2010年6月29日火曜日

医学と医療、「BOK」と技術書

 先日、今をときめく帯津良一先生の講演を聴いてきました。
 先生は、人間を「こころ、からだ、いのち」の総合体として
 捉えるホリスティック医学を推進する
 ホリスティック医学協会の会長をしておられます。

 帯津さんは、私が所属していた東大空手部の先輩です。
 (ですから、さん付けで呼ばせていただきます)
 東大医学部を卒業後、東大医学部病院、都立駒込病院医長で
 西洋医学を修得されました。
 その後、西洋医学に疑問を感じられて、
 中国医術、気功、柔術、呼吸法等を学ばれました。

 そして、西洋医学だけでなく、
 東洋医学等を統合した治療を行う拠点として
 82年に川越市に帯津三敬病院を開設されたのです。

 帯津三敬病院は
 現在100人を超す従業員のおられる大病院です。
 「西洋医学だけでなく、中国医学、ホメオパシー、代替医療など
 様々な療法を取り入れたがん診療の第1人者」
 と言われている方です。
 西洋医学に見捨てられた患者さんが押し寄せています。

 帯津さんの著書(これまで46冊の著書を出しておられます)
 の中に以下の言葉があります。

 「戦争でいえば医療は最前線、対して医学は兵站部です。
 戦いの主役は医療、医学は脇役です」

 「医学だけで戦いができるわけがない。
 現場の状況で悩むのが医療に携わる者の宿命である。
 医学の立場だと、立証されていない技術は利用できない。
 現場では、少しでも可能性があるなら使いたいということになる」

 というようなことを言っておられます。
 気の強化、漢方薬の利用などは、
 西洋医学系の病院では取り上げません。
 丸山ワクチンもその扱いでした。

 「なるほどそうだ」と思いました。

 そういうことは、システムの世界でもあります。
 もともとシステムの世界は、「学」から始まったものではありません。
 ですから、学と現場というほどの対立概念はありません。

 それでも、
 標準化ルール・基準と現場の応用、というような対立があります。
 会社で、標準化ルールや基準を決めてこれでやりなさい、
 (これは学に相当します)と指示しますが、
 現場ではそれだけでは仕事ができません。
 現場では種々雑多な案件が発生します。
 医療のような応用対応が必要です。
 応用問題は、単純な原理のみでは解けないのです。

 あるいは、方法論等の中での対立もあります。
 方法論の中には、BOK(Body Of Knowledge)
 と呼称される知識体系と
 実践的な手法やガイド(技術書)とがあります。

 BOKは、Pmbok(プロジェクトマネジメントの知識体系)
 で始まりましたが、
 BABOK(ビジネスアナリシスの知識体系)、
 DMBOK(データマネジメントの知識体系)
 と続いています。

 BOKは、知識体系ですから
 対象の領域についてどういう手順で何を行う必要があるか
 を記述しています。
 いわば,WHATを記述しているのです。
 それを実際にどうやってやればよいか(How)
 までは記述していません。
 BOKでは、「医療」はできないのです。

 米国系の社会では、
 何をすべきか(What)しか記述していないBOKで
 ことが済むようです。

 作成目的が違いますが
 開発標準のISO12207(ソフトウェアライフサイクルプロセス)も
 保守プロセスの標準であるISO14764も
 Whatしか規定していません。

 日本で初の輸入物の開発方法論であったPRIDEが
 このパタンでした。
 
 今でも思い出しますが、
 アメリカにPRIDEの勉強に行ったときのことです。

 我々日本人が、「それはどうやって実施するのか」と
 よく質問しました。
 すると、PRIDEの開発者Milt Bryce氏が
 こう答えました。
 「それは、これだ」と自分の頭を指すのです。
 自分で考えろ、という意味です。

 その時は、
 不十分な方法論だ、不親切な方法論だ、と思いましたが、
 だんだん分かってくると、
 「なるほど、そこから先は考えれば分かるな」
 と思うようになりました。

 目的至上主義のアメリカでは、
 目的を達成すればそれでよい、という考えなのでしょう。

 目的とは,ある面でWhatであり、
 それをどうやって検討するか(How)は自由だということになります。
 形式的な統一性は、重視しないのです。

 それに対して、日本では
 詳細なHowtoまでを要求します。
 いわば技術書を期待するのです。

 なぜでしょうか。
 よく分かりませんが、
 目的を弁えて判断する、という思考に慣れていないために
 Howtoの方に踏み込んでしまうのではないでしょうか。

 伝統を重んじ、
 職人技レベルで仕事をするという国民性もあるかもしれません。

 PRIDEのWhat型の方法論に対して、
 日本社会では具体的な手法(How)がついていないと
 受け入れられない、といって開発されたのが、
 旧当社のMIND-SAでした。

 MIND-SAは、当時の日本文化に受け入れられて
 250社にご購入いただきました。

 今は、BABOKをビジネス分析・システム企画の骨組み
 として使おうという日本企業があるようです。
 これは、医学に対応します。

 日本ITストラテジスト(旧システムアナリスト)協会では
 SABOK(システムアナリシスのBOK)を開発中のようです。
 私としては、BABOKの上を行く日本的な技術書にして欲しい、
 という期待があります。

2010年6月26日土曜日

政策の優先順位

 今回の参議院選挙の重要な争点は
 経済・産業の強化、社会保障の安定・充実、財政の破綻回避
 国民生活の防衛、のどれを重視するか
 という点にあるようです。

 何が最も大事か、ということで党首間討論もされています。

 どれも価値ある実現目標です。
 しかし、これらを同列に扱ってよいものでしょうか。
 これらの項目には以下のような因果関係があります。

 したがって、どういう順序でこの目標を満たしていくか
 が意義のある議論のはずです。
 
  経済・産業の強化→雇用・給与の増大→国民生活の強化
  経済・産業の強化→税収の増加→社会保障の安定
                    →国民生活の強化
  経済・産業の強化→税収の増加→財政の破綻回避

 つまり、根っこにあるのは「経済・産業の強化」
 だということです。

 経済・産業が強くなれば、雇用も増えますし、
 賃金給与も上がります。

 「まず働く者を守れ」とか言って、
 派遣法の規制強化をしたり、最低賃金を引き上げる、
 などをしたら、成り立たない企業が出てきます。
 
 大きな企業は国外に出て行くでしょう。
 国外に出れない企業は倒産します。
 どちらにしても、雇用は減少します。
 逆効果なのです。

 法人税を引き下げるのは、法人の優遇でその分の税金を
 個人にしわ寄せするのはけしからん、
 と言う政党があります。
 そんな労使観でことを考えるということは
 前近代的で呆れてしまいます。

 今どき労働者から搾取しようなどという企業があったら
 たちまち労働者が離反してその企業は倒産してしまいます。
 産業や企業があっての雇用であり、給与ではないですか。

 産業・企業が発展すれば、税収が増えます。
 税収が増えれば、社会保障も安定しますし、
 国家財政の破綻も回避できます。

 経済・産業の発展を目指すことが、第1優先だとすると
 それを阻害するような施策をとってはいけません。
 派遣の規制強化や最低賃金の引き上げ、などです。

 だいいち、全国一律の最低賃金などはナンセンスです。
 東京と裏日本の県では生活費は何割も違います。
 最低賃金が上がれば、そのような県への企業立地は減るでしょう。
 過疎化が進むばかりです。

 したがって、
 経済・産業の発展を目指す政策が優先順位一番です。
 どの産業を強化すれば、
 雇用吸収力や税収増が期待できるかを考えて、
 規制緩和や助成を行うべきなのです。
 (産業強化の「目的」は雇用増や税収増です。
 そうなる産業強化でなければ意味がありません)

 産業強化が雇用増や税収増になるのには
 時間がかかるでしょうから、
 その間の財政破綻を防ごうというのであれば、
 消費税増税もやむをえないでしょう。

 当然ながら、
 富裕でない層の国民生活が破綻しないような
 救済策は必要でしょう。

 企業か雇用者かなど、冒頭に挙げました重要な実現項目は、
 並列での選択ではなく、
 目的と手段の関係で考えるべきだということを
 お伝えしました。
 因果関係があるものは、目的と手段の関係にあるのです。

2010年6月24日木曜日

菅首相に期待しましょう!! 付録・参院選の予想

 私は、鳩山前首相の就任直後に
 鳩山氏の欠点を指摘させていただきました。
 結局、その欠点である(自分に確たる信念がないために)
 他人の意見に影響を受けやすいという点が
 引責の原因になったことはご承知のとおりです。

 「確たる信念がない」は言い過ぎで
 唯一の確たる信念は「友愛」でした。
 この軸がぶれることがなかったと思います。

 ですが、「友愛」では「抑止力」にならなかったのです。
 友愛で抑止力が必要ない世界は理想ですね。

 それでは、菅首相はどうなのでしょうか。

 かみそりと異名をとった後藤田正晴元官房長官が
 10年ほど前に
 「日本の指導者候補として有望なのは、
 自民党の加藤紘一氏、自由党(当時)の小沢一郎氏、
 そして民主党の菅直人氏」と言われたそうです
 (6月5日の日経新聞)。
 それほど有能な面をお持ちなことは確かでしょう。
 地道な努力をしてここまで来られた方のようですし。

 菅首相の基本特性は「機を見るに敏」です。
 私がこのブログをすぐに出さなかったために
 今では多くの人がそう言いだしています。
 皆様ご存じの事例を挙げましょう。

 郵政改革法案で国民新党と明確な合意をしながら、
 早期選挙が、民主党にとっても、
 自分の立場としても有利となったら、
 あっさりその約束を反古にしました。

 小沢一郎氏を遠ざけるについても
 それが、国民が強く望んでいることだと察知して
 行動に出たのです。
 その言動は、「自分たち」にとって有利になる願ってもない
 絶好のチャンスだったのです。
 まさに「機を見るに敏」の真骨頂です。

 消費税増税は、あれほど民主党が避けてきたテーマなのに、
 世論が増税に対して案外前向きなことを察知すると、
 自民党を仲間に引き込んで「10%を目安に検討したい」
 と言い出しました。
 悪くても共倒れという思惑のようです。

 今は、国民の意向を気にしなければならない状況ですから
 つまり選挙を控えているから、
 国民の意向を気にしているのです。
 
 前首相と違って空気が読めないKYな方ではありません。
 国民の意向を気にしなければならない状況が続けば、
 菅首相は国民の意向を忖度してくださるのでしょう。

 その点からすれば、民主党圧勝にしてはいけません。

 さあ、参院選が始まります。
 参院選はどうなるのでしょう。

 私は4月号で参院選の予想をしました。
 そのときの内容は以下のようでした。

  前提:①現時点の政党支持率を前提とする。
  (その時点の概数を使用。民主党25%、自民党その他25%、無党派50%)
     ②政党支持派の投票率は8割、無党派層の投票率は5割とみる。
  これで全体の投票率は65%で参議院選挙単独では最高の投票率です。
     無党派層の投票率が下がると当然ながら全体の投票率が下がり、
     民主党の当選者数は増えます。

  選挙区投票 改選数73人に対する予想当選者数(詳細算出方法省略)
    民主党  37人 
    自民党・その他の党 36人 
   民主党は、組織で戦い支持層(全体の20%強)以上に獲得する。
   自民党・その他の党は、
    選挙区選挙では無党派の少数党への投票が死に玉となる場合が多い。
  
  比例区投票 改選数48人に対する予想当選者数
    民主党       19人 
    自民党・その他の党 29人
   無党派の支持は現在の支持率に比例して当選者数になる、と見る。
  
  合計 
    民主党  56人 
    自民党・その他の党 65人
   民主党は、改選議席数53人は上回るが、
   非改選62人と合わせて118人で過半数121に到達しない。
 
 ということでした。

 それでは、現時点ではどうでしょうか。
 6月11日時点の時事通信の調査では、政党支持率はこうなっています。
   民主党   20.0%
   自民党   13.2%
   その他の党 11.9%
   無党派   54.9%

 この数字を使用して、前回と同じ計算方法で算出すると
        選挙区 比例区 合計   
   民主党  32人 21人 53人 
   その他  41人 27人 68人 

  民主党の53人という数字は、
  民主党が目標にしている54人を下回り、
  非改選の62人を合わせても115人で過半数に達しない、
 という結果です。

 6月11日の後に、各党のマニフェストが発表になり、
 菅首相が消費税10%目標を発表したことで
 民主党の支持率は、各種調査とも下がっています。

 ですが、
 読売新聞の調査(6月21日発表)による民主党支持率は35%で
 これを基に計算すると、民主党の当選は68人になります。
 ずい分開きがあります。

 私のこの予想の後、6月26日の2紙に予想が載りました。
 朝日新聞は、民主過半数微妙、50議席台前半か、でした。
 日経新聞は、民主「改選54」上回る勢い、となっています。

 どちらも、予想数字自体はそれほど違わないのですが、
 ニュアンスがずい分違いますね。
 まさに、どうなるか「微妙」です。
 このような予想記事が投票に影響を与える可能性もありますし。

 この際は、やはり権威のある時事通信を頼りにしておきましょう。
 この数字なら、
 菅首相は「国民の機微」を見てくれるものと期待できます。 

2010年6月11日金曜日

「偽装ラブホ」ってご存じ?

 5月28日の一部新聞に「偽装ラブホテル規制へ政令改正」
 「類似ラブホ 規制対象」という記事が載っていました。

 偽装ラブホって何かお分かりですか。

 ビジネス界では「偽装請負」「偽装派遣」が問題になっていました。
 この二つは同じものを指しているのです。
 逆の言葉が同じものを指しているというのは
 不思議ですね。

 正確には「請負偽装派遣」と言うべきだ、と
 ある解説が主張していました。
 つまり、請負を偽装している派遣という意味だというのです。
 この表現が誤解がないですね。
 つまり、職種によって派遣は規制されていてできないので、
 実質は派遣なのに請負ということにして仕事を受けている
 ことを指していました。

 情報サービス業界では
 派遣は認められているけれども、
 印象が良くないのと対価固定とするために
 請負として契約するということが一部で行われています。
 それが請負偽装派遣です。

 その方式から言うと
 この「偽装ラブホテル」は
 「ホテル偽装ラブホテル」なのです。
 つまりラブホテルは規制が厳しいので
 ホテルとして営業許可をとって
 実際はラブホテルの営業を行う、ということです。

 では、ラブホテルの規制は何でしょうか。
 当日の新聞記事によると、
 風俗営業は風俗営業法で規制されますが、
 風俗営業の事業所は、
 「学校の周辺200メートル以内は禁止」
 「18歳未満の利用禁止」
 なのだそうです。

 その規制を逃れるため、
 たとえば、学校の周辺200メートル以内に建てるために
 通常のホテルであるとして営業許可をとっているのです。
 それらしきところが、全国で3600軒もあるそうです。

 しかし、どうやって「これはラブホテルだ」と
 決め付けられるのでしょう。
 見ればそれとなく分かりますが、
 風俗営業法の番人である警察庁の見解はこうです。

 「休憩料金表示がある」
 「玄関やフロントを目隠ししている」
 「客が従業員と顔を会わさないで利用する」

 「なるほど」ですね。
 このいずれかの条件を満たしていない
 「ラブホ」は無さそうです。

 しかしこれまでは、
 「建物の構造または設備」などで判定していたようです。
 たとえば、回転ベッドだとかです。

 それからすると、今回の規制条件の方が簡単でかつ明確ですね。
 なぜ今まで、それが分からなかったのでしょう?

 ラブホの今までの規制は建物の中に着目していたのです。
 技術者が考えたのでしょうね。
 新しい条件は、外側に着目しているのです。
 利用者視点と言ってもよいでしょう。
 古い規制方法を考えた人たちは
 ラブホを利用していなかったのでしょうか。

 こういうことは、情報サービス業界ではないでしょうか。

 その見方からシステムの世界のことを考えてみます。
 システムの規模を計るのに
 作成するプログラムの規模で見積っていたのが従来法です。

 これに対して、ファンクションポイント法といって
 システムの利用者から見える「画面や帳票の数」などで計る方法が
 用いられるようになりました。

 ラブホの規制条件と同じで、
 この方がはるかに納得性があります。

 現在のシステムは特定の人が利用するのはなく、
 社会で一般に利用されるようになってきましたから
 利用者視点は当たり前になりました。

 ついでにラブホについて調べてみました。

 宿泊名簿のこと。
 本来、ホテルでは宿泊名簿(利用者名簿)
 の記載が義務付けられています。
 「ラブホ」ではまったくそれはありません。

 この宿泊名簿は税務署が所得想定資料にも使うのですが、
 それがないということは
 どうやって所得算定するのでしょう。
 自動料金収受システムがないところでは
 いい加減にごまかしているのでしょうね。
 税務署はどうやって、ごまかしを見破っているのでしょうか。

 次は、利用客数です。
 どのくらいの利用者がいるのでしょう。
 インタネットを見ましたら、
 こういうことが載っていました。

 全国に約3万軒のラブホテルがあり、
 1軒あたりの平均客室は、約20室。
 (注:先ほどのデータで見ると、このうちの1割が非合法ということです)
 一部屋につき1日2組の客が利用するというデータ[を元に計算すると、
 1日の全国の利用者は、100万カップルを超える。

 100万カップルということは、200万人です。
 日本の18歳から39歳までの人口は約4000万人です。
 そのうち、5%が利用している、ということになりますが、
 その人たちが毎日利用しているわけではないでしょうから
 同一人は平均1週間に1回とすると、
 1400万人が1週間に1回、ラブホを利用していることになります。

 その年代の人の3分の1が夫婦以外と関係しているということです。
 たまには、夫婦も気分転換で利用する人がいるでしょうが、
 それにしても、その数はいかに何でも多すぎでしょう。
 ということは、ラブホはそんなには稼動していない、ということです。
 先の仮説は間違いです。

 上でご紹介したような推計法を「フェルミ推定」と言いますが、
 200万人という数字は、
 推定をしっぱなしで検証をしていないということですね。

 事業企画の時には、いろいろな角度からの検証が必要です。
 いずれ、事業企画の際の売上予測方法のテーマを
 取り上げてみたいと思います。

鳩山前総理 一世一代の大芝居

 鳩山前総理は
 「引退表明された6月2日の1週間から10日前くらいから
 引退を考え出していた」
 と引退会見で言われました。

 ところが周辺・マスコミは、
 「鳩山総理は辞めないと言って抵抗している」
 と思っていました。

 特に、引退表明前の2日ほどの小沢さんとの会談の際は、
 小沢幹事長が鳩山総理に辞任を勧めているが、
 鳩山総理が抵抗していると誰もが思っていました。
 鳩山総理に辞任の意向があるなどということは
 秘書役の誰一人として思っていなかったようです。
 それだけ、周囲をだまし続けたのです。

 それまで鳩山総理は裏表が無く、
 人を騙すという考えはまったくない方でした。
 結果として裏切りになるということは
 沖縄基地の問題やいくつかのマニフェストなどありますが、
 騙す意図はありませんでした。
 その甘さが引退に結びついたのですが。

 小沢幹事長との会談の最後の日、
 左の親指を出した意味は、
 「とうとう小沢さんの辞任を引き出したぞ」
 というガッツだったのでしょう。
 これを「辞めないぞ」という意思表示だと勘違いして、
 参議院民主党等から大顰蹙だったのです。

 鳩山前総理は、9ヶ月の間、
 小沢幹事長との軋轢に辟易としておられたのでしょう。
 そして、小沢幹事長の言動が民主党の支持率低下に結びついている、
 と苦々しく思っておられたのではないでしょうか。

 そこで、ご自分の引退を覚悟した時に
 小沢幹事長を道連れにして後顧の憂いをなくしようと
 覚悟を決めたのですね。

 その結果は、
 おそらく鳩山前総理の予想以上の好結果を生み、
 ご承知のような民主党と内閣の支持率急上昇を齎したのでした。

 ということで、
 ご自分の考えを周囲に漏らさなかったという点と、
 すべての人を欺いたという点で
 鳩山総理として最後を飾る
 一世一代の大芝居は大成功だったのです。

 私は、鳩山総理の就任直後の昨年9月1日号当メルマガで
 人の意見に左右されやすい「付和雷同性」について
 危険であると予告をしました。
 結局その点が責任を取る根っこの原因となったのですが、
 最後に、他人の意見に左右されることなく
 ご自分の判断を通して総理職を完結されたということです。