2017年12月27日水曜日

「SCSKのシゴト革命」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 SCSK殿が厚生労働省主催の表彰で
          最優秀賞を取られたことをご紹介します。
 その背景等が詳しく紹介されている著書をご紹介します。
 当社のほんの少しの貢献についても付言させていただきます。
 トップが積極的リーダシップを取らないと、
     会社は変わっていかないことを再認識していただきます。


ねらい:
 日本のトップは
  もっともっとリーダシップを発揮していただきたいものです。
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SCSK㈱殿は、
厚生労働省主催第1回「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」
において、「大企業部門・最優秀賞」を受賞されました。

全日本企業の中で、製造業1社と並び、
ブラック業界として名だたる情報サービス業界の企業が
トップになるとは信じられないことではありませんか!!

この賞は、こういうものです。
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1.「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」について

本表彰は、
労働者一人ひとりの労働生産性向上の取り組みが図られていること
と同時に、
魅力ある職場づくりを実現している企業・職場を表彰するものです。

本表彰では、以下の評価項目が審査基準とされています。
 <評価項目>
(1) 経営理念(方針・展開) 
(2)労働生産性の向上(付加価値向上と効率化)
(3)雇用管理の改善(働きやすい・働きがいのある職場づくり)
(4)組織成果(組織への好影響)

2.SCSK殿の評価のポイント
SCSKは以下の取り組み・制度が評価され、
「最優秀賞(厚生労働大臣賞)」を受賞しました。

【最大の特徴】
経営トップ主導による
働き方改革運動「スマートワーク・チャレンジ(スマチャレ)」
への取り組みと、
業務のクオリティ・職場コミュニケーションの変革による生産性向上

【その他、評価ポイント】
(1) 健康的な働き方を優先することで一時的な業績ダウンも覚悟する
 と経営トップが明言し、顧客にも自ら手紙を書き理解を求めるなど、
 強いリーダーシップの下で推進
 
(2)作り直し作業による納期遅延をリカバーするために
 発生しがちだった長時間残業に対して、全社標準プロセスを構築し、
 その運用を徹底することで、生産性向上を実現
 
(3)仕事のシェアやバックアップ体制の整備による
  残業削減や休みやすい環境づくりなど、
  コミュニケーションを重視した組織改革を実施
 
(4)残業の有無にかかわらず一律支給する手当の導入など、
  減少した残業代を全部還元する制度とし、
  社員が所得減を気にせず業務の効率化に取り組める制度を構築
 
(5)現在の有給休暇取得率は95%となっているが、
  100%取得を躊躇しないように、
  病気などの不測事態に利用できるバックアップ休暇(年5日)を導入
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SCSK殿にSCS時代を含め30年以上ご縁をいただいてきた
上野からみまして、
この受賞理由は的確に本質を掴んでいると思われます。


それはこういうことです。


1)この一連の大改革は、
  中井戸会長のリーダシップで実現したものです。
  会社を変えることは、トップにしかできません。
  
  野村総研殿で、
  本邦初のエンハンス業務整備に力を入れられたのも
  藤沼社長(当時)でした。

  どんなにスタッフが優秀でも、
  トップの支援なしで会社の改革を行うことはできません。
 
2)中井戸会長が、カンと信念と決断で、
  「残業削減しても何とかなる」
  と一連の働き方改革を断行されたのです。
  この決断は、たいへんな冒険です。
  
  仕事の生産性は、仕事のやり方を変更しなくても、
  気合を入れて取り組むだけで、
  少なくとも2割は上がるということは通説です。


  中井戸会長は、
  そういう読みをされたかどうかは分かりませんが
  結果はオーライでした。
  
  誰もそんなことに手を突っ込もうとはしなかったことで
  成功されたのです。
  中井戸会長は後世に残る腹の座った大経営者だと思います。

  
3)浮いた残業代部分を
  みなし残業代ですべて社員の給与に還元されている。

  これもすごいですね。


  社員にとっての残業代は給与の一部です。
  残業代が無くなったら、
  若い社員の生活設計はすっかり狂ってしまいます。


  別項の「逆説の日本経済」において、
  日本電産の永守社長も自分の若いころを振り返りながら
  「生産性向上で残業が減ったら社員に還元する」
  と言われています。


  SCSK殿は、早くもそれを実現してしまったのです。


4)働き方改革を促進する諸制度の整備をされた。
  これも人事部門の権限責任を超えていることを
  どんどん実現されています。


5)同時に生産性向上を実現するための業務改革を推進された。
  「SCSKのシゴト革命」では、
  この点に焦点を当てて解説されています。
  
  現場は基本的には「変わりたくない症候群」ですから
  トップのバックがあっても
  仕事の方法を変えていくということについては、
  並々ならぬ工夫・努力が必要です。
  
  それを推進されたSE+センターのご苦労が丁寧に紹介されていて
  同様の変革を実現しようという方にとっては
  大変参考になると思います。
  
  現場は、すんなり新しいことを受け入れてはくれません。
  そこをあの手この手を考えて乗っていただかなければならないのです。
  このセンター長は、ピーク時に「トイレに行く時間も惜しい」
  と言っておられたのを思い出します。

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なお、SCSK殿は、2016年11月にも「健康寿命を延ばそう!アワード」
でも厚生労働大臣最優秀賞を獲得されています。


「SCSKのシゴト革命」の第1章「働き方改革はなぜ実現できたのか」
は、本書全体の要約になっていますので、
少し長くなりますがご紹介します。
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IT業界の常識は世間の非常識

IT業界は、長時間労働が常態化している
ブラック業界の代表例とされる。


24時間365日稼働する情報システムを開発・保守・運用する
というIT技術者の仕事の特性上、夜間・休日の問い合わせ対応や
作業がどうしても発生するからだ。


徹夜してでも顧客の要求に応えたり、トラブルの収拾に
当たる技術者を「良い技術者」とする風潮も根強い上に、
優秀な技術者ほど難しい仕事を抱え込んでしまう傾向もあって、
長時間労働が広く蔓延していた。


これではIT業界の離職率が高いのもムリはない。

かつてはIT技術者といえば、知的で将来性のある
「あこがれの職業」だったが、今では給料の割に激務の
「あまり就きたくない職業」になってしまった。


学生の就職人気も長らく低迷しており、
優秀な人材はなかなか集まらなかった。


そうしたIT業界において、
SCSKがいち早く働き方改革に取り組んだ背景には、
経営トップの強い思いがあった。


当時、社長を務めていた住友商事出身の中井戸信英氏は、
知的労働者であるはずのIT技術者が長時間労働で
疲弊していく状況に強い懸念を抱いていた。


つまり「長時間労働は当たり前」というIT業界の常識は、
中井戸氏には非常識としか思えなかったのだ。


「社員が心身の健康を保ち、仕事にやりがいを持ち、
最高のパフォーマンスを発揮してこそ、
お客様の喜びと感動につながる最高のサービスを提供できる」。


こうした信念に基づいて、
新会社発足を機にSCSKは働き方改革を加速していった。


2012年4月には就業規則を改定して、
フレックスタイム制を会社に適用。


続く同年7月には、裁量労働制を導入すると共に、
いよいよ残業時間の削減に手を付けた。


約170ある部署のなかで、特に残業時間の多い32部署に
7~9月の残業時間半減を命じた。


各部署は業務の見直し・負荷分散やノー残業デーの推進、
会議の効率化によって、何とか目標を達成した。


残業半減運動の結果、それまで月30時間弱あった
全社の平均残業時間も20時間強にまで減った。


だが、成果が上がったのはいっときで、
繁忙期である年度末(2013年3月)には、
また30時間弱に戻ってしまった。




社員の意識が変わった
「組織的な取り組みでないと、
社員一人ひとりの意識は変わらないし、改善活動は定着しない」


そう考えたSCSKでは2013年4月から残業削減と
有給休暇(有休)の取得促進施策
「スマートワーク・チヤレンジ20(スマチャレ20)」を開始した。


月平均残業時間20時間と、年20日の有給休暇取得(100%取得)を
目標に掲げた。
目標実現に向けて様々な手を打った。


その一つがスマチャレ20によって減少が見込まれる残業代への対策だ。

有体・残業目標を達成した組織単位で
特別ボーナス「スマチャレインセンテイブ」を支給した。


会社の本気度を社員に示して安心感を与えると共に、
組織単位での取り組みを促すのが狙いだ。


有給休暇を取得しやすい環境も整えた。

飛び石連体の合間の平日や土曜日が祝日と重なってしまうときの
月曜日を「一斉年休取得日」に設定し、休暇取得を強く呼びかけた。


顧客には年度初めに社長名でその旨を伝える手紙を出し、
理解を求めた。


心置きなく有体を100%取得できるよう不測の事態に備える
5日間のバックアップ休暇も設けた。

有休100%取得後に体調不良など
やむを得ない事情で休まざるを得ないときに利用できる。


2年目の2014年4月からは全社員が実勤務時間を正確に記録する
制度を導入して「モグリ残業」の撲滅に努めた。


さらに残業時間の長さによって、
残業申請の承認権限者が上がるようにした。

月80時間超の残業は社長承認にした。


このほか残業時間が月60時間を超えたり、
休日出勤が発生した場合には、
当該社員の所属部門にペナルティーを課す制度も導入した。


こうした会社の取り組みに社員の意識も変わっていった。

長時間労働を「是」とする固定観念が覆され、
新しい働き方を模索する動きが自然発生的に生まれた。


時間短縮を目指して「立ち会議」を導入したり、
顧客を訪問する人数を絞るなど、現場発の様々な取り組みが実施された。


その結果、2014年度には月平均残業時間が18時間16分となり、
目標を達成した。有給休暇取得率97.8%となった。





就職人気は急上昇

スマチャレ20以外にも、SCSKでは働き方改革に向けた
様々な施策を行っている。
2015年4月からは「健康わくわくマイレージ」と呼ぶ
健康増進施策を始めた。


これは毎日の行動習慣
(朝食、ウォーキング、歯磨き、週2回の体肝日、禁煙の5項目)と、
年1回の健康診断結果
(肥満、血中脂質、糖代謝、肝機能、血圧の5項目)をポイント化し、
達成度に応じて報奨金を与えるというもの。


報奨金は個人分のもののほかに、部署分のものがあり、
部署全体で健康増進に取り組むムードが熟成されるようにしている。


SCSKの働き方改革の取り組みは社外からも高く評価されている。

2014年には日本経済新聞社がまとめた「人を活かす会社」調査の
総合ランキングで1位になったほか、
経済産業省と東京証券取引所が選ぶ「健康経営銘柄」に
2014年度から3年連続で選定されている。


直近では2017年3月に厚生労働省が選ぶ
第1回「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」の
大企業部門・最優秀賞(厚生労働大臣賞)を受賞している。


働き方改革の成功が広く知られるようになるに伴って、
SCSKの就職先としての人気も高まっている。


楽天のクチコミ就職情報サイト「みんなの就職活動日記」と
日経コンピュータ、日経BP総研イノベーションICT研究所が
共同で実施している「IT業界就職人気ランキング」によると、
2018年春入社の学生の間でSCSKの就職人気は、
NTTデータ、富士通、グーグル、楽天に次いで
IT業界5位だった。


SCSKが発足したころ、就職活動をしていた2013年春入社の
順位は25位だったことから、まさに急上昇といえる。






「残業しなくて儲かる」理由

残業時間が減り、有給体暇取得日数が増えたと言うことで、
社員の労働時間は確実に減っている。


「人月」という言葉に象徴されるように、
労働集約型産業の色合いの強いIT業界において労働時間が
減れば、売上げが下がるのが自然だ。


前述のようにSCSKの場合、浮いた残業代を社員に
全額還元しており労務費は変わらないため、
利益も減るはずだ(スマチャレインセンティブは2014年度まで。
2015年度からは残業の有無によらず20時間分の手当を支給)。


ところがSCSKは
会社発足以来5期連続で増収増益を続けている。

それどころか本業の儲けを示す営業利益率は年々上昇し、
2016年度(2017年3月期)にはついに二桁の10.2%に達した。


2011年度の営業利益率は6.3%だったから、
5年間で実に3.9ポイントも改善したことになる。


SCSKと競合する大手・準大手クラスの
システムインテグレーターの営業利益率の相場は5~7%程度
といったところ。


10%を超えるのは、野村総合研究所(NRI)ぐらいだが、
同社は証券向け共同システムを筆頭に利益率の高い
大規模案件・大口顧客をいくつも抱えている。


これに対してSCSKは
「大規模案件も増えてはきているが、基本は中小規模の案件を
着実にこなして利益を積み上げている」
(取締役・専務執行役員の遠藤正利氏)という。


それではなぜSCSKだけが、
競合から頭一つ抜ける営業利益率10%を達成できたのか。

それは同社が発足以来、「働き方」の改革と並行して、
「仕事のやり方」の改革に地道に取り組んできたからだ。

【営業利益率の比較】


























経営統合が決まった直後から各種の委員会を立ち上げて
全社から有識者の知恵を集約し、
業務クオリティの向上に向けた施策を次々と打ち出した。


具体的にはシステム開発・管理プロセスの標準化と浸透、
リスクマネジメントの経営レベルからの徹底などである。


本当にすごいのは、これらの施策の意味や狙いを現場が理解し、
自発的に実行するよう様々な手立てを講じ、
それを愚直かつ積極的に推進したことだ。


これにより属人的だったり、
その場限りだった仕事のやり方を大幅に排除。

システマティックに標準を基に仕事ができ、
リーダーが変わっても同じ品質管理ができる仕組みを整え、
仕事の質を高めた。


結果としてシステムインテグレーターの利益を押し下げる
最大の要因である問題プロジェクトの発生を押さえこみ、
残業をしなくても、高い営業利益率を上げることに成功した。
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ここで、
本書の帯で強調されている「問題プロジェクトはこう潰せ」について
触れておきたいと思います。


本書184ページに年度別の赤字額の推移が掲載されています。
この数字を公開されているのは、企業の自信の表れと思いますが、
問題プロジェクトはなかなかなくならないのです。




【 年度別の赤字額の推移】


  



















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実は弊社は、2006年から9年間に亘って、
失敗案件回避対策研修を実施させていただいています。


2006年頃は,ITバブルがはじけて受注条件が悪化し、
情報サービス事業は各社とも破たんの危機に瀕していました。
日立・富士通も緊急事態宣言をするくらいの状況だったのです。


当時SCS殿の住友商事出身のA社長は
「人材・資源を投入して赤字になるなら事業を継続する意味がない。
至急対策を講じよ。対策費として〇〇を用意する」
と生産技術部門の担当役員に命じました。


担当役員から相談を受けた弊社が
生産技術部門のコアメンバと共同の突貫工事で研修を開発しました。


初回研修は、社長の命があってから2か月以内に開催しました。


以下の単元が各1日で実施されました。
今のご時世では考えれない金曜土曜連続・隔週開催で、
研修カリキュラムは順次リリースという状況でした。


この研修は、研修と称していますが、
赤字案件撲滅を目的にしていましたので
すべて実践に繋がる内容としました。
 
 要件不備の現状認識
 要件確定対策 機能要件の部
 要件確定対策 非機能要件の部
 お客様との取り決め対策
 ヒアリング手法
 交渉術
 要件確定の実践


短期間の募集にも拘わらず、
1回25人の定員はすぐに一杯になりました。
社長の命は強いですね。


この時もトップのリーダシップを痛感しました。


この研修は途中の改訂を含み9年間で合計40コース開催し、
合計800人弱が参加しました。


時期によっては定員に満たないときもありました。
そういうときには、役員会等でその状況を報告していただくと
てきめんに効きました。


本書は最近の活動に焦点を当てていますので、
この施策については、紹介されていませんが、
「業務クオリティ向上への取り組み」(本書副題)としては、
こういう伏線もあったのです。
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本書で取り上げられている活動は以下のとおりです。
日経BP総研の研究員の星野友彦氏が執筆したのですが、
なかなかの突っ込みで完成度の高い紹介本になっています。
 
 ・ 大規模案件向けの体制整備
 ・ 問題案件防止対策
 ・ 開発標準SE+の改善・定着化活動
 ・ 社員の専門能力の見える化
 ・ 戦略分野へのリソース集中
 ・ ニアショア体制の確立
 ・ パートナー関係の再構築
 ・ 一流企業への挑戦――品質証明書の発行


最後の章で谷原社長の決意表明が掲載されていますが、
これだけのことに全社一丸となって取り組まれれば、
情報サービス業界のナンバー1になることは
現実的目標になりうると感じます。


日本の業界のためにも頑張っていただきたいと思います。

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