2024年3月12日火曜日

「日本語の大疑問2」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 
日本語の問題点やルールをご研究いただきます。
 言葉は生き物でどんどん変化していくことも
 再認識していただきます。
ねらい:
 日本語にご関心のある方にはぜひご一読をお勧めします。
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本項は、国立国語研究所編「日本語の大疑問2」のご紹介です。
本書は、2021年11月の刊行されました「日本語の大疑問」
の続編です。















このブログでもご紹介しています。

以下の目次のコピーように、多数のテーマを取りあげていますが、
若干2番煎じの感は否めません。
残念ながら、「大疑問」に値するものは多くありませんが、
ご関心の向きがございましたら、本書をご覧ください。

さすがに、日本語の専門家の記述ですから、
解説は論理的でかつ分かりやすくされています。
註釈者としてはたいへんありがたいことです。

方言を取りあげたところに、以下の面白い図がありましたので
ご紹介します。
他にも分かりやすいイラストが多数入っています。


























申し訳ありません。文字が小さいので「画像の拡大」をしてご覧ください。











以下に、私が参考になったものをご紹介します。

1.かっこと句点の使い方
「公用文の考え方」にはこういう記述があります。
文末にある括弧と句点の関係を使い分ける。
文末に括弧がある場合、それが部分的な注釈であれば閉じた括弧の後に句点を打つ。
例:当事業は一時休止を決定した。
  ただし、年内にも再開を予定している(日程は未定である。)。

二つ以上の文、又は、文章全体の注釈であれば,最後の文と括弧の間に句点を打つ。
例:当事業は一時休止を決定した。
  ただし、年内にも再開を予定している。
  (別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した。)

なお、一般の社会生活においては、括弧内の句点を省略することが多い。
解説・広報等では、そこで文が終わっていることがはっきりしている場合に限って、
括弧内の句点を省略することがある。
例:年内にも再開を予定しています(日程は未定です)。

以上は、私が実施してきた方法と合致しています。

2.「いなずま」か「いなづま」か
「ず」と「づ」、「事」と「ぢ」は、現代日本語において、
各方言を含めて同音です。したがって、原則として「ず」「じ」を使用し
「づ」「ぢ」は使わないこととされています。
したがって、稲妻は語源をたとれば、いなづまなのですが、
いなずまが正解です。

一方、「つ」「ち」で始まる語の前に別の語が付いて新しい語を作る際、
「連濁(2語目の最初の清音が濁音化すること)が起こる場合には、
元の語の表記を生かし「づ」「ぢ」を使用することになっています。
例:「一本」+「釣り」で「いっぽんづり」
  「鼻」+「血」で「はなぢ)

いなずまとの違いは、語構成が明瞭かどうかによります。
「一本釣り」「鼻血」は語構成として容易に分解可能ですが、
いなずまは一つの語になってしまっている、という判断です。

この辺の解釈は微妙なので、
稲妻は「いなづま」でもよいとされているそうです。
そのような言葉は、ほかにもあります。
盃(酒さけ+杯つき)は「さかづき」「さかずき」ともにあり。
「組んづほぐれつ」は「くんずほぐれつ」も「くんづほぐれつ」もあり。

ややこしいですね。どっちかに割り切ってしまえばよかったのに、
理屈を言う「先生」がおられたのでしょうね。

3.「故障中」はおかしいか?
「~中」は「動作を一時的に保つ」ことを表わす表現で、
典型的には「~し続ける」という言い方が成立するものついて用いられます。
「~し続ける」という言い方が成立しない場合でも、人間が主体であり、
かつ「いずれ解消される状態を一時的に保つ」という意味が認められば、
「~中」という言い方は、典型的な用法とは言えませんが、
比較的成立しやすくなります。
 婚約中(結婚までの間、婚約した状態を保つ)(✖婚約し続ける)
 就寝中(起きるまでの間、就寝した状態を保つ)(✖就寝し続ける)
 ✖死亡中、✖結婚中

故障中は、
「故障し続ける」という言い方はしないので、違和感があります。
しかし、人間が主体ではないのですが
「いずれ解消される状態を一時的に保つ」には該当しますので、
何となく言い方の間違いではないということになるようです。

当書には載っていませんが、「発売中」がありました。
発売したばかりという語感が、新しいという印象を与えるので使われましたが
間違いいであることは認識されて使われなくなりました。
発売は一時点のことであり、それが続くのはあり得ません。

4.「結果が出せる」か「結果を出せる」か
以下の場合の格助詞は本来は「が」である。
しかし、一般には自然な「を」を使うようになってきている。
(上野注:それは知りませんでした。言われてみて分かりました)
1)可能形の場合
 出せる、持てる、作れる、味わえる、楽しめる、行える、もらえる
 例:お金がもらえる。
2)願望系
 したい、みたい、
 例:スケートがしたい。
3)特定の述語
 好き、嫌い、分かる、出来る、欲しい
 例:彼女が好き。正解が分かる。

5.「1ミリも興味がない」の言い方は、最近の流行りでしょうか
 に関連して
これについては、「一寸も」という言い方が昔からあると
いう解説がありますが外国でもこういう言い方があります。
ご承知のように、「一寸も」は「ちょっとも」と読んでいます。

そもそも「1インチ」発言は、
ベルリンの壁崩壊後の東西ドイツ統一をめぐる
国際交渉から出たものだ。
具体的には、1990年2月9日、
モスクワでのゴルバチョフとの会談で、
アメリカの国務長官ジェームズ・ベーカーが、
「NATOの管轄および軍事的プレゼンスが
1インチたりとも東方に拡大されることはないという保証」
について言及している。
ここで、ベーカーは、ゴルバチョフに対し、
東西統一(および米軍の西ドイツ領域への駐留継続)
を容認してくれるならば、
NATOを当方に拡大させないという保証を
ちらつかせたのである。

追記
関連した話題をご紹介します。
出典は、2023年9月30日の日経新聞です。
文化庁で実施している「国語世論調査」の結果です。

【涼しい顔をする】
 正解は「関係があるのに知らんぷりをする」22%
 多くは「大変な状況でも平気そうな顏をする」61%

【忸怩たる思い】
 正解は「恥じ入るような思い」33%
 多くは「残念でもどかしい思い」52%

【引く】
 「異様だと感じて呆れる」の意味で使う人 70%

【推し】
 「気に入って応援している人や物」の意味で使う人 49%

【盛る】
 「より良く見せようとする」の意味で使う人 53%

これらの言葉を他人が使うのを気にならない人は8割を超えた。

1 件のコメント:

風羅 さんのコメント...

言葉の妙味。面白し。