住んでいる品川区では活発ですが、
 壮年以上向けの体操クラブなどの設置や支援がその例です。

 それには明確な見識・判断力に基づくリーダシップが必要です。
 「生きがいを感じられる」が最も有効な健康増進策でもあります。

 というように、
 知恵を出せばたくさん「日本を良くする」材料はあるはずです。

病院の改革

 やはり、日曜朝のテレビ番組で、
 北海道赤平市の市民病院のことが報じられていました。
 
 赤平市は赤平炭鉱が閉鎖されて以来、
 核となる産業が無く過疎となって高齢化が進み、
 市民は65歳以上が4分の1以上となりました。
 
 ここの市立病院は、
 炭鉱がまだ残っていたころに建てられた立派なものですが、
 最近はずっと大幅赤字です。

 何度か閉鎖の危機に見舞われながら存続してきていました。
 ここに敏腕の事務長が乗り込んで
 奮戦していることが番組の中心でした。

 この事務長は、
 診療科ごとに分散している看護師を集中してセンタ化しよう
 という対策を考えました。

 ところがそのためには、
 看護師は他の科目の知識も持たなければなりません。

 当然、現場の看護師からは、
 「すべての科の知識・技能を身に付けることはできない」
 という反発が起きました。

 「できるか、できないかではなく、
 必要なのだからどうすればよいか、と考えるべきだ。
 全部ではなく3つが担当できるようになれば前進だ」
 というのが事務長の意見でした。

 そのとおりです。
 システム企画研修㈱の提供する問題点連関図手法だとどうなるでしょうか。

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 まず、「今のままだとどうなるか」
 を問題点連関図右方展開で追求します。

 その追求結果は、
 「適切な処遇ができない」
 「進んだ診療に必要な投資ができない」などを経由して
 「医師がいなくなる」
 「患者が来なくなる」
 「看護師も辞めていく」
 
 そうすると「看護師の負荷が過重となる」
 「さらに看護師が辞めていく」
 「ますます看護師が大変になる」等々と進み、

 ついには
 「病院を閉鎖しなければならない」
 に到達してしまいます。

 「そうなりたくない」とみんなが思えば、
 「いつまでにどの程度の改善をしなければならないか」
 という改善目的設定が可能となります。

 いつまでに、
 「医師の処遇(勤務体制・給与)をこうする」
 「診療・入院設備の改善をこうする」
 「看護師の処遇をこうする」
 となります。

 その上で、その目的の実現策の検討を行います。
 「そうするにはどうしたらよいか」
 と前向きの検討が行われるのです。

 そうなれば、
 「それはできない」という意見は出ません。

 事務長だけが孤軍奮闘するのではなく、
 全員参加型で検討を行えば、
 どんどん改善策が見つかります。
 日ごろの問題意識が前向きのエネルギとなって爆発するのです。
 
 病院だけでなく、
 行き詰まった組織の改善にはこのような方法がぴったりです。
 問題点連関図の出番は、今の日本でまだまだたくさんありそうです。
 

子供手当ての妥当性

 賛否両論あった子供手当ての支給が間もなく始まります。

 「子供手当ては何のために出すのか」
 「子供手当てがもらえるから子供を作ろうという人がいるのだろうか」
 と思っていましたら、

 「日本を活性化するために必要な子供を育てる費用を国民全員が負担する」
 ということが目的だと
 この制度の推進者は主張しています。
 だから裕福な人にも出すのだ、ということが分かりました。

 なるほど、これはこれで一理ありますが、
 それでよいのでしょうか。

 年間5兆円以上を使うなら、
 日本の将来のためになることで優先度の高いことが
 他にあるのではないでしょうか。

 全体像を描かずに、
 一つずつ「これは良いことだ」「それは良いことだ」
 と言っていたらどうなりますか。

 歳入は増えず、歳出のみが膨らんで国は破綻です。
 「日本の針路の舵取り」で述べた事業計画が先決なのです。


 ひょっとして、この子供手当てを「契機」にして
 日本経済が活性化して「景気」がよくなったら
 推進者の読みの鋭さに脱帽です。
 

日本のお家芸「根回し」の勝ち!

 ご承知のように、クロマグロ禁輸案は
 ワシントン条約締約国会議3月18日の委員会で
 大差で否決されました。
 久々に嬉しいニュースでした。
 
 日本はその前日の17日に
 50か国300人近い参加者を集めて
 寿司を振る舞う大掛かりなパーティを開催し、
 禁輸反対を訴えました。

 この場で、
 参加者たちは自分たちの意見を確認しあったようです。

 国際会議で日本がこのように振る舞うことは
 これまであまりなかったのではないでしょうか。
 少なくとも私は知りません。

 でも考えてみれば、
 「根回し」は日本のお家芸中のお家芸です。
 なぜこれまであまりしなかったのでしょうね。
 英語が得意ではないからでしょうか。
 
 この成功に味を占めて
 国際会議でこの得意技を連発することを期待したいものです。
 お金で動くアメリカのロビイストたちに負けないように、です。

「公園に犬を入れないでください?」(続き)

 先日、私の住居の隣の区・大田区にある本門寺
 の近くの梅園に梅を見に行きました。
 
 残念ながら、まだ少し早かったようでした。
 その後の日曜日は2回続けて天候不良でしたから、
 今年の梅は日曜日に恵まれずに終わってしまいました。

 その日、本門寺の近くの公園の入り口に、
 以下のような丁寧な看板が立っているのを見つけました。
 素晴らしいですね。
 このガイドは完璧です。

 単純に「犬を入れないでください」などとは言っていません。
 このガイドに反している入園者はいませんでした。

 単純に「犬を入れないでください」という掲示は、
 何も考えない担当官の責任逃れの対応でしかないことが証明されました。
 
 ―――――――――――――――――――――――――――――
      *愛犬家の皆様へ*
 すべての方が気持ちよく公園をご利用いただくため、
 犬を連れて公園に入るときは、次のことをお守りください。
 1.犬は引き綱等でつなぎ、絶対に放し飼いにしないこと。
 2.犬のフンは飼い主が始末し持ち帰ること。
 3.犬の鳴き声で近隣の方に迷惑をかけないこと。
 4.他の利用者に迷惑な行為をさせないこと。

 (根拠法令等)
 ○動物の愛護及び管理に関する法律
 第5条(動物の所有者又は占有者の責務等)
 ①(上野注、規定内容3行分の表示あり)

 ○犬及びねこの飼養及び保管に関する基準(総理府告示第28号)
 第3 危害防止
   1 放し飼い防止 (規定内容2行付き)
   2 運動上の留意事項 (規定内容4行付き)
 第4 生活環境の保全
   1 損壊等の防止 (規定内容3行付き)

 ○東京都動物の保護及び管理に関する条例
 第7条(動物飼養の基本事項)
  四 公共の場所並びに他人の土地及び物件を不潔にし、
   又は損壊させないこと
  五 異常な鳴き声、体臭、羽毛等により人に迷惑をかけないこと
 
 第8条(犬の飼い主の遵守事項)
  犬の飼い主は、次の各号に掲げる事項を遵守しなければならない。
  一 犬を逸走させないため、犬を、さく・おりその他の囲いの中で飼養し、
   又は人の生命若しくは身体に危害を加えるおそれのない場所において、
   固定した物に綱若しくは鎖で確実につないで飼養すること。
―――――――――――――――――――――――――――――
 この大田区も、
 当メルマガ今年の新年号「なぜ緑をやたらに切ってしまうのか」のように、
 無茶な公園の樹木の伐採をするのですから、
 担当の判断でずいぶん対応法が変わる、ということです。

 それはそうでしょうね。
 やはり一つずつの案件で、
 担当官が「これは何のためか」と考えていただくしかありません。

(蛇足)参院選の予想

 どの政党を支持しますか、という世論調査で、
 「支持政党はない」という無党派層が50%を超えました。
 50%を超えたのは12年ぶりだそうです。

 自民党に愛想を尽かし、
 お灸をすえるつもりで投票した民主党もでたらめで、
 これもいかんとがっくり来ている、
 というのが大方の無党派層の考えです。

 政党には支持基盤がありますから、
 その組織を通じての投票誘導があります。
 その人たちは、どこかの政党支持という回答をしているでしょう。

 ですが、これらに関係ない人、
 または関係したくない人が50%以上いるということです。

 参議院には比例区があります。
 無党派層は、比例区では党ではなく個人(常識人・有名人)を選ぶでしょう。
 そういう人を多数擁した党が有利です。
 
 素人予想家の私としては以下のように、
 投票結果を大胆に予想してみます。
 
 民主党がどうなるかに焦点を合わせるのと、
 自民党は分裂の可能性もあり、どうなるか不透明なので
 「自民党・その他」として一括りにしてみました。


 前提:①現時点の政党支持率を前提とする。
    ②政党支持派の投票率は8割、無党派層の投票率は5割とみる。
 
 これで全体の投票率は65%で、参議院選挙単独では最高の投票率です。
 無党派層の投票率が下がると当然ながら全体の投票率が下がり、
 民主党の当選者数は増えます。

 選挙区投票 改選数73人に対する予想当選者数(詳細算出方法省略)
   民主党  37人 
   自民党・その他の党 36人 
 ・民主党は、組織で戦って支持率(全体の20%強)以上に獲得する。
 ・自民党・その他の党は、
  無党派層の少数党への投票は死に玉となる場合が多く伸び悩む。
  
 比例区投票 改選数48人に対する予想当選者数
   民主党       19人 
   自民党・その他の党 29人
 ・無党派層の支持は、現在の支持率に比例して当選者数になる、とみる。

 合計 
   民主党  56人 
   自民党・その他の党 65人
 ・民主党は、改選議席数53人は上回るが、
  非改選62人と合わせて115人で、過半数121に到達しない。