2012年5月29日火曜日

「人はなぜ騙すのか」 これは面白い!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
「騙し」の定義・本質を知っていただく。
「騙す」ことの動物本能的意義を知っていただく。
「騙し」が昔話・寓話ネタとして多いことを知っていただく。

ねらい:
楽しい「騙し」の昔話を読んでいただく。
「騙し」に関心を深めて生活していただく。
「騙し」のテクニックに上達していただくことは
期待いたしませんが?
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注:
以下の文章では、デアル調は著書からの引用で、
デスマス調は私の意見です。
1字下げとかの表示の区別ができないのです。

2012年2月に出版された
「人はなぜ騙すのか」(山本幸司著)を読みました。
久々に楽しい本でした。

こういう研究をしておられる方もあるのだ、と感心しました。

古今東西の「騙し」の寓話・事例を、
その必然性等を含めて解説されています。
これが実に興味深いのです。
「なるほどそういうことか」と感心することばかりです。

ですが、まず「騙し」の定義から入りましょう。
R。バーンとA.ホワイテンは
動物の騙し行動について以下のように規定しているそうです。
人間の場合も同じでいけますね。

1.騙している個体の行動は、
その個体が通常行う行動の範囲の一部でなければならない。
騙しは別の何かと間違えられるはずの事柄または行動であり、
その正常な用法は十分受け入れられるものでなければならない。
なぜなら信じられるのは、
いかにも日頃起こりそうな出来事に見せかけられた
時に限られるからである。

2.騙しはたまに用いられるのでなければならない。
あまりしょっちゅう使われたら、
他の動物は騙しに気がつくようになり
注意を払わなくなるだろう。

3.騙し行動は、
他の個体が通常のやり方で解釈することによって
誤解しそうなやり方で行われなくてはならない。

4.騙し行動は、
騙す者がそれによって何か得をするのでなければならない。、

本書では、まず最高の「騙し」話をご披露されています。
それは「馬喰八十八」です。

この話は、岩手県遠野に伝わる昔話で
佐々木喜善氏が著した「聴耳草子」に載っているそうです。
本書では、A5版10ページに亘る全文を掲載しています。

そのあらすじは以下のとおりです。

馬喰の八十八は痩せ馬1疋しか持っていないが、
となりの長者どんは48疋も立派な馬を持っている。

その八十八が、長者どんを次から次と騙して
最後は長者どんに成り代わってその嬶ももらってしまう。

その間に、雨宿りをした家の旦那、その奥さんの間男、
茶屋の客数人、長者どんの下男多数、牛方などを
豪快に騙している。

著者の山本氏も書いておられるように、
その過程で何人もの人間や馬を殺してしまう
残酷な面も持っています。

そこで「なぜ騙すのか」(騙す目的は何か)という本題です。
こういうことのようです。

騙しは人間(前掲の動物も)が厳しい環境で
生きていくため、
あるいは自分に有利な状況を実現するために
必要な智恵である。

馬喰は、馬や牛の品定めをして値決めをする仕事です。
甘くはありません。
ある程度騙すこともしなければ生きていけないでしょう。

因みに、現在のシステム企画研修株式会社の所在地は、
馬喰町のすぐ近くです。
JR馬喰町から通勤している社員もおります。

この町名または駅名の読み方をご存じですか。
ばくろうちょうではなく、ばくろちょうなのです。
なぜそうなのか、どうしてこのあたりを馬喰町というのか
まだ調べていません。

しかし騙すことは、
他者の心理状態を読まなければならないので、
極めて高度な知的活動である。

かの柳田國男氏も、「騙し」の知性の高度性を評価している
のだそうです。

厳しい環境にいる者ほど、騙す能力が高くなる。
安住社会にいる人間は騙す能力も退化する。

それで、多くの日本人は騙す能力は強くないのでしょう。
国際社会では、
特に外交ではうまく立ち回っているとは言えませんね。
こういうことも書かれています。

他者に感情移入して他者の心を読み取ることを前提にして、
「騙し」と他人を愛する心・愛他主義と表裏一体の関係にある。

なるほど、そうなのですか。
「騙しは良いことではない」
という価値基準は一般的です。
しかしその必要性も認められるということから、
次のようなことになっている、とのことです。

多くの倫理や哲学は
内部社会の成員同士については
「狡智」(騙しの一部) を禁じる一方で
外部社会の人間に対して狡智を用いることは認める
という 二重基準を採用することとなるのである。

なるほど、そうなのですね。
一般社会では、
せいぜいのところ狡智の存在が是認されるのは
政治・外交・戦争、そして商業といった領域に限られてしまう。

騙しに関連する言葉が多く挙げられています。

機知、機転、臨機応変
狡智、智謀、詐略、策略、君子豹変、
欺瞞、悪だくみ、詐欺
抜け目ない、はしっこい、
狡い、ずる賢い、悪智恵、奸智

善悪・是非の判断は紙一重だということが分かります。

山本氏は、日本だけでなく、
世界の騙し話を研究し紹介しておられます。

狼少年のような騙しを諌める教訓的なものも
中にはありますが、
多くは馬喰八十八のように
「うまくいった」というストーリのようです。

皆様もご存じでしょうが、
「古屋の洩り」は、厳しい面はなく、
ただ笑える、うまくいった騙し話です。

「そういううまい話があるといいな」という大衆の心が
そのような「昔話」を生きながらえさせているのでしょう。

私は、山本氏の結論は以下の記述だと受取りました。

狡智を否定的に位置づける倫理観は、
原始の人間社会には存在せず、
それが社会に定着するまでには、
一定の時間が必要だった。

ギリシャ哲学でいえば、プラトンの時代
中国哲学でいえば、行使学派の時代が、
この種の倫理観が社会的に優勢となった時期だと想定される。

しかし、その結果、
人類は実践的で現実に対応する知性の働きを軽視することと
なったのだとすれば、失ったものは小さくないように思う。

一考に値するご意見ではないでしょうか。

蛇足:
本書では、重要な部分に狡智という言葉が
かなり使われています。
私の推定では、
山本氏はもともとは「騙し」を主テーマにしたのではなく、
「狡智」が主テーマだったのではないかと思われます。

出版社側が、狡智という言葉は一般受けしないので、
「騙し」という言葉を書名にしたのではないでしょうか。

2012年5月26日土曜日

スカイツリーのエレベータ休止、どう思いますか

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
ものごとの判断をする時の基本姿勢
のあり方について考えていただく。

ねらい:
日本の人たちが、自分たちの保身重視でなく、
お客様第一で考えるようにしていただくことを
希望します。
あるいは、ものごとの一面で判断するのではなく、
裏の面も考えて判断するようになっていただく
ことを希望します。


前宣伝たっぷりのあと、
5月22日に東京スカイツリーがオープンしました。

なんと間の悪いことに、当日は悪天候でした。

午後からは風も強くなり、
夕方には風速12―13メートルとなりました。

午後5時40分過ぎ、スカイツリーの運営責任者は、
350メートルの天望デッキから
450メートルの天望回廊への
エレベータの運航を停止しました。

楽しみにして遠くから来ていた、
あるいは苦労してチケットを入手した来場者は
大落胆しました。

実は、このエレベータは
風速25メートルで自動停止するように
設計されているのです。
そしてタワーは設計上、
40メートルに耐えられるようになっているそうです。

それなのに、
12―13メートルの風で運転中止しました。

運営責任者は、
「初日で万一のことがあっては」
というコメントをしていました。

皆さんはこれについてどう思われますか?

慎重に安全側で運転するということは
いいことのようですが、はたしてそうでしょうか。

原発事故以来、
科学に対する不信が蔓延していて、
万一何かあったときの責任追及を
恐れての判断でしょう。

現に、東京スカイツリーの公式発表ではこう言っています。
「エレベータの停止には一定の基準があるが、
具体的には申し上げられない」

「25メートルで自動停止の機能があるのに、
なぜその半分の状態で停止するのか」
という追求を恐れてのことでしょう。

因みに、この「公式発表」を報道している朝日新聞は、
25メートル自動停止の機能を報道していません。
取材不足なのか、遠慮かいずれにしても
良くないですね。


いずれにしても、お客様のことを考えないで、
自分たちの保身を重視した判断で
私は、そんな考えは許せないと思います。

その責任の一端はマスコミにもあります。
何か事が起きると、やいのやいのと追及します。
責任者たちは、そのことが頭にあるので、
なおさら慎重になってしまいます。

そのような後ろ向きの判断が日本中に蔓延したら
日本はどんどん後退していきます。

以前、このブログで、
私の地元の蘇峰公園のことをご報告しました。

公園を管理している大田区役所の担当が、
近所からの「落葉が飛んでくる」という身勝手なクレームで
公園の立派な樹木を切り倒したり、
大幅枝切りをしたのです。

私は、
「緑の環境を近隣に提供しているというメリットも
あるのだから、近隣のエゴの言いなりになるな」と
大田区役所に注文しました。

「クレームを恐れて」という判断を優先する姿勢は
あらためてほしいと思います。


責任者は、もっと自分たちのしていることに
自信を持つべきではないでしょうか。

日本人と中国人・アングロサクソン民族の違い

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
日本人と中国人・アングロサクソン民族の違いを
多方面から知っていただく。
日本人の特性を再認識していただく。

ねらい:
今後、中国人・アングロサクソン民族と接する際の
参考にしていただく。
世界の民族・文化に対する理解力を高めていただく。
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先日、ある研究会で
日立製作所役員OBの久野勝邦さんの
「日本文化の特徴(日本人の美点と弱点)
という講演を聞きました。

久野さんは技術屋さんなのですが、
現役時代に30カ国に150回以上出かけたそうです。
その過程で、日本と各国の国民性や文化の違いに関心を持たれ
引退後に、以下のような著書をモノにされました。

 進化する世界と和魂の見直し
 アングロサクソンと日本人
 中国人と日本人
 未来を築く「人間の器量」

その時の講演で
いくつかの新鮮な知見が得られましたので
先刻ご承知の方もおられるでしょうが、
そのいくつかを順不同でご紹介します。

1.日本人の思考法には未来という概念が希薄

過去から現在が大事で、先のことは分からない、
と考えている。
古来の日本語には未来形はなかった。
(英語のWILL,SHALLに相当する助動詞がない
ということなのでしょう。詳しくは分かりません)

死んだら終り。死後の世界はない、と考えている。

将来の危険性・可能性を検討するリスク
という言葉・概念が日本語にない。

これは初耳で驚きでした。
確かにリスクの日本語はないですね。

リスク概念がないだけでなく、
リスクを取らないのです。
その例として、
5月27日のフジテレビ新報道2001で
こういうことを言っていました。

日本は石油危機の時のエネルギ確保を
石油輸入の権益確保を第一として、
日本の近海にたくさんある海底資源の探索・獲得は
リスクがあるので
誰も投資しようとしなかったのだそうです。

その技術や実績が十分あれば、
今や世界中の強大国が狙っている
海底資源の獲得競争の先端を切ることができたのです。
(今からでも頑張れば間に合うようですが)

2.日本人のリスク管理の甘さ

「天災は忘れた頃にやってくる」  甘さ
「未必の故意」『何もかも考えるのは無理」 怠慢
「絶対安全」 リスク管理の放棄
「最悪事態まで考えたら何もできない」 放棄
「想定外」  これも放棄

そのとおりで、面白い着眼です。

3.日本の文化と欧米の文化の比較

日本人の感覚
定常・安定した世界観
現状の安住の中で生きる

欧米人の感覚
進化・発展する世界観
将来への挑戦の中に生きる

日本人の意識
母性原理の意識
自然環境の中で進化した
共同体社会(ゲマインシャフト)

調整型リーダ
皆の一体感を重視(水平思考)
関心は内部中心
成り行き任せで誰かが助けてくれるという期待感

集団主義。権威主義の意識
集団の秩序・和を大事にする

性善説を信じようとする
信頼関係を重視(誠意が重要)
平等社会を目指す

草食系

欧米人の意識
父性原理の意識
闘争する民族関係の中で強化された
機能体社会(ゲゼルシャフト)

率先型リーダ
関心は外部中心
上の立場で考える(垂直思考)
情報を把握して、
自分で全力を尽くすという使命感

個人主義・自由主義の意識
個性を尊び、自由に討議する

善悪両面があると理解している
契約関係を重視(論理が重要)
格差を当然視する

肉食系

4.中国、日本、アングロサクソンの思想比較

中国         無神教 利己主義
先祖崇拝、子より親を大事にする。
私益のため、自己の能力を最大限に使う。        

アングロサクソン 一神教 個人主義
公益のため、自己の能力を最大限に使う。

日本         多神教 集団主義
あらゆるものに神が宿る。
「捨てる神あれば拾う神あり」
共益のため、周囲との調和に最大限努力する。

私益より共益を大事にする日本の素晴らしさ
子孫・国家の為という公益に対する使命感が課題

5.日本人と中国人の行動原理

中国人:異民族征服
本能と面子の世界、道徳観希薄

「水清くして魚棲まず」

日本人:異民族征服・被征服の経験なし
道徳と道理を重視(周囲へ配慮)

基本特性が狩猟民族と農耕民族と言うことです。
土地に結び付けられている農耕社会では
集団の和がなければ社会が成り立ちません。
日本人は、その面では基本的に「保守」派です。

6.日本語と中国語

中国語:時制がなく、助詞語尾変化もない。
                      単語間の関係は推量による。
(へーえ!これでは、
自分に都合のよいように解釈できるということですね)

日本語:受身・あいまい表現が多い
(女房が逃げたと言わずに、
「女房に逃げられた」と言う)

上野意見:
ご承知のように日本語では主語がない場合が多い、
責任を明確にしないのですね。
何でも神や集団の責任なのです。

以上雑駁なご紹介で申し訳ありません。

久野さんは、
グローバル時代の「これからの日本」についても
建設的な意見を述べておられます。
関心ある方は、前掲の久野さんの著書をご覧ください。

2012年5月7日月曜日

各界知識人が語る2030年の日本

各界知識人が語る2030年の日本
【このテーマの目的・ねらい】
目的
2030年の日本のあるべき姿について考えていただく。
現在の日本が抱える問題について再整理していただく。
ねらい
ご紹介している本を読んでいただく。
できれば、今後の日本のために何か行動していただく。
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「2030年の日本へ 
あらたにす「新聞案内人」の提言」
(あらたにす編)を読んでみました。

「あらたにす」とは何語だろうと思って見ると
「新たにす」という日本語でした。

「あらたにす」というのは、
朝日新聞、日本経済新聞、読売新聞が、
2008年から2012年2月まで、
共同で運営した実験的ニュースサイトです。

競合の3社が連携するというのは
画期的なことだったようです。
それだけ、
インタネット主導の変革に備えることが
重要な経営課題であると認識されたのでしょう。

本書は、その人気コラム「新聞案内人」の執筆陣が
未来の日本に向けて書き下ろした提言集なのです。

まさに多士済々です。
その方々の提言のテーマを表にまとめてみました。




ご本人が項番をつけて
明確にテーマを分けておられる場合は、
この表でも分割して表示しました。
合計26人、33テーマです。

テーマは、
著者がそのように見出しを付けてあるものもありますが、
それは多くありません。
私が適当に要約したものが大半です。

内容は、こうなるべき、こうすべきという提言と
こうなってほしいという願望と、
こうなるのではないか、という予測とがあります。

33テーマの内容を、以下の領域に分けてみました。
・政治 
大きなテーマは政治が出動しなければ動きませんので、
その面からするとみな政治がらみになってしまうのですが、
政治に区分しましたのは、
政治自体のあり方に関するもののみです。

・経済
経済やビジネスを直接テーマにしたものです。

・社会
いわゆる「社会問題」をテーマにしたものです。
社会の仕組みをテーマにしたものも含みます。

・技術
他のテーマでも、
技術の進歩を前提にしたものがありますが、
ここには、技術そのものの方向性を示したものを挙げました。
2件しかありませんでした。
新聞の一般コラムで技術そのものをテーマにすることは多くなく、
「あらたにす」の執筆陣にもそういう方は多くなかった
ということでしょう。

・文化
日本の文化を大事にし、強化しようという主張です。
大事なことだと思いますが、2件しかありませんでした。

・個人(思考)
個人の生活や思考法に対する提言です。
日本の伝統的思考法に対する改善提案や
行き過ぎた文明生活への反省が含まれています。

本当に広範なテーマでして、
2030年に向けて日本はこんなに課題を抱えているのかと
再認識させられました。

提言内容と提言者の関係をみるために、
提言者が「何系」の方かを確認しました。
それが、提言者の右の区分欄です。

社会は社会科学系、人文は人文科学系、
自然は自然科学系を示します。

この判断は、提言者の出身学部によりました。
表示のないものは職務経歴で判断しました。

概ね、テーマと「区分」は対応していますが、
異色の方もおられます。
自然科学系卒業なのに、
政治テーマを論じておられる安井至さん、
経済テーマを論じておられる白石真澄さんなどです。

因みに、社会領域は、
3系の方の「混戦」状態です。
文化と個人領域は、やはり人文系の戦場です。

このようにテーマを整理して気が付いたことがあります。
それは、家庭の問題をどなたも取り上げていないことです。
極めて重要な問題であるのに、です。

家庭のあり方に関する私見は
別項「2世代・3世代同居を考える」に述べました。

26人の方の提言は、
なるほどと思うことばかりでした。

なるほどの代表例は、坂村健さんの以下の一節です。
日本のビジネス上の技術革新(研究開発面でなく)が
遅れをとっているのは以下の理由もある、とのこと。


揺るぎない法が前提の大陸法の日本。
問題が起きた時点で裁判所が判断し、
結果が慣習法になるという英米法の米国。

「やっていいこと」が規定され、
それ以外が「違法」という国と、
「やっていけないこと」が規定され、
それ以外はやってみて問題があれば裁判で決めていく国、
どちらの方がイノベーションに適しているかは明白であろう。

GoogleのGoogleMAPやFacebookの個人情報の取り扱い、
がまさにその例です。
日本では個人情報保護を固く固く考えすぎです。
これは従来からの私の主張です。

心に残ったのは、
西島雄造さんが紹介された以下の一節でした。


それにつけても忘れられないのは、
住所の代わりにホームレスと記して
朝日新聞に短歌を投稿し続けた公田耕一さんのことである。

ホームレス歌人の記事を他人事のやうに読めども涙雫しぬ
7分の至福の時間寒き日はコインシャワーを一身に浴ぶ
説教と引換へに配るパンならば生きる為には説教を聞く
(上野注:仮名遣いを見ると公田さんの教養の高さが分かります)

2008年12月8日の初投稿以来、
翌年も花冷えや酷暑を詠み続けたあと、投稿が途絶えた。
投稿されたさなかも、それが途絶えたあとも、
読者からまるで返歌のような31文字が歌壇に投稿された。


(中略)
公田さんの消息はわからずじまいだが、
生きることが思うに任せぬときでさえ歌を詠み、
歌に心を洗われる希有な国民であることを、
誇りに思うのである。
その尊い言葉が衰え、変質しようとしている。

公田さんはその後どうされたのでしょう。
気がかりです。

それからもう一つ。
26人の中に女性が5人おられますが、
掲載されている顔写真が皆さん美人でした。
「天は二物を与える」のでしょうか。

「幸福度」は客観化できる?

【このテーマの目的・ねらい】

目的:
・「幸福度」ということについて考えていただく。
・何がどの程度幸福に関係するのかの実証研究結果を
知っていただく。
・幸福に関係する要因の大きさの測定方法を
知っていただく。
・結婚、離婚、身近な人の死が何年で忘れられるかの
実証データを知っていただく。
・幸福度の研究結果から児童虐待についても考えていただく。

ねらい:
・「時が解決してくれる」ことを信じて生活していただく。
・「国民総幸福度」について関心を持って行動していただく
-----------------------------
昨年11月にプータンの第5代国王が来日され
国賓として迎えられました。
新婚旅行でした。

その温顔に心ひかれた方が多いと思います。
ビックリしたのは、国民の幸福度を高めることを
国家目標にしていることでした。
その概念は「国民総幸福度」と言われているものです。

その後分かったことは、
プータンは人口70万人の小国ですが、
長く1人当たりGDPは横ばいであるにも拘らず
国民の97%%は自分が幸せだと思っているのです。

医療と教育の完全無償化などが実現していて、
平均寿命は38歳から66歳に延びたそうです。

時を同じくして日本でも、
2011年12月に内閣府で
国民の「幸福度」を測る指標の試案を公表しました。

「経済社会状況」「心身の健康」「(家族や社会との)関係性」
の3領域132の項目が挙げられています。
以前のある調査では日本の幸福度は、
世界でかなり下位の方なのです。

イギリスのレスター大学に所属する社会心理学分析の研究者
エードリアン・ホワイト氏は、
イギリスのシンクタンクのデータをベースに、
約8万人に聞き取り調査を行った各種国際機関

(ユネスコ、CIA、WHOなど)の発表済み報告書(100種以上)を分析。
独自方法で計算した上で178国の「国民の幸福度」を順位付けした。
(2005年ころの調査で計算方法は未公表)

1位 デンマーク
2位 スイス連邦
3位 オーストリア共和国
4位 アイスランド共和国
5位 バハマ国
6位 フィンランド共和国
7位 スウェーデン王国
8位 ブータン王国
9位 ブルネイ・ダルサラーム国
10位 カナダ

23位 アメリカ合衆国
35位 ドイツ連邦共和国
41位 英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)
62位 フランス共和国
82位 中華人民共和国
90位 日本
125位 インド
167位 ロシア連邦

北欧各国が上位に入っています。
プ―タンも8位です。大したものです。
日本は90位で先進国中でも最下位に近いのです。
何の要素が効いているのでしょうか。

そこで、幸福とはどんなものか、を探求するために、
「幸福の計算式」(ニック・ポータヴィー著)を
読んでみました。

難しいテーマだけに、
本書はいろいろな回り道をしていて
読みにくかったのですが、
目ぼしい主張を挙げるとこうなります。

幸福度(自分が幸福かどうかと感じていること)は、
当然ながらいろいろな要因によって決まる。

その内の一つの要因は収入である。
収入が多い人が必ずしも幸福であるとは限らないが、
多数のサンプルの調査で他の要因を捨象して評価すると、
収入が多いと幸福度が上がる。

その程度は、世帯収入が年間1000ポンド増えると
7段階評価で幸福度が0.038ポイント上がる。

その係数を使って、幸福度に影響を与える要因の影響度を
算定するとこうなる。
以下はすべてイギリスの平均的な人の場合である。

結婚生活の最初の年の幸福度は
思いがけない臨時収入(以下同様)約3500ポンド(43万円)
に相当する。
(上野注:結婚した人と結婚していない人の幸福度の差を把握して、
その差は、収入の差の幸福度の差に換算するといくらになるか
を算定している。以下同様の方法で算出している)

誰とも付き合いのない人の幸福度を埋め合わせるには
4000ポンド(49万円)

隣人や親類と毎日話をする人は、
最初の年に2100ポンド(26万円)の収入に相当する

子供が生まれた最初の年の満足度の上昇は、
2500ポンド(31万円)の臨時収入相当である。
離婚した最初の年の精神的苦痛を埋め合わせるのは
8000ポンド(98万円)相当である。

配偶者の死は平均で 31万2000ポンド(3800万円)
子どもの死は平均で  12万6000ポンド(1500万円)

母親の死は平均で    2万2000ポンド( 260万円) 
父親の死は平均で    2万1000ポンド( 250万円)

友人の死は平均で       8000ポンド( 100万円)
兄弟姉妹の死は平均で    1000ポンド(  12万円)

(上野注:それぞれに「平均で」を明示したのは、
その時の状況――結婚して何年かとか子供が何歳かとか――
によって大きく異なるだろうからです)

離婚の苦しみから立ち直るには男性で2年、女性で3年
配偶者の死から立ち直るのは男性で4年、女性で2年
(上野注:両者で男女の関係が逆転しているのは興味深い)

失業についての苦痛は数年経っても癒えることはない
長い通勤時間についても時間が経過しても不満は減らない
結婚生活の幸福度は2年で消えてしまう。
子どもができた幸福度は1年後からマイナスになる。

アメリカの州ごとの生活の質と幸福度とは相関がある。

生活の質とは、
日当たりの良さや教師1人当たりの生徒の数の少ないこと、
空気がきれいなこと、通勤時間が短いこと、
州税や地方税が安いこと、
高等教育に対する州や自治体の予算が多いこと、
福祉、道路事情、生活コスト
などを総合評価したものである。

上野注:
これからすると、冒頭のプータンの幸福度の高さは妥当です。
それにしても、
国民総幸福度という概念とその実践を
1972年から始めた第4代国王はたいへんな方です。
ノーベル賞級ですね。

以上の中に、
児童虐待の発生原因の観点から
注目すべきデータがありました。
それは、子供ができた喜び(幸福度)は、
1年後にはマイナスになるという点です。

著者は明確には述べていませんが、
時間の経過とともに、単純な喜びよりも
子どもを育てる負担や責任感の方が大きくなる、
ということなのでしょう。

あるいは「子供はいて当たり前」
になってしまうのかもしれません。
子どもを育てる負担や責任が極端に感じられるようになると、
虐待も始まるのでしょう。
信じがたいことですけれど、データではそう言っているようです。

「幸福の計算式」の考え方を一般に広めたのは、
2006年にアンドリュー・オズワルド氏のようです。

幸福度に影響を与える異なる要因を
金額で換算して示すのは、相互の影響の大きさを示す点では
分かりやすいのですが、
「幸福はお金で買えるというのか」
という反発を受けているようです。
(それは著者たちの真意ではありません)

幸福度の研究結果の結論はこういうことになります。

幸福は主観的な判断によるので個人差があるが、
マスで統計的に見ると、
多くの人がどう感じているかを把握することができる。

あくまで統計的あるいは平均的には、
ということです。

金額換算は別として、
ここでご紹介したデータは、使い方によって
人生を判断する上で非常に参考になるものです。

関係する研究者たちが、信頼できる係数を算出するには
たいへんなデータ収集・分析の活動が必要です。
こういう研究を地道に続けている方がたが
多数おられるということは、勉強になり感心しました。

幸福度は主観的なものですから
社会環境の変化によって変わっていくものです。
長い時間軸で安定的な係数を設定することは
困難でしょう。

その意味で、日本政府が試みようとしている
132の指標の安定的なウエート付けは
無理なことでしょうね。
内閣府も
「総合指数は算出しない」と言っているようです。

「2世代・3世代同居を考える」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
家族の崩壊に対する防衛策の1案を知っていただく。
児童虐待防止策としての核家族化対策を知っていただく。
ねらい:
2世代・3世代同居家族が増えることを期待する。

――――――――――――――――――――――――――
「児童虐待問題を考える」で取り上げておりますように、
幼児虐待問題は家庭の破たんから発生しています。

核家族化によって、
人生の先輩が後輩を導くという機能が
失われてしまっているのです。

核家族であるために、
最も主婦が困るのが幼児の養育です。
ある調査で、小さな子供を抱えている母親の半数以上は
養育に自信がない、と答えています。

夜中に少し熱を出すと、
すぐに救急車を呼ぶ、ということになります。
そういう時におばあちゃんがいると、
幼児の様子をみて、
「とりあえず、せんぶりを少し飲ませて
様子をみてごらん」とかいうことができます。

「わがままが強くなってきているから、少し抑えなさい」
「そんなに感情的に叱ってはダメ」
「よしよし、よくできるねー、とほめてあげなさい」
とかのアドバイスも引き継がれてきた経験から可能です。

その他、
家事全般に亘って親が子を指導することが可能です。

核家族化は、
農林漁村から都会へ出てきて生活をするようになったことから
発生しています。

それだけに根が深い問題で、
一朝一夕に何とかなるということではありませんが、
放っておいてよい、ということでもありません。

東日本大震災の際に、
住民が秩序正しくお互いを慮って行動していた、と
世界から称賛されました。

これは
日本の古き良き伝統が残されている東北であったからで、
都会で大震災が起きたのなら、
そうはいかなかったでしょう。

我が家は、1代前から3世代同居です。
私の子供2人は「おばあちゃん子」でした。
いま我が夫婦は孫を可愛がって、
いろいろな指導もしています。

農林漁村から都会に出てくることは、
もう1段落ですから、
都会生活の2世・3世の時代です。

住居の問題が何とかなれば、
2世代・3世代同居は可能なはずです。

そのことに対する公的補助を考えても
よいのではないでしょうか。

そういうことを言うと、
「それは個人の問題だから公的補助に馴染まない」
とかいう意見が聞こえてきそうです。

子供をつくる補助についても
当初はそのような意見が出ました。

どのような生活をしたいかは、
基本的には個人の問題であっても、
国にとって、好ましい方向が認識されるのであれば、
その方向に助成することに何ら不具合はありません。

個人の生活のよりどころである家庭が
どんどん崩壊していって
よいと思う人はいませんでしょうに。

具体的には、
2世代・3世代同居家族に対して補助金を出すのです。

そうすれば、家の購入や新築を選択するときに
2世代・3世代同居を選択する人が
かなり増えるのではないでしょうか。

この話は普通の政治家に話をしても、
「票にならない」と相手にされないでしょうね。
橋下さんにでも提言してみようかしら。

児童虐待問題を考える

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
児童虐待の事実を知っていただく。
児童虐待への対応状況について知っていただく。
児童虐待の発生原因とその対策上野案について
知っていただく。

ねらい:
児童虐待に対して大きな関心を持って行動していただく。
児童虐待が少しでも減ることを期待する。

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4月26日の当ブログ
「小さな子供が犠牲になっている 
何とかならないものでしょうか!!」で
幼児虐待問題を取り上げましたが、
不勉強で「児童虐待防止法」のことを知りませんでした。

 現在は、孫が幼児なので、
児童虐待に極めて関心が高いのですが、
以前は無関心だったという反省です。

友人のYTさんから
その法律の存在や解説書を教えていただきましたので
早速調べてみました。
「いっしょに考える 子ども虐待」
(小林登監修、2008年)
「児童虐待 現場からの提言」
(川崎二三彦著、2006年)

以下がそのご報告です。

1.児童の虐待を防止する「児童虐待防止法」は
以下のように制定・改訂されています。

2000年11月施行
2004年改正

児童虐待を受けた【と思われる】児童を発見した者は、
速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所
若しくは児童相談所又は児童委員を介して
市町村、都道府県の設置する福祉事務所
若しくは児童相談所に通告しなければならない。

注:【 】の中が追加され、疑わしい場合でも
通告の義務が課せられました。

その他のこの法律の特色を
Wikipediaの記述がよくできていますのでご紹介します。

・児童虐待の定義
同法第2条において、18歳に満たないものを児童とし、
保護者が行う以下の行為を「児童虐待」と定義している。

注:数字は2011年実績の検挙人数
1.身体への暴行                    282人
2.児童へのわいせつ行為と、わいせつ行為をさせること
                               97人
3.心身の正常な発達を妨げる減食・長時間の放置
                               18人
4.保護者以外の同居人による前記の行為と、
    その行為を保護者が放置すること
                         上記18人に含む
5.著しい暴言・拒絶的対応・著しい心理的外傷を与える
    言動を行うこと                    1人

・児童虐待の早期発見努力
同法第5条において、学校・病院等の教職員・医師・保健師・弁護士等は、
児童虐待に関して早期発見に努めなければならないとしている。

・児童虐待の通告義務
同法第6条において、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、
速やかに福祉事務所・児童相談所に通告しなければならないとされている
(警察ではなく、「通報」でもない)。
この際には、
刑法134条の守秘義務違反には該当しないと明記している。

・児童虐待に対する強制調査
同法第9条において、都道府県知事は、出頭を求め、また必要に応じて
自宅へ立ち入り調査を行うことが出来ると定める。

保護者がこれらを拒否する場合、
裁判所の許可状(令状)を得て、臨検・捜索(強制捜査)を
行うことが出来るとされている。
注:2010年からは、臨検を積極的に活用すべしとの通達が発された。

・児童虐待に対する警察の介入
同法第10条において、都道府県知事・児童相談所長は、
必要に応じ警察署長へ援助を求めることが出来るとされている
(警察官を同行させ、保護者が抵抗した場合に取り押さえが出来る)。

・虐待児童への保護者の接触制限
同法第12条において、児童虐待を受けた保護された児童に対し、
児童相談所長は必要に応じて、保護者の面会・通信を制限する
ことが出来るとされている。

また、必要に応じて、保護者に
対し通学路等の児童の近辺を徘徊することやつきまとうことを
止めるよう命令することが出来るとされている。

2.児童虐待を防止する組織

(1)児童相談所の職務
児童福祉法第11条の規定による。
イ 各市町村の区域を超えた広域的な見地から、
実情の把握に努めること。

ロ 児童に関する家庭その他からの相談のうち、
専門的な知識及び技術を必要とするものに応ずること。

ハ 児童及びその家庭につき、
必要な調査並びに医学的、心理学的、教育学的、
社会学的及び精神保健上の判定を行うこと。

ニ 児童及びその保護者につき、
ハの調査又は判定に基づいて必要な指導を行うこと。

ホ 児童の一時保護を行うこと。

(2)福祉事務所の職務
社会福祉法第14条の規定による。

福祉事務所は、生活保護法、児童福祉法、
母子及び寡婦福祉法、老人福祉法、
[身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法]に定める
援護、育成又は更生の措置に関する事務をつかさどる
ところとされており(同法第14条第5項、第6項)、
その具体的な内容については、
各法に詳細に定められている。

児童相談所の活動は、
まずは相談件数の増大に体制が追い付いていない、
という状況にあります。

さらに、相談・通告を受けて現場で対応した時に
それが児童虐待であるかどうかの判断が難しい、
保護者からの抵抗にあう、
などの大変なご苦労があるようです。

3.児童虐待に関する事実データ

(1)幼児虐待による死亡事件
2004年  53事例、 58人死亡
2006年 100事例、126人死亡 2.2倍
2008年  64事例  67人死亡

(64事例の内、0歳児が59%、1歳児が14%、
0―5歳児が89%。
加害者は実母59%。実父16%)

注:この間では、なぜか2006年が突出している。
子供を不憫に思って
「慢性の疾患や障害の苦しみから子どもを救おう」
という理由はありそうですが、
2006年には「1件もない」のだそうです。

(2)児童虐待で児童相談所が取り扱った件数

1990年  1,101件
1999年 11,631件
2008年 42,664件 3.6倍

4.児童虐待に関連するデータ

(1)核家族の割合
2005年の国勢調査では
6歳未満の子供を育てる家庭に占める核家族の割合は
全国で81.2%、東京で92.1%

(2)生活保護世帯数
1985年 78.1万世帯 保護率21.0%
1990年 62.4万世帯    15.5%
2000年 75.1万世帯    16.5%
2010年  141万世帯    26.5%

注:保護率は、所得が生活保護基準以下の家族の内で
実際に生活保護を受けている比率

2010年までの10年間で倍増しているのは、
貧困層が増えたというだけでなく、
生活保護への受け入れ基準の緩和(保護率増加)も
あるようです。

5.児童虐待の発生する根本原因(上野意見)

法律の改正・強化、児童相談所の奮闘にも拘わらず
児童虐待は増え続けています。
その根本原因は以下の二つだと思われます。

(1)核家族化
核家族では、夫婦が一体で事に当たらない限り、
児童を養育する母親は孤立し、
不安や悩みを相談する相手もいなく
時に暴走しても制止する者もいない
という状態になります。

大家族世帯においては
児童虐待は起こりえないことを思えば、
核家族が、
児童虐待発生の一番の原因だと言えるでしょう。

(2)貧困
2000年以降の日本経済の低迷期から
生活保護世帯が急増しています。
その趨勢と児童虐待の件数増加は
軌を一にしています。

経済的に厳しければ、
児童への養護も行きとどかなくなります。
足手間といであると思うことも
自然の成り行きかもしれません。

6.児童虐待防止対策

(1)生活困窮者に対する救済
これに関しては、
社会保障制度の充実(ベーシックインカム制度など)が
実現すれば、かなり改善されるでしょう。
日本はまだまだ社会保障低開発国です。

(2)核家族化に対する対策
大人2世代、親子3世代で一緒に住む住宅に対する補助
を出すべきだと思います。
これについては、
別項「2世代・3世代同居を考える」をご参照ください。

この対策は、
児童虐待防止に有効なだけでなく、
日本社会全体の活性化に
大きな効果があると思われます。

いずれにしても、絶対数はそれほどでないとはいえ、
子どもを大事にしなければならない少子化時代、
もっともっと子供を大事にしなければなりません。

2012年5月1日火曜日

野村監督のお母様も「気」でガンに克った!

致知出版社から刊行されている野村克也氏著
【人生を勝利に導く金言】には、
以下の記述があるそうです(致知出版社からの連絡による)。
野村監督のお母様も
気(精神)でガンを克服されているのです。
お母さまへのご恩返しは間に合ったのでしょうかね。

「私がプロ野球の世界に飛び込んだのは
1954年ですから、
今年で59年目を迎えることになります。
テスト生からプロ野球選手になった私が、
まさかここまで長く野球界に
籍をおくことになろうとは思いもしませんでした。

3歳で父を戦争で亡くしたこともあって、
子どものころは半端でない貧乏生活を送りました。

母親頼みの生活でしたが、
その母親は私が小学校2年生のときに
子宮がんで倒れ、その翌年には直腸がんにかかり、
『助からない』と宣告をうけましたが、
子を思う一心からか、母はがんを克服したのです。

私と兄を育てるために、
無理をして苦労しながら働いている姿を
ずっと見ていましたから、
絶対金持ちになって母を楽にしてあげたい
という思いは人一倍でした。

金持ちになるために選んだ道が
プロ野球選手だったのです」