2021年8月25日水曜日

今さらですが「太平洋戦争の大嘘」 ”ルーズベルトは狂人である”

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 フーヴァー元米国大統領の手記の内容を確認いただきます。
 太平洋戦争を起こしたのはルーズベルトであると断罪しています。
ねらい:
 早く「東京裁判史観(日本が一方的に悪かった)」
 を払拭したいですね。
 (しかし現在の日本あるいは世界にとっての最重要課題は
 習近平対策です)
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「太平洋戦争の大嘘」
国際政治学者藤井厳喜氏の2017年の著書です。
故あって最近読んでみました。

本書は、2011年に米国で刊行されたフーヴァー元米国大統領
(ルースベルトの前の大統領)著「Freedom Betrayed(裏切られた自由)」(以下A書)の紹介を中心に、日米戦争の内幕「秘話」の解説をしています。
A書は、大統領を指弾するショッキングな内容のため関係者が出版をためらい、著作から47年を経てようやく2011年に刊行されたのです。

「太平洋戦争の大嘘」(以下B書)以前に既にほぼ公知となっているのは、以下のことです。
このほとんどは、A書に基づいていたのかもしれません。
B書では、その点に対する追加または具体的解説が行われています。

【太平洋戦争開戦の状況の今や常識】
1)戦争を仕掛けたのはルーズベルト大統領である。
2)ルーズベルトは、日本・日本人嫌いであった。
  (おそらく日本人以外の東洋人も嫌いだったでしょう)
3)英仏露3国から参戦を要請されていた。
4)しかし米国民は、他の国の戦争である第1次世界大戦に参戦して
  犠牲者を出し、参戦には絶対反対だった。
5)そこで、日本に米国を攻撃させ
  米国民を参戦賛成に持っていこうとした。
6)そのため、日本に参戦せざるを得ないような要求を出し続けた。
7)日本はやむに已まれず米国に戦争を仕掛けた。
8)ルーズベルトは、日本の秘密通信を傍受解読し、
  日本海軍が真珠湾に来ることを知っていた。
9)それで真珠湾から主力艦船は避難させ、旧型艦船を残していた。
10)残された艦船の乗組員を見殺しにした。
11)その乗組員は、
  米国民を参戦に持っていくための生贄になったのである。
  (「目的のためには手段を選ばない」米国流思考である)
12)ルーズベルトの作戦はまんまと当たり、
  米国民は一挙に参戦に傾いた。
  (この時のルーズベルトの国民を欺く議会での演説は
   A書に紹介されています)
13)日本の米国大使館の怠慢で宣戦布告が攻撃後になったことも、
  ルーズベルトの主張に好都合であった。

【フーヴァー元大統領の主張】
フーヴァーは親日派であったわけではありません。
客観的に歴史を分析しているのです。
ほぼすべての上記の内容を明らかにした上で、
ルーズベルトを戦争をやりたくてしょうがない狂人である、
と断定しています。

フーヴァーがマッカーサーと46年5月に会談したときに、
マッカーサーもこの意見に賛成したと記述されています。
この2者会談では、
1941年7月米国の「対日石油全面輸出禁止」措置は
日本を何とかしなければならない窮地に追い込んだ、
という解釈も合意されました。

格言的表現をすれば、
「窮鼠猫を噛む」状態だったということです。

A書にはこういう記述があります。
「ルーズベルトが犯した巨大な誤りは、1941年7月、
つまりスターリンと隠然たる同盟関係となったその1か月後に、
日本に対して全面的な経済制裁を行ったことである。
その経済制裁は、弾こそ撃っていなかったが、
本質的には戦争であった。
ルーズベルトは、自分の腹心の部下からも、
再三にわたってそんな挑発をすれば、遅かれ早かれ、
日本が報復のための戦争を引き起こすことになる、
と警告を受けていた」

この見解については、マッカーサーも同意した、
とA書に記載されています。

【開戦・終戦に至る経緯】
B書には以下の経緯がA書からの引用も含め詳細に記されています。
悔しくてあまり読みたくないですね。
1)1904-1905年 日露戦争
  これから日本の対外進出が本格化する。
  米国はシナ大陸の権益に関心が強かった。
2)1924年「排日移民法」が発効
  カリフォルニアの農家が脅威を感じ政府を動かした。
3)1940年 日独伊三国同盟締結
  これにより日本は、ドイツが戦いを始めた国々と
  敵対関係に入ることになった。
 (これは大失策である。日本はこの同盟でメリットを受けていない)
4)1941年7月 米国は日本に経済制裁実施
  (在米資産凍結、石油の禁輸)
5)1941年9月 日本は和平提案(最大限の譲歩案)を基に、
  日米首脳会議を持ちかけるが米国が拒否
6)1941年11月 米国は「ハル・ノート」を提示
  シナ大陸から日本の兵隊をすべて引き揚げろなどと要求
7)1941年11月 天皇が日米交渉を3か月凍結しよう
  と提案したがこれもルーズベルトが拒否。
8)1941年12月8日 真珠湾攻撃

11)1945年2月 ヤルタ会談
  ルーズベルト、チャーチル、スターリンが
  戦後処理の基本方針について協議
  (日本はこの会談を知らなかった)
12)1945年3月 東京大空襲
13)1945年5月 イタリア・ドイツ降伏
14)1945年6月 日本はソ連に仲介依頼(ソ連は無視)など
  和平を模索
15)1945年7月26日 ポツダム宣言
  米英中の3国が日本に対し無条件降伏を勧告。日本は拒否。
16)1945年8月6日 広島に原爆投下
17)1945年8月8日 ソ連対日宣戦布告
18)1945年8月9日 長崎に原爆投下
19)1945年8月14日 ポツダム宣言受諾決定

【ルーズベルト大統領の3つの大罪】(A書)
1)日米戦争は、時のアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトが
 日本に向けて仕掛けたものであり、日本の侵略が原因ではない。
2)41年の日米交渉では、ルーズベルトは
 日本側の妥協を受け入れる意図は初めから全くなかった。
 彼は日本側の誠実な和平の努力をことごとく潰した。
3)原爆を投下せずに日本を降伏させることができたのに
 原爆投下を強行した。
 原爆投下の罪は、アメリカ人の良心の上に重くのしかかっている。

A書にこういう記述があります。
1945年の5月、6月、7月と、
日本は白旗を揚げて和平を求めていたが、
トルーマン(ルースベルトは4月に死去、副大統領が継いだ)は、
これを拒否した。
トルーマンは、ルーズベルトの無条件降伏という愚かな条件に従う
義務はなかったのだが。
ヨーロッパにおける米国の軍事指導者達は無条件降伏にこだわることに
反対していたのだ。

日本との和平はただ一つの譲歩で達成できた。
それは天皇の地位の保全である。
日本の天皇は世俗国家の元首であるばかりでなく、
国民の精神的権威でもある。
天皇の地位は信仰と伝統に基づくものなのだ。
米国側が、最終的にこの条件を受け入れたのは、
数十万人の人命が犠牲になった後であった。

トルーマンはルーズベルトと違い、
ソ連を仲間とは思っていなかったので、
ソ連が参戦する前に終戦に持ち込みたいと思っていた、
という説があるようです(B書)。

【ルーズベルト大統領の本性】 A・B書
ルーズベルト家はチャイナ貿易で財を成した家系である。
ルーズベルトは親共主義者でスターリンとも懇意だった。
そのために、米国政官界に多くの共産主義者が
存在するようになっていた。
これがのちに1950年代の「赤狩り(マッカーシズム)」
をうむことになった。

やはりルーズベルトは狂人であるだけでなく、
とんでもないあほうですね。
この狂人・あほうのために世界は狂わされたのです。

こうしてみると、第2次世界大戦は、
ヒトラーとルーズベルトという2人の狂人が起こしたものだ
ということになります。
日本には、この二人に相当するような狂人はいませんでした。
東条英機は悪者にされていますが、積極的な「犯人」ではありません。
きちんと常識的な判断をされた(B書に記載されています)昭和天皇が、
誰かが突出して日本を動かすことの抑止力になったのだと思われます。

A書にこういう記述があります。
ルーズベルト大統領が国際的な政治家としての資格を失墜した
最初の重要な事例である世界経済会議は、
英国のマクドナルド総理大臣と当時の大統領の私が準備した会議で、
1933年1月に開催を予定していたが、ルーズベルトが破壊した。
ルーズベルトが選挙に勝って、6月に開催を延期した。
その時丁度世界は、不況から経済の回復基調にあったが、
一方で通過戦争があり、貿易障壁を増加させる戦争があった。

準備作業が専門家の手によって進められ、
ワシントンに10人の総理大臣が集まって、
国際決済に金標準を用いることに合意した。
それにもかかわらず、会議の途中にルーズベルトは翻意して、
金本位制にひびを入れたために、会議は不調となり、
達成する結論がなく死んでしまった。

ルーズベルトの国務長官であったハルは、
この会議の失敗が第2次大戦の根っこにあるとして、
ルーズベルトのとった行動をハッキリと非難している。

ルーズベルトは好き嫌いで判断するだけでなく、
無定見でもあったのです。
こういう人が世界をリードしたのは日本だけでなく全人類の不幸でした。

【マッカーサー司令官の発言】
B書にはこういうマッカーサーの言葉も紹介されています。
51年5月アメリカ上院軍事外交合同委員会での発言です。
「日本人は、工場を建設し、多くの優秀な労働力を抱えていましたが、
原料を産出することができません。
すべての原料はアジア海域に存在していたのです。
これらの供給が絶たれた場合には、日本では、
1000万から1200万人の失業者が生まれるであろう
という恐怖感がありました。
したがって、彼らが戦争を始めた目的は、
主として安全保障上の必要に迫られてのことだったのです」

こうも言っています。
「太平洋において米国が過去100年間に犯した最大の政治的過ちは、
共産主義者をチャイナにおいて強大にさせたことだと私は考えます」

【フーヴァー、マッカーサー以外のルーズベルト弾劾論】 B書
1)ハミルトン・フィッシュⅢ世
米国の参戦に賛成した下院議員でしたが、
その著「ルーズベルトの開戦責任」でこう述べています。
「私はハル・ノートのことはまったく知らなかった。
これは誰がどう見ても宣戦布告そのもの、これを突き付けられたら、
どの国でも開戦せざるを得ない。
ルーズベルトはこの存在を隠し国民を欺いた」(と激怒しました)

2)米国陸軍アルバート・ウェデマイヤー将軍
その著「第2次大戦に勝者なし」で以下のように述べています。
「日本がとり得た最善の戦略は、極東ソ連を攻撃し、
ナチス・ドイツと協力してソ連を挟み撃ちにし
ソ連を崩壊させることであった」
彼も、ルーズベルトを非難しています。

3)その他大勢
2011年のA書の発刊以来、ルーズベルト大統領を糾弾する意見が
増えてきています。

そういう流れで、軍国日本悪論が見直され、
日本の再評価が行なわれることを期待いたします。
(これまでも、太平洋戦争が多くの植民地国家が独立を実現したことは
評価されてきていますが)

2021年8月24日火曜日

「ラストエンペラー 習近平」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 米国研究者による「中国脅威論」を確認いただきます。
 習近平の戦略は歴史的にみると行き詰まりつつあることを確認します。
ねらい: 
 早く、「無法者」がいなくなることを期待しましょう。 
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「ラストエンペラー 習近平」は、
米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問である
エドワード・ルトワック氏の近著です(文春新書2021年7月刊)。


国際戦略家から見ると、中国は危機的状況であると主張しています。
その論を以下のように展開しています。
1.前提の確認
習近平は2012年に党の総書記に就任
国家主席、党中央軍事委員会主席、国家軍事委員会主席を兼務。
すべての国家権限を集約している。
2018年3月に国家主席の任期を撤廃し、
終生国家主席であることを可能にした。
 
2.2000年代から、中国は外交政策をころころと変えている。
これは弱みを抱えている証拠である。
その外交政策は、以下のように変遷している。

1)チャイナ1.0 平和的台頭   2000年~
2001年、WTO(世界貿易機関)加盟を始めとして、
世界の一員として国際法を順守して経済発展する姿勢を示していた。
そのため、先進諸国から多くの支援を受けることができた。 

2)チャイナ2.0 対外強硬路線  2009年~
リーマンショックを機に各国が景気後退するなかで、
中国は強大な独裁力でいち早く立ち直った。
その結果で自信を持ち、
「小国は金で黙らせたり言うことを聞かせることができる」
と過信した。

領土や領海で、それまでの国際的な取り決めを覆す主張を開始した。
その最たるものが、「南シナ海は中国のものだ、
小国は大国の言うことを聞け」という理不尽な主張である。
日本に対しても尖閣諸島の領有権についての主張を行った。

これに対して、周辺国は当然ながら反発し、
日本、インド、オーストラリアを含む反中国ネットワークが形成された。
 
3)チャイナ3.0 選択的攻撃   2014年秋~
チャイナ2.0の失敗に気づき、全面対決ではなく
「抵抗の強いところでは攻撃を控え、
抵抗がないところには攻撃を加える」戦略に転換した。
日本やインドに対しては、矛先を収め、
フィリピンに対しては、南沙諸島近辺で埋め立てや基地建設を続けた。
これによって、フィリピンを敵に回すことになってしまった。

また、米国とは2015年9月に開かれた米中首脳会談で、
「二つの大国」で世界を仕切ろうという持ちかけたが拒絶されている。
しかし、そのままの路線で選択的攻撃を継続した。

4)チャイナ4.0 全方位強硬路線 2020年~
スウェーデンと、スウェーデン国籍の書店経営者に対する対応でもめて
スウェーデンは中国との取引を行わない決定をするまでに関係が悪化した。
インドに対しては、国境で紛争を起こしインド兵20人を殺害した。
インドはこれに対して、全面的に中国排除方針を打ち出した。
ベトナムに対しては、中国の主張する海域でベトナム漁船を沈没させている。
オーストラリアに対しては、
香港やウィグルの人権問題に言及することに対して
豪州産品に対して高関税をかけるなどをした。
 
また、「香港国家安全維持法」(国家からの離脱、
転覆行為等の犯罪を犯した場合、最低3年、最高で無期懲役が科される)では、
香港人以外の世界のすべての人間を対象にしている、
とんでもない法律なのである。
「内政干渉するな」というのは「中国のルールに他国も従え」
と言っているのである。

この強硬策の背景には、中国がいち早く強権によってコロナの拡散を防いだという自信があったのではないか。

3.全方位強硬路線の結果、世界の過半の国を敵(非友好国)に回すことになった。
オーストラリアは中国との戦いの最前線にいる
(輸出の3分の1が中国なのに)。
インドには、米国が各種の軍事力強化支援を行っている。
米国、インド、日本はベトナムの支援を行っている。
クアッド(日米豪印戦略対話、2006年の安倍総理の発案)の活動も活発化し、
海軍の連携を強めている。ここにカナダ海軍も加わりつつある。

フランスも、クワッド4国との海軍合同演習をインド洋北東部で実施した。
フランスのフリゲート艦は台湾海峡を通過している。
(中国はこれに対して抗議を行っただけで、制止する能力はない)
ドイツの戦艦も南シナ海にやってくる。
ロシアは中国と紛争を起こしているインドやベトナムに兵器を供給している。
 
なぜこのような稚拙な戦略を取るのか、について著者はこう述べています。

中国は「大国は小国に言うことを聞かせることができる」と考えている。
実際はそうではなく「大国は小国に勝てない」のである。
それは、大国と小国が争うと、他の国が小国側に立つからである。
他の国は、自国に対抗してその大国が強くなってもらうと困ると思う国と
「明日は我が身」と心配する周辺国とである。
ナポレオンに対抗したワーテルローの戦い、
アメリカ独立戦争、にその例がある。
そのことが分かっていない中国首脳部である。

香港への弾圧は、中国と他のすべての国との対決の様相を示している
(中国を支援するのは、ベネズエラ、パキスタンぐらいだろう)。

4.米中、どちらが強いか。
1)軍事力
実際の戦闘能力としての海軍力は圧倒的に米国優位である。
中国軍は海軍も陸軍も実際の戦闘経験がない。

2)製造業の能力
中国の企業はチームワークにより開発・製造する能力が弱い
ジェットエンジン開発の後退などがその例である。

3)テクノロジーの能力
戦略分野への集中投資と壮大なスパイ戦略によって急速に強化している。
米系企業は、技術流出よりも目先のビジネスを優先させた
(本書では触れられていないが日本企業も同様である)。
しかし先進企業でも昨今はようやく事の重大さに気がつき、
対応を始めている。

4.習近平の分析
経歴:
父親は、中国共産党軍が逃げ込んだ中国きょう西省を守っていた勇士だった。
中国建国後、国務院副総理の要職に就いたが、
毛沢東の主導権争いに巻き込まれ、16年間も投獄や拘束を受けた。
文化大革命では、その子習近平も糾弾され、4回も投獄の目に遭っている。
その後寒村に下放され、洞窟に寝泊まりさせられた。
姉は餓死している。妹も下放され食うや食わずの生活をした。

習近平は、共産党に忠誠を尽くすことで認められ頭角を現し、
順調に出世し、2012年11月に総書記に就任した。

分析:
習近平の一家をひどい目に遭わせたのは毛沢東一派であるのに、
毛沢東を崇拝しているのは、常人の感覚では理解できなません。
その理由を筆者はこう見ています。

幼児虐待の専門家は、こう言っている。
幼児虐待を受けた子供は、自分が間違っていたから親に叱られているのだ、
と考え、今よりももっといい子になろう、親の言うことに従い、
「正しい行い」をすることで許しを得よう、と考えてしまうのである。
習近平の場合はまさにこれに当てはまる、
彼にとって毛沢東こそが「虐待する父」なのだ。

しかしそうだとしても、普通の感覚であれば、
「自分はひどい目に遭って大変だったので、
自分はそういうひどいことはしないようにしよう」
と思うのではないでしょうか。
それなのにもっとひどいことをしているのですから、
まったく異常な精神の持ち主です。
チャイナ4.0の異常さを見れば、その非常識な精神が分かります。

これには、遺伝子レベルの異常さを感じます。
関裕二著「縄文の新常識を知れば日本の謎が解ける」
にこういう記述がありました。

中国の場合,Y染色体はそのほとんどがO3系統で、
男性は単純な構成になっている。漢民族はO3(だけ)なのだ。
(一般的には民族は多様な遺伝子構成を持っています)
ということは、O3が力づくで他者を追い出し、
あるいは征服して先住の男性を殲滅して女性を奪い、
子孫を増やしていった可能性が高い。

そして共存を拒否する漢民族を恐れ、
多くの人が周辺に逃げていったという歴史が再現できる。

やはり漢民族の男性は、
遺伝子的に敵を許さず、敵を徹底的にたたく、
自己保身的な思考を持っているのです。
その点から見ますと、毛沢東を祭り上げるのは戦術で、
国の開祖毛沢東を自分の威信形成に利用している
ということなのではないでしょうか。

いずれにしても、習近平は人類の常識からすると狂人の部類に入る
危険人物です。

5.習近平をつまずかせる」にはどうしたらよいか
強力な独裁者を引きずり下ろすには、
独裁者のメンツをつぶし国民からの信頼をなくさせ、
反乱を起こさせるしかない。

それは、安倍総理が尖閣に対する中国の要請を拒否したように
すればよいのである。
「台湾は中国固有の領土である」と主張しても
事態はまったく膠着状態で打開できない、ことも弱みである。

中国が期待し国内にも喧伝したEUとの投資協定は、
欧州議会がウィグルや香港問題を批判したことに対して
中国が制裁を課したことで、協定締結は宙に浮いてしまった。

バルト海諸国や東欧諸国も中国との取引を抑制しだしている。
2012年から継続している旧共産圏16か国とのグループにも
綻びがでてきている。
インドネシアも中国対抗の動きをしている。

こういうように、中国が小国とみている国々から反逆されることが
「メンツをつぶす」ことになる。
これを拡大していけば、いつかは周政権は崩壊するだろう。

本当にいつそうなるのでしょうか???
著者は、5年後か8年後か、50年後か80年後か、わからない、
と言っています。

「人口知能が俳句を詠む」ですって?

[このテーマの目的・ねらい]
目的:
 人工知能で俳句を作る挑戦を知っていただきます。
 意欲の高い組織が極めて高い成果を上げることのできる事例を
 知っていただきます。
ねらい:
 AIの手法にもう少し身近になれるといいですね。

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「人口知能が俳句を詠む」は、
北大大学院情報科学研究員の川村秀憲教授たちの研究発表です。


川村教授は、2017年春に知人から
「人工知能に俳句を詠ませることはできますか?」
という問いかけを受け、この研究を始めたのです。
短期間での成果はビックリです。この世界の進歩の早さも痛感します。

早さにビックリには、こういうこともありました。
まだ漸くよちよち歩きの状態のときに、
NHKの「超絶 凄ワザ!」という番組から、
「3か月後に企画している人工知能と人類の俳句対決をしませんか」
という誘いを受けました。
その誘いを受けたのです。
それから急遽、部外者を含めたプロジェクトチームを作りました。
部外者は、北大内の他部門、ITベンチャー、愛媛大学、松山市役所のメンバなど多岐にわたっています。

そんなスピードは先進的ベンチャー顔負けです。
意欲の高い組織では、
凄いハイパフォーマンスが可能であることを実感いたします。

その過程で、教師データはひらがな表記の小林一茶の俳句2万首を使っていたのを正岡子規、高浜虚子を加えた漢字交じり表期の5万首に変更強化しました。
それを1か月でしてしまったのです。
そしてアルゴリズムの試行錯誤・改良を経て次のような句ができるようになりました。
 ひとり身や山は蛍となりにけり
意味は分かりませんが俳句の形になっているのです。

ところで、「人工知能で新薬を発見する」のと違って
「人工知能で俳句ができたら何が嬉しいの?」という疑問は、
著者たちも理解していて、俳句を作るプロセスで人工知能の能力を高めるのだ、と明言されています。

因みに、この書ではAIの技術についても解説してくれています。
【AIの技術】 紹介省略
 ニューラルネットワーク
 機械学習
 ディープラーニング

俳句を作る技術・評価する技術については、概要このように紹介されています。
【俳句をつくるAI技術】
俳句に出てくるすべての単語に対して先頭に出てくる確率を計算します。
そして確率の高い単語に比較的高い確率を与える選択をします。
2番目以降に来る単語については、
その前の単語がなんであるかを考慮した確率を使います。
現在使用しているGPT-2手法では、
ひとつ前に決まった単語だけでなく、
決定されている文字列すべてを前提として処理します。
その際、5.7.5に収まるかどうかの考慮もします。

単語の解析には、「形態素解析」手法を用います。
2億文字以上の日本語の文学作品と40万句以上の俳句を
教師データとして使用し単語のつながり関係を学習しています。

【俳句を評価するAI技術】
1)生成された句と教師データとして用いた句が似ているものを削除します。
2)有季定型句の条件に合わないものを削除します。
  (季語を含まないもの、季語が二う以上あるもの、
   切れ字が二つ以上あるもの、5.7,5になっていないものを省く)
3)形態素辞書にない言葉を含むものも削除します。
4)単語の並びで前後の関連度の低いものが多い場合も削除します。
5)意味の通らない句を削除します。
  (実際の俳句の単語を入れ替えた教師データを作った、
   俳句でない文章に含まれている文言を対象外とした)
 
後掲の記述のようにそれ以上の評価をすることはできません。
俳句を作る人の心を模倣できるようにならないとダメなので至難です。

【AI一茶くん成長の各ステップ】
1.2018.1 NHKの「超絶 凄ワザ!」
お題は四季折々の写真3点で俳人と勝負します。

小林一茶、正岡子規、高浜虚子の作品5万句を教師データとして用い、
LSTM(説明省略)を用いた文章作成モデルで生成した俳句から、
以下の条件のものを除きました。
  1)季語を含まない句
  2)切れ字(かな、や、など)を複数含む句
  3)5.7.5になっていない句
  4)教師データと類似している句
 
さらに、
画像とそれに合った俳句の36万ペアを学習して作った機能を使い
お題となる画像とマッチしている度合いが高いと判定された句を
高い順に並べたリストを作成しました。
その3万句から、人間がお題単位に一つ選びました。
  
結果は0勝3敗でしたが、1点は3人の審査員のうち1人から
投票されました。スゴイ成果です!!
その句は「又一つ風を尋ねてなく蛙」でした。
 
課題は、教師データの強化(若い人の句の採用)と
画像と俳句がマッチしていることの判定方法強化、でした。
 
2.2018.7 北大内イベント しりとり対決
教師データは現代俳句4万句に変更しました。
一茶くんが生成した句と人間が詠んだ句の比較をして
「人間らしさ」係数を算出し選句に利用しました。
(しかし、その情報も参照して、人間が選んだ句は
 「人間らしさが高くも低くもない」ということで、
 このロジックの完成度は今一でした)

審査員の評価結果は、一茶くんの作成した句は
平均点で「俳句として技術的に成立しており、
詩的要素、発想・技術に見るべきものがある」のレベルでした。
一茶くんの作成した最高点(俳人の作品を含めて)の句はこれです。
  かなしみの片手ひらいて渡り鳥

3.2019.3 北大内イベント 兼題対決
一茶くんは数百万句の生成が可能となっていましたので、
お題からそれに合致した句も多数あります。
そこでそれを絞る工夫をしました。
(人の詠んだ句を適当に語を入れ替えた句を作り、それを学習させて、
 対象の句が「入れ替えて作られているらしい確率を計算する)

会場の聴衆が作者不明状態で、よい方に挙手する方式での
俳人チームとの対戦成績は5題に対して2勝3敗でした。
結構いい線まできています。
一茶くんが勝った2句はこれです。
 題「冴返る」:朝シャンのやうな顔して冴返る
 題「蕗の薹」:蕗の薹散らしてゐたる会釈かな

4.2019.6 松山市イベント 「恋の俳句選句大会」
大会運営者が選んだ恋関連ワード18語を含む句の
出来栄えを評価します。
一茶くんが382万句を生成しましたが、その中から750句を選定し
26名の参加者に300句ずつを配布しました。
そして、参加者に、波選30句程度、特選5句、一押しの恋の句1句を
選定してもらいました。
26名が選んだ一押しの句を対象に本選を行いました。

参加者は2句、観覧者は1句を選んで集計しました。
その得点の上位5句で決勝戦を行い1句を決めました。
その句は「初恋の焚火の跡を通りけり」でした。
この選定過程のデータは「優れた俳句」の条件を把握できる
貴重なものとなりました。

5.2019.9 一茶くん初めての吟行
「あやとり橋から撮影した大聖寺川の画像」から
適切な句を一茶くんが自動で選定することをしたのですが、
選定された句は選者からいい評価は得られませんでした。
的確に画像を詩的に解析する能力の不足が課題となりました。
 二人出て水のつめたき春の川(今は秋で不可の選者評)



















6.2020.4 日本テレビ「人間vsAI」
二人の俳人と一茶くんの作った俳句を3人の審査員が選定します。
お題は恋です。そこで既存のデータベースを利用して、
恋の連想語、さらにその連想語を検索し一茶くんの作品を検索しました。
その中からお仲間の俳人に1句を選定してもらいました。
それは「鳥の巣をふれるかたちの手を握る」でした。

結果は、3人の審査員の3句に対する投票は、2点、1点。0点で
一茶くんは1点を獲得することができました。
いい句は作れるがそれを選ぶことはできない、ことが再確認されました。

7.2020.8 日本テレビ「笑ってコラえて!」
「人が映っていない晴れた昼間の銀座三越前交差点の写真」
を見て句を詠みます。

一茶くんの支援役の俳人から、
「連想関係が強い言葉がでてくる句は陳腐になる」
という指摘をいただいて、
意味合いが遠い単語の組み合わせが含まれた俳句に高い評点が与えられる
ようにして候補を選定しました。
その結果は「宙吊りの東京の空春の暮」でした。

対するスタジオゲストが詠んだ句は
「まだなのにすでに祭りのあとのよう」で、
著者は、「抽象度の高さ、比喩の利用の点などでこれはかなわない」
と評しています。

ここに、こういう記述があります。
 近年、人工知能の出力結果を説明する「説明する人工知能」
 の開発が進められています。
 俳句の生成・選句についても、
 なぜその俳句を選んだのかという理由を説明することができれば、
 俳句に対する理解が格段に深まるのだと思います。
 俳句をさまざまな角度から解釈して、想像力を掻き立てることは、
 俳句の楽しみ方の一つでもあります。
 
以上で挙げられた課題の解決にチャレンジしていくことになります。
1)いい句の条件を明確にすることでいい句を作成する能力を向上させる。
2)連想・抽象化能力、思いを込める能力を高める。
3)いい句を選定する能力を高める。
 (注:1)2)3)の順に難しいでしょう)

俳句を作り評価する仕組みの強化を通じて、
日本語文章の生成・評価・要約のAI能力が向上することを
期待いたしましょう!!

2021年8月20日金曜日

「よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑」

[このテーマの目的・ねらい]
目的:
 「よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑」
 の内容をご紹介します。
 こういう書籍が売れる背景を考えてみます。
ねらい:
 誰しも改善すべき点は多々ありますね(自戒)。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この書籍は、日経新聞の書籍紹介欄に
以下の記載があったので買ってみました。














新型コロナウィルス禍での外出自粛や在宅勤務の定着で、
リアルに人と接する機会が減っている。
そんな中、コミュニケーションを円滑にするため、
ポジティブな表現を提案する「言いかえ本」の刊行が相次ぎ、
書店での存在感が高まっている。

「疲れてる?」は「元気だった?」、
「ドアを閉めないで」は「ドアを開けておいて」——。
「よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑」
(サンマーク出版)は
2020年8月の刊行から約1年となる7月31刷30万部を突破した。

大手企業や防衛相などで年150件以上の研修・講演を手掛ける
産業カウンセラーの大野萌子氏が執筆。
無意識に使いがちな否定的な言葉を、
プラスに言いかえて好印象を与える術を指南する。
「挨拶・社交辞令」「注意・叱り方」など
15場面、141事例を取り上げた。
見開きの右ページに言いかえ例を掲載し、
左ページでその理由や気をつけるポイントを解説する。

編集者の桑島曉子氏は「20年6月施行のパワハラ防止法を念頭に、
当初は上司と部下に挟まれた33歳くらいの男性会社員をターゲットに想定した。
コロナ禍のリモートワーク浸透でタイミングが良くないと心配した」
と振り返る。しかし蓋を開けると、読者の7割以上が女性を占め、
特に40-60代の反響が大きかった。
桑島氏は「ママ友や親戚などコロナ禍でも逃れられない人間関係は女性に多い。
むしろ濃度が高まったことで、言いかえ本へのニーズが高まった」と分析する。
この後、他に4点の言いかえ本の紹介があります。

実は言いかえ本の元祖は、当ブログでもご紹介した「できる大人のモノの言い方大全」
(2013年刊)です。
このブログも「上野則男のブログ」の「ベストセラー」です。

この中の一部に以下の記述があります。

【相手をムッとさせてしまう日本語】
× そんなこと言った覚えはない
× 
解釈の違いだね
× まあ黙って聞いてよ
× そんなこと言ったら人に笑われるよ
× ほかにすることがあるだろう
× 恥ずかしいと思わないの?
× みんなそう言ってるよ
× 話にならないよ
× それは理想論だよ
× そこを何とか
× そう言われましても
× 参考になりました
× 常識だよ
× だから言ったじゃないか
× ○○してやったじゃないか 

今回の「言いかえ図鑑」はこのような言い方を中心に取りあげていて
ある面で2番煎じなのですが、
その特色は、前掲の紹介文にもありましたように、
発生場面別に解説を分けていることです。
それによって、より生生しく状況が伝えられるようになっています。

たとえば、
「上から目線」や「あいまいな表現」はいけないと言われていて、
そのことは多くの人が承知しているのですが、
場面の中で例示されるとピンとくるのです。

一つ例示します。「お願いごと・頼みごと」の章です。
【右ページの表示】
  よけいなひと言
   「できれば早めにお願いします」
   ⇓
  好かれるひと言
   「月末までにお願いします」

【左ページの解説】
対面でのやりとりだけでなく、
メールやチャットでお願いするときも、
多くの人が無意識のうちによく使っているのが、
「できれば」「可能だったら」というよけいなひと言です。
これは、お願いする方が相手に配慮するつもりでも、
言われた方は「できたらでいいのかな」と思って
優先順位を下げてしまう言葉です。

反対に、忙しい人だとスケジュールの優先順位を常に考えるため、
いつまでにやらなくてはいけないのか明確に分からず
対応を迷わせてしまう、迷惑なフレーズでもあります。

ですから、「今月末までにこの案件をお願いしたいのですが、
難しい場合はご相談ください」と、はっきり希望を伝えましょう。
下手に相手に遠慮していると
「『できれば』とあったので、
仕事が立て込んでいたため手をつけていません」
と平然と言いかえしてくる人もいます。

「なるべく早めに」も
「なるべくと言うなら、すぐやらなくてもいいんだな」
と受け取られる可能性があります。
「早めに」も、人によって受け取り方が違うあいまい表現で、
トラブルのもとになりやすいので避けたほうがいいでしょう。

この場合は、
「この案件を、
今週、金曜日の17時までにお願いすることはできますか?」
と具体的に聞くことです。
そして、相手から「イエス」か「ノー」ではっきりと返事をもらう
ところまでやりとりすること。
そうすれば、「そんなつもりじゃなかったのに」の行き違いがなくなり、
スムーズに話が進むのです。

分析屋の私としては、「あいまいな表現」のような「避けるべき表現」と
それを留意すべき「場面」の関係を本書の記述に従い整理してみました。
この表のように「避けるべき表現」は、
いろいろな「場面」で発生する可能性がありますので、
本書のように場面ごとに解説されるとよくわかるということになります。

【場面と避けるべき表現の関係】

2021年8月17日火曜日

「後悔するイヌ、噓をつくニワトリ」 動物に「心」はあるのか?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 素晴らしく楽しい図書をご紹介します。
 「動物たちはどこまで考えているのか?」について
     考えていただきます。
ねらい:
 ぜひ、本書をお読みください。
 (早川書房刊990円です)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
当ブログは、
ドイツの動植物研究者ペーター・ヴォールレーベン氏の著書のご紹介です。
副題に「動物たちは何を考えているのか?」となっていますが、
もう一歩進んで「動物たちはどこまで考える力があるのだろうか?」
の解明書だと思われます。


著者は、大学で林業を専攻した後、
ドイツのある州の営林署で森林官として20年以上働いたのち、
フリーランスで森林の管理をしておられるそうです。
学者ではないのですが、この世界についてスゴイ博識です。

後悔するイヌ、嘘をつくニワトリ以外に、
以下のように興味深い事実が紹介されています。
それが全部で40項目もあるのです。

 お互いに名前をつけているブタやカラス
 算数のできるヤギ、ハト、イヌ
 悲しみに明け暮れるシカ
 立ったまま寝るウマ、飛んだまま寝るツバメ
 予知能力のあるヤギ、アリ、トリ
 老いると自ら仲間から外れるウマ、ヤギ
 利他精神のあるシジュウカラ、コウモリ
 ブタは本来清潔好き
 動物にも「魂」はあるか (人間にだけあるという理屈は通らない。
                                        ではどこに境界線があるか?)

私は動物に関心はありますが、小鳥類以外飼ったことはありません。
その私の数少ない経験をお話しします。
私の幼少時代の友人が札幌にいますが、
彼は動物や植物に関心・造詣が深いのです。
彼の家を訪問した時に、こう言われました。
「庭に雀がやってきて自分が出ていっても逃げない」

ご承知のように雀は非常に用心深い動物で、
人間が寄るとすぐに逃げてしまいます。
「へー、雀も相手が危険かどうか分かるのだな」と感心しました。

ところが、その後、孫と一緒に公園でポテトチップを食べていた時、
雀がやってきて、
私の口のところからポテトチップを取っていきました。
ビックリしましたが、
雀に危険人物ではないと認めてもらって嬉しく思いました。
でもこれは頭の判断ではなく、本能の延長ですね。
やや自慢話で申し訳ありませんでした。

以下にタイトルにある「後悔するイヌ」「嘘をつくニワトリ」を
ご紹介します。

【後悔するイヌ】
イヌは叱られると斜めの上目遣いに相手を見る「イヌ顔」をする。
これは「ゴメンナサイ」を示している、というのですが、
もっとわかりやすい例が示されていました。

ミネソタ大学の研究者たちは、
ラットのために特別な「レストラン街」を作った。
円形の広場に4つの入り口があり、それぞれの先にエサ場がある。
どれか一つにラットが入ると音が鳴るのだが、
音が高ければ高いほど、食べ物が得られるまで待つ時間が長い。
さて、そこでラットに起こったことは、人間の場合と同じだったのだ。
辛抱の糸が切れたラットは、
となりの入り口ならもっと早く食べものにありつけるかも
と希望を抱いて、別の部屋に移る。
しかしそこで鳴った音がさっきより高ければ、
待ち時間もさっきより長いと分かる。
するとそのラットは先ほどいた部屋の方に名残惜しそうな視線を向け、
今度は部屋を移らずに,食べものをもっと長く待とうとしたのである。
ラットの脳の活動パターンを調べてみると、
私たちがそのような状況を頭の中で再現したときと
同じものが確認された。
後悔と失望とは本質的に異なる。
後者は期待していたものが得られなかったときに生じるが、
後悔はそれに加えて、さらによい選択肢がありうると気づいたときに
発動するのである。まさにラットでその状態が発生していた。

【嘘をつくニワトリ】
(前提:このオンドリは絶倫でメンドリたちは持て余して逃げている)
フリードリーン(著者の買っているオンドリの名前)は
ふだんはいたってジェントルマンで、エサを食べるときなど、
彼のささやかなハーレムの住人に先を譲ったりする。
なにかおいしそうなものを見つけると、
すぐに特別な抑揚をつけてクックッと鳴きはじめる。
するとそのエサにロッタとポリー(メンドリ)が殺到するのだ。
ところがその鳴き声をあげたとしても、
フリードリーンの足下になにもないときがある。
なんとこのオンドリ、平然と嘘をついたのである。
おいしいミミズとか特別な穀物のかわりに
メンドリたちを待っているのは、またまたつがいのお誘いで、
驚いているすきにまんまと成功してしまう。
だが、そういうことがあまりに重なると
(そして二羽のメンドリには数回の嘘でじゅうぶん)、
ほんとうにエサが見つかったときでも二羽は用心深くなる。


それ以外にもう一つ私としての大発見をご紹介します。
【恐怖意識は遺伝子に残る】
家族の成員が(敵に襲われて)血に塗れて倒れるようすを
その場に居合わせ見てしまったもの、
あるいは恐怖やわき起こるパニックに骨の髄まで貫かれたものは、
その体験を次のものに伝え、
その情報は多くの世代を超えて伝達されていくことだろう。

そのような伝達は、
言語を介在せずともなされうることが確かめられている。
「ヴェルト」紙が2010年に報じているように、
恐怖は骨の髄に至るのみならず、遺伝子にまで達するのだ。
ミュンヘンのマックス・プランク精神医学研究所が、
精神的外傷(トラウマ)を受けるほどの経験をすると、
特定の分子”メチル基”が遺伝子に付加されることを見出した。
その分子はスイッチのように働き、
遺伝子の働きを変化させるという。

研究者はマウスの実験を通じて、
それにより行動の変化が一生涯にわたって持続する可能性を示した。
またこの研究は、変異した遺伝子によって特定の行動パターンが
次の世代に遺伝する可能性があることを示唆している。
言いかえれば、身体的な特徴だけでなく経験も、
遺伝子的なコードによって受け継がれるというのだ。

そうやって、生物は外敵から逃げてきているのです。
そうしないと、弱い種は絶滅してしまいますものね。
これで思いましたが、
うつ病は神経細胞のどこかに
このような変異を受けてしまっているのかもしれません。
それを突き止めなければうつ病の根治はできないのでしょう。

2021年8月16日月曜日

なぜ東京オリンピック開催に反対論があったのか?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 東京オリンピック開催の反対論を意思決定問題の例題として
 分析をします。
 結果的には、反対論はごく少数になったことも、
 意思決定問題の筋書き通りであることを確認いただきます。
ねらい:
 意思決定・判断の際には、プラス面とマイナス面を
 公平に見るようにしましょう。
 (本文に記載しました別項「賢い人がなぜ決断を誤るのか?」
 にありますように、たいへん難しいことではあるのです)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
東京オリンピックは、コロナウィルス感染症のおかげで
たいへんな苦境に立ちました。
1年延期の羽目になった上、それでもすまずに
2021年になっても、
開催再延期、開催中止などの意見に振り回されました。
無観客開催につきましても、開催関係者は大いに悩まされました。

私は、開会式の状況を見て、こういう逆境の中での開催として
大成功だった思いました。
1)206か国・地域が参加した。
2)多くの選手たちが嬉しそうに行進した。
3)当日運営が円滑に実行された。

その後、若い人たちの活躍で過去最大の金メダル獲得も達成し、
国民は盛り上がったと思います。
関係各位のご苦労・ご努力に対して深甚なる感謝・慰労の意を表します。

この大会は、コロナに振り回され続けました。
結果的には「コロナにやられずに済んだ」ということで、
残念ながら「コロナに勝った」と言える状況ではありませんでした。

オリンピック研究者である石坂友司准教授の
「コロナとオリンピック」(副題 日本社会に残る課題)
にも記述されていますように、皆様ご承知の諸問題が発生しました。

なお、当書は2021年7月10日刊行なのですが、
以下のようにそれまで発生した問題の整理記述が大半で、
オリンピック開催を応援するというスタンスは
残念ながら見られません。
 第1章 東京オリンピックと2020年
 第2章 東京オリンピックがもたらす都市空間の変容
 第3章 東京オリンピックと震災復興 (復興五輪」だったのではないか?)
 第4章 オリパラ教育とボランティアの行方
 第5章 東京オリンピックとナショナリズム
 第6章 東京オリンピックと2021年 (聖火リレーの開始と大会の行方)

当書にも書かれていますように、
年初には予定どおりの開催を望まない人が圧倒的多数でした。
1.2021年1月9・10日、共同通信社実施世論調査
 1)2021年夏に開催すべきだ 14.1%
 2)再延期すべきだ       44.8%
 3)中止するべきだ       35.3%
2.2021年1月23・24日朝日新聞実施調査
 1)2021年夏に開催する   11%
 2)再び延期          51%
 3)中止            35%

開催を望まない人の多くは、
コロナの感染拡大につながるのではないか、あるいは、
このような状況でオリンピックどころでない、
ということだろうと思われます。

この調査結果数字をどう見るかですが、
意思決定問題として考えるとこうなります。

意思決定(あるいはことの是非判断)を決めるのは、
メリット(効用)でデメリット(負担)のバランスです。
否定的な意見は、効用をあまり期待しないで、
負担を大きく考えます。

別項の以下のブログをご参照ください。

本件の場合の負担は、
コロナの感染拡大あるいは重症者・死者の増加です。
「オリンピックより人の命が大事だ」
という極論がその典型的意見です。
(賛成派は人の命はどうでもよい、と言っているわけではありません)
オリンピックの効果ははっきり見ないで、
コロナの被害だけを見ているのです。

私は、諸情報を基に、以下のように
オリンピック開催の目的・ねらい(メリット・効果)を
整理してみました。
この中で、目的の3.の5)の経済効果以外は
分かる人にしか分かりません。
スポーツをしない人は、
「アスリートとして」の項目は実感できないでしょう。

経済効果は定量的なのですが、その恩恵を受ける人は限られているために、
強調はされません。一般人にとっては、
そのためにオリンピックを開くなどとは考えられません。


オリンピック開催の目的・ねらい

目的

1.アスリートとして

世界のアスリートが一堂に会して、技を競う。

世界中がその場に注目するので、

 アスリートにとっては究極の目標となる。

国籍・人種・民族・宗教の違いを超えて

 公平な立場で参加できる。

2.応援者として

その技の発揮・勝負を応援し、楽しみ、感激・感動する。

  困難な条件での勝利は、応援者に強く生きる力を与える。

  一言で言えば、「盛り上がる」のです。

3.開催国として

)開催国としてスポーツ振興の起爆剤とする。

  少年・少女にスポーツを目指す機会を与える。

2)各種スポーツの世界の実力を認識し、強化の方向を知る。

  国としてのスポーツ振興の判断材料とする。

3)国威掲揚の機会とする。

  好成績によって世界に自国の存在をアピールできる。

  運営成功によって国威掲揚となる

(前回の東京五輪はまさにそれ)。

 4)開催・運営に関わる技術革新の機会とできる。

  施設の建設・運営技術、開閉会式の技術などで革新が生まれる。

 5)経済効果を期待する。

  今回の東京オリンピックの場合、大会運営で約2兆円、

建設投資で10兆円。 

ねらい

1.国籍・人種・民族・宗教の違いを認める

平和な世界の実現に貢献する。

→人類が戦いによって他を制圧するのではなく、

スポーツでの闘いに転換する。

2.アスリートを目指す人材を拡大することにより、

多様な価値を認める社会の実現に貢献する。

3.産業強化・発展の起爆剤となる。

 


一般の意思決定案件でも、負担やコストが明確であるのに対して、
期待する効果は定量的に明示できないものが多いのです。
どうしても、デメリットを重視する意見が強くなります。

その後、池江璃花子選手の復帰レース(4月4日)後に
以下のように、夏開催派が急増しました。
上記目的・ねらいの「応援者としての」効果であるところの、
選手が活躍する場の高揚感・楽しさ・嬉しさが実感できたのです。
つまり、効果が見えてきたのです。

3.2021年4月10・11日朝日新聞実施調査
 1)今年の夏に開催する     28%
 2)再び延期する        34%
 3)中止する          35%

通常であれば、オリンピック代表選考会が多数開催されて、
レースの楽しさやオリンピックで勝つことの期待感が醸成される
ところですが、コロナでそういう機会があまりありませんでした。
その結果が前掲の否定的意見の増大になったのです。

その点で池江選手は、
オリンピック開催に対して非常に大きな貢献をしたのです。
池江選手の復帰活躍がなければ、開催はもっと難航したでしょうね。
オリンピック委員会から、特別金メダルをあげなければなりません。

本件の件名「なぜオリンピック開催に反対論があったのか?」の答えは
「オリンピック開催のメリット・効果が分からなかったから」です。
反対派は、終了後でも
「開催しない方がよかった」と思っているのでしょうか。
とてもそうは思えません。

「賢い人がなぜ決断を誤るのか?」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「賢い人がなぜ決断を誤るのか」をご紹介します。
 決断を誤らない方法も提示されます。
 ついでに、MIND-SAの意思決定論もご紹介します。
ねらい:
 決断を誤らない方法として参考にできます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本項は、仏ビジネススクールHEC経営大学院の
オリヴィエ・シボニー教授の「賢い人がなぜ決断を誤るのか?」
のご紹介です。


著者は、マッキンゼーに25年在籍していました。
この内容は、その経歴から「さすが!」と思わせる
広範囲の知識・情報に基づいています。

本書の内容は以下の3部構成です。
第1部:9つのトラップ
 決断を誤る落とし穴を解説しています。
 基本的には「認知バイアス」(そうだと思い込むバイアス)による。
第2部:意思決定の方法を決める
 認知バイアスに陥らないための意思決定の方法を解説しています。
 基本的には「協働と適切なプロセス」だとしています。
第3部:意思決定アーキテクト
 適切な意思決定をするための具体策を提言しています。

ですがよく見てみると、本書は書名で示していますように
「決断(意思決定)を誤る」原因と対策を示しているのであって、
成功する意思決定の方法を示しているのではないのです。

経営戦略の意思決定は、
確定していない未来を予測することに基づきます。
したがって根本的な成功の対策は、
未来の予測能力をどうやって高めるか、になります。

それと、この環境変化の激しい現代では、
成功には意思決定の迅速性も重要です。
優れた予測をしても、周回遅れでは勝ち目がありません。
的確性と迅速性のバランスの勝負なのです。

これには単純かつ汎用的な正解はないと思われます。
したがって、意思決定の100%成功はあり得ません。
成功率が高ければ良しとせざるをえないでしょう。

日本電産永守社長の場合は、47年間で、
国内26案件、海外40案件のM&Aを成功させてきています。
失敗は1件もない のだそうです。
これは永守社長個人の力量で実現できているので、
他の人は真似ができません。

そういう前提で、本書の概要をご紹介します。
第1部 9つのトラップ
僭越ながらよく整理できていると思います。

トラップ

説明

代表的事例等

ストーリテリング・トラップ

魅力的な「話」に乗せられてしまう。

「空からの探査で石油鉱脈を見つける」

模倣トラップ

「偉人」の行動を模倣しようとする。

アップルのジョブスを真似しようとする。

直観トラップ

成功体験に基づく直観を信じる。

アップルでの成功者ロンジョンソンがJCペニーで失敗した。

自信過剰トラップ

楽観主義で過大な自信を持つ。

 

惰性トラップ

過去にこだわる、影響される。

 

リスク認知トラップ

小さなリスクを拒み、大きなリスクを取る

小さなリスクは理解しやすい。

時間軸トラップ

短期主義で近くを重視する。

 

集団思考トラップ

集団の意向を重視し、遠慮する。

 

利益相反トラップ

代理者が依頼者の利益に相反して行動する。

 


以下、本書の項目見出しは、その内容を理解しにくいので
(原著でなく翻訳のせいかもしれません)、
私が改訂(上野案)を示しました。

第2部 意思決定の方法を決める 
 →(上野案)トラップの発生原因と基本対策
 トラップの発生原因は、認知バイアスである、
 認知バイアスを自らで避けるのは困難なので、
 協働による意思決定とそのプロセスを改善する必要がある、
 という主張です。

1.認知バイアスは諸悪の根源か
 →(上野案)トラップの発生原因 認知バイアス
 著者はこういう整理をしています。たいへん分かりやすいと思います。
 
2.自らのバイアスを克服できるか
 →(上野案)自らのバイアス克服の困難性
3.協働とプロセス
 →(上野案)バイアス克服の基本対策、協働と適切なプロセス
4.よい判断とは、正しい方法で下された判断
 →(上野案)3.と合体させる。

第3部 意思決定アーキテクト
 →(上野案)意思決定の正しい方法
1.対話   →(上野案)対話を重視する
2.意見の相違→(上野案)異なる視点で見る
3.組織の力学→(上野案)意思決定のプロセスと文化を変える

以下のようなこの個々の内容はたいへん良くできています。
しかし、以下の問題点含みです。
1.対話の重視は、迅速な意思決定の阻害要因となります。
2.は意思決定者が自ら取り入れれば有効な対策となりますが、
 迅速な意思決定の阻害要因となる可能性もあります。
3.の改善は、意思決定の責任をあいまいになるリスクがあります。

ということで、
あくまでトラップ・認知バイアスを避けるための対策であって
優れた意思決定をするための方法ではないことに
留意する必要があります。
これらの対策を完全に実施しても優れた意思決定になる保証はない、
ということです。

1.対話を重視する

1

認知的多様性を十分に確保する

2

時間をかける

3

対話を議題にする

4

パワーポイントの使用を制限する

5

誤解を招く「たとえ話」を禁止する

6

結論を急がない

7

「バランスシート」を使って異なる意見を奨励する

8

「悪魔の代弁者」を任命する

9

代替案を義務化する

10

選択肢消去テストを実行する

11

別のストーリーを語る

12

プレモータムを実行する

13

臨時委員会を招集する

14

メモをCEOの引き出しにしまい込む


興味深いのは、
4 でパワーポイントについて以下の記述があったことです。
「パワーポイントによるプレゼンは、
会議を(作成者側の)単一の視点による一方通行なものにして、
深い議論の妨げになる」ということで、
サンマイクロシステムズ、アマゾン、ネットフリックスが
使用禁止にしている。代わりに(長文の)メモを使用している。
かつ事前配布をしないで当日説明としている。
その理由は、
読んでいる前提で議論を開始するが
実際にはほとんど読んでいないからだ、というのです。

私たちは以前から、真藤恒NTT初代社長の
自分宛の資料は1枚になっていないものは受け付けない
の主張に賛成していました。
「自分が、たくさんの資料を見なくてすむ」のと、
「1枚にするには作成者が提案内容を練りに練る」
からだというのです。
明快な論理です。

システム企画方法論MIND-SAの企画提案書5W2Hは、
基本内容を1枚に収めるようにガイドしています。

2.異なる視点で見る

15

非公式のアドバイザーを育てる

16

フィルターに通す前の専門家の意見を聞く

17

コンサルタントに予断を与えない

18

社外チャレンジャーを起用する

19

レッドチームとウォーゲームを活用する

20

群衆の知恵を借りる

21

リアンカリングでアンカリングと戦う

22

複数のアナロジーで確証バイアスと戦う

23

デフォルトを変えて現状を打破する

24

標準化されたフレームワークを使う

25

意思決定の基準を事前に定義する

26

仮説のストレステストを行う

27

参照クラスに基づく「外部視点」を取り入れる

28

新データを入手したら考え方を更新する

3.意思決定のプロセスと文化を変える

29

友好的な雰囲気をつくる

30

「発言する」分化を育てる

31

報酬システムと組織の利益を一致させる

32

無料で学ぶ方法を見つける

33

失敗を恐れず実験する

34

成功も「検死」する

35

コミットメントを徐々に増やす

36

ミスを犯す権利ではなく失敗する権利を認める

37

テキサスの狙撃兵のような戦略を練る

38

堂々と意見を変える

39

権限をシェアする

40

インナーサークルをつくる


因みに、システム企画研修社の提供するシステム企画方法論
MIND-SAでは
意思決定についてこう解説しています。

意思決定の本質
 意思決定に正解はない。
  「正解は何か?」と追い求めるな。
  「市場調査をしたら分かる」というものでもない。
  正しかったかどうかは結果により決まる。
 
 意思決定者の判断により決める。
  関係者は意思決定者に自らの判断や情報を提供するが、
  決めるのは意思決定者である。
  判断を誤ったら責任を取る、という前提で判断する。
 
「正解はないのだから、あれこれ悩まず決めなさい」という考えです。
 
そして、以下のように考えています。
意思決定は、
メリット(効果)とデメリット(費用)のバランスの判断
により決まる。
メリットとデメリットをどう見るかにより。答えが変わる。
一般にはデメリットの判断には幅はなく、
メリットの判断に個人差があり答えが変わるのである。

別項「なぜ東京オリンピック開催に反対論があったのか?」
をご参照ください。