2019年10月10日木曜日

台風19号が関東に近付いています!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 台風15号の被害を確認します。
ねらい:
 「備えあれば憂いなし」にしたいですが、難しいことですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
先日の台風15号は久々の関東上陸だと思っていましたら、
立て続けに、台風15号並みまたはそれ以上の19号が
関東にやってきそうです。


「ランダム発生」というのはこういうことなのでしょうね。
(稀なことが連続する)


台風15号は結局のところ、以下のような非常に大きな被害でした
(日経新聞2019年10月9日号)。


 死者 1人、負傷者149人
 住宅被害 40,304棟 (案外多かった)
 停電(最大) 934,900戸 (たいへんな被害でした)
 断水(同)   139,744戸 (こちらもたいへん)
 農林水産被害額 503億円 (これも結構大きかったです)
 JR東日本の計画運休影響人員 2,777,000人
 欠航便 368便


停電のほぼ全面復旧は、発生から18日後でした。
これだけ復旧に手間取ったのは、山林の倒木が多かったせいです。
林業が衰退して山林の手入れをしないために、
溝腐病などが蔓延しスギなどがどんどん倒れました。
そのため山林内の電柱の復旧に手こずったのだそうです。


ふだんは気か付かない「手抜き」が
こういう時に露呈するのですね。
老いてきている日本ではこれからもいろいろ起きそうですね。


とりあえず、19号に備えましょう!! 

2019年9月26日木曜日

「失敗の本質」で「日本への警告」を分析すると?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日本軍の敗因を招いた日本人の思考法の弱点が、
 今後の日本の没落停止の阻害要因になっているのかを
 分析します。
ねらい:
 決して楽観視はできません。
 ラグビーWC戦のように、日本中が熱くなって
 日本の没落停止に取り組まなければなりません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新しいカバー
元のカバー
ご存じ「失敗の本質」は、野中郁次郎先生が編著をされた
日本軍の失敗を分析している不朽の名著です。
今回、再度読んでみました。


再読の目的は、別項のようにイギリス人、アメリカ人に
日本の国民性や国の施策を評価されているのですが、
それはどこから来ているのかを
あらためて振り返ってみる材料にしようということです。


当書は、日本軍の以下の敗戦原因を分析しています。
 ノモンハン事件
 ミッドウェー作戦
 ガダルカナル作戦
 インパール作戦
 レイテ海戦
 沖縄戦


その結果の共通項を以下のように整理されています。
(順番や表現は上野の編集です)


1.作戦目的があいまいで多義性を持っていた


2.基本戦略が成功例を受けた前例踏襲型である
  陸軍は白兵銃剣主義(戦車軽視)
  海軍は艦隊決戦主義(空力軽視)


3.意思決定方式が曖昧である
  トップが明確に指示をせず、現場に委任している面がある。


4.戦略策定の方法論は科学的合理主義ではなく
  精神論重視である


5.人事評価は年功序列・プロセスや努力重視型である


6.技術体系は1点豪華主義でバランスに欠ける
  上野注:資源小国としては
        重点志向をせざるをえなかったでしょう。


この1~5は、上野が「価値目標思考のすすめ」で提起した
日本人の伝統的思考法に準拠しているものです。
こういうことです。
日本人は、長い農耕生活と他国との孤立性によって、
以下のような思考法を基本としている(基本としていた)。


1)ほとんどの日常生活が目的自明となって
  あらためて目的を考えない習慣ができた。
2)農耕生活は土地に留まり隣人・部落との関係が重要で、
  和重視・前例重視の「前例・みんな主義」となった。


右の方にそのことを表す多くの言葉を示しています。
あうんの呼吸、あつれきを避ける、などです。


この点から、日本軍の敗因を見るとこうなっています。
1.作戦目的があいまいで多義性を持っていた
 日頃、目的が自明ですから、
 目的を設定することが苦手です。


2.基本戦略が成功例を受けた前例踏襲型である
 前例・みんな主義の前例重視です。


3.意思決定方式が曖昧である
 和を重んずる結果、
 その場の雰囲気の全員一致で決定します。
 本書の副題に
 「なぜ日本人は空気に左右されるのか?」とあります。 
 この3.項がその答えです。


4.戦略策定の方法論は科学的合理主義ではなく
 精神論重視である
 意思決定方式が議論を重ねて結論を導き出すというよりは、
 和の重視でものごとが決められますので、
 科学的合理主義とは遠くなります。


5.人事評価は年功序列・プロセス努力重視型である
 この方式が和を重んずることにつながります。
 ギスギス功を焦ったりしないのです。


つまり、日本軍の敗因は基をたどれば、その多くは、
日本の伝統的思考法のせいだったのです。


それでは、両外人が評価をしている日本または日本人の課題は
この伝統的思考法とどういう関係にあるのでしょうか?


「日本への警告」で挙げられている課題は以下のとおりです。
1)女性の活躍の場を広げる
2)外国人に対する差別意識をなくす
3)日本の学校を外国人に開放する
4)子や孫に中国語を学ばせよ
5)昔ながらの高品質を武器にせよ
6)マニュアル主義を見直せ
7)農業を強化せよ
8)アジアから押し寄せる観光客に勝機を見出せ
9)未来を読むために歴史を学べ
10)世界を旅し変化を肌で感じよ


2)3)は、
先祖伝来の土地に留まる村社会思考が関係しています。
6)も「お上のお達しには逆らわない」という
「お上」思考が関係しているのかもしれません。


それ以外は、伝統的思考法とは関係がないようです。
現実・将来を見据えた対応をしなさい、
という前向きのアドバイスです。
こちらのウェートの方が高くなっています。

「日本人の勝算」は国としての施策の提言で、
直接、日本人の思考特性とは関係ないようです。
 最低賃金を上げる
 企業規模を大きくする
 輸出を増やす
 人材育成トレーニングを強制する


強いて言えば、
企業規模を大きくすること(「一国一条の主」意識が壁)
と人材育成の強制
(「仲間意識」で「分かっているだろうに」と考えていること)
が伝統的思考法と関係しているのかもしれません。


ということは
日本軍の敗因を招いた日本人の伝統的思考法は、
今後の日本の発展のための大きな制約にはなっていない、
という、ある面で嬉しいことになるのですが、
本当にそう考えていいのでしょうか?

2019年9月25日水曜日

「日本への警告」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 世界を熟知した著者の日本への提言を受けとめます。
 中国を重視せよ、という点が最大の特筆事項です。
ねらい:
 何とか日本の没落を阻止したいですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


著者のジム・ロジャーズさんは、たいへんな方です。
世界的投資家で大富豪なだけでなく、自動車・バイクで何度も
世界一周をされています。


そうして、現地で得た感覚・情報に基づいて投資して
大成功されているのです。


その方が日本に対する警告を書いてくださっています。
その要旨は以下のとおりです。


1.日本がダメな点
1)子どもを作らない
2)移民を積極的に受け入れない
3)後世に残る巨大な財政赤字
4)日銀の金融政策


この内容自体は広く取りあげられていることです。
それを著者の見識で力強く解説しています。


2.日本人が今克服すべき課題
1)女性の活躍の場を広げる
2)外国人に対する差別意識をなくす
3)日本の学校を外国人に開放する


4)子や孫に中国語を学ばせよ
5)昔ながらの高品質を武器にせよ
6)マニュアル主義を見直せ


7)農業を強化せよ
8)アジアから押し寄せる観光客に勝機を見出せ
9)未来を読むために歴史を学べ
10)世界を旅し変化を肌で感じよ


別項の「日本人の勝算」では、
日本が没落しないための基本対策として
以下を挙げていました。
 最低賃金を上げる
 企業規模を大きくする
 輸出を増やす
 人材育成トレーニングを企業に強制する


これは国の産業・経済施策として実施すべきものです。
これに対してこちらの「警告」は、概ね
より具体的な、国民一人ひとりに対する提言になっています。


どちらもせっかくのご提言です。
真摯に受け止めなければなりませんね。
上記の10項目の中から特別なご意見をご紹介します。


3)日本の学校を外国人に開放する
日本の学校は少子化で余ってきている。
インドや韓国、中国は大学が足りない。
それなら、まずは大学が留学生受け入れを積極的に行う。
そのため、英語による授業を提供する。
世界各国の多くの大学で
受験資格や入学資格として認められている「国際バカロレア」
のプログラムを実施するなど、教科内容も刷新する。
小学校のクラスに外国人が多いという状況になれば、
日本人の国際感覚も変わってくるはずである。


4)子や孫に中国語を学ばせよ
いずれ世界の言葉は、英語、中国語、スペイン語に収れんする。
中国語が生き残るのは間違いない。
著者は娘に中国語を学ばせるために
2007年からシンガポールに居を構えている。
日本語はいずれ誰も話さなくなるので
日本の子供は第2言語を学ばせるべきである。


6)マニュアル主義を見直せ
マニュアル主義はアメリカの特技で
日本はそれができなくてダメというのが通説で意外なご意見です。
この背景は、こういうことでした。


1998年末から2001年末にかけての世界旅行の途上で
富士山の近くでレストランに入ったとき
「ライスだけ食べたい」と注文すると、
「メニューにないものはお出しできません」と断られた。
仕方なくたくさんのマグロの寿司を注文して
マグロをどけて茶碗に入れて食べることにした。
ウェイトレスに「見ろ、ライスはあるじゃないか」と言ってみたが、
彼女は「ライスはメニューにありません」と繰り返しただけだった。


私は、この問題は
そのウェートレスの「アタマ」の問題だと思います。
現場の1作業員としては
メニューにないものは対応できないのです。
しかし、お客様が望んでいるということであれば、
権限のある店長に相談しようとすればよかったのです。
そうしなかったのは、その彼女が「バカ」なせいであって、
日本人がマニュアル主義なのではないでしょう。


と、思いましたが、よく考えてみると、
「今の学校教育の弊害かもしれない」と思いました。
日本の学校教育は、「正解を覚える」教育偏重で、
判断力を養成する教育をあまりしていませんでした。


「マニュアル主義」は当らないにしても、
画一性、融通性不足、という点は当っているかもしれません。


著者も、日本の伝統旅館がマニュアルなしでも、
素晴らしいサービスを提供していることは認めています。


こう書かれています。
1980年代の日本は違った。
当時の日本人はできるかできないかにかかわらず、
何かを頼むと元気よく「はい!」と言ってくれたものだ。
営業時間が多少過ぎても一所懸命に対応してくれる
「ファーストクラス」の国だった。
(中略)
日本では、電車は時間どおりに来るし、
いつでもコンビニエンスストアには生活に必要な商品が並んでいる。
戦後の日本人が切り開いた時代とは全く違い、
すべてがオートパイロットになっているわけだ。
こうした便利な環境も
日本人から判断力を失わせる原因になっているのでは
ないだろうか。


なるほど、そういう面もあるかもしれません。


3.アメリカ、中国、朝鮮半島、ロシアはどうなる
1)トランプの米中貿易戦争の政策は自らの首を絞めるものだ。
2)貿易戦争は本当の戦争につながる可能性もある。


3)中国経済は資本主義であり、
  優秀な国民が大きな成果を上げている。
4)自分は1988年にバイクで中国を横断したときに
  中国の可能性を自らの肌で感じ初めての投資をした。
5)日本が10年後に中国から支配されるといったことは
  考えにくいが、
  覇権国家による支配は歴史における事実として
  認識しておくべきだ(上野:極めて客観的コメントです!)


6)北朝鮮の経済はそれほど落ち込んでおらず活気に溢れている。
7)金正恩はスキーリゾートを作っている。
8)南北統一はいずれ実現する。
9)その際、大きなビジネスチャンスがある(例示あり)。


10)ロシアは米国の経済制裁のおかげで農業が発展している。
11)プーチンが力を入れるシベリア開発は魅力的である。


著者の意見は純粋経済人としての見解です。
たとえば、中国は国民の数が大きく国民も情熱を持っている、
したがって中国は覇権国家として発展するだろう、
というのです。


世界を旅しているのに、
チベットやウィグルのことを知らないのでしょうか?
政治のことは知らん、というスタンスなのでしょうか。


もう一つの例はこれです。
日本の防衛予算は何の生産的価値も生み出さない、無駄だ、
削って国の借金を減らせ、と仰います。


1980年頃にバイクで世界一周したときに、
「共産主義と資本主義の戦いは終わったが、
これからは宗教や民族主義に基づく戦いが始まる」
と予想しそのとおりになっているにも拘らず、です。
その戦いは武器なしで行う
と考えているのではないでしょうが。


いずれにしても、経済人としての見方は卓越で、
著者が大成功していることでその点は証明されます。


見方の基本原理はこういうことのようです。
 人間の本性からして常に上の生活を目指す。
 そのため、
  小さいものは大きくなる
  ダメなものはよくなる
 そうなるものかどうかの判断は目利きである。
 目利きを得るために歴史と他国を学ぶ必要がある。


私は著者の提言をこう受けとめます。
日本が活気のない国になったのは、
あるレベルの生活ができるようになり、
多くの国民が「頑張らなく」なったからです。


これは、日本だけのことではなく、
イギリス、ヨーロッパ等「先進国」共通です。
アメリカは一部の開拓者魂のある人たちが
何とか國を引っ張っていっています。
意欲ある新興国がこれから発展するのです。


以下のような日本独特のマイナス要因もありますので、
それは何とか緩和または克服したいものです。
 事なかれ・穏便主義
 付和雷同主義
 漸進主義


4.家族とお金を守るために私が学んだ9つの成功法則
著者は、こういうおまけもつけてくださっています。
これも非常に役立つ人生訓ですね。


人生を成功させるために「これをしなさい」という単純な答えは
存在しない。
しかし「やってはいけない」ということであれば、
いくつか思い浮かぶため、紹介したい。
として、以下を開陳されています。


1)人の言うとおりにしてはいけない
  上野注:成功者の共通言です。
  1970年頃、当時の石油は1バレルたったの3ドルで
  だれも見向きもしなかった。
  皆が「原油に投資するなんて最低だ!」と言っている頃に
  私は積極的に原油に投資をした。
  当時の原油市場を私が調べた限り、
  原油の需要に対して供給がまったくおいついていなかった。
  だから価格が上がることは必然だったのだ。


  原油価格は高騰し大きな利益をえた。
  その後、原油市場の過熱を感じ原油を売って
  またしても大きな利益を得ることができた。


2)故郷にとどまるな
  結婚する前に若い頃は少なくとも2年間は自国を離れて
  自分自身や世界について学ぶべきと私は考える。


3)結婚・出産を急ぐな
  自分のことが分かっていない時に結婚するのは愚行である。
  自分は娘には28歳まで結婚するなと言っている。
  自分自身が子供を作ったのは60歳である。
  しかし、子供によって人生の喜びが変わった。


4)自分の能力を過信するな
 得手不得手・限界を知りなさい。


5)情熱を無視するな
 お金持ちになるために最も大切な資質は情熱だ。
 何歳になっても必ず突破口は見つかる。
 どんなことがあっても情熱を失わすに続ければ、
 やがて多くの利益を得ることができるだろう。


6)お金のことを気にするな
 お金のために働くな。
 好きなことを仕事にできれば、毎日が幸せである。
 打ち込んで仕事をしていればお金は後から付いてくる。


7)子どもの情熱も尊重せよ
 子どもを親の考えで引っ張るな。


8)お金について学ぶことを怠るな
 「お金のことをきにするな」と言ったが、
 お金のありがたみを分かっていなければならない。
 自分の子供には贅沢させずそういう教育をしている。


9)何のために稼ぐのかを忘れるな
 目的のない人生は無意味である。


この後、「これからの時代に勝つ投資」として 
「情報源は今も新聞と年次報告書」
「情報を疑う」
「安全という言葉を信じない」
「好機は危機に潜む」
などを解説されています。


ご関心のある方は、是非本書をご覧ください。

「日本人の勝算」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「外人」が日本のために書いてくださった
            警世の書をご紹介します。
ねらい:
 基本になる提言はまことにご尤もなのですが、
  誰がこれを受け止めて実行するのでしょう?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この本は、デービット・アトキンソンさんという
日本在住30年のイギリス人が書かれたものです。
創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を業とする
「小西美術工芸社」の会長兼社長をしておられる
ユニークな「外人」です。

「外」から見た日本を分析し、提言をしておられます。


基本になる主張は、

日本は前例のない少子高齢化社会になる、
 その状況の中で国を維持するには、
 国全体の生産性を上げるしかない、

その根本対策は、
 最低賃金を上げる、
 企業規模を大きくする、
 輸出を増やす、
 人材育成トレーニングを強制する、ことである、

というものです。
至極ご尤もなご意見で、納得できます。


この本の章立てはこうなっています。
非常に明快な論旨展開です。

その主張のほとんどはデータの分析に基づいています。
本書中の数表・グラフは、62に上ります。


第1章 人口減少を直視せよ
   ――今という「最後のチャンス」を逃すな


 人口減少需要減少企業競争激化⇒コスト圧縮
 ⇒人件費削減⇒需要減少のデフレスパイラルに
 入る前に手を打つ必要がある。
 金融緩和でのデフレ脱却は無理であることは
 実証されている。

第2章 資本主義をアップデートせよ
   ――「高付加価値・高所得経済」への転換

 「いいものを安く」は
 人口増加時代のビジネスモデルである。
 企業間競争が激しく高い生産性は期待できない。
 これからは「よりいいものを高く」にすべきである。


第3章海外市場を目指せ
    ――日本は「輸出できるもの」の宝庫だ

 内需は減少するのだから、日本全体とすれば、
 海外を市場としなければ売上は伸びない。
 日本の観光業はそれを実現している好例である。


第4章 企業規模を拡大せよ
   ――「日本人の底力」は大企業でこそ生きる

 世界中の国の分析結果が、
 企業規模と生産性の強い相関を示している。
 しかし企業規模の拡大は
 生産性向上の原因ではなく結果である。
 日本は中小企業が先進国中最も多い。
 中小企業の多いサービス業の生産性が特に低い。

第5章 最低賃金を引き上げよ
    ――「正当な評価」は人を動かす

 最低賃金を上げれば、需要が喚起できる、
 労働参加率を増やすことができる。
 イギリスは2000年から年平均4%強
 最低賃金を引き上げたが雇用への影響はなかった。


日本の最低賃金の引き上げ率は1976年以降で
 年平均3.1%(実質1.3%)でしかない。
 これをその時の状況で310%程度とする。


 最低賃金の管轄を
 厚労省から経産省に変更すべきである。
 最低賃金は経済政策ととらえるべきである。

 第6章 生産性を高めよ
   ――日本は「賃上げショック」で生まれ変わる

最低賃金が上がれば
 企業は生産性を上げざるを得なくなるが
 それができなければ「退出」するしかない。

第7章 人材育成トレーニングを「強制」せよ

     ――「大人の学び」は制度で増やせる

 事業が変わっていく時代には、
 それに対応できるようにする教育が重要である。
 経営者を含む社会人の再教育が必要で、
 これは国が制度で強制しないと間に合わない。

ところが、
 日本の人材投資のGDP比率は先進国中最低である。
 日本の経営者の機敏性は世界の63カ国中57位である。

社長たちが学ぶべきなのは、
 技術革新の知識とそれを使うためのメタスキルです。
 自社の課題にも応用可能な
 問題解決方法やビジネスモデルの分析などです。

人材育成トレーニングを企業の任意にすると、
 短期指向の経営者が応じない。
 そうして、教育に投資した企業の人材を引き抜いて
 「タダ乗り」をするだろう。

 すべて大筋まったくそのとおりで、大賛成です。

本書の主張の中で、
私が少し気になった点は以下のとおりです。


1.最低賃金は全国一律にすべき

 今の方式だと
 最低賃金は都会が高く地方が低くなっている。
 地方の企業の負担力を考慮して
 こうなっているのだろうが、
 これだと、労働力が都会に集中する問題を起こす。

とありますが、
地方の最低賃金が安いのは
生活費を考慮しているからなのです。
その点について記述されていないので
ご存じないのでしょう。

しかし、全国一律の最低賃金にすると、

相対的に有利になる地方での就労者が増える、
というメリットが期待できるかもしれません。


2.企業規模を大きくすると生産性が上がる理由

これについては、以下が挙げられています。
 1.研究開発の有利性
 2.技術革新の有利性
 3.女性活躍の場の増大


私はこれ以外に
間接部門の生産性向上があると思います。

例えば、町工場の統合を考えてみます。
工場の建屋や設備の統合は考えられませんが、
営業や人事経理総務業務は、
10社が一緒になれば、機能強化と同時に
1社当りは何分の1かのコストになるでしょう。
営業が強化されれば、
より有利な条件での受注も可能となります。


3.解雇規制の緩和と国の生産性の関係

著者は、
解雇規制の緩和を日本の経営者が望んでいるが、
その規制緩和と国の生産性には
多くの国で相関関係がない、
したがって日本の生産性改善に寄与しない、
と述べています。


私はその意見については、
若干検討不十分だと思います。
まず、解雇規制や日本の終身雇用の慣習の中で、
「窓際族」等の企業活動に貢献しない社員が
大企業中心にかなりいます


私は上野則男のブログ別テーマ
「日本の労働生産性が低いわけ」で、
その人数を65万人と推定しました。
その人たちを「自由」にできれば
企業の生産性は上がります。


次いで、解雇の自由と組み合わせて、
デンマークのように再就職教育を充実させれば
生産性の低い産業から高い産業への
人材シフトが実現します。
これらの点については、
本書で明確には触れられていません。


4.中小商店は大規模化できない
中小商店のオーナでも多少積極的な人は
すでにコンビニ等に転身しています。
残っている人たちはどうにもならないでしょう。


町工場は、技術や多少の設備がありますから、
前掲のように統合も意味があります。


中小商店は僅かなお得意様を抱えているだけです。
規模を大きくする転身には参加できそうもありません。
そういう中小商店主が
日本に100万人くらいいるのです。
しかし、5千数百万人の就業者数から見れば
大勢に影響ないかもしれませんが。


上げ足取りみたいな事ばかりで恐縮です。
氏の主張は大筋で正論ですから、
それに向かって前進することを考えましょう。