2011年9月24日土曜日

一部の意見に振り回されるな

別項の「ユニクロ、マックは全世界共通商品戦略」
でご紹介した9月9日の日経流通新聞の
特集記事の中に、
ビジネス原理として有効な意見が載っていました。

その2つめです。
原田社長の意見
2004年に社長に着任したときには
『米国本社は日本が違うことを分かってくれない』
という社員がいました。

でも、グローバルビジネスが分かっていないだけで、
本質はすべて一緒なんです。

この意見に対して、柳井社長の意見
分かっていない人は、
全体の1-2割に過ぎない部分を気にするんですよ。
本質的に8-9割は同じです。

一部(意見)に振り回されるな、全体を見よ、
というアドバイスとして、有効な意見だと思います。

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私は以前、大田区役所に以下のクレームをしました。

私がいつも通う蘇峰公園が、園内の樹木を切りとったり
大幅な枝落としをしました。

なぜそんなことをしたのか、と管理人に聞くと
近所の人が『落ち葉が落ちて迷惑だ』と文句を言うから、
と言うのです。

これは近所の人のエゴではないか、
そもそも蘇峰公園の方が
その人たちがそこに住むより前から有ったはずで、
その前提でここに住んだのでしょう。

そして日ごろ、
酸素の多い良い空気が提供される恩恵を受けているのに
それを忘れて、とんでもない。

少数の近隣の人たちの狭い料簡のエゴのために
多くの公園利用者の楽しみを損なっている。
そういう対応はやめてほしい。

このクレームに対する回答は
「今後慎重に検討します」ということでした。

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クレームがあると無難を考えて対応してしまうまずさは
見識のなさが原因とも言えます。

9月17日に起きた愛知県日進市の
福島県川俣町産の花火を使用しなかった「事件」も
その例です。

福島県産の花火を使うことについて市民から
20件ほどの苦情が寄せられたので
使用中止にした、という関係者の説明でした。

このことを知った全国?の人たちから3000件以上の
クレームが寄せられました。

日進市長は川俣町長に謝罪に出向く仕儀となりました。

消費者の「声」からはヒット商品は生まれない

別項の「ユニクロ、マックは全世界共通商品戦略」
でご紹介した9月9日の日経流通新聞の
特集記事の中に、
ビジネス原理として有効な意見が載っていました。

その1つです。
これは、上野も以前から主張していることです。

柳井社長
ヒットを生むには消費者の期待を超えることが必要です。
確かに市場調査は必要ですが、
消費者が「こんなものがほしい」
と言うとおりの物を出しても売れません。

この意見に対して原田社長
お客様にどんな商品が必要かと聞くと
オーガニック、ダイエット、ローカロリーなどの
メニューが並びます。
でもサラダを出しても売れず、
(大型のハンバーガー)クォーターパウンダーを出すと
若い人たちがダブルで食べています。

ユニクロ、マックは全世界共通商品戦略

9月9日の日経流通新聞に
ファーストりテイリングの柳井正社長と
日本マクドナルドの原田泳幸社長が
「グローバルワン目指せ」
というテーマで対談していました。

2社の共通戦略は
「世界統一ブランドで全世界共通商品を売っていく」
でした。
それが、勝ち抜く消費者ビジネスの
共通基本原則であるかのように
この記事ははまとめられていました。

はたしてそうでしょうか。

マクドナルドは総合外食業ではありません。
外食産業の中の1分野を市場にしています。
他の外食業と差別化するためには、
今のハンバーガ中心のビジネスを
とことん追求するのが勝ちです。
そして、「これが好きな人はうちの店に来てください」
という戦略ですから
全世界共通の商品だ、という戦略は妥当性があるのです。

しかし、その戦略では
より幅の広い外食ビジネスは展開できません。
日本では日本人の嗜好に合わせたメニュ提供
インドではインド人の嗜好に合わせてメニュ提供が
必要になります。

ユニクロも同じです。
ベーシック衣料を提供する間は
世界共通商品戦略でいいでしょう。
丈夫で温かくて、最低限格好悪くない物は
常夏の国を除いて支持されるのです。
しかし、ファッションが関係する衣料の世界になったら
まったく別の戦略が必要です。

マーケティング論では、両社ともニッチビジネスなのです。
ニッチの戦略はニッチの特色を徹底的に追求する
のが勝ち戦略であるというのは常識です。

ですから、両経営者の発言は
その意味で正論です。

将来、両社はニッチを脱却して
一層の事業拡大を図ろうとするのでしょうか。
おそらく、ニッチ戦略が身に染みている人には
その経営はできないでしょう。

このことを証明するような記事が、

同じ日経流通新聞の9月21日に載っていました。

それは、ファーストリテイリングは、
世界的なデザイナであるジル・サンダー氏との
提携で開発した「プラスジェイ」ブランドを
今秋冬物で打ち切る、というものです。

今のビジネスモデルと
デザイナブランドは相容れないのです。

2011年9月17日土曜日

哲人「永守重信」社長

月刊誌「致知」の10月号に
永守社長と牛尾治朗ウシオ電機会長の
対談が載っていました。

私は以前から
永守社長は偉い方だと注目していました。
特に記憶にあるのは、
「新入社員に便所掃除をさせる、
それができない者は辞めてもらう」
ということでした。

今回の対談で感心したことを
経営のバイブルとして
書きとめておきます。

経営成果を上げるという目的達成には
いろいろな道があると思いますが、
「永守流」はその一つであることは
間違いないでしょうね。

永守社長は昭和19年生まれで
28歳で日本電産を創業しておられます。
元旦の午前中しか休みをとらないのだそうです。
それでもたいへん健康そうな顔をしておられます。
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これまで赤字会社を30社買収して
どの会社も黒字になった。
(上野注:これは凄いことです。
この偉業を成し遂げた人は他にいないでしょう。
ギネスものです)

1年で過去最高益になった会社もある。

6Sを重視している。
 整理、整頓、清潔、清掃、作法、躾

ダメな会社は士気が落ちていて、
これらがダメになっている。
汚い会社はダメだ。
それは経営者の責任だ。

だから、6Sの徹底から始める。

なぜ儲かるようになるか。
能力の差は2倍からせいぜい5倍どまり。
これに対して「やる気」の差は百倍の結果になる。
「やる気」を出させることがカギだ。

買収した会社では、自分で現場に通う。
伝票を1枚1枚見たりする。
そうして問題を見つけ出す。
経営の問題なら直ちに変えていく。
頑張る人に報いることも迅速に行う。
頑張れば報われるということを見せることが重要だ。

会社がダメになる要因は以下の6つである。
 マンネリ、油断、驕り、妥協、怠慢、諦め
後の3つに陥ったら取り返しがつかない。

いつも社員にこう言っている。
「どんな辛いことがあっても自分の人生はもうダメだ
と決して諦めるな、逆にチャンスと思え」

成功には運気が必要だが、
自分のやっていることに惚れこまなければダメ。
2世経営者が惰性でやっているような会社は
すぐダメになる。

誰よりも朝早く起きて、
気合を入れて会社に行きます。
気合いを忘れると家内が「掛け声!」と言うから、
「おーっ!」と叫んで出てくるのです。

成功には挫折体験が必要である。
そのため、
これという人間には大きなミッションを与えて
失敗させる。
そうして人間は成長していく。

30億円から50億円くらいの失敗は許す
覚悟が必要だ。
5人なら150億円で、そこまで使ってようやく
そこそこましな経営者が出てくるという感じだ。

「人の倍働け」「勝ちにはとことんこだわれ」
「従業員は大切にしろ。
自分の給料はゼロになっても従業員は守れ」
というような考え方は母親から教えられた。

経営者には犠牲の精神、奉仕の精神が必要だ。
日本企業の経営者は
真剣にやったら一番割に合わない。

仕事が一番好きで、
この会社が好きだという人が
経営をしなければならない。

リーダーたる者は
会社が大きくなるにつれて
高い理想、夢を追求していかなければならない。
経営とは夢を形にすることだ。

0911 1周年

皆様ご存じの0911は、10周年ですね。
「1」周年は、わが孫娘の1歳の誕生日のことです。

昔、大学の同級生の大企業社長が、
孫娘にメロメロという感じの発言があり、
そんなものか、と思っていました。

ですが同居して毎日顔を合わせていると、
とてつもなく可愛くなるものですね。

4月28日の当ブログ
「赤ちゃんの無垢な笑顔が特上」で
その孫のことに触れましたが、
「無垢な笑顔」の写真がなかなか撮れません。

無垢な笑顔は
私を見つけて「ニコッ」とする時のものですが、
その笑顔は一瞬なので
撮ることができません。

それだから価値があるのでしょう。

ご紹介するのは、
「1周年」の時の「準」無垢の笑顔です。






















「小さなクレーム」の成果

7月31日に「小さなクレーム」と題した意見を
当ブログに掲載しました。

都営地下鉄の泉岳寺駅で
「不当に」乗り換えの乗客を待たせていることを
東京都交通局にクレームしたものです。

このブログ意見に対しては、
「私もそう思っていました。成果を期待します」
というコメントをいただきました。

そうしましたら、9月12日になって
以下のような連絡がありました。
東京都交通局も「動き」ますね。嬉しいことです。

少し時間はかかりましたが、
「小さなクレーム」の成果が上がったのです。
このような、
小さな改善の積み重ねが日本を良くしていきます。
頑張りましょう。
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上野 則男 様

平素より、都営交通をご利用いただきまして、
ありがとうございます。

この度は貴重なご意見を賜り厚く御礼申し上げます。
またお返事が遅くなり誠に申し訳ございませんでした。
深くお詫び申し上げます。

泉岳寺駅の入線時刻に関しましては
先行列車がホームに在線していなければ
入線いたしますが、
安全装置上の制約から
ホームに列車が在線していなくても
入線出来ない場合がございます。

しかしながら、上野様からご意見を頂き
安全上、可能な列車に関しては
ホームに入線させていきたいと存じます。

東京都交通局では、
お客様からのご意見、ご要望を参考にさせていただき、
安全で快適な都営交通を目指してまいりますので、
今後とも都営交通のご利用くださいますよう、
お願いいたします。

東京都交通局電車部運転課
              姓 名

「システム障害はなぜ2度起きたか」

本書は、
日経コンピュータ誌の大和田尚孝副編集長が
中心になって書かれたものです。

マスメディアは、その時の流行りものを追いかけたり
煽ったりすることが多い中で、
この本は出色の傑作です。

本稿は少し長く
以下の構成となっています。
【日経コンピュータ誌のお手柄】

【本書の主張の根幹】

【CIOの人材】上野意見

【情報システムの重要度
システム依存ビジネス=モータボート】上野意見

【システム機能の社外依存の問題】上野意見

【『動かないコンピュータ』撲滅のための10カ条】


【日経コンピュータ誌のお手柄】

みずほ銀行は、2002年
3行合併で誕生した際にシステム障害を起こしました。

時の前田頭取が、
「(お客様に)迷惑をかけているわけじゃない」
と開き直って物議を醸しました。

その後発刊された
「システム障害はなぜ起きたか」
という本書の前作の内容を今でも覚えています。

障害発生の前に、こういうことがありました。
3行の頭取が顔を揃えて
新会社の役員体制を発表した時のことです。

新役員を
「CEO誰々,COO誰々,CFO誰々、――――」
と、紹介しました。

その時にCIOが入っていないのを不審に思った
日経の記者が、
「CIOはどなたですか?」と質問しました。

そうしたら、頭取たちは「えっ?」という顔をして
後ろに控えているスタッフと相談して
「CIOとは言っておりませんが、
システム担当役員はおりますから問題はありません」
と答えたのだそうです。

それなら、
「『社長』でいいのになぜCEOと言うのか」です。
筋が通りません。

これで記者は、
「この人たちはシステムを重視していない。
これは危ない」
とウォッチしていたようです。
そうしたら、「案の定!」ということになったのです。

私は、このブログでも再々
マスコミの定見の無さを批判していますが、
このときは感心しました。

その追求をした記者の中心が、
まだ若い大和田さんだったのでしょう。

日経コンピュータ誌は、
その後も、みずほをウォッチしていました。
そうしたら9年後「(予想どおり)またやってしまった」
ということになったのです。

【本書の主張の根幹】

大和田さんたちの主張の根幹は以下のとおりです。

マスコミはスポンサーのことを考慮して
本質に切り込まない、のが普通です。
それに対して、
これだけ切り込んでいくのは素晴らしいことです。
―――――――――――――――――――――――――
今回のシステム障害の原因は30項目にわたるが
これらの原因の根っこは
「経営陣のIT軽視」だ。

その結果は、こうなった。

「失敗を恐れ、システム刷新を先送りした」
 問題を起こした勘定系システムは
開発から23年間経ったものである・

「必要なIT投資を見送ってきた」
 システム統合・システム刷新には、
  2~3千億円かかる。

「システム部門の強化を怠った」
 その結果、障害対応能力が落ちた。

「システム障害のダメージを想定できなかった」
  これだけの大ごとになると分かっていたら
  適切な対応策をとっていただろう。

「経営陣のIT軽視」は以下の点からも分かる。

5月23日の記者会見で発表された
「システム障害の再発防止策」には4つの問題点がある。

1.35項目に及ぶ再発防止策のうち、
  経営陣自らの意識・行動の改善に向けた取り組みが
ほとんどない

2.「今回の事故の原因は、
9年前の統合の時の原因と異なるので
  防ぐことができなかった」
と言っていて原因を表層的にしかとらえていない。

3.事故から2か月経っているのに、
  新任のシステム担当役員を決められなかった。

4.「推進中のみずほ銀行、みずほコーポレート銀行、
みずほ信託銀行のシステム統合費用が、
この事故によって大きく増えることはない」
と言っているが認識が甘い。

システム強化の対策としては

1.CIOには将来経営トップになる人材を当てなさい。

2.CIOは取締役にして
  取締役会に出席し意見を述べられるようにしなさい。

などが重要である。
―――――――――――――――――――――――――
以下は上野の意見です。

【CIOの人材】

先の前田頭取の失言も
システムに対する無知の表れと言えます。

ご承知のように
同じメガバンクでも三菱東京UFJ銀行は,
畔柳信雄CIOが社長・会長になりました。
畔柳CIOが指揮したシステム統合のプロジェクトは
IT Japan Award 2009の経済産業大臣賞(グランプリ)
をとるほどの成功でした。

CIOの人材という点では、
野村証券の田中浩CIOは、代表取締役専務ですが
この方の意見は素晴らしいものです。

2011年6月9日の
日経コンピュータ誌のインタビュ記事で
このようなことを述べておられました。
―――――――――――――――――――――――――
「ITはビジネスそのもの。
証券業では、
システムの発展が業務の発展につながってきた。
営業担当者をシステム部門に積極的に異動させている。
利用者が望むシステムを素早く開発できるようになった。

(現在の野村証券のシステムは
20年以上使用している手作りシステムであるが)
システム再構築する際に、
野村総合研究所の「STAR-Ⅳ」の利用を決めた。

「STAR-Ⅳ」は共同利用型のシステムで
利用部門のすべてのニーズを満たすことはできないが、
コスト削減効果は大きい。
私の役割は、利用部門からの不満を抑えることだ」
―――――――――――――――――――――――――

情報子会社の社長も、CIO機能を担っています。
システム・ITと経営の両方が分かる方に
なっていただきたいものです。

野村証券の子会社野村総合研究所の社長は
代々、本社からの「天下り」でした。
初の生え抜き社長だった藤沼彰久さん(現会長)は
2005年から保守の改革を推進しました。

当時から事業の中核になっていた
ソフトウェア保守業務をエンハンス業務と名付け
その改善を推進する「エンハンス業務革新推進室」
を作り専任の要員を置いたのです。

これは本邦初のことです。
こういうことは天下り社長にはできません。

【情報システムの重要度
システム依存ビジネス=モータボート】

日本の経営陣一般のIT軽視については
今さら言うまでもない、という感じです。

特に、製造業は仕方がないでしょう。
ITより技術や製品が大事です。

フィルムがダメになったのに
大発展している大手企業のことですが、
過去2年間で社長が、
IT部門に声をかけてきたのは
2例しかないのだそうです。

1例は「うちのクラウドはどうなっているのかね」
もう1例は
「(ソニーの情報漏えい事件のとき)
ウチは大丈夫かね」
だったそうです。
「ITはIT部門に任せて」おけばよいのです。

しかし、金融業・流通業は
ビジネス=システムです。
システム軽視=ビジネス軽視です。

私はこれらの産業を
「システム依存ビジネス」と言っています。

「システム依存ビジネス」と
それ以外のビジネスの差は、たとえて言えば、
モータボートとヨットの違いです。
船体がビジネスで、エンジンがシステムです。

製造業はヨットです。
進むことに対して、
エンジンは補助的な役割しかありません。

風があれば、
入港・出港の時くらいしかエンジンを使いません。
帆(製品、技術)の強化の方が優先します。

これに対し
「システム依存ビジネス」の金融業・流通業は、
モータボートです。

エンジン(システム)がなければ
ニッチもサッチもいきません。
この業界でシステム軽視なんて信じられませんね。

【システム機能の社外依存の問題】

このこともシステム障害発生の遠因になっている
と思われます。

金融系の企業では、
ほとんどが情報子会社を持っていて
システムの実務は子会社依存です。

企画機能は本社で留保していると主張されますが、
実務の実態から離れて
有効な企画ができるものでしょうか。

日本が得意とする製造業では、
確立した製品の生産を
EMSやOEMメーカなどに
製造委託することはあっても、
自社の工場で、
生産技術を確立できるようになっています。

委託側で委託先の作業と品質を
完全に評価・コントロールできるように
なっているのです。

さらに、
企画を自社で実施し製造を他社に依存するという方式は、
情報システムの場合は、責任があいまいになるという
欠点もあります。

企画段階で決定した開発の仕様は、
製造業の場合と違って完成度が低く、
その後変更になることが多いからです。

したがって、
きちんとしたものができない責任はどこにあるのか
ということがはっきりしなくなるのです。

まともな企画ができない、
責任の所在があいまいになる、というだけでなく、
機動性に欠ける、という欠点もあります。

ビジネス側が、「新事業を始めよう」
「新方式のサービスを始めよう」という時に
子会社は、子会社の経営成果を出すという
別の責任を負っているのですから、
本体の社長の号令ですぐ動くわけにいきません。

そういうこともあり、最近は、
本体のシステム部門強化に動いている企業も多い
のです。

我が「母校」帝人の大八木成夫社長は、CIO経験者です。

日経コンピュータ誌2011年9月15日号の
インタビュー記事「構造改革にITは不可欠、
グローバル化へ変革は続く」 の中で、
以下のような発言をされていました。

「一つの試みとして、
CIOの下にIT企画室を設けて、
そこに20人くらいを配置しています。
各事業からの選出チームです、

一時期はITシステム子会社のインフォコムに
全部切り出したのですが、
その反省のうえでの取り組みです」

金融業はほとんどすべての企業が
情報子会社を持っています。
情報子会社を作った時代は、
非常に多くの開発業務があったのに対して、
本業とは全く異質の開発業務要員を
社内で育成・処遇することが困難だったからです。

当時は企画機能は重要ではなく、
製造機能があればよかったことも
分離の要因となりました。

これに対して、
同じく「システム依存ビジネス」でありながら、
流通業は情報子会社を持っていない方が主流です。

ダイエー凋落の原因はいろいろありますが、
原因の一つは、
早くから情報子会社を作ったことだと言われています。

現在トップの総合流通業になったイオンは
情報子会社を持っていませんでした。
(最近、グループ全体をホールディングカンパニ方式に
切り換えた際に、システム部門も独立会社にしました)

イオンのM&A・新ビジネスの続出には
目を見張るものがあります。
ビジネスの企画とシステム企画・運営が一体でなければ
そんな早業はできません。

【『動かないコンピュータ』撲滅のための10カ条】

最後に「システム障害はなぜ2度起きたか」で
あげられている
「『動かないコンピュータ』撲滅のための10カ条」
(システム障害を起こさないための10カ条)
をご紹介しましょう。

「動かないコンピュータ」は、日経コンピュータ誌が
永年に亘って継続している
情報システムの失敗を紹介する連載型人気記事です。

その1
 経営トップが先頭に立ってシステム導入の指揮を執り
 全社の理解を得ながら社員をプロジェクトに巻き込む
 (この中には「システム部門を強化再生せよ」
という主張も含まれています)

その2
 複数のシステム開発会社を比較し
 最も自社の業務に精通している業者を選ぶ

その3
 システム開発会社を下請け扱いしたり、
 開発費をむやみに値切ったりしない

その4
 自社のシステム構築に関する力を見極め、
 無理のない計画を立てる

その5
 社内の責任体制を明確に決める

その6
 要件定義や設計など上流工程に時間をかけ、
 要件の確定後はみだりに変更しない

その7
 進捗は自社で把握、
 テストと検収に時間をかける
 (上野注:そのように計画を立てるのですが、
 要件の変更等で時間がなくなり「テストと検収に」
 時間をかけられなくなっているのです。
 したがって、「その6」が重要です)

その8
 システムが稼働するまであきらめず、
 あらゆる手段を講ずる
 (「プロジェクトマネジメントを企業に定着させる」
 という主張も含まれています)

その9
 システム開発会社と
有償のアフター・サービス契約を結び、
 保守体制を整える

 (「この10カ条は、
あくまでもシステム構築に重点をおいて作ったもので、
保守に関する条項は一つしかない。
だが、保守はそれだけで
それぞれ10くらいポイントが列挙できる分野である」
というコメントが述べられています。

そのとおりです。
今や開発と保守にかかる工数比は1対4ですし、
障害やトラブルの大半は保守が原因なのです)

その10
 「うっかり」ミスを軽視せず、
 抜本的な対策を取る

 (上野注:このことは飛行機事故等でも
 指摘されていることで、不注意だ、うっかりミスだ
 で片付けると事故は再発する、
といういわば「真理」です)

大和田さんたちの予想は
「このままだと3度目が起きる」です。
みずほグループは、この本の提言のように動いて、
そうならないようにしていただきたいものです。

2011年9月9日金曜日

男性が短命なわけ

日本人の平均余命は、
男性80歳、女性86歳で、6歳の開きがあります。

その理由はいろいろ言われていますが、
最近私が気がついたことがあります。

私は、毎朝30分くらい散歩モードのジョギングをしています。
それに加えて最近は、
1歳前後の孫娘を抱いて20分くらい散歩しています。

その時に気がついたことは、
男性の通行人はほとんどが通勤者です。

孫は現在「犬(わんこ)」に興味を持っていますので、
犬の散歩をしている人に近付いて
孫に見せるようにしています。
それで、今まで全く関心のなかった(どちらかと言うときらいな)
犬を連れている人に関心を持ち出しました。

そうして分かったのは、
犬の散歩者はほとんどが女性です。
正確には8対2くらいでしょうか。

男性はどうしているのでしょうか。
ここからは一部の事実に基づく推定です。

バリバリに働いていた男性の多くは、
定年になるとばったり外に出なくなります。

その前に、定年後の再就職口を探す人もいるのですが、
職種と待遇とかの条件で折り合いがつきません。
「笑い話」に「私は部長ができます」という求職者がいる、
というのがありますが、こういう方はほとんど就職できません。

何かができる人が必要なのです。
そういう意味では専門職や技能職は有利です。
私が大学卒業後就職した企業で、
役員よりも長く勤務した同期生は「法務の専門家」でした。

再就職できないで「失意」すると、
もう引きこもり人間になってしまうのです。
新聞やテレビを見ているらしいのです。

実例:家内の友人のご主人は、営業職だったのに
定年になったら途端に
外食も嫌いで一切外に出ないそうです。

テレビを見ていることは、ほとんど脳の活性化にならない
という実証結果が発表されていました。

家にこもってテレビを見ているような人、
たまにゴルフに出かけるだけの人、
その人たちは、ボケる一方ですね。

犬の散歩をしている人たちは、
犬を媒介にしてあっちこっちでお互いにおしゃべりしています。
脳の活性化がされているでしょう。
ですが、
男性の犬の散歩者はあまり他人としゃべっていません。

地域の町内会で集まってくるのも女性が中心です。

脳の退化=老衰化ですから、
少なくとも定年後は、男性の老衰化は急速なのでしょう。

定年後の世の男性さま、
ぜひ、地域の活動とか頭と体を使うボランティアをして
健康を維持するようにしませんか。

まだまだそのような方々の働きを必要としている場があるはずです。

追伸
その後気がついたことの付言です。

私がジョギングしている頃、
大きな西大井広場公園(グラウンド)で
6時半から朝のラジオ体操が行われています。

100人位が参加していますが、
その男女構成比を見ると半々か
若干男性の方が多いのです。

私の解釈はこうです。

男性も健康に対して頭では留意していますので、
ラジオ体操には参加しています。
でも、老化を防ぐ決め手となる脳の活性化につながる
オシャベリには積極的でない。

というようなことでしょうか。
真偽のほどは疑わしいようです。