2017年12月28日木曜日

上野則男2018年年頭のご挨拶

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 2018年の年頭のご挨拶をお届けします。

ねらい:
 2018年も引き続き応援いただけますよう
          何とぞよろしくお願い申しあげます。

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  謹んで新年のご挨拶を申しあげます。

                    2018年元旦 上野 則男


注:私からの年頭のご挨拶は本年はこの形式をとらせていただきます。

第1幕 序章




第2幕 本題 

渾身の力を振り絞って、
エンハンス業務の宿痾を解決できるMIND-EVEの開発を完成させました。


 
しかし、現在その仕事をしている人たちの「変わりたくない症候群」
の壁に阻まれています。

 

それでは、と、その壁を避けるため
他社が担当している業務を「巻き取り」(分捕る)した場での適用
を目指しています。


 
しかし「巻き取り」をてこに事業を拡大しようという
積極的事業家を見つけるのに苦戦しています。
その対策セミナを開催します。
『巻き取り』によるエンハンス問題抜本解決戦略研究セミナ」

◆ 2018年2月22日(木)15時~
  
◆ ご参加料金:5,000円
 
◆ 詳細は以下のURLでご参照ください。


かたや、
MIND-EVEの有効性を高めるためAIも含め自動化を進めます。
成功者たちの名言
「思いがあれば問題は解決できる!!」
 
共同事業者募集中です!!お声かけください。



第3幕 終章

そういうことで、「おそれ多くも」
上野はあと10年現役で頑張ることにしました。
なにとぞご支援をよろしくお願いいたします。


陰で孫娘が応援してくれています。





新しいスタイルの研修が始まりました!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 システム企画研修社の新しい研修の途中成果をお伝えします。
 働き方改革の検討はどうなったかを知っていただきます。
 次の研修のご案内もいたします。


ねらい:
 次の研修「これが問題解決の王道だ!!」をぜひお勧めください。
 よろしくお願いいたします。
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当ブログ「問題解決について少し考えてみませんか」
http://uenorio.blogspot.jp/2017/10/blog-post_69.html
でご紹介したシステム企画研修社の新しい研修シリーズ
の第1弾が始まりました。


この研修シリーズの特色は以下のとおりなのですが、
今回開催されました「これが目標達成の近道だ!」の演習成果を
ご紹介します。

▼クリックすると拡大します▼
























この研修では、「それは何のために行うのか」
を探求する手法を学んでいただくのですが、
今回は「働き方改革は何のために行うのか」
を演習題材としてとりあげました。


「目的・ねらい記述書」というワークシートを使うのですが、
この作成要領は次のとおりです。


1.まず検討対象の「業務視点」で、
 それは何のために実現しようとするのか(=ねらい)、
 を明らかにします。


2.その際、ねらい項目の整理軸(フレーム)に
 「早い、うまい、安い、人の能力・意欲向上、その結果としての成果増大」
 を用い、総合的に追求します。


3.挙げられた項目の中から優先度を決め、優先度が高い項目について
 ねらいの定量化・具体化を行って目標設定します。


4.ついで、優先度が高いねらい項目の一つずつについて、
 システムまたは検討する仕組みとしてはどうでなければならないか
 (=目的)を検討します。


5.その関係を線で結び、総合的な検討を加えます。


さて、演習結果はこうなりました。

Aチームは、働き方改革の基本課題は、
「個人の特性に合った多様な働き方の実現」としました。


その「目的・ねらい記述書」は以下のとおりで
(上野が若干手を入れています)、その特色はこうです。


1)誰にとってのねらい項目なのかを、
  P=働く者、E=企業、 で区分しています。
 当記述書のガイドでは、
 ステークホルダを分けるようになっています。


2)優先度と定量化・具体化は記述されていません。

▼クリックすると拡大します▼


















受講生が、今の「働き方」に対して
どのような問題意識を持っているかが分かります。


Bチームは、働き方改革の基本課題は、
「労働生産性の向上(開発業務の場合)」としました。

その特色はこうです。

1)労働生産性向上の必要事項が
 スッキリした形で分かりやすく整理されています。

2)労働生産性の向上には、以下の3点が必要
  ということが示されれいます。
  これは、上野がこの件の重要事項として主張している点です。
  
  a.業務実施方式の整備
  b.生産性を評価する人事制度・仕組みの整備
  c.マネージャ(会社)の積極的参画
  
  この点の企業ぐるみの実践をされているのがSCSK殿です。
  別項「SCSKのシゴト革命」をご参照ください。


▼クリックすると拡大します▼


















この「目的・ねらい記述書」は、
以下の17種類の領域別の様式があります。

1.   経営の改善
2-11 ライン業務の改善要求条件
2-12 ライン業務の改善達成条件
2-21 スタッフ業務 支援系業務の改善要求条件
2-22 スタッフ業務    〃    達成条件
3.   仕組みの整備
4-1 情報システム開発(業務系)
4-2 情報システム開発(情報系)
5.  情報システム改善
6.  情報システム再構築
7.  問題解決
8-1  イベント等の企画 (イベントの対象者が法人)
8-2  イベント等の企画 (    〃    個人)
9-1 製品・サービスの提供(汎用版)
9-2 製品・サービスの提供(特定版)
10-1 新製品サービス構想(個人向け)
10-2 新製品サービス構想(法人向け)
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このシリーズの次の研修は、
「これが問題解決の王道だ!!」です。
2018年1月23日(火)開講です。

 E.残業削減のヒントを掴める!
   「これが問題解決の王道だ!」エッセンス実践シリーズ

▼あらゆる問題解決の ガイドを収録した「問題解決バイブル」を
 入手していただきます。その上で、、
 「衆知を集めて納得のいく解決策を検討できる」問題点連関図手法を
 学んでいただきます。
 その手法を実践して、「問題解決」の成果 を実現していただきます。
 
▼開催日時:
 ・集合研修2018年1月23日(火)、実践報告会2018年3月2日(金)
  いずれも9:30~18:00
   
▼参加料金:お一人98,000円(消費税別)
   
▼詳しくはこちら
  http://www.newspt.co.jp/data/kensyu/open/e.mondai.pdf

この研修では、残業削減を演習テーマとして取り組んでいただきます。

ここで使用する手法は問題点連関図手法です。
一度研修された方も復習していただくと良いのではないかと思います。

問題点連関図手法の分かりやすいサンプルを以下にお示しします。


台所の整理整頓は何のためにするのでしょう
(目的・ねらいを明らかにします。問題点連関図右方展開)。

▼クリックすると拡大します▼



その目的のためにはどうすればよいのでしょう
(解決策を検討します。問題点連関図左方展開)。

▼クリックすると拡大します▼













皆様の奮ってのご参加をお待ちしています!!

2017年12月27日水曜日

「SCSKのシゴト革命」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 SCSK殿が厚生労働省主催の表彰で
          最優秀賞を取られたことをご紹介します。
 その背景等が詳しく紹介されている著書をご紹介します。
 当社のほんの少しの貢献についても付言させていただきます。
 トップが積極的リーダシップを取らないと、
     会社は変わっていかないことを再認識していただきます。


ねらい:
 日本のトップは
  もっともっとリーダシップを発揮していただきたいものです。
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SCSK㈱殿は、
厚生労働省主催第1回「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」
において、「大企業部門・最優秀賞」を受賞されました。

全日本企業の中で、製造業1社と並び、
ブラック業界として名だたる情報サービス業界の企業が
トップになるとは信じられないことではありませんか!!

この賞は、こういうものです。
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1.「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」について

本表彰は、
労働者一人ひとりの労働生産性向上の取り組みが図られていること
と同時に、
魅力ある職場づくりを実現している企業・職場を表彰するものです。

本表彰では、以下の評価項目が審査基準とされています。
 <評価項目>
(1) 経営理念(方針・展開) 
(2)労働生産性の向上(付加価値向上と効率化)
(3)雇用管理の改善(働きやすい・働きがいのある職場づくり)
(4)組織成果(組織への好影響)

2.SCSK殿の評価のポイント
SCSKは以下の取り組み・制度が評価され、
「最優秀賞(厚生労働大臣賞)」を受賞しました。

【最大の特徴】
経営トップ主導による
働き方改革運動「スマートワーク・チャレンジ(スマチャレ)」
への取り組みと、
業務のクオリティ・職場コミュニケーションの変革による生産性向上

【その他、評価ポイント】
(1) 健康的な働き方を優先することで一時的な業績ダウンも覚悟する
 と経営トップが明言し、顧客にも自ら手紙を書き理解を求めるなど、
 強いリーダーシップの下で推進
 
(2)作り直し作業による納期遅延をリカバーするために
 発生しがちだった長時間残業に対して、全社標準プロセスを構築し、
 その運用を徹底することで、生産性向上を実現
 
(3)仕事のシェアやバックアップ体制の整備による
  残業削減や休みやすい環境づくりなど、
  コミュニケーションを重視した組織改革を実施
 
(4)残業の有無にかかわらず一律支給する手当の導入など、
  減少した残業代を全部還元する制度とし、
  社員が所得減を気にせず業務の効率化に取り組める制度を構築
 
(5)現在の有給休暇取得率は95%となっているが、
  100%取得を躊躇しないように、
  病気などの不測事態に利用できるバックアップ休暇(年5日)を導入
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SCSK殿にSCS時代を含め30年以上ご縁をいただいてきた
上野からみまして、
この受賞理由は的確に本質を掴んでいると思われます。


それはこういうことです。


1)この一連の大改革は、
  中井戸会長のリーダシップで実現したものです。
  会社を変えることは、トップにしかできません。
  
  野村総研殿で、
  本邦初のエンハンス業務整備に力を入れられたのも
  藤沼社長(当時)でした。

  どんなにスタッフが優秀でも、
  トップの支援なしで会社の改革を行うことはできません。
 
2)中井戸会長が、カンと信念と決断で、
  「残業削減しても何とかなる」
  と一連の働き方改革を断行されたのです。
  この決断は、たいへんな冒険です。
  
  仕事の生産性は、仕事のやり方を変更しなくても、
  気合を入れて取り組むだけで、
  少なくとも2割は上がるということは通説です。


  中井戸会長は、
  そういう読みをされたかどうかは分かりませんが
  結果はオーライでした。
  
  誰もそんなことに手を突っ込もうとはしなかったことで
  成功されたのです。
  中井戸会長は後世に残る腹の座った大経営者だと思います。

  
3)浮いた残業代部分を
  みなし残業代ですべて社員の給与に還元されている。

  これもすごいですね。


  社員にとっての残業代は給与の一部です。
  残業代が無くなったら、
  若い社員の生活設計はすっかり狂ってしまいます。


  別項の「逆説の日本経済」において、
  日本電産の永守社長も自分の若いころを振り返りながら
  「生産性向上で残業が減ったら社員に還元する」
  と言われています。


  SCSK殿は、早くもそれを実現してしまったのです。


4)働き方改革を促進する諸制度の整備をされた。
  これも人事部門の権限責任を超えていることを
  どんどん実現されています。


5)同時に生産性向上を実現するための業務改革を推進された。
  「SCSKのシゴト革命」では、
  この点に焦点を当てて解説されています。
  
  現場は基本的には「変わりたくない症候群」ですから
  トップのバックがあっても
  仕事の方法を変えていくということについては、
  並々ならぬ工夫・努力が必要です。
  
  それを推進されたSE+センターのご苦労が丁寧に紹介されていて
  同様の変革を実現しようという方にとっては
  大変参考になると思います。
  
  現場は、すんなり新しいことを受け入れてはくれません。
  そこをあの手この手を考えて乗っていただかなければならないのです。
  このセンター長は、ピーク時に「トイレに行く時間も惜しい」
  と言っておられたのを思い出します。

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なお、SCSK殿は、2016年11月にも「健康寿命を延ばそう!アワード」
でも厚生労働大臣最優秀賞を獲得されています。


「SCSKのシゴト革命」の第1章「働き方改革はなぜ実現できたのか」
は、本書全体の要約になっていますので、
少し長くなりますがご紹介します。
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IT業界の常識は世間の非常識

IT業界は、長時間労働が常態化している
ブラック業界の代表例とされる。


24時間365日稼働する情報システムを開発・保守・運用する
というIT技術者の仕事の特性上、夜間・休日の問い合わせ対応や
作業がどうしても発生するからだ。


徹夜してでも顧客の要求に応えたり、トラブルの収拾に
当たる技術者を「良い技術者」とする風潮も根強い上に、
優秀な技術者ほど難しい仕事を抱え込んでしまう傾向もあって、
長時間労働が広く蔓延していた。


これではIT業界の離職率が高いのもムリはない。

かつてはIT技術者といえば、知的で将来性のある
「あこがれの職業」だったが、今では給料の割に激務の
「あまり就きたくない職業」になってしまった。


学生の就職人気も長らく低迷しており、
優秀な人材はなかなか集まらなかった。


そうしたIT業界において、
SCSKがいち早く働き方改革に取り組んだ背景には、
経営トップの強い思いがあった。


当時、社長を務めていた住友商事出身の中井戸信英氏は、
知的労働者であるはずのIT技術者が長時間労働で
疲弊していく状況に強い懸念を抱いていた。


つまり「長時間労働は当たり前」というIT業界の常識は、
中井戸氏には非常識としか思えなかったのだ。


「社員が心身の健康を保ち、仕事にやりがいを持ち、
最高のパフォーマンスを発揮してこそ、
お客様の喜びと感動につながる最高のサービスを提供できる」。


こうした信念に基づいて、
新会社発足を機にSCSKは働き方改革を加速していった。


2012年4月には就業規則を改定して、
フレックスタイム制を会社に適用。


続く同年7月には、裁量労働制を導入すると共に、
いよいよ残業時間の削減に手を付けた。


約170ある部署のなかで、特に残業時間の多い32部署に
7~9月の残業時間半減を命じた。


各部署は業務の見直し・負荷分散やノー残業デーの推進、
会議の効率化によって、何とか目標を達成した。


残業半減運動の結果、それまで月30時間弱あった
全社の平均残業時間も20時間強にまで減った。


だが、成果が上がったのはいっときで、
繁忙期である年度末(2013年3月)には、
また30時間弱に戻ってしまった。




社員の意識が変わった
「組織的な取り組みでないと、
社員一人ひとりの意識は変わらないし、改善活動は定着しない」


そう考えたSCSKでは2013年4月から残業削減と
有給休暇(有休)の取得促進施策
「スマートワーク・チヤレンジ20(スマチャレ20)」を開始した。


月平均残業時間20時間と、年20日の有給休暇取得(100%取得)を
目標に掲げた。
目標実現に向けて様々な手を打った。


その一つがスマチャレ20によって減少が見込まれる残業代への対策だ。

有体・残業目標を達成した組織単位で
特別ボーナス「スマチャレインセンテイブ」を支給した。


会社の本気度を社員に示して安心感を与えると共に、
組織単位での取り組みを促すのが狙いだ。


有給休暇を取得しやすい環境も整えた。

飛び石連体の合間の平日や土曜日が祝日と重なってしまうときの
月曜日を「一斉年休取得日」に設定し、休暇取得を強く呼びかけた。


顧客には年度初めに社長名でその旨を伝える手紙を出し、
理解を求めた。


心置きなく有体を100%取得できるよう不測の事態に備える
5日間のバックアップ休暇も設けた。

有休100%取得後に体調不良など
やむを得ない事情で休まざるを得ないときに利用できる。


2年目の2014年4月からは全社員が実勤務時間を正確に記録する
制度を導入して「モグリ残業」の撲滅に努めた。


さらに残業時間の長さによって、
残業申請の承認権限者が上がるようにした。

月80時間超の残業は社長承認にした。


このほか残業時間が月60時間を超えたり、
休日出勤が発生した場合には、
当該社員の所属部門にペナルティーを課す制度も導入した。


こうした会社の取り組みに社員の意識も変わっていった。

長時間労働を「是」とする固定観念が覆され、
新しい働き方を模索する動きが自然発生的に生まれた。


時間短縮を目指して「立ち会議」を導入したり、
顧客を訪問する人数を絞るなど、現場発の様々な取り組みが実施された。


その結果、2014年度には月平均残業時間が18時間16分となり、
目標を達成した。有給休暇取得率97.8%となった。





就職人気は急上昇

スマチャレ20以外にも、SCSKでは働き方改革に向けた
様々な施策を行っている。
2015年4月からは「健康わくわくマイレージ」と呼ぶ
健康増進施策を始めた。


これは毎日の行動習慣
(朝食、ウォーキング、歯磨き、週2回の体肝日、禁煙の5項目)と、
年1回の健康診断結果
(肥満、血中脂質、糖代謝、肝機能、血圧の5項目)をポイント化し、
達成度に応じて報奨金を与えるというもの。


報奨金は個人分のもののほかに、部署分のものがあり、
部署全体で健康増進に取り組むムードが熟成されるようにしている。


SCSKの働き方改革の取り組みは社外からも高く評価されている。

2014年には日本経済新聞社がまとめた「人を活かす会社」調査の
総合ランキングで1位になったほか、
経済産業省と東京証券取引所が選ぶ「健康経営銘柄」に
2014年度から3年連続で選定されている。


直近では2017年3月に厚生労働省が選ぶ
第1回「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」の
大企業部門・最優秀賞(厚生労働大臣賞)を受賞している。


働き方改革の成功が広く知られるようになるに伴って、
SCSKの就職先としての人気も高まっている。


楽天のクチコミ就職情報サイト「みんなの就職活動日記」と
日経コンピュータ、日経BP総研イノベーションICT研究所が
共同で実施している「IT業界就職人気ランキング」によると、
2018年春入社の学生の間でSCSKの就職人気は、
NTTデータ、富士通、グーグル、楽天に次いで
IT業界5位だった。


SCSKが発足したころ、就職活動をしていた2013年春入社の
順位は25位だったことから、まさに急上昇といえる。






「残業しなくて儲かる」理由

残業時間が減り、有給体暇取得日数が増えたと言うことで、
社員の労働時間は確実に減っている。


「人月」という言葉に象徴されるように、
労働集約型産業の色合いの強いIT業界において労働時間が
減れば、売上げが下がるのが自然だ。


前述のようにSCSKの場合、浮いた残業代を社員に
全額還元しており労務費は変わらないため、
利益も減るはずだ(スマチャレインセンティブは2014年度まで。
2015年度からは残業の有無によらず20時間分の手当を支給)。


ところがSCSKは
会社発足以来5期連続で増収増益を続けている。

それどころか本業の儲けを示す営業利益率は年々上昇し、
2016年度(2017年3月期)にはついに二桁の10.2%に達した。


2011年度の営業利益率は6.3%だったから、
5年間で実に3.9ポイントも改善したことになる。


SCSKと競合する大手・準大手クラスの
システムインテグレーターの営業利益率の相場は5~7%程度
といったところ。


10%を超えるのは、野村総合研究所(NRI)ぐらいだが、
同社は証券向け共同システムを筆頭に利益率の高い
大規模案件・大口顧客をいくつも抱えている。


これに対してSCSKは
「大規模案件も増えてはきているが、基本は中小規模の案件を
着実にこなして利益を積み上げている」
(取締役・専務執行役員の遠藤正利氏)という。


それではなぜSCSKだけが、
競合から頭一つ抜ける営業利益率10%を達成できたのか。

それは同社が発足以来、「働き方」の改革と並行して、
「仕事のやり方」の改革に地道に取り組んできたからだ。

【営業利益率の比較】


























経営統合が決まった直後から各種の委員会を立ち上げて
全社から有識者の知恵を集約し、
業務クオリティの向上に向けた施策を次々と打ち出した。


具体的にはシステム開発・管理プロセスの標準化と浸透、
リスクマネジメントの経営レベルからの徹底などである。


本当にすごいのは、これらの施策の意味や狙いを現場が理解し、
自発的に実行するよう様々な手立てを講じ、
それを愚直かつ積極的に推進したことだ。


これにより属人的だったり、
その場限りだった仕事のやり方を大幅に排除。

システマティックに標準を基に仕事ができ、
リーダーが変わっても同じ品質管理ができる仕組みを整え、
仕事の質を高めた。


結果としてシステムインテグレーターの利益を押し下げる
最大の要因である問題プロジェクトの発生を押さえこみ、
残業をしなくても、高い営業利益率を上げることに成功した。
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ここで、
本書の帯で強調されている「問題プロジェクトはこう潰せ」について
触れておきたいと思います。


本書184ページに年度別の赤字額の推移が掲載されています。
この数字を公開されているのは、企業の自信の表れと思いますが、
問題プロジェクトはなかなかなくならないのです。




【 年度別の赤字額の推移】


  



















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実は弊社は、2006年から9年間に亘って、
失敗案件回避対策研修を実施させていただいています。


2006年頃は,ITバブルがはじけて受注条件が悪化し、
情報サービス事業は各社とも破たんの危機に瀕していました。
日立・富士通も緊急事態宣言をするくらいの状況だったのです。


当時SCS殿の住友商事出身のA社長は
「人材・資源を投入して赤字になるなら事業を継続する意味がない。
至急対策を講じよ。対策費として〇〇を用意する」
と生産技術部門の担当役員に命じました。


担当役員から相談を受けた弊社が
生産技術部門のコアメンバと共同の突貫工事で研修を開発しました。


初回研修は、社長の命があってから2か月以内に開催しました。


以下の単元が各1日で実施されました。
今のご時世では考えれない金曜土曜連続・隔週開催で、
研修カリキュラムは順次リリースという状況でした。


この研修は、研修と称していますが、
赤字案件撲滅を目的にしていましたので
すべて実践に繋がる内容としました。
 
 要件不備の現状認識
 要件確定対策 機能要件の部
 要件確定対策 非機能要件の部
 お客様との取り決め対策
 ヒアリング手法
 交渉術
 要件確定の実践


短期間の募集にも拘わらず、
1回25人の定員はすぐに一杯になりました。
社長の命は強いですね。


この時もトップのリーダシップを痛感しました。


この研修は途中の改訂を含み9年間で合計40コース開催し、
合計800人弱が参加しました。


時期によっては定員に満たないときもありました。
そういうときには、役員会等でその状況を報告していただくと
てきめんに効きました。


本書は最近の活動に焦点を当てていますので、
この施策については、紹介されていませんが、
「業務クオリティ向上への取り組み」(本書副題)としては、
こういう伏線もあったのです。
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本書で取り上げられている活動は以下のとおりです。
日経BP総研の研究員の星野友彦氏が執筆したのですが、
なかなかの突っ込みで完成度の高い紹介本になっています。
 
 ・ 大規模案件向けの体制整備
 ・ 問題案件防止対策
 ・ 開発標準SE+の改善・定着化活動
 ・ 社員の専門能力の見える化
 ・ 戦略分野へのリソース集中
 ・ ニアショア体制の確立
 ・ パートナー関係の再構築
 ・ 一流企業への挑戦――品質証明書の発行


最後の章で谷原社長の決意表明が掲載されていますが、
これだけのことに全社一丸となって取り組まれれば、
情報サービス業界のナンバー1になることは
現実的目標になりうると感じます。


日本の業界のためにも頑張っていただきたいと思います。

「逆説の法則」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 世の中に通用する逆説というのはどんなものがあるかを
                              知っていただきます。


ねらい:
 「空けるが勝ち」「分けるが勝ち」「かけるが勝ち」「負けるが勝ち」を
 覚えて使いましょう。


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この本は西成活裕東大先端科学技術センター教授が書かれた
逆説を系統的に分析整理された本格的な内容です。


著者は、数学専門なので、逆説の根拠について
科学的に「証明」しておられます。
逆説総まくりでたいへん興味深い試みです。


著者の言われる逆説の全体像は以下の表のとおりです。


逆説の法則
その区分
空けるが勝ち
1.急がば回れ
2.バケツリレー理論
3.スケジュール
分けるが勝ち
1.ランチェスターの法則
2.ローカルとグローバル
3.適正サイズ
かけるが勝ち
すり合わせと行列
負けるが勝ち
1.利他行動
2.押し引きと間合い


その内容についてご紹介します。

その論調を知っていただくためにこの部分の原文を掲載させていただきます。
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空けるが勝ち その1:急がば回れ


まず、多くの逆説に共通している科学的ゆとりが、
わざと問を空ける、というものであった。

そこで、逆説を支える第一の法則として、
「空けるが勝ち」というのを提案したい。



この例として、前章で議論した
渋滞吸収走行のロジックを取り上げよう。

これは「急がば回れ」という逆説の典型的な法則で、
以下の簡単なモデルで科学的に理解することができる。

まず、【図9】のように道路を区切ってたくさんの区画に分ける。


そして、一つの区画には車は1台しか入れないとしよう。

すべての車は右に進んでいくが、そのルールとして右隣りの区画に
車がすでにいれば、もちろん右には進めないとする。

そして右の区画にまったく車がいなければ、
1時間ステップで1区画だけ前に進める、
ということを繰り返していく。


ただし、より車に似せるために、
もしもある時間で右の区画に車がいて動けなかった場合は、
再び右の区画が空いて動けるようになっても
1回休んでからまた動き出す、というルールにする。

これは、一度止まった車は再び動き出すのに少し時間がかかる、

という車の重量を考慮したもので、
専門論文ではスロースタートルールと呼ばれている。


トラックなどを想像すれば、
一度止まってしまうと再び動き出すのに少し時間がかかることは
容易に分かるだろう(「」は後述)。

以上のルールで車を一斉に動かしていった例が
【図9】に示されている。

上段の図は、時間が経つにつれて(t,t+1,t+2…)、
渋滞領域に次々と車が到達し、渋滞が成長していく様子を表している。


はじめはたった2台の車が渋滞していただけであるが(時刻 t)、
5時間ステップ後には渋滞に巻き込まれている車が5台に増え、
このまま車が後ろから来続けると
もっと大きな渋滞に成長していくことが分かるだろう。


次に下段の図であるが、これもはじめにまったく同じ2台の
小さな渋滞が発生しているが(時刻 t)、
その上流からわざと車間を空けた車が近づいている、
という状況である。

下図ではこの車を「」で表している。

これが以前に説明した渋滞吸収車であり、
渋滞に近づく前にどこかでいったん遅く走って車間を空け、
その状態で渋滞領域に近づいていく車を表していると考えればよい。

そうすると【図9下】で分かる通り、
今度は2時間ステップで渋滞は消えてしまい、
すべての車がスムースに動いていることが分かる。

この図以降の時刻では、上段は悲惨な渋滞が待っているが、
下段はまったく渋滞がない状態になっており、
この地獄と天国の差は
初期のたった少しの車間距離の違いだけである。

上段の「」が、渋滞吸収運転をしなかった場合の
同じ車を表している。

つまり、下段の図では前に詰めることができるのに、
あえて損に見えるような車間を空けることで、
後になって道路全体として大きなプラスを得たのである。

しかもこの場合、よく見ると渋滞吸収走行をした車自体も、
同じ5時間ステップ目の上下段の「」の位置を比較すると、
1区画だけ右に進んでいることが分かる。

つまりゆっくり走って車間を空けたにもかかわらず、
結局渋滞に巻き込まれないことで走行時間が短くなっており、
渋滞吸収車にもメリットが出ているのだ。

もちろん燃費についてはこの渋滞吸収運転によって
向上しているのは明らかである。

------------------------------ 【図9】 ------------------------------

















交通渋滞を表した図。

上が車間距離をとらない場合で、下が車間距離をとっている場合。
渋滞の上流ではゆっくり走って車間距離を開けた方が得なのがわかる。
」は下図では渋滞吸収車を表しており、それに対応する車を
上図でも同じ「」で記した。
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空けるが勝ち その2:バケツリレー理論
川から水をバケツで汲みリレーで目的地まで渡していく場合、
一杯にすると重くてスピードが遅くなる、
ほどほどの量が最高の効率を実現する、
というものです。
最適量が計算できるようです。

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空けるが勝ち その3:スケジュール


この「空ける」という考えは、
スケジュールを組む際にも有効に働く。


例えば忙しい人は手帳にびっしりと予定が書き込まれて
いると思うが、例えば前の会議がどうしても長引いた場合、
それが次々と後のスケジュールに影響してしまうだろう。


これはまさに自動車の玉突き衝突事故と同じことである。

この場合、予定と予定の間に例えば
15分間程度の隙間を入れておくことをお勧めしたい。


これが車でいえば適切な車間距離をとることに相当し、
かえって効率が良くなる可能性があるのだ。

マイナスとしては、1日に入れることができる予定が
一つ減ってしまうかもしれないが、
メリットとして玉突き事故を防止でき、
またその15分で前の会議の内容を頭の中で整理できたり、
メールのチェックや急ぎの返信が可能になる。

こうすることで、トータルで見れば組織として生産性が
上がる可能性も高くなるのだ。

実際に取締役クラスの人にあえて車間距離に相当する
スケジュールの隙間を導入したら、
組織の意思決定に関わる渋滞が減った
という報告を受けたことがある。

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分けるが勝ち:その1:ランチェスターの法則

全体を部分に分けその部分ごとに個別対応していく方が、
多くの場合でこうりつがよくなるのだ。
これはランチェスターの法則と言われており、
もともとは軍事戦略の中で研究されてきたものである。


敵をすべてまとめて狙うのではなく、
うまく部分に分割し、
先ずはその一つの部分だけを集中して狙っていく方が
結局は有利に戦うことができる、
ということが数学的に証明できるのだ。


として分かりやすい事例で解説されています。


分けるが勝ち:その2:ローカルとグローバル
全体をつなげると効率がよくなりそうですが、
事故があったりするとその影響が広範に及んでします。
そこで、ネットワークなど
ほどほどのところで切れるようにしておく必要があります。
その考え方を示されています。


分けるが勝ち:その3:適正サイズ
組織運営には適正規模があり、
大きくなりすぎると大企業病が発生することはよく知られていています。


人類学者のロビンダンパー氏の提唱する
人が安定して関係を保てる人数の上限は150人としている
ダンパー数が紹介されています。


これについては50人という説もあり、
これに基づき学校のクラス人数が決まっているという説や、
立石電機(オムロン)の事業の分割基準が50人とか
言われたことがありました。


かけるが勝ち
これは、時間のことを言われています。


時間をかけて準備をした方が、
ミスが少なくなってかえってトータルで早く終わる、
ということは様々な場面でみられることである。


工場では、ある程度ゆっくり作業した方が結果として早く終わる、
ということが知られており、
これは不良品が出にくくなるため、その結果手直しが不要になり、
効率化につながるというロジックである。
「急いてはことを仕損じる」のである。



負けるが勝ち:その1:利他行動

この原理をゲーム理論の例で証明されています。


負けるが勝ち:その2:押し引きと間合い

次に、負けるが勝ちの「負ける」を広い意味で捉え、
そうしたいと欲した時に、わざと逆のことをすると
後でうまくいく、ということについて考えてみよう。



以前に営業戦略のところで紹介したが、
何かを相手にプッシュしたい時には、
逆に引く感じで接するとうまくいく、というものがある。



また、これまでの例でこのパターンに当てはまるものとして、
偉い人ほど偉ぶらないことで、
より相手に好かれていく好循環ができる、
という例も挙げられるだろう。



また、褒めてほしい時に、自ら自慢話をしない、とか、
好きな人に好きな態度を見せない、

などもこれに当てはまる事例である。



先日ある催しで、司会歴30年の人とお話をする機会があり、
興味深い話を聞いた。



それは、司会をしていると会場がうるさくなる時があるが、
実はうるさい客を鎮めるには、「静かにして下さい」と
大声を出すのではなく、あえて自分が静かに話す方がいい、
というテクニックである。



これを聞いてから、
私は大学の講義の中でこのテクニックを多用している

かなり効き目が高く、
また大声を出さずに済むのでとてもよい方法である。



なぜ静かになるか、というロジックだが、
まず私が静かに話すことで、

学生は自分たちの声が邪魔になって
私の話が聞けなくなる。



そうすると、話を聞きたい学生がおしゃべりをしている学生を
制止することもあるし、また話をしている学生自身も
何となく講義を聞いていた場合、私の変化に気付いて
こちらに注意を向けるようになるのである。



直接でなく間接的に訴えることで、
学生の自発的な変化をもたらすことができるため、
お勧めのテクニックである。



さて、以上から推測できるのは、自分と相手の間には
適当な問合いが常にあり、自分が押せば相手は引き、
そして自分が引けば相手は押してくることで、
間合いを一定に保とうとするのではないか、ということである。



重要な点は、自分が引くことで相手はそこを埋めようとして
自発的にこちらに向かってくる、ということだ。



自分がわざと引くことで一瞬損をしたようであるが、
その結果として相手は自発的に行動し、
相手を内面から動かしていることになるため、
結局当初の目的は達成しやすくなるのではないだろうか。



これは、自分がわざと謙遜すれば、
その落とした分を埋めようとして様々な褒め言葉を
相手からかけてきてくれるのと同じであろう。



(中略)


失敗についても同様で、
期間設定を長くとれば失敗は無駄にはならず、
やはり「負けるが勝ち」なのだ。


グーグルは「賢く失敗せよ」という標語を社内で掲げており、
これは皆にリスクを取ってほしいというメッセージである。


そうでなければ革新的なアイディアは生まれてこない、
ということで、社内に失敗を許容する風土を構築しているのだ。



日本はここが弱点で、失敗をすると傷物扱いになり、
傷の無いことが価値があるものだという風土があるように感じる。



失敗しなかった人が出世していく官僚組織は
その最たるものであろう。

失敗を認めないと萎縮して小さな成果で終わってしまうだろうし、
大きな挑戦には失敗がつきものなのである。



そしてなぜ失敗したか、を問うことの方がもっと大切で、
失敗は成功の元なのだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
当書では第3章で「日本の進むべき道」を示されています。
西成先生はどのように言われるのでしょうか。
お読みください。


以下私のこれまでの経験から四つの点を指摘したい。
まず、小さく始めて成功事例を作り、
その後に水平展開していく戦略である。
いくらロジックを尽くしても、結果が出ないと信用されにくい。


また時間をかけてロジックを説明する暇が無いのがふつうである。
そこで、小さな成功事例を作れば興味を持つ人も出てきて、
説明を詳しく聞きたい、という人も増えてくる。
(上野注:そのとおりですね)

その時点で初めてきちんとプラスヘ転じるロジックを説明すれば、
相手が自発的に聞きに来ているため効果的である。
したがって、

初めに長期的な考え方の意識が高い少数のメンバーを集め、
限定した状況で成功させることが肝心である。


そうなると、

そのメンバーのモチベーションは相乗効果でさらに向上するし、
周囲からも信頼が高まっていく。
その後に興味を持った部署にノウハウを展開していけば、
最終的に全社プロジェクトとして育つ可能性が高くなるのだ。


初めから大きく始めるとうまくいかないことが多いため、
まずはこの戦略で進めていくことをお勧めする。

二つ目の推進方法は、外圧をうまく利用するものである。
日本の組織は外からの圧力に弱い。
(上野注:そのとおりです)


例えば、海外にある工場などで提案を展開し、
そこで成功して地元のメディアなどで取り上げてもらう。
それが噂になれば、
逆に日本にある本社に問い合わせなどがたくさん来ることになり、
その対応をするために
全社が中から一気にまとまっていく可能性があるのだ。


中を攻めたければ外から、という考えは、
様々なスケールの組織で有効であるため、
戦略の一つに加えておいてほしい。

三つ目は、

社内でロールプレイング議論をする時間を作ることである。
これは、
ある提案を議論する際に、ただ単に会議で報告を受けて皆で考える、
というものではなく、
全員をまず賛成派グループと反対派グループのどちらかに
機械的に振り分け、相手を論破していく議論をする。


次にその賛成派と反対派を入れ替え、
また相手を論破する勝負をするのである。
その際に、自分の真意は賛成でも反対でもどちらでもよい。
とにかく割り振られた立場で
徹底的に相手を論破する議論を展開していくのだ。


これをすることで、

両方の立場の真意が自然に理解できるようになり、
また様々な盲点にも気づくようになる。
その後に採決をすれば、より納得のいく、
そして正しい方向に向いた結論が下せるようになるだろう。


これは特にある提案に対して意見が割れている時ほど効果的で、
このロールプレイングによって
組織内での対立が解消したという事例もあるのだ。
やはり一時的でもその当事者になることで、
これまで気が付かなかったことが見えてくるのである。

四つ目は責任の所在の明確化である。
日本の組織は、東京オリンピックの準備を見ていても、
東京都、日本オリンピック委員会(JOC)、大会組織委員会など、
様々な機関が関係して一元化されているわけではない。


一つの組織内でも、
何かのプロジェクトがある場合に
その責任者が明確になっていない場合が多い。
そのような時、何か問題が起こると、
お互いがお互いを責めて泥沼になり、
時間をかけているうちにうやむやになっていくのが通例である。


逆に何か問題が起こっても誰も責任をとらずに済ませようという
悪知恵なのでは、とさえ感じる時もあるほどだ。


このような体質では、
長期的なものの考えをする人はいなくなり、
自分の在任中だけうまくマイナスにならなければよい、
という思考に陥ってしようだろう。


これに比べて、老舗企業は以前述べたように責任者も明確で、
自覚を持って長期的な戦略を練ろうとするため、
数年で交代する大企業のサラリーマン社長とは
まったく異なる人たちであるといっても過言ではない。


短い任期では、今あえてマイナスをとって10年後に回収する、
という発想はまず出てこない。
したがって、もしも重要条件ならば、
それについては一生責任を負っていく
組織のシステムと本人の覚悟が必要だと私は思う。


(上野注:これらの主張は「残念ながら」
逆説的ではなくまったくの正論ですね!!) 
 
以上、逆説を組織で展開する際のヒントを述べたが、
あくまでもきちんとしたロジックが大前提であり、
それが盤石に構築できていれば自ずと賛同者は
増えていくはずである。


そしてその長期計画を明確にして組織で共有し、
その通りになるように
皆で強い意志を持ってバックキャスト的な努力をしていくことが
重要なのである。


「食の文化地理」石毛直道

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日本および世界の食に関する情報を得ていただきます。
 今まで知らなかったことが一杯でビックリです。

ねらい:
 ぜひ、現本でお読みください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
石毛直道先生は、日経新聞「私の履歴書」11月のご担当でした。
ビックリする新事実が多かったので、
最もコンパクトなこの本(文庫版、290ページ)を読んでみました。



本当にビックリです。
30年以上に亘って世界を調査されたのです。
その結果分かったこともビックリですが、
なるほどそうだったのか、ということばかりです。


その本の序章の一部をご紹介します。
この序章が本論の要約になっている面もあります。
太字部分は原本そのままです。


【主食的な食物の分布】
まず「主食」ということばについての但し書きをつけておこう。


主食という観念は世界の民族に共通するものではない。
たとえば、ヨーロッパの言語には主食にあたることばはなさそうだ。
パンは、食卓にならべられる食べ物のひとつにすぎず、
食事の主役ではない。


肉や野菜の料理は、パンを食べるためのおかずではない。
パンは、スープ、肉料理、野菜料理などの皿とともに、
食事を構成する食品のひとつとして位置するものである。


それにたいして東アジア、東南アジアにおいては、
食事というものは主食と副食の2種類のカテゴリーの食品から
構成されるものである、という観念が発達している。


たとえば現代日本語では、
飯(あるいはご飯)に対置されるのがおかずであり、
正常な食事というものは飯とおかずの両者から構成されている、
という観念がある。


そして食事そのものが飯ともよばれる。
飯を飯(ファン)、おかずを菜(ツァイ)ということばに
おきかえれば、中国語でも同じ関係が成立する。


東南アジアの諸言語でも、
食事が主食と副食のふたつのカテゴリーの食品から構成される
という観念がみられるのが普通で、
この場合しばしば米飯が主食をしめすことばとして用いられる。


そのほかに、
太平洋諸島の民族や東アフリカのいくつかの民族のあいだで、
食べ物を主食と副食に分類することがみられる。


これらの民族で、料理を主食と副食のふたつのカテゴリーに
分類するさいに、普通主食にあたるものは、
腹をふくらませることを第一の目的とした
穀物やイモ類などの炭水化物に富んだ食品で、
原則として味つけをしないで料理することが共通点としてみられる。


それにたいして、副食は肉、魚、野菜などを味つけした料理で、
主食を食べるさいの食欲増進剤としての役割をになっている。
このような前置きをしたうえで、
世界の主食的な食品の分布について簡単にのべてみよう。
(以下省略)


「主食」ってそういうことなのですか。
初めて知りました。
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【地域による味つけと調味料】


もっとも普遍的な調味料は塩であるが、
いわゆる未開社会のなかでは、特別に塩を使用しない民族も
世界各地に存在していた。


狩猟民のように動物の肉や内臓をおおく摂取していれば、
食塩を特別に摂取しなくても
生理的に身体を維持することも可能である。


また、ニューギニアのいくつかの民族のように、
製塩はしないが料理のさいに
海水を使用する習慣をもつ人びともいる。


酢は酒の加工品としてつくられる。
そこで酒を欠く文化や、飲酒を禁じるイスラーム教や
ヒンドゥー教の文化圏では、酢を醸造せず、柑橋類や
タマリンドの実の酸味を料理に利用することがおこなわれる。


ダイズその他の豆類や穀物に塩をくわえ、
麹の作用で発酵させた味噌、醤油に代表される調味料が
普及したのは、日本、朝鮮半島、中国である。


日本では味つけの主流を味噌と醤油にほとんど依存しているが、
朝鮮半島ではコチュジャンといわれるトウガラシをいれて
発酵させた味噌が、重要な調味料としてくわわる。


中国では発酵性調味料の種類はきわめておおく、
醤(ジャン)とよばれる一群の調味専門の食品のジャンルがある。


東南アジアでは、塩幸系の調味料―魚醤―がよく使用される。
小魚、アミの類でつくった塩幸の上澄み液を集めたものが、
ヴェトナムのニョク・マム、タイのナム・プラー、
フィリピンのパティスなどの名で知られている魚醤油であり、
日本のしょっつるも同様の調味料である。


魚醤油の系統の液体調味料はインドシナ半島部とフィリピンで
よくつかわれる。
マレー半島でブラチャン、ジャワでトラシといわれるものは、
プランクトン性の小エビの塩幸を乾燥させた塊状の魚醤である。


東アジアの麹を使用した醤類と東南アジアの魚醤は、
塩味だけではなく、アミノ酸のうま味成分をふくんだ調味料であり、
たいていの料理につかうことができて、いっぺんに塩味、
香り、色、うま味をおぎなえる万能調味料である。


このような万能調味料に味つけを依存する料理法は、
世界のほかの地域では発達しなかった。


インドでは、複数の香辛料をミックスして
使用するカレー系の料理が特徴的な味となっている。
スパイス類をミックスした料理はインドを中心に
東西にひろがっており、東南アジア、西アジア、北アフリカにも
カレー風の料理が分布する。


現在イスラーム圏となっている
西アジアから北アフリカにかけての地帯と、
キリスト教圏であるヨーロッパは、
ともに料理におけるスパイスの効果を重視する文化である。


熱帯アジア原産のスパイス類は、
アラブ商人の手を経てヨーロッパに運ばれたので、
中世までは貴重品であった。


肉の保存にスパイスは欠くことができないので、
イスラーム圏を通過せずに熱帯アジアにたどり着いて、
スパイスをヨーロッパに直接運ぼうという目的から大航海時代が
はじまったのである。


スパイスが世界史を変えたのだ。
その結果新大陸が発見され、トウガラシとトマトが旧世界に導入され、
トウガラシは世界中にもっともひろく分布するスパイスとして普及した。


トウガラシなしの朝鮮半島の料理の味、
トマトソースなしのイタリアの味は考えられぬ、
といった例からもわかるように、
このふたつの作物は世界の味を変えたのである。


油脂は、炒めたり揚げたりする料理の加熱手段の
媒体としてつかわれるだけではなく、
それ自体が、味、香り、質感をそなえた調味料でもある。


バターの類の乳製品、動物の脂身、植物油が
食用油脂のおもなものである。


脂身にたいする嗜好は、
料理法が発達しない狩猟採集民のあいだでも認められる。


明治時代になるまで表向きは
四足獣の食用を禁じられていた日本では、
肉食にまだ慣れないせいか、
脂身をしつこいといって敬遠する傾向があるが、
世界の民族のおおくは
脂肪のおおい肉のほうをうまいと感じているようである。


乳製品の油脂は牧畜、作物を利用する植物油は農業という
生活様式が成立してはじめて開発されたものである。
地中海圏のオリーヴ油、
東南アジア、オセアニアにおけるココナツミルクのように、
油脂の風味がそれぞれの地方の料理の味に
独自性を付加していることを忘れてはならない。


世界を股にかけた凄いレポートですね。


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【世界の過半数は手づかみ】


ホテルやレストランで食べるかぎりは、
世界中、ナイフ、フォーク、スプーンのセットで、
あるいは箸をもちいて食事をすることができる。


しかし、家庭での食べ方でいえば、
世界の人口の半分以上の人びとが、
手づかみで食事をしているのである。


箸は古代中国に起源し、その周辺の文化に伝播した。
現在、日常の食事に箸を使用するのは、
中国、朝鮮半島、日本、ヴェトナムである。


ヨーロッパはながいあいだ手づかみで食事をしていたが、
十七世紀以後になって、ナイフ、フォーク、スプーンの
三種の道具を使用して食べ物を口に運ぶ
習慣が普及するようになった。


現在の世界でこの三種の道具を食卓での必需品としているのは、
欧米、スラヴ圏を中心とした
いわゆる白人たちのあいだにおいてである。


非白人社会でも、植民地であった場所では、
上流階級においてはこれらの道具で食事をすることもある。


また、現在、東南アジアのタイ、マレーシア、インドネシア、
フィリピンでは、外食のさいはスプーンとフォークを供することが
一般的となりつつある。


右手にスプーンを持ち、左手のフオークで皿の上の飯やおかずを
スプーンにのせて口に運ぶのである。


東南アジアの料理は指先でつまめるようにあらかじめ食物を
ちいさく切り刻んであるので、ナイフは必要ない。


手づかみで食べるからといって、不潔であるとか、
野蛮であると考えてはならない。
手づかみの食事をする地域では、食前・食後に手を洗う冒慣を
もつ場所がおおい。


だれが洗ったかわからないナイフやフオークをつかうのと、
自分で洗った手の指と、
どちらが清潔であるかは決めがたいことである。


イスラーム教圏、ヒンドゥー教圏では、
食べ物に触れることが許されるのは右手にかぎられる。
用便の始末につかう左手は不浄の手とされている。


北アフリカのイスラーム教徒の例でいえば、
上流の家庭ならば、
食前に手洗い用の真鍮製の水さしと受け皿、
庶民の家庭ならば
ヤカンとホウロウびきの洗面器がせっけん、タオルとともに
会食者にまわされる。


客の手に主人が水をかけてやるか、あるいは客どうし、
隣の者の手に水をかけるのが作法である。


手を洗い、口をすすぎ、短いアラーヘの祈りのことばが
となえられたのちに食事がはじめられる。


男女隔離のつよい文化であるので、男の客があるさいには、
食事の場に家族のなかの女は参加しない。
主人は下座に座って、客が食べおわるのを見とどけてから、
残り物に手をつける。


五本指で食べ物を手づかみにするのはいやしい食べ方とされ、
親指、人さし指、中指の三本の指の先端だけをつかって
食べるのが上品な食べ方とされる……。


といったふうに、手づかみの食事においても厳格な食事に
かんする作法がある。


食事のさいのふるまい方や、禁止される食べ物の種類、
ぎゃくに年中行事にさいして特別の食べ物を食べるべきである
という決まりなどには、宗教に関係した事柄がすくなくない。


イスラーム教徒がブタ肉の食用を禁じられていることは
よく知られているが、ユダヤ教の戒律を厳格に守る人びとも
またブタ肉を食べないし、
鱗やヒレのない魚であるエビ、カニ、イカ、タコは
ユダヤ教徒にとっては不浄な食品とされている。


人が死後、他の動物に生まれかわる輪廻転生の観念をもつ
ヒンドゥー教徒にとっては、動物を殺して食べることは、
死んだ親族の生まれかわった肉を食べることになる
可能性をもっている。


そこでヒンドゥー教徒には菜食主義者がおおい。
菜食主義といっても、動物を殺さないで得られる乳や乳製品は
食用の対象にされる。


その乳を供給してくれる聖なる動物であるウシを殺すことは、
乳を赤子にあたえる母親を殺すことになぞらえられる。


キリスト教、イスラーム教、仏教などの世界宗教は、
個別的な文化の枠をこえてひろく分布し、
宗教によって結ばれた文明を共有するひろい世界をつくりあげた。


この世界宗教の年中行事が、ふだんはことなる民族の食生活を
共通の連帯をもつものにしている。


全世界のイスラーム教徒が
断食月にはいっせいに昼間の飲食をつつしんだり、
イスラーム暦でメッカ巡礼の終了した日にあたる犠牲祭には、
家畜を殺して肉を贈り合う風習や、
現在ではかならずしも守られないことがおおいが、
キリスト教徒が金曜日には肉を使用せず魚料理ですますとか、
クリスマスや復活祭には特定のごちそうを食ベるといった例を考えれば、
食事の背景に神が見え隠れすることに気がつく。


食事という日常茶飯事をばかにしたらいけないのである。
それは奥行きの深い文化である。
食事を通じて文化を体験することができるのだ。


金属の加工ができない時代はどうやって食べていたのだろう?
と思っていました。
欧米人の方が古くから箸を使う東洋人より「野蛮」だったのですね。
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本論は以下の構成になっています。
どのテーマもたいへん興味深い内容です。
ぜひ原本をお読みください。


Ⅰ諸民族の食事
第1章 朝鮮半島の食
第2章 世界における中国の食文化
第3章 東南アジアの食文化
第4章 オセアニア―太平洋にひろがる食文化
第5章 マグレブの料理


Ⅱ日本の食事
第6章 米―聖なる食べ物
第7章 日本の食事文化 その伝統と変容
第8章 現代の食生活
第9章 日本人とエスニック料理


Ⅲ食べ物からみた世界
第10章 世界の米料理
第11章 すしの履歴書
第12章 麺の歴史
      麺は中国が発祥の地である。
      東に行きうどん・そばができ、西に行きパスタができた。
第13章 料理における野菜の位置


第14章 世界の酒ー伝統的な酒の類型
第15章 茶とコーヒーの文明
第16章 うま味の文化
 



この図を作るにはどれだけの調査の裏付けが必要か、
考えてみると、著者たちはたいへんな調査をしてきたのですね。
人文科学を見直します。



2017年12月19日火曜日

「逆説の日本経済論」


【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 これからの日本がどうなっていくのか、どうすべきかを真剣に考えてみましょう。
 特に、高齢化=明るいという点の研究をしていただきます。


ねらい:
 日本国民全員で少しでも将来が明るくなる努力をしましょう!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この本は、斎藤史郎氏(日本経済新聞編集局長など歴任)が
編著をされたものです。
副題は「14人の識者が俗論を撃つ」となっています。



これだけの識者の意見を短期間に集められたことは、
驚異的です。
編者の凄腕を感じます。


しかし、インタビュの際にご自分の意見が出すぎて
相手の素直な論の展開を邪魔している
という感じのところが見受けられました。


私から見ると、逆説でなくて正論だと思うものがほとんどで、
俗論に対して正論の主張というとらえ方が
当たっていると思います。
タイトルはマスコミ的です。


1編を除いて、編者のインタビュ形式での著述となっています。


冒頭は、私が大尊敬する永守重信氏です。
私は、2011年9月17日の「哲人永守重信社長」で、
以下のように紹介しています。
その時の原典は雑誌致知での牛尾治朗氏との対談でした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これまで赤字会社を30社買収して
どの会社も黒字になった。
(上野注:これは凄いことです。
この偉業を成し遂げた人は他にいないでしょう。
ギネスものです)

1年で過去最高益になった会社もある。

6Sを重視している。
 整理、整頓、清潔、清掃、作法、躾
ダメな会社は士気が落ちていて、
これらがダメになっている。
汚い会社はダメだ。
それは経営者の責任だ。

だから、6Sの徹底から始める。

なぜ儲かるようになるか。
能力の差は2倍からせいぜい5倍どまり。
これに対して「やる気」の差は百倍の結果になる。
「やる気」を出させることがカギだ。

買収した会社では、自分で現場に通う。
伝票を1枚1枚見たりする。
そうして問題を見つけ出す。
経営の問題なら直ちに変えていく。
頑張る人に報いることも迅速に行う。
頑張れば報われるということを見せることが重要だ。

会社がダメになる要因は以下の6つである。
 マンネリ、油断、驕り、妥協、怠慢、諦め
後の3つに陥ったら取り返しがつかない。

いつも社員にこう言っている。
「どんな辛いことがあっても自分の人生はもうダメだ
と決して諦めるな、逆にチャンスと思え」


成功には運気が必要だが、
自分のやっていることに惚れこまなければダメ。
2世経営者が惰性でやっているような会社は
すぐダメになる。

誰よりも朝早く起きて、
気合を入れて会社に行きます。
気合いを忘れると家内が「掛け声!」と言うから、
「おーっ!」と叫んで出てくるのです。

成功には挫折体験が必要である。
そのため、
これという人間には大きなミッションを与えて
失敗させる。
そうして人間は成長していく。

30億円から50億円くらいの失敗は許す
覚悟が必要だ。
5人なら150億円で、そこまで使ってようやく
そこそこましな経営者が出てくるという感じだ。

「人の倍働け」「勝ちにはとことんこだわれ」
「従業員は大切にしろ。
自分の給料はゼロになっても従業員は守れ」

というような考え方は母親から教えられた。

経営者には犠牲の精神、奉仕の精神が必要だ。
日本企業の経営者は
真剣にやったら一番割に合わない。

仕事が一番好きで、
この会社が好きだという人が
経営をしなければならない。

リーダーたる者は
会社が大きくなるにつれて
高い理想、夢を追求していかなければならない。
経営とは夢を形にすることだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回、追加されていたのは、以下の内容でした。
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【働き方改革について】

永守
 これまで「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」とか、
 「情熱・熱意・執念」と繰り返し言ってきました。

 高い士気のもとで、みんなが力を合わせて
 一生懸命働くのが基本です。


 1人の天才より100人の凡オ。
 1人の100歩より100人の1歩です。


 ところが、従業員が一生懸命働いていることを
 安易に批判する声がある。


 目標を持って研究開発している社員の中には休日出勤してでも
 研究したい人が結構おり、
 自主的に働いているのに、すぐに、働き過ぎじやないかと。

 これは全くおかしい。


 今時、働きたくない人を無理に働かせたら全員辞めますよ。
 優秀な社員なら、いくらでも行くところはあります。


 休め休めとさんざん言われていますが、
 一生懸命に働くことまで否定したら、
 日本からグローバルに通用する強い会社は生まれてこないですよ。


 それで、中国企業とか、韓国企業とかに勝てるのかと。
 そうでしょう。

 だから、我が国の多くの企業が、韓国企業に負け、
 中国企業に負けてリストラの嵐になつてしまっているのです。


 確かに、仕事もないのにダラダラ残るとか、
 残業手当もきっちり払わずに働かせるとか、
 これは絶対にだめです。


 こうした点は正すべきで、働き方の改革をしないといけません。
 例えば、従業員に何故あなたはこの会社の管理職に
 なりたくないのですか、と聞くと、
 管理職になったら遅くまで働かないといけないから、と。

 そういう働き方は間違っているんですよ。


 また、いま日本電産には世界中に、10万人以上の従業員がおり、
 日本には1万人弱、残り9万人以上は外国人です。


 アメリカだったら、時間がきたらパッと帰ってしまうでしょう。

 ヨーロッパだったら一ケ月夏休みを取る国もあるわけです。
 それでも業績はそう悪くない。


 みんな利益を上げているわけです。
 だから、日本でも働き方の改革をしないといけないのです。


 調べてみると、
 OECD加盟諸国の労働生産性で日本は20位そこそこですが、
 上位を占める欧州諸国と比べると約半分しかありません。


 グローバル化が加速度的に進むなか、
 働き方を改革して生産性を現在の2倍にしないと
 グローバルではもはや戦えないのです。


 (注=2016年秋に、永守会長は日本電産グループの
 働き方改革を実行に移したことを宣言。
 1000億円規模の設備投資やシステム投資を伴った
 生産性倍増運動で2020年には残業ゼロを達成し、
 日本一働きやすい会社にすると発表した)


 生産性が2倍になると、
 結果として残業はゼロになるでしょうが、
 社員の評価の仕方も変わります。


 これまで残業といういわば延長戦で結果を残してきた人は、
 時間内で同じ成果を上げなければ評価されなくなります。


 そのためには社員自らが能力開発を行う必要がありますが、
 グローバル研修センターはその学びの場を社員に提供します。


 米国では一般的な社会人向けの大学の夜間コースを
 会社が用意するのです。


 残業が減って浮いた人件費の半分をこの教育投資に振り向けます。

斎藤  残りの半分は?

永守 
 残りの半分はボーナスという形で社員に還元します。

 というのも、残業代も収入のうちと見越して住宅ローンを
 組むなど生活設計している社員も多いからです。


 私も、サラリーマン時代、起業資金を貯めるため
 基本給とボーナスには手をつけず、
 残業代だけで生活していたのでその気持ちも分かります。


 だから私は社員に、安心していいぞと言いました。

 残業ゼロは手段であって、目的はあくまで生産性を倍にして
  世界のトップレベルに引き上げることだから、
 競争力が高まって利益が増えれば給料もポーナスも増えると。
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【シェア軽視は大きな誤り】
斎藤 
 最近、「シェア獲得を大事にしろ」とも言っていますね。

 ひところ、
 日本の企業論では日本の企業はシェアばかり追いかけているが、
 それは間違いで利益が大事なのだ、
 という主張が優勢でした。

 あえてシェアが大事というのは?

永守 
 そう。私は、安易なシェア競争否定論は間違っていると思います。


 経済構造、産業構造が大きく変わっており、
 シェアを確保しなければ利益を得ることが極めて難しい
 市場構造になっていることに気付くべきです。


 今から30年、50年前は、世界を目指して、
 日本企業同士で戦ってきた。
 
 日本企業は基本的に農耕民族です。

 だから、隣の家も百姓、後ろも百姓、こっちも百姓、
 競争相手がみな同じ百姓だ。

 農機具を共同で買い合って一緒に仕事しているわけですよ。

 
 同業者の中で、シェアが1位、2位、3位……
 と順位がつき、5位ぐらいまでは、
 その当時はある程度の利益をあげて残っていたわけですよ。

 
 農耕民族に適した産業の姿です。

 日本で今、生き残っている産業というのは
 自動車とか社会インフラとか、ああいう産業は
 時間軸が比較的長く農耕民族に適しているんですね。


 ところが海外にいるのは狩猟民族。
 相手が倒れるまでやるわけですから、
 敵と一緒に共同戦線なんでありえないわけですよ。


 要するに勝つか、負けるかの世界ですね。
 今はグローバルな社会。

 そこでは極端な言い方をすれば、シェア1位が利益の8割、
 二番が2割、三番以下は赤字なんですよ。

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【厳しい中国企業との戦い】

斎藤 
 中国企業の台頭もありますね。
 一部の中国のひとびと、経営者はとんでもないくらいよく働き、
 判断も早い。

永守 
 大変ですよ。
 今の中国のオーナー経営者は大半が40代ですよ。
 みんなすごい。
 今から20年間、中国はとんでもない力を発揮しますよ。

斎藤 
 アリババのジャック・マー氏とか、
 台湾ですが鴻海精密工業のテリー・ゴウ氏とかね。

永守 
 もう、要するに普通の働き方では、こてんぱんにやられますよ。

 日本人は二言目には、
 技術では負けていませんと反論しますが、技術だけではだめ。

 ビジネスで勝たないといけないのです。


 時間軸が大切ですね、時間軸=コスト。

 だから行動の時間軸とコスト競争で負ける。

 
 それは、物づくりの日本企業を中心としての、
 日本の最後の生き残りの戦いです。

 これで負けたら日本は属国になる。

斎藤 
 スピードが違う?

永守 
 そう、スピードが求められている。

 とにかく時間軸ですよ。
 土曜日は散歩、日曜日は読書、
 ウィークデーはゴルフと言っていたら、
 そのうち、こてんぱんに負けますよ。
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【M&A成功の条件】
 1)高く買わない
 2)シナジーがないものは買わない
 3)社風が合わないものは買わない


【経営理念】
足下悲観、将来楽観

これで十分お分かりのように、
すべて逆説ではなく正論ですね。
判断基準は、
永守会長がすべて成功しているという実績です。
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小泉進次郎さんの説も正論です。

小泉さんの分だけは対談ではなく講演の記録です。


タイトルは【人生100年時代の日本に向けて】
以下のようなテーマを述べておられます。
太字は小泉さんの言葉のままの部分です。


海外留学無償化を
 教育の無償化をすると言うなら、どこを無償化するのか
 そして何のために、どんな人材を育てたいのか、
 何が故に教育の無償化をするのかということを考えなければ、
 私は無償化というのはやるべきではないと思っています。

 
 仮に本当に無償化するならば、海外留学を無償化すべきです。



 理由は、こうだと言われています。
 
 1)日本にいたら日本のことはわからない
 2)多様性と何かを学んでもらいたい
 3)最低限の語学力を身に付ける必要がある
 4)機会の平等のため
 5)国内の大学を改革するため (競争原理)


複線型の社会を

一括採用をやめよ

働き方改革は生き方改革
 働き方改革は残業削減や生産性改善ではない。
 戦後長く続いてきた生き方の見直しである。
 「いい大学を出ていい会社に就職し一生務める」
 これではない生き方を考えなくてはいけない。


子供向け財源を作る
 たとえば医療保険の改革、
 風邪薬や湿布薬は保険対象外にする。


農業に国際認証の普及を
 ISOの農業版を作り日本の農業の国際化の後押しをする。


経済団体役員は年金辞退を


副業・兼業の自由を
 そのとおりです!働き方改革の一環で重要な対策です。
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逆説的なのは、日本の人口減少問題を論じた以下の3編です。
 八田達夫先生 人口減少恐るるに足らず
 小宮山宏先生 日本、高齢化衰退論は浅薄
 吉川 洋先生 人口減少ペシミズムは誤り


3者3様で大変興味深い内容です。


八田先生は、
構造改革によって高い生産性を実現しようという主張です。
抵抗勢力の壁をどうやって突破するかが課題ですが、
私は八田論が正解だと思います。


吉川先生は、民間のプロダクトイノベーションによって
それが実現できるという主張です。
残念なのは、どうやって民間のイノベーションを引き出すか
という提言がないことです。


小宮山先生は、対策が一本線ではなく、
博識ぶりを発揮して複数の対策を提示されています。


以下3人の先生の主張をキーワード的にご紹介します。
ご関心あれば、原本をご参照ください。


八田達夫先生 人口減少恐るるに足らず
 人口増加率と一人当たりGDP成長率は無関係
 人口増加率とGDP増加率の関係も絶対ではない


 GDPは生産性の成長で伸びる
 日本は生産性の低い産業の従事者が多い
 →国としての生産性改善の余地あり。構造改革必要。


 農業保護をやめる。
 既存産業保護の規制もやめる。自由な競争を促す。
 国家戦略特区を活用する。


 成長の陰には衰退産業がある、
  これの保護をするのでなく対策を講じるのが筋。
  セーフティネットを設ける。生活保護、職業訓練、
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八田先生の主張 原本どおり。
 先ほど述べたように労働力不足は生産性の上昇で克服できます。

 ただ日本では制度が労働力の増加を無理やり
 抑え込んでいる面があります。


 例えば配偶者控除や国家公務員の配偶者手当は、
 女性の労働市場参加を抑えています。

 これらの制度は、「平均的な」家族持ち労働者の
 利益のために女性労働者を犠牲にしています。


 このような人為的な労働力抑制要因はなくすべきでしよう。

 例えば、配偶者控除を廃止して増収分を
 保育所増設の財源にしたり、
 国家公務員の配偶者手当を廃止することによって
 公務員一般の給料を上げる、
 といった改革を行う必要があります。


 保険や税制を変えることで
 女性の就労を促すことはとても重要です。

 保育所問題もあります。


 補助金の配分が株式会社に対して著しく不利だったり
 保育所利用率に価格メカニズムが導入できない規制が
 行われているため、保育所が不足し
 保育所を利用したくても利用できない女性がいます。


 このように制度によって結果的に、
 女性が労働市場に参加しにくくなっているとすれば問題でしょう。


 女性労働力だけでなく雇用全般の流動化も重要です。

 雇用の流動性がないと、一度、大企業から落ちこぼれると
 大企業はその労働者を再び雇用してくれません。

 
 それは大企業の労働者が基本的に定年まで
 居座り続けているからです。


 生産性の低い人を退出させることができれば、
 優秀な人を新たに雇いやすくなります。


 1980年代にモーゲージ・ボンドを発明して
 世界の金融界にデリバティブ商品を導入した
 ソロモン・ブラザーズの社員は高校中退で
 社内郵便配分室にいた人ですが、
 日本でもそういう適材適所が可能になるでしょう。


 雇用法制は能力が劣る労働者の既得権を保護して
 能力が優れた人の雇用機会を失わせる結果をもたらしています。


 これらを改革すれば、
 たまたま良い大学を出た生産性の低い人が

 大企業に居座るということもなくなるでしょう。


 有能な女性が労働市場に出てくるし、
 潜在的に生産性の高い人の労働市場への参加が促されます。



 労働人口を増やすというよりは、
 雇用の流動化を図って全体の生産性を高めるということが
 生産性を向上させます。
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小宮山先生 日本、高齢化衰退論は浅薄
 日本は高齢化課題先進国である。
 生産年齢15歳~60歳は誤り、20歳~75歳とすべき。
 
 高齢者の活躍の場は以下のようにたくさんある。
  小中学校の教員
   理科 理系の技術者OB
   英語 海外生活経験者
   怖い顔をしたひと(ビジネス常識者) モンスターペアレンツ対応
  
  地域活性化
   地元の利を活かしたビジネスを興す
   大規模農業を興す.IT支援により10日間働けばコメはできる。
   大規模林業を興す。50万人の雇用を生む。
 
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小宮山先生の主張 ロボットで介護は変わる 原本どおり。


 要介護者に対してどうするか。

 そこにはビジネスチャンスがあるということを
 社会全体が認識すべきでしょう。

 
 例えば、ロボットの活用です。

 人間は頭が生きている限り、自立できるのです。
 
 なぜかというと、頭で考えるというのは、
 ニューロンからパルス電流が出ているわけです。

 これが神経を通って、末端の手まで行き、
 戻っていくという電気回路中の作用が、
 人間がものを考えて手を動かすということです。

 
 生きているということは、この電流が出ているわけです。
 働きたいけど手を動かすことができない人の
 この電流を検知して、サポーターが動いてくれれば、
 手を動かせるわけです。

 
 それを既にスタートさせているのは
 筑波大学の山海嘉之先生がつくったベンチャー、
 サイバーダイン社のサイボーグ型ロボットのHALです。

 
 今はリハビリなんかに使われています。
 脳溢血のあとで歩けなくなった人でも、
 歩こうという意思は出るわけです。

 
 そうすると、電流が流れ、ロボットスーツが漏れる電流を測り、
 歩くパワーを与えることになるわけです。

 
 そういうかたちで、パワーをもらって動くと、
 戻りの回路が働いて学習ができるから、
 リハビリにもなっていきます。

 
 このあいだ三菱総研である玩具を買いました。

 その玩具の遊び方は、まず人間の頭の2カ所に電極を付けます。
 横に小さなヘリコプターがあって神経を集中します。

 すると、ヘリコプターが飛ぶのです。
 原理は大したことなくて、脳波を見ているのです。



斎藤
 人間が神経を集中すると、ロボットが動くのですか。

小宮山 
 ロボットというか、ヘリコプターが天井まで上がるのです。
 そういうのが玩具として出てきている。

 
 それはある種の脳波を測っているわけだけども、
 この技術、要するに、電流が流れているということは
 電磁波が出ているということで、この電磁波を測ってもいいし、
 神経のところに何か埋め込んでもいいし、
 HALのように表面に漏れてくる電流を測ってもいいのです。

 
 人が考えていることをセンサーが理解してロボットスーツと
 結び付ければ良いのです。

 人間の脳が働く限り手足が自由に動かなくなっても
 トイレに一人でも行けます。
 一人でご飯も食べられます。

 
 ぼけてしまったらわからないですけれども、
 技術的には絶対にできます。
 人間の尊厳を大事にする
 大きな産業になる可能性を秘めているのです。

 
 つまり、介護は変わる。それがわかっていない。
 自動車なんかより大きいビジネスチャンスがあると思います。

 
 この技術をどこが開発できるかといったら、
 日本かドイツか、アメリカのベンチャーのどれかです。

 
 幸いにしてアメリカのベンチャーはまだ高齢化
 なんてことを考えていません。

 この技術はドイツと日本の競争ですよ。
 日本はロボット技術でいったら世界一です。

 そして高齢化の課題先進国です。
 
 日本が取り組めば勝つに決まっています。

 それをやらずに高齢化衰退論なんて言っている人たちは
 まったくわかっていません。

 高齢化衰退論はいろんな意味で浅薄だと思います。


注:上野もそういうことを言ってきたのですが、
 この本を見て、やはりそうか、と思いました。
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小宮山先生の主張 医療にビッグデータ活用を 原本どおり
 医療を考えると、ビッグデータの活用が
 大きな可能性を秘めていると思います。

 
 今の医療というのは、例えば、原因がノロウィルスで、
 病気が下痢で、答えはノロウィルスを退治する抗生物質、
 というような因果関係で出来上がっています。

 
 ところが、例えば腰痛は、いま日本で2500万人いると
 言われています。

 このうち8割が原因不明です。
 
 腰痛だといって医者に行ってわかることは少ないでしょう。

 夏樹静子さんが『腰痛放浪記 椅子がこわい』(新潮社)
 という本を書いています。

 
 ひどい腰痛で2年間名医を回っても全然だめで、
 結局、うつ病の薬が効いたのです。

 心療内科の医者で彼女は治ったのです。
 
 それはかなりの理由があって、原因不明の腰痛のうちの
 相当部分は脳に原因があるということがわかってきています。

 それでうつ病の薬が効いたわけです。

 
 でもヘルニアで痛いだけの人が
 うつ病の薬を飲んだらぼけるだけですね。
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吉川 洋先生 人口減少ペシミズムは誤り
 イノベーションを起こせ!
 特に、プロダクトイノベーション 例:スタバ、
 起業家精神の衰えが問題
 シルバー市場は狙い目、イノベーションの宝の山
 例:ドローンが配達してくれる。
 女性・高齢者の労働参加促進を


 吉川先生の論はほとんどが正論ですから、詳細のご紹介はしません。

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ご紹介した5人以外は以下の方々です。

小峰隆夫 俗論・トランプ貿易政策を正す
井堀利宏 年齢階層別選挙区制の導入を
上村達男 皮相な株主主権論

片山義博 機能不全の地方議会
武藤敏郎 中福祉・中負担は幻想
中前 忠 超金融緩和は資本主義を破壊する

八代尚宏 高齢者に変動相場制を
渡辺博史 教科書的為替理論に怪しさ
小林喜光 国家価値を三次元で捉える

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興味のある方は是非原典に当たってください。