2022年8月28日日曜日

「生命機械」って何でしょう??

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 工学と物理学の融合に続く生物学と工学の融合
 (コンバージェンス2.0)についてご紹介します。
ねらい:
 その成果が早く実現できることを期待しましょう!!

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著者スーザン・ホックフィールドは、生物学者ですが、
2004年にMITの初の女性学長に選ばれています。
工学の世界の先端的大学に生物学者の学長が就任したのです。
画期的なことでした。

20世紀前半には、物理学と工学のコンバージェンス(統合)が行われ、
原爆の開発にもつながっています。
大戦後には、エレクトロニクス産業が発展しました。

これから華々しく展開されようとしているコンバージェンスの第2幕
(コンバージェンス2.0)は生物学と工学の統合(集約)なのです。
書名の「生物機械」は、生物の機能を使った機械ということで、
生物学と工学の統合を示しているのです。
当書は、その内容及びその解説方法として非常に素晴らしいものです!!

当書には、生物学と工学のコンバージェンス事例5件が紹介されています。
ウイルスが育てるバッテリー(エネルギー革命)
・タンパク質を利用した水フィルター(浄水革命)
・がんを早期発見・治療できる酵素活用型ナノ粒子(医療革命)
・脳を増強し身体の動きを取り戻す義肢(身体革命)
・食料危機を乗り越えるツール「高速フェノタイピング」(食料革命)

以下に驚きのその技術の概略をご紹介します。
著者は、この領域に造詣が深く、たいへん聡明でおられますので、
説明は筋道立てて非常に分かりやすくなっています。
挿入されている図も、的確にその原理を示されていて感服です。

しかし、もともとが難しいテーマなので、
私は自分が理解するのに精いっぱいで
著者の説明を簡潔に要約することは困難です。
ご関心ある方は、本書をお読みください。

1.ウイルスが育てるバッテリー
これが最もビックリです。
ウィルスでバッテリーを作るというのです。
ウィルスは短命のはずですし、そんなことができるのか?
と説明を聞いても納得できません。
それくらい凄いことなのですね。
幾つかの図をご紹介します。
1)ウィルスの1次加工





2)ウィルスを使ったコイン型電池の構成図


2,タンパク質を利用した水フィルター
現在、世界では10億人を超える人々が飲料水を飲むことができない、
蒸留と濾過では増大する需要を賄いきれないし時間とお金がかかりすぎる、
のだそうです。

タンパク質はそれぞれ、特定の物質だけを通す機能を持っています。
そこで、水だけを通すたんぱく質を見つけて
それを使って水の浄化を行うというのです。
すでに、この技術は宇宙ステーションでも使われています。
これの工業化へのチャレンジが紹介されています。
1)たんぱく質の一般的形状



2)水のみを通すアクアポリンたんぱく質



3.がんを早期発見・治療できる酵素活用型ナノ粒子
毎年、世界で800万人以上の人ががんで亡くなっています。
そこでさまざまな早期発見と治療法が研究し開発されています。
ここで紹介されているのは、
ナノ粒子テクノロジーを活用して、標的組織にナノ粒子を送り込み
MRI等で可視化する技術です。
診断だけでなく同じ技術で治療薬を患部に送り込むこともできます。
そのための課題は、ナノ粒子を単体のままで血管を通過させ、
患部でナノ粒子を合体させて「見える化」する技術でした。
この技術が、どこまで実用化されるのかは不明です。
1)合体しないで移動し目的地で目立つように合体させる方法

























4.脳を増強し身体の動きを取り戻す義肢
義足が通常の足と同じように機能する技術です。
これは一般的に普及しているのかと思っていました。
1)その仕組み




私としては、神経系ではなく、
脳本体の機能の解明の状況を知りたかったと思いました。

5.食料危機を乗り越えるツール「高速フェノタイピング」
世界中で約8億人が食料不足に苦しんでおり、
5歳未満で餓死する小児は毎年300万人を超えています。
そこで、食糧増産の方法はかなり研究され、
遺伝子組み換え作物は、一部で普及しています。

しかし、品種改良を体系的に行うには、
遺伝子の状況と作柄状況を比較分析する必要があります。
膨大な時間がかかる試験をしなければなりません。
それを高速で実現できる設備が、
米国ミズーリ州のダンフォース植物科学センターにあります。
その紹介がされています。

70ヘーベほどの「植物栽培ハウスでは、
小型もしくは中型サイズの植物1000株ほどが、
きれいに揃ってダンスを踊るように揺れていた。
室内の植物が揺れているのは、
180メートルのベルトコンベアーに乗って移動しているからだった。

中央ベルトに乗って次々に植物が現れ、
ある場所まで来ると新しいベルトに切り替わって進路変更し、
次の個所で別の流れに合流し、
随所に設けられたステーションに定期的に滞留しながら、室内を巡っていく。

各ステーションにはそれぞれ特殊機能が備わっている。
植物ごとに個別に調整された量の水を供給するステーションもあれば、
同様に肥料を供給するステーションもある。
重量を計測して記録するステーションや、
さまざまな角度からデジタル写真を撮影して、
高さ、太さ、葉の数、枝分かれのパターンとサイズなどの特徴を
記録するステーション、
近赤外線写真を撮影して水分含有量を記録するステーションもある。

植物はダンスを踊るように揺れながらステーションを周回し
やがて中央ベルトの所定の位置に戻され、
翌日にまだ同じプロセスが開始されるまで待機することになる。

室内の証明、温度、湿度は精密に設定され、注意深く管理されている。
おかげで、この部屋の責任者である科学者たちは、
(ストレス試験として)室温をかなり高温まで上昇させたり、
光合成の能力、日陰への適応、その他の試験のために)
照明の歯長分布と光度を操作したりできる。

以上、かなり画期的な技術が研究されていることは分かりました。
早急にその成果を享受できるようになってほしいですね。

2022年8月26日金曜日

「彼を知り己を知れば百戦殆からず」とは??

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 適職診断ツールCATCHが取りあげられた
 「日経クロステック誌」の記事をご紹介します。
ねらい:
 CATCHにご関心ある方は、以下をご参照ください。
 
12catset.pdf (newspt.co.jp)
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この度、日経BP総研の谷島宣之上席研究員のお力により、
日経クロステック誌に、
当社の適職診断ツールCATCHが紹介されました。
日経クロステックは、220万人の登録会員を擁しているそうです。

この記事は谷島氏が持っておられる「谷島の情識」という連載コラム
の一環で、今回のタイトルは
IT業界で生き残れるか、自分の適性を調べたら
「マネジャー失格」だった」
というジャーナリストらしいセンセーショナルなものでした。

内容は、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」ということで、
自分の能力特性を知る、相手の特性を知ることが、
ビジネスの基本になる、というものです。

私の書いたレポートを谷島氏が取捨選択した上で、
谷島氏が上野と対談するという形に仕上げられています。
分かりやすい記事になっています。ぜひご参照ください。

谷島氏は、自らのCATCH診断結果を堂々と公開されています。


こんなにはっきり「マネージャ」に向いていないという結果が出た例は珍しいです。
この記事の中で、谷島氏は過去にマネージャをやったことがあったが、向いていないので1年で終った、というご経験を紹介されています。
プレーヤーとしてのご自信が、
あえて「アンチマネージャ」を公開されているのです。
早速反響を呼んでいます。
「生」の情報は関心が高いのですね。


対談の内容は事例の紹介を含めて以下のテーマが取りあげられています。
「己を知る」では、
適職診断以外に、
マネージャ向きかプレーヤ―向きか、
人間系に強いか、物理系に強いか、が対象となっています。

ここでは取りあげられていませんが、私としては、
これ以外に、「類人猿診断」「右脳派・左脳派」にも関心があります。

「相手を知る」では、
相手が自分のビジネスライフに対して
役にたつ人かどうかの判断基準として
「先送りしない人」
「自立性のある人(言いなりでない人)」
「実行力のある人」
「責任をとる人」
「闘争心のある人」
の条件が紹介されています。

ご関心ある方は前掲の日経クロステック誌をご参照ください。
CATCHに関するお問い合わせは以下にお願いします。
mind-pc@newspt.co.jp


2022年8月22日月曜日

自衛隊は便利屋ではない!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 防衛力強化で中心テーマになる自衛隊に関する論考をご紹介します。
ねらい:
 自衛隊を便利屋にしてはいけません。
 大局観を持って自衛隊を強化しなければなりません。
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文藝春秋9月号に、ノンフィクション作家堀川恵子さんの
「自衛隊大物OBは告発する」
副題「農作業、雪祭り、家畜処分 自衛隊は便利屋なのか」
という寄稿が掲載されました。
(この記事は、友人塚本氏が教えてくれました)

冒頭に、
陸上自衛隊元幕僚長岡部俊哉氏の以下の発言が紹介されています。

災害派遣は任務であり、これを決して否定するものではありません。
一方で自衛隊は宇宙サイバーなど任務が多様化する中で
組織としてかなり無理を重ねており、
現場の指揮官たちは焦っています。
災害派遣は国民の支持を得ているので現役は声をあげられない。
政治との関係においてOBの私たちが訴えねばならぬことが
多々あります。

これが当寄稿の言いたいことのようです。
以下のような記述があります。

自衛隊は日陰者の存在から、災害時の出動による貢献によって、
国民から期待される組織になった。
(最近の世論調査で国民の9割が自衛隊に対して好印象を持っている)
しかし、地元からの評価を高めたいための政治家からの介入
(派遣要請)が多い。
(農作業への応援、家畜の殺処分、
災害派遣と言っても単なる個人的事故のレスキュー、
有名な札幌雪祭りへの参画、などもある)
災害派遣は、現場を無視した「数字優先」の有効でない場合もある。
(熊本地震の場合、北海道胆振当部地震の場合などの事例が
紹介されている)
これに対応するために隊員24万人の自衛隊は過労状態であり、
本来の訓練にも影響を与えている。

こういう記述もあります。
――自衛隊は便利屋ではない。
福島の原発事故の際、
原発敷地内の瓦礫の撤去まで自衛隊に頼ろうとした東電に、
当時の統合幕僚監部運用部長がぶつけた言葉だ。
まさに今、災害時のみならず中央から地方まで
「困ったときの自衛隊頼み」はすっかり定着している。

ところが本稿のむすびは、こうなっています。
特に何を言いたいのか不明です。

実名で踏み込んだOBの意気
そもそも自衛隊には災害出動さえやってもらえたらいいのか、
いや国防こそが務めなのか。
自衛隊の在りようをめぐる議論は、
何も強面のおじさんたちの専権事項ではなく、
国民自身が問われる問題でもある。
今回、自衛官にとってタブーとされる領域に
OBたちが実名で踏み込んだのも
「すべては後輩たちの業務遂行に資するため」との思いからだ。
その意気を生かす環境があることを祈りたい。

先に引用した吉田茂が防大一期生に語った(1957年)言葉には
続きがある。
「自衛隊が国民から歓迎されチヤホヤされる事態とは、
外国から攻撃され国家存亡のときとか、
災害派遣のときとか、
国民が困窮し国家が混乱に直面しているときだけなのだ。
言葉を換えれば、君たちが日陰者であるときのほうが、
国民や日本は幸せなのだ」

災害派遣そして国土防衛。
自衛隊に対する期待がかつてなく高まる昨今の状況は、
国民にとって決して歓迎されるべきものでないことは
肝に銘じておきたい。

この結論は無責任ではないでしょうか。
「自衛隊を便利屋にしてはいけない」が結論であるべきでしょう。

私は、自衛隊の貢献をもっと「見える化」すべきだと思います。
農作業の応援や各種災害救助の実績は当然のこととして、
訓練の実績も機密を考慮してですが、発表するのです。

それによって隊員の士気、勤労意欲は大きく高まり、
優秀な人材も集まるのではないでしょうか。
優秀な人材でなければ、
いざというときの臨機応変の対応ができません。
日本の将来は自衛力の強化なくしては成り立たないのですから、
その方向での主張を明確にすべきだと思います。