2022年9月10日土曜日

悲惨な幼児事故死の対策を考えましょう!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 幼児死亡事件の全貌の整理を試みました。
 有効な防止対策を検討してみました。
ねらい:
 悲惨な幼児死亡事件を激減させたいですね。
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先日、幼稚園の送迎バスに園児を置き去りにして死亡させたという
衝撃的な事件がありました。
1年前にほぼ同じような事件があり、
厚労省からも指導が出ていた矢先のことです。















幼児の痛ましい不慮の死は、虐待が常時紙面を賑わせています。
思い出したくないですが、痛ましい記憶に残っているのは、
18年3月の目黒区の結愛ちゃん(当時5歳)と
19年1月の野田市の心愛ちゃん(当時10歳)の事件です。

そこで、以下の構成で幼児の不慮の死の全体を整理してみました。
1.幼児事故死事件の全体像
2.事件の代表例
3.幼児死亡事件の防止対策
(1)自動車内放置事故対策
(2)虐待死に対する対策
(3)行方不明者の捜索対策
(4)水難死の対策
(5)交通事故死の対策
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1.幼児事故死事件の全体像

形態

区分

原因

対策

発生件数等

事故

交通事故

通園・通学中に事故に巻き込まれる

交差点の歩車分離、など

201315歳以下の死者94人(例年並み)

それ以外の事故

幼児への安全指導徹底

水難

水遊び中に溺れる

保護者の監督強化、救助の準備。エアバッグシステム

毎年200人ほどの子供が水難死亡。川が6割、

増水した用水路にはまる

危険な用水路に蓋をした。

子供死亡の7%

ため池に落ちる

ため池に立ち入れないようにする。エアバッグシステム

湖沼で死亡が2割。10年で251人死亡

行方不明

自宅から

幼児が一人でどこかへ出てゆく。

施錠の徹底

行方確認システム

2022年富山県事件

施設から

出入口封鎖

行方確認システム

2022年広島市事件

行楽中

行方確認システム

2019年山梨キャンプ場事件

熱中症

送迎バス車内放置

不注意

自動感知警告システム

20211件、20221

自家用車社内放置

保護者の認識不足

事例公知

自動感知警告システム??

継続的に発生している。

虐待

家庭内放置

親の心理

児童相談所の強化

周囲の関与(脱無関心)

幼児の健康状態自動監視システム

警察庁の統計では、2017年までの15年間に18歳未満の子供1175人が虐待で死亡している。

2016年4月に日本小児科学会は、15歳未満の虐待死は年間350人の可能性があると発表している。

暴力

親の偏見

餓死

親の心理

餓死(注)


貧困

周囲の関与(脱無関心)

ここ数年間、日本の餓死者数は20人程度。その年齢構成は不明。

(注)世界中で約8億人が食料不足に苦しんでおり、
5歳未満で餓死する小児は毎年300万人を超えていると言われています。
なんと、日本でも年間20人程度の餓死者がいるのです!
こういう痛ましい事件が報道されました(2013年5月)

「最後におなかいっぱい食べさせられなくて、ごめんね」。
母親が残したとみられるメモにはそう書かれていた。
大阪市北区天満のマンションの一室で24日、
母子と見られる2人の遺体が見つかった。
朝日新聞デジタルなどの報道によると、
室内には食べ物はなく、食塩があったのみ。
預金口座の残金は十数円で、電気やガスも止められていたという...
(母親は28歳、男児は3歳)
死の1年ほど前には、生活保護の相談窓口を訪ねていました。
そんなに困窮するまで、相談する人はいなかったのでしょうか。
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この表で見ると、不慮の死の最多は、水難死、しかも河川での死亡です。
ときどき大騒ぎになる交通事故死よりもはるかに多いのです。
交通事故と水難はまさに「事故」です。

2.事件の代表例
そこで「事故」以外の事件の代表例を以下に確認しました。

自宅からの行方不明事件

22年9月4日、富山県の氷見漁港沖で見つかった遺体の身元が、高岡市で行方不明になっていた高嶋怜音ちゃん(2)と確認されました。
怜音ちゃんは、8月20日夜、お風呂を出たところを母親が確認したのを最後に行方がわからなくなりました。パジャマ姿で1人で外に出たとみられ、警察や消防などが捜索を続けていました。


保育園からの行方不明事件

広島県警によると、22年4月16日午後、広島市西区の川で5歳男児が意識不明の状態で見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された。保育園に登園した後、行方が分からなくなっていた。目立った外傷はなく、県警が事件と事故の両面で調べている。

注:この園児は、園の出入り口ではなく、生け垣の隙間等から抜け出たのではないかとみられています。


家族で行楽中の行方不明事件

山梨キャンプ場女児失踪事件

2019921日、道志村の「椿荘オートキャンプ場」に子育てサークルで知り合った7家族27人が遊びに来た。昼1215分ごろキャンプ場に到着。1535分ごろに9人が約150メートル離れた沢に遊びに行き、女児(以下、A)は同40分ごろに1人で後を追った。その10分後に大人が迎えに行ったが、16時ごろにAがいないことが判明した。

17時ごろに警察に連絡。警察消防が捜索を開始したが発見には至らず、22時にその日の捜索を終了。翌日以降は自衛隊や捜索ボランティアなども加わり、東西15キロメートル、南北8キロメートルにわたってのべ約1,700人で捜索するも手掛かりは見つからず、山梨県警察は同年106日に大規模な捜索を打ち切った。

注:2022年4月になって、行方不明女児の遺骨の一部が発見されました。全容解明されていません。


送迎バス内に放置事故

2021729日、福岡県中間市の双葉保育園の送迎バス内に約9時間置き去りにされた男児(5歳)が熱中症で死亡した。バスは当時の延長が1人で運行。園は家族への出欠確認をしていなかった。

2007年には北九州市の保育園で、車両に放置された園児が死亡。17年にさいたま市の幼稚園で、18年には北海道の保育所で、送迎バスに園児が数時間取り残されるケースがあった。


新たな送迎バスに放置事故

9月5日午後2時10分頃、静岡県牧之原市静波の「川崎幼稚園で、河本千奈ちゃん(3歳)が通園バスの中で意識を失っているのを職員が見つけた。千奈ちゃんは搬送先の病院で死亡が確認された。

同日午前8時50分頃にこのバスで登園したが下車せず、約5時間にわたり置き去りにされたとみられる。熱中症で死亡した疑いがある。

注:その後の報道で、運転はピンチヒッターで園長(73)自ら行い、70代の派遣職員が同乗していた。その職員は1歳くらいの幼児を抱き下ろすのに気を使い、千奈ちゃんが残っていることに気が付かなかったと言います。運転手は、確認はこの職員任せだったのです。その後、職場では、家族に確認することなく勝手に欠席の扱いをしています。

(前年事故を受けた)厚労省の通知では、「登園時の人数確認をダブルチェックすることや、子どもの出欠状況などの情報を職員で共有することなどを要請。送迎バス運行時には座席などを確認するよう求めています。

今回の事件は、その指導がまったく生かされていません。


自動車の幼児放置事件その1

2016423日、大阪市でこの母親(当時26歳)は1歳男児と3歳女児を10時間以上車に放置して男(当時23歳)とラブホテルに行っていた。男児は死亡した。その後、この男は男児をクーラボックスに入れて隠していた。

男は、20182月に懲役66月の判決を受けた。


自動車の幼児放置事件その2

香川2女児放置死事件 2020年9月、母親(26歳)は、2日午後9時ころから3日午後040分頃まで、市内のコインパーキングに止めた車に、幼稚園児の長女(6歳)と次女(3歳)を置き去りにし、3軒飲みに行っている。2件目までは1人であったが、3軒目は男と一緒で、車に戻るまでその男と一緒にいた。


自動車の幼児放置事件その3

厚木市社内放置で幼児2人死亡事件 2022年7月29日、母親(21歳)は、2人をしめ切った車に放置して、1時間ほど知人男性宅を訪れていたという。

長男(1歳)は同日午後6時半ごろ、搬送先の病院で死亡が確認され、長女(2歳)は8月2日に亡くなった。司法解剖の結果、死因はともに熱中症によるものとみられている。


虐待死事件その1

東京都大田区で20206月、母親(26歳)が3歳の長女を自宅に1週間余り放置して衰弱死させた。20222月に懲役8年の判決がおりた。


虐待死事件その2

埼玉県本庄市で20221月、母親(30歳)ら知人3人が5歳男児を畳に投げ倒して死亡させた。1年前から、男児を雨水タンクに入れてタンクをたたいたり転がしたりする暴行を加えたり、男児の足を持って逆さづりにし、猫用ケージに2時間半閉じ込めるなどしていた。


虐待死事件その3

福岡県篠栗町で2020年4月、母親(38歳)が5歳だった3男に「ママ友」の指示でまともな食事を与えずに餓死させた。死亡のとき男児は標準体重の半分しかなかった。「ママ友」は98日に懲役15年が求刑されている。


虐待死事件については、当ブログでは以下で取りあげています。

3.幼児死亡事件の防止対策
それではどうすれば、
このような不慮の死の発生を防ぐことができるのでしょうか。
今回の送迎バスの事故を見ても、
マニュアルや指導指針によって人間の行動に期待する方法には限界がある
ことが分かります。

(1)自動車内放置事故対策
実は、アメリカでは2021年11月にCPDの設置を求める法案が成立し
2023年11月には義務化される見込みです。
CPDとは、レーダー技術を活用して社内の様子を感知し、
幼児を残して車を離れたりした場合、運転者に通知・警告するシステムです。
これを利用すれば、送迎バスの積み残しは解消されます。
単純なことですが、送迎バスの窓は無色のままで中が見やすくすることも
必要でしょう(前掲の送迎バスは窓にイラストが描かれています)。

9月9日に政府は、10月中に緊急対策を取りまとめることにしましたが、
その主管である小倉将信こども政策担当相は、
「バスに設置するブザーなど安全装置について、導入の費用補助を検討する」
ことを表明しています。正解です!!

CPDはコストがかかるのでしょうから、
一般車両に義務化することはできるのでしょうか。
一般車両の場合は、運転者に警告するのではなく、
車から警告音を発する方法の方が有効でしょう。
CPDを義務化するにしろ、設置の補助をするにしろ、
国民のコンセンサスが必要でしょう。

他の不慮の死に対しても、
「システム」で対応できるものを考えてみました。

(2)虐待死に対する対策
虐待死については、結愛・心愛ちゃん事件以来、
児童相談所の強化が行われています。
2018年12月に安倍首相の肝いりで決定された政府の「新プラン」では、
2017年に3240人だった児童福祉士の人数を大幅増強し、
2022年度には5260人にする計画としました。

素晴らしいことに、実績はほぼその目標を達成していますが、
2022年度さらに505人増員して5765人にする計画です。

しかしながら、相談員の活動には限界があります。
こういうシステムを実現したらどうでしょうか。

【幼児の健康状態自動監視システム】のアイデア
1)虐待死した幼児は、事前に児童相談所との接点があります。
 その接点の際に、幼児に時計型ウェアラブル端末を付けます。
2)その端末から幼児の健康状態のデータを送ります。
 体温、心拍数など、です。
 ウェアラブル端末を取り外せば、異常となります。
3)そのデータの受信と監視は
 SECOMなどの警備会社に委託します。
 警備会社は高齢者の「見守りサービス」などで
 そういう技術・設備を持っています。
 その要員・設備を利用するのです。
4)警備会社は、異常を察知したら
 直ちに児童相談所や警察に連絡します。
 異常の判断にはAIを活用したらよいかもしれません。
5)警備会社の要員および関係者は現場に急行します。
 幼児の状況を確認し、救急車を呼ぶ、
 一時保護を行う、など必要な処置をします。

このシステムによって、
年間数十人の虐待死を防ぐことができるのではないでしょうか。

(3)行方不明者の捜索対策
これは、早期捜索が一番の解決策です。
行方不明に気が付いたら、自分たちで探す前に
まず警察に連絡します。
川や海にはまってしまってからでは救いようがありません。

捜索を支援するこういう方法はどうでしょうか。

【行方不明者の行方確認システム」のアイデア
1.幼児にネックレスをかけます。
 このネックレスは、現在地を発信する機能だけを持っています。
2.親や保育園の先生は、幼児が自分の責任下に入った時に、
 自分の親機(スマホ)で、
 そのネックレスのQRコードを読み取ります。
3.その時点で、そのネックレスを付けた幼児は、
 親機の保有者の管理下に入ります。
4.親機のアプリで、管理下の幼児それぞれがいる方向と
 距離が表示されます。
5.幼児が、自分の視界から見えなくなったときは、
 このアプリを立ち上げて、幼児の所在を確認します。

現在のGPSの精度(誤差)は10メートル程度ですから、
この目的からは十分です。

それにしても、山梨キャンプ場女児失踪事件は不思議ですね。
行方不明になって2-3時間後には捜索を開始しています。
警察犬も導入されているのです。
警察犬がギブアップしたというのはどういうことでしょうか。
道路上で警察犬がギブアップしたのなら、
車で誘拐されたということになりますが、
そういう情報はありませんでした。
今回、遺骨の一部が発見された場所も当然当時の捜索範囲でした。
謎だらけです。

上掲のシステムがあれば、直ちに行方が分かったでしょうに。

(4)水難死の対策
水難死は世間を騒がせる虐待死よりもはるかに多いのですが、
「事故に遭わないように注意をする」が基本対策で、
有効な対策がないのが水難死多発の要因となっています。
有効な対策例は、
「危険な用水路に蓋をする」などの個別対策だけです。
ため池については「立ち入り禁止」の表示をする程度しかないのですが
ため池は個人所有が多いのが防止策の限界となっているようです。

そこでこういう対策を考えてみました。
【溺れ防止エアバッグシステム】のアイデア
海や川で遊ぶ場合の対策です。
この場合は事前に以下のような対応をすることが可能です。
1.自動車のエアバッグを超小型化して首輪状にします。
2.海や川で遊ぶ際には子供に装着します。
3.溺れそうになったら本人が操作してエアバッグを膨らませます。
4.課題はコストと操作方法です。
 1)自動車のエアバッグは1式30万円程度かかるそうですが、
  センサ不要で、サイズが小さく、強度が低くてすみますので、
  数千円が目標です。
 2)操作方法は、エアバッグに紐をつけてそれを引く方式か、
  エアバッグにスイッチを付けてそれを押す方式など
  が考えられます。
  誤操作を防ぐことと、
  慌てたときでも確実に操作できることが必要です。
  一つの案は、
  スイッチを二つ付けて同時に押さないと
  作動しないようにすることです。
  この場合「オフ」状態にして、
  スイッチを押す練習ができるようにすることも必要でしょう。
  実証実験をしてその方法を決めたらよいと思います。

このシステムが有効に機能するためには、以下のような、
児童が水にはまっても慌てない訓練が必要です。

【小学校の水泳訓練の方法】
多くの小学校にはプールがあり、水泳の時間があります。
その教科では、泳げるようになること、速く泳げるようになることを
目標にしているようです。
私は、小学校では、
「泳げるようになること」を目標にするのではなく、
「落ち着いて水に浮いていられるようにすること」
を目標にすべきだと思います。
早く泳げるようになることは、水泳教室でやればよいのです。

小学校では、息の吐き方とか立ち泳ぎを徹底的に教えます。
それができるようになった児童は、
その練習群から離れた場所(プール内)で
勝手に仲間で遊べるようにします。
クロールなどの泳ぐ練習をしたい者は、そうしてもよいのです。
溺れない能力が身についてますから、
勝手に遊んでいても溺れる心配はありません。

小学校でのプールにおける水死の例
2012年7月30日。京都市立養徳小学校で、夏休みのプール学習中、
1年生だった浅田羽菜ちゃん(当時6)が溺れ、
浮いているのを教員が見つけた。
羽菜ちゃんは翌日、病院で亡くなった。
事故当時、低学年の子ども69人がプール内にいて、
水深は最深110センチほどあり、
畳サイズの大型のフロートが何枚も浮かべられていた。
教員は3人だった。

(5)交通事故死の対策
交通事故は、個人側での対応は限度があります。
究極の対策は、完全な自動運転です。
完全な自動運転ができれば、人に傷害を与えることはなくなります。
それまでは、不完全な対策を積み重ねるしかなさそうです。
 危険な交差点について、歩車分離信号にする。
 幼児の集団行動は危険な道路を避ける。

以上、悲惨な事故を防ぐには、
人間の注意力やマニュアルに頼るのではなく、
システム的に事故を防御する方法を徹底的に研究し、
実用化すべきではないかという主張です。

1 件のコメント:

上野 則男 さんのコメント...

友人MTしからのメールでのコメントです。

子供の水死事故対策では泳げるようになることの前に
落ち着いて水に浮いていられるようにすることを先ず教えるべきとの貴見に賛成。