2021年11月28日日曜日

みずほ銀行の不始末はなぜ???

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 みずほ銀行の再々の障害発生原因を探ります。
 信じられないことが起きていることを確認します。
ねらい:
 「他山の石」とするには特殊過ぎているでしょうか。

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1.今回の問題
11月26日、金融庁の業務改善命令を受けて、
みずほの首脳は総退陣することになりました。
その命令では、
「短期間に複数のシステム障害を発生させ個人・法人の顧客に
重大な影響を及ぼした」と指摘しています。
金融庁の約8か月にわたる長期検査で浮き彫りになったのは、
みずほのIT(情報技術)に関する統治体制の欠如だ。
改善命令は経営陣の認識の甘さを厳しく指摘した。

2.これまでの経営陣の認識不足問題の発生状況
ご承知のように、みずほは過去何度も大規模障害を起こしています。
まず、2002年の3行合併の際に起こしました。
そのときに、前田頭取が「お客様に迷惑をかけているわけじゃない」
と開き直って物議を醸しました。
トップの認識不足はこの時から始まっているのです。
この問題児が2009年まで
みずほフィナンシャルグループの社長を務めるのですから、人材難です。

その後2002年6月に発刊された
日経BPの「システム障害はなぜ起きたか」
ではこういう指摘がありました。

障害発生前ですが、合併3行の頭取が顔を揃えて
新会社の役員体制を発表しました。
その際、CEO、COO、CFOが紹介されているのに、
CIOはありませんでした。金融機関でですよ!

それで、日経の記者は、
これは危ないぞと目をつけてフォローしていました。
そうしたら、案の定2011年に大規模障害を発生させました。
そこで、「システム障害はなぜ2度起きたか」が
2011年に7月に発刊されたのです。
これにはこういう主張がされています。
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今回のシステム障害の原因は30項目にわたるが
これらの原因の根っこは「経営陣のIT軽視」だ。

その結果は、こうなった。
「失敗を恐れ、システム刷新を先送りした」
 問題を起こした勘定系システムは
開発から23年間経ったものである。
「必要なIT投資を見送ってきた」
 システム統合・システム刷新には、
  2~3千億円かかる。
「システム部門の強化を怠った」
 その結果、障害対応能力が落ちた。
「システム障害のダメージを想定できなかった」
  これだけの大ごとになると分かっていたら
  適切な対応策をとっていただろう。

「経営陣のIT軽視」は以下の点からも分かる。

5月23日の記者会見で発表された
「システム障害の再発防止策」には4つの問題点がある。
1.35項目に及ぶ再発防止策のうち、
  経営陣自らの意識・行動の改善に向けた取り組みが
ほとんどない
2.「今回の事故の原因は、
9年前の統合の時の原因と異なるので
  防ぐことができなかった」
と言っていて原因を表層的にしかとらえていない。
3.事故から2か月経っているのに、
  新任のシステム担当役員を決められなかった。
4.「推進中のみずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行の
  システム統合費用が、この事故によって大きく増えることはない」
と言っているが認識が甘い。

システム強化の対策としては
1.CIOには将来経営トップになる人材を当てなさい。
2.CIOは取締役にして
   取締役会に出席し意見を述べられるようにしなさい。
などが重要である。

筆者たちの予想は、「このままだと3度目が起きる」でした。
そうなってしまったのです。
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この時の指摘と今回の金融庁の指摘はまったく同じです。
この指摘のうち、システム再構築の投資だけは、
4000億円かけて実現したのですが、
他はまったく改善されなかったのです。

システム軽視はとんでもないことです。
私は金融業や流通業は「システム依存ビジネス」で、
システム力=ビジネス力であると言っています。
システム依存ビジネスの場合、
システムはモーターボートのエンジンでこれなしでは動きません。
システムを軽視するということは考えられない愚行です。

ヨットの場合のエンジンは補助で、
これが機能しなくても風があれば動けます。
ヨットである製造業の場合は
製品や技術が主役でシステムは脇役でいいのです。

因みに、同じく合併してできたメガバンクでも、
三菱東京UFJ銀行はCIO経験のある畔柳信雄頭取が、
3行のシステム統合の陣頭指揮を執り、
2009年のIT Japan Award 2009(日経BP社主催)で
経済産業大臣賞(グランプリ)を受賞されています。

このことを見ても、みずほグループの弱体ぶりがよく分かります。

3.問題発生の真因
なぜ20年も、経営者の意識が変わらないのでしょうか。
私は、こういう見立てをしています。

当社は、
みずほ銀行創立(興銀、富士銀、第一勧銀が合併して成立した)の際に
それぞれの銀行とのお取引があり影響を受けました。
その経験からの判断です。

3行は、対等合併の形式的条件を守るためにお互いに遠慮して
有機的に一体化するということができませんでした。

それは情報子会社でもまったく同じことでした。
情報子会社では、3行のうちの1行に
非常に積極的で優秀な社長がおられました。
その方が新会社(みずほ情報総研)の社長になられれば、
時間をおかずに有機的な一体化が実現し、
優れたサービス提供が開始できたと思われます。

非常に残念なことに、新社長は無難な調整型の方がなったのです。
その結果、あらゆることが停滞しました。
3社ともで当社が毎年実施していた研修もストップしました。
「現在、新研修体系を検討中でそれができましたらご相談します」
ということでした。

2年待っての結論がこうでした。
「まずは公的な資格を取得する研修をすることになりました。
PMP資格等です。御社の研修は当面対象外です」
この結論もナンセンスですが、
2年もかけてその結論か、というのが驚きです。
本質的なことは何も決められないということです。

リーダシップがないというのは、こういうことになるのです。
社員たちはよくそんな会社で我慢しましたね。
やはり一流企業に勤めているというステータスを捨てたくない
のでしょう。

お互いに合併相手に遠慮する、ということが高じると、
他人・他組織のことに口を出さない、関心も持たない、
ということになります。
その結果が、この無責任状態を引き起こしたのです。

システムのことはシステム部門に任せておけ、となるのです。
丸投げです。システム部門はこれまたベンダに丸投げです。

こういう無責任状態ではいかんと、改革型のトップが現れて、
強力に旧弊を打破することをすれば変われたのでしょうが、
そうならなかったのです。

みずほの新首脳陣は、従来と同じ調整型の人材であれば、
4度目の大障害が起きるでしょう。

2021年11月27日土曜日

亀井静香氏著「永田町動物園」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 亀井静香氏による政治家紹介を知っていただきます。
ねらい:
 「事実は小説よりも奇なりです」ぜひ本書をお読みください。
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本書の副題には「日本をダメにした101人」とついていますが、
おそらくこれは、
出版社がセンセーショナルにするために勝手につけたものでしょう。

亀井氏は「はじめに」でこう述べています。
本書には、俺自身を入れて101人の政治家の素顔、
そして永田町の知られざるエピソードを記した。
だが書きながら、
はたして俺たちは日本をよくすることができているのだろうか、
むしろダメにしてしまったのではないか、と省みることも多かった。
政治家とは何か。この国をよき方向へ導いているか、
それとも誤らせているのか。
その判断は、読者の皆さんが下してほしい。

ダメにしたとは断定していないのです。
書名からすると、登場人物をこき下ろすのかと思えますが、
決してそうではなく、
まじめに「政治家の素顔やエピソード」を伝えており
非常に興味深く、かつ、たいへん貴重なものだと思いました。
こういう内容は亀井さんでないと書けないでしょう。
「こんなおもしろい本は読んだことがなかった」くらいです。

私は、亀井さんと大学の同期です。
私は空手部に所属し、道場で定期的に練習をしていました。
彼は道場の端っこの方で、
合気道の稽古を多分いつも一人でやっていました。
「何をやっているのだろう?きたない(稽古着の)男だな」
という印象がありました。
彼は、駒場の学生寮で、
「イヌを殺して食べた」という風評?を立てた男でした。
彼が合気道部を創設し、
その後空手部と肩を並べる武道の部に育てました。

亀井氏は、知る人ぞ知る「政界の暴れん坊」で、
政界に疎い私は、彼のことをあまり評価していませんでした。
しかし、この本を読んでその印象、悪いイメージは一掃されました。
しっかりした見識が窺えました。

100人はこういう分類をされています。
第1章 令和を生きる14人 安倍晋三ほか
第2章 昭和を築いた13人 中曾根康弘ほか
第3章 平成を駆けた31人 後藤田正晴ほか
第4章 自民党と対峙する21人 仙石由人ほか
第5章 因縁と愛憎の21人 石原慎太郎ほか

この本を読んでいると、その器でありながら、
総理になれなかった人が、
亀井さん本人を含めたくさんいることが分かります。
総理になれるのは、まさに「時の運」だと思われます。

どの人のものも「素顔とエピソード」が満載なのですが、
2人分だけご紹介します。
政治家に関心のある方はぜひ本書をお読みください。

「読んでみたい」と思う代表的な副題の人を以下に示します。

田中真紀子 俺だけが知る「女親分」の真の姿
辻元清美  「初の女性総理」はこの人かもしれない
岡田克也  「地蔵さん」だが、それも悪くない
橋下徹   国政進出は失敗だったが、チャンスはある

以下に2人の内容の転載をします。

1.石原慎太郎 「石原総理」誕生のために走り回った夜

芥川賞作家でありながら、
衆議院議員から都知事にまで登りつめた石原慎太郎は、
あけすけで開けっぴろげの性格だから、俺とは実に気が合った。
初めて会ったのは、俺が初当選して間もない頃、
自由革新同友会(中川派)でのことだ。
当時の自民党の政治家には珍しい、都会育ちのしゃれた男。
それが慎太郎だった。
第一印象では生意気な野郎だと思ったが、
今日まで盟友として付き合うことになるのだから、縁とは不思議だ。

あいつはやんちゃで我が儘だし、
俺と一緒で相手の機嫌をとって物を言わない。
だから喧嘩も一度や二度じゃない。
「お前は文学者じゃない」「お前の『太陽の季節』なんて、
男のシンボルで障子破っただけの話だろう?」と言ったら、
「何だと!」と怒ってビールをかけられそうになった。

政治的な話でも(中略)

ただし、あいつは文明を観る鋭い目を持っている。
想像力やアイデアもある。
そういう点では政治家というより、文学者なのだ。
石原には人を利用するとか、偉くなりたいとか、
金儲けしたいという俗世間の欲望がまったくない。
そんな純粋な奴だから、喧嘩してもその場かぎりのことで、
後にはひきずらない。
石原はその点でナイスガイだから、
俺はあいつを総理にしたくて担いだことがあった。
89年の宇野内閣倒閣の時のことだ。

就任間もない宇野宗佑首相は、
複数のスキャンダルで就任後2か月余りで退陣に追い込まれた。
次の総裁候補として、竹下派は河本派の海部俊樹を推し、
宮沢派は林義郎を推した。
竹下派は総裁選では自前候補を出さず海部を引っ張ってきたが、
主流派だったから他派閥への影響力は強い。
俺は当時清和会を破門され自由の身だったし、
他の候補者が気に食わなかった。
それで平沼赴夫や園田博之とともに、
清和会に戻っていた石原を担ぐと決めたのだ。

だがそこからが大変だった。(中略)

結局、総裁選では48票しか獲得できず、
石原は負けてしまったが、悲愴感はまったくない。
石原は「亀ちゃんのおかげであれだけの票が取れたんだもんな」と言うが、
石原のためにみんなで奔走したのは、いい思い出だ。

13年半務めた都知事を辞めたのは、
石原新党結成をけしかけた俺にも責任がある。
結成していたら石原の総理への道もあったと思うと、残念だ。
お互い歳は食ったが、
平沼と一緒に、白波五人男ならぬ白波三人男として、
やりたいことのために暴れまわれたら本望だ。

注:石原さんは、小池知事のことを「年増の厚化粧」と言って
話題になりましたが、マスコミのバッシングを受けなかったのは
こういうお人柄なのだからですね。


2.徳田虎雄 運命にも屈せぬ「虎と亀」の友情

德田虎雄という男は俺が政治家として、
そしてなにより人間として尊敬している人物だ。
医者だった德田さんは、「命だけは平等だ」というスローガンを掲げ、
医療法人「徳州会」を設立。
「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会」
をモットーに抜本的な医療改革を実行しようとした。
日本の病院はそうではなかったんだ。
たった一人で革命をやろうとして、
日本医師会という最強の組織と正面からぶつかることになった。

上野注:
亀井氏は、「德田さん」とさん付けしていますが、
德田さんは昭和13年の寅年生まれですから、
亀井氏の方が少し年上のはずです。
「石原」と呼び捨てにしても「德田」とは言わないのですね。
徳田虎雄さんは、琉球徳之島の出身です。
離島のため適切な医療を受けられないでの身内の死を体験して
医師を目指しました。
そうして「いつでも、どこでも、誰でも」の医療の実現を目標に
徳州会という医療法人を作られました。
德田さんは、寸暇を惜しんで働きました。
「トイレの時間を短くするために歯磨きをしながら体を大きくゆする」
などを聞きビックリした記憶があります。
徳州会設立の時も、その後も医師会の抵抗は続きました。
それで、抵抗に対抗するには政治の力が必要だということで
政治の世界に入ったのです。
2019年現在、全国に71病院、30診療所を擁しています。
たいへんな力です。

エゴのために動く日本医師会は、コロナ対応でも岩盤となっています。
そのエゴは、断固排除すべきです。

彼と出会うきっかけは石原慎太郎だった。
石原がやっていた自民党内の有志の勉強会「黎明の会」の事務所が
山王グランドビルにあった。
同じビルに徳洲会の東京本部もあり、石原と德田さんは顔見知り。
黎明の会に出入りしていた俺も、挨拶する機会があった。
その後、德田さんは国会議員に当選すると、
陳情ごとで俺のところにやってくるようになった。

当時は中選挙区の時代だったが、
德田さんの選挙区である奄美地方は日本唯一の一人区で、
自民党の保岡興治さんの牙城だった。
そこに殴り込みをかけたのが德田さんだ。
「保徳戦争」と言われる日本一熾烈な選挙戦を繰り広げ、
83年の最初の選挙は約1000票差で落選。
3度目の挑戦、90年の総選挙でようやく勝ち上がった。
しかし德田さんは無所属の身で、
当選しても政策を実現するのは難しかった。
「もっといい医療を全国展開するんだ」と語る彼に共鳴した俺は、
「よし、俺が用心棒をやる」と応え、バックアップを決意した。

自民党広しといえども、この仕事は俺にしかできなかった。
なぜなら、自民党のほとんどの議員は医師会の支援を受けているから、
敵に回せないのだ。
93年の選挙で德田さんが2度目の当選を果たしたときは、
一旦は自民党への入党が認められたのに、
医師会の政治団体である日本医師連盟が猛抗議して、
9日後には追い出されてしまったくらいだ。
その点、俺は一切医師会の世話になっていないから、
気兼ねする必要がなかった。

俺は德田さんのためなら何でもやった。
中略
沖縄や奄美に対する予算付けも、全部俺がやった。

ただ、德田さんや自分の利益のためにやったわけじゃないことは、
はっきり言っておく。
德田さんの陳情も私欲ではなく、
沖縄や奄美のために必要なことばかりだったから、何とかしたんだ。
そこには「虎」と「亀」の友情があった。

そんな德田さんは筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、
05年の総選挙で出馬を断念、引退する。
あれだけ馬力のあった人が体を動かせなくなるなんて、
運命はあまりにも非情だ。

中略

德田さんと最後に会ったのは、10年の参院選の頃だ。
俺が奄美に行って集会を開いたとき、
德田さんは「比例は国民新党(亀井さん)を支援する」
と表明してくれた。
当時の国民新党は厳しい状況だったが、本当に義理人情に厚い男だ。
彼は俺と一緒でモノへの執着もない。
常に世の中のために全力で邁進した。
俺たちの関係は、亀の背中に虎が乗っているようだったと言うと、
格好をつけすぎだろうか。
徳田虎雄はその名に恥じぬ英雄だと俺は思っている。


蛇足 田中真紀子 俺だけが知る「女親分」の真の姿 抜粋

俺がトイレで小便をしていたら、
隣に直紀(眞規子の旦那)がきて小便を垂れはじめた。
そのときチラッと見たんだが、でけぇ、でけぇ。
でかいってものじゃないほど、大きいのだ。
俺がミジメになってしまうほどだったが、
これでは眞規子が離さないと思ったものだ。
中略
眞規子の器がもう少し大きければ、
日本初の女性総理になっていたかもしれないと思う。
一度はそういう座につけたかった。

2021年11月25日木曜日

「100万回死んだネコ」って何でしょう?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 図書館のレファレンスサービス(司書業務の一部)
 を知っていただきます。
ねらい:
 今後、本を探すときのヒントにしてください。
 (なりますかね?)
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本項は、福井県立図書館著「100万回死んだねこ」のご紹介です。













本書発行の背景になっている図書館での司書業務の意義が
解説されている「はじめに」をご紹介します。
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図書館は本の貸し借りをするだけの場所ではありません。
大きな役割の一つに「レファレンス」があります。
簡単に言えば、利用者が探している”情報”にたどりつけるよう
司書がお手伝いをすることを指します。
「こんな本を探しているんです」と尋ねられたとき、
私たちはクイズさながら「ピンポン!それはこちらの本では?」
と瞬時に答えているわけではありません。
「著者の名前はわかりますか?」
「どこで本のことを知りましたか?」
「いつ頃出版されたものかわかりますか?」
そんなふうに利用者に質問を重ねた上で正解を見つけています。
この一連の流れがレファレンスサービスです。
(中略)
(本書は)ただおもしろがってもらうためだけに
「覚え違いタイトル集」を公開しているわけではありません。
カウンターに来られる利用者のなかには、
すでに館内の検索機で探したけれど見つからなかった
という方もいらっしゃいます。
図書館の検索システムはGoogleと違って厳密で、
ちょっとした間違いがあるとヒットしません。
「覚え違いタイトル集」を読むことで、
間違えやすい部分に気づくようになり、
自分で目当ての本にたどり着くためのヒントになるのでは?
というのも目的のひとつです。

同時に、「カウンターで相談するのもねぇーーー」と
ハードルを高く感じていらっしゃる利用者に
「こんな風に全然間違っていても気軽に聞いていいんだな」
と知っていただきたい、と考えています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なるほど、そうなのですね。
以下に、本書で示されている
利用者がいい加減な要求をした90件の例の中からいくつかをご紹介します。
面白いものがありますね。

誤った書名など

正しい書名

夏目漱石の「僕ちゃん」

「坊っちゃん」

「白い器」

松本清張の「砂の器」

「衝撃の巨人」

「進撃の巨人」

カフカの「ヘンタイ」

「変身」

「人は見た目が7割」

「人は見た目が9割」

フォカッチャの「バカロマン」

ボッカッチョの「デカメロン」

「ハーメルンの音楽隊」

「ハーメルンのふえふき」

「ひやけのひと」

「火宅の人」

昔からあるハムスターみたいな本

「ハムレット」

「海の男」

「老人と海」 (ヘミングウェイ)

これこれちこうよれ

「日日是好日」

だいぶつじろうの本

大佛次郎

池波遼太郎の本

司馬遼太郎または池波正太郎


本書の解説のイメージを以下に示します。
多くの例は、表裏1頁ずつで示されています。

ところで、本書の内容はたいへん興味深いものではありますが、
特殊な内容ですので、何部くらい売れるのかを想定してみました。
1.前提となる数の確認
 1)全国の図書館数
   2020年文科省調査 自動車図書館542、それ以外の図書館3,316
 2)全国の司書の数
   2015年文科省調査 常勤5,410人、非常勤9,593人
2.本書購入数の推定
 1)すべての図書館が1冊購入するとする。約4,000冊
 2)司書は2分の1は勤務する図書館のを見る。
   残り2分の1の半分が購入するとする。7,500÷2≒4,000冊
 3)司書以外の一般読者(研究者等含む)は、
   司書と同数購入するとする。4,000冊
 4)合計販売数想定 12,000冊
1万部超えるのですから、出版としてはまずまず成功の部類と言えそうです。



「私の履歴書」元F1レーサー中嶋悟氏の体験 死が伝わった!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 人の死を感じて夜中に目が覚めることがあることを
 知っていただきます。
ねらい:
 そういうこともあるのかな、と思っていただきます。
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2021年11月の日経新聞「私の履歴書」は、
元F1レーサー中嶋悟氏でした。

その第23回にこういう記述がありました。
F1レーサーの仲間であり、貴公子と称された
人気者アイルトン・セナの死についてです。
この写真は当日の日経新聞掲載のもの









彼が出走した1994年5月1日のサンマリノGP。
テレビ中継は夜遅く、見るのは諦めて自宅で寝ていた。
突然目が覚めた。テレビをつけたら事故直後の映像が流れていた。
食い入るように見続け、やがて彼の死を知った(34歳だった)
僕はあの夜、セナに起こされた気がしている。

こういうことをテレパシーというのでしょう。
私も同じような経験をしています。50年くらい前のことです。
夜中の4時ころ目が覚めました。
滅多に夜中に目が覚めない私は何時なのだろうと、時計を見ました。
4時だったのでまた寝ました。

翌朝、女性から電話がかかってきました。
結婚していた私は、女性から電話とは何事だろうとビックリしました。
電話口の女性は沈んだ声で言いました。
「主人が今朝方亡くなりました。
主人は生前いつも上野さんのことを話していましたので
お知らせしています」
びっくりして聞き返すと、亡くなったのは4時だったのです。
4年くらい年下の彼とは、帝人の独身寮で一緒で、
毎朝のように二人でランニングをしていました。
その独身寮主催のロードレースで好成績を上げるためです。
何かと彼をかわいがっていました。

「どうしたのですか?」とその奥様に聞くと
「風疹で亡くなったのです。
医者は風邪でしょう、休んでいてくださいと言いましたが、
3日で死んでしまいました」というのです。
「えーーーっつ。とんでもないことですね。
その医者を訴えましょうよ」と言いますと、
奥様はしばらく考えていましたが、
「そうしても、主人が戻ってくるわけではありませんし」
と辞退されました。

たしかにそのとおりです。
場合によっては助かったのかもしれないと思うことは、
かえって無念なことですものね。
私は余計なことを言ってしまったと反省しました。

彼は大阪で、私は東京でしたが、
彼の葬儀に参列しました。

2021年11月23日火曜日

「六丁川心中」が出版されました!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 偉才小松能人氏の「六丁川心中」が刊行されたことのお知らせです。
ねらい:
 素晴らしい小説です。ぜひお読みください。
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私の帝人時代の友人である道本正毅氏(ペンネーム小松能人)が
この3月に「夭折」されました。
誠に残念なことです。

この件につきましては、以下のブログでご報告しています。

そこで、仲間が相談して彼の代表作を出版することにし、
この度無事、アマゾンから電子出版されました。

その表紙がこれです。



















ペンネームの小松は、
彼が石川県小松市の出身であることに因んでいるものです。
この作品の末尾に掲載されている「本書推薦のことば」を
以下にご紹介します。
皆さまもぜひ読んでみてくださいませんか。
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当小説は、人間にとっての最大のテーマである恋と性と死について
正面から取り組んでいます。
「恋の展開」
当小説は「幹夫」が主人公の形で展開されますが、
「幹夫」は舞台回しで実質的主役ではないと思われます。
主役は、この小説の縦糸である「幹夫と麻衣子」2人の恋の展開です。
5,6歳から始まり、充実した小学校時代を経て、
しばらくの冷却期間をおいて、
強烈に再燃する18歳で終る劇的な物語りです。

「性」
主人公の女性2人、麻衣子とトメ子は絶世の美人(「別嬪」)なのですが、他にも「別嬪」が登場します。
そのいずれの「別嬪」も性関係が描かれます。
いずれも、興味を惹かれる意外な性関係です。

「死」
主人公たちの死以外に、複数の友人の病死、高校1年女性の抗議死、
信頼する先生の結核死、などが描かれています。
それらの多くの死が、最後の主人公たちの死に収れんしていくのです。

「主テーマ」
作者は以下を伝えたかったのではないでしょうか。
「人間は、人に知られていない、あるいは人に知られたくない裏の面を持っている。それが人間社会一般の状況である」
主人公たちは、はたから見ると一見幸せそうな人生を歩んでいるのですが、実は隠された裏の面を持っているのです。

その裏の面の発現を、充実した生の対極にある死、
その悲惨な実現である心中という局面で描いたのが当作品です。
しかもその心中は、男女の心中、あるいは一家心中ではなく、
女性同士の心中、なおかつ同居中でなく別環境で生活している二人の心中という稀な状況なのです。

主人公たちの重大な裏の面が死に結びつているのですが、
他の人たちにはそれが知られていませんので、
主人公たちがなぜ死に至ったのかは、周囲の人間には分からないままです。

しかし、読者にはその二人の裏の面が知らされていて、
二人の心中にはあまり違和感なく受け止められるようになっています。
素晴らしい作者の文才です。

「脇役の活躍」
人生では親兄弟をはじめ多くの人たちとの関わり合いがあるのですが、
当小説でも多くの脇役が個性を持って登場します。
当小説展開の横糸です。
その人たちの生きざまが、
彼らが今そこにでもいるかのように生き生きと描かれています。
この程度の短編小説で、
それだけ多くの登場人物が生き生きと描かれている例は
珍しいのではないでしょうか。
作者の非凡な才能が窺われます。

「時代背景の描写」
時代背景としての終戦前後の社会情勢も丁寧に描かれています。
敗戦の玉音放送の状況、食糧難の状況、不法な闇米の入手、
大相撲大会や盆踊りなどの祭りのイベント、
などが歴史考証にもなるほど具体的に示されています。
そして、現代的な「モンスターペアレント」も登場します。
前掲の女性の抗議死は、昨今多い若い女性の自死の先駆けです。

それらのすべてが奔流となって、
悲しい結末にとつながっていくのです。
読者はこの物語が本当にあったことのように思い、
亡くなった登場人物の方々のご冥福を祈りたくなります。

因みに、六丁川という川は石川県には、
そしておそらく全国どこにも、存在しません。
石川県小松市を流れる一級河川梯川の支流に八丁川という川がありますが、
小さくて心中ができるような川ではありません。
六丁川という名称は八丁川からとったようですが、
小説の舞台になったのは本流の梯川の方だと思われます。

「ゴミ収集とまちづくり」-ゴミ収集について考える!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 身近な問題・ごみ収集テーマについて考えていただきます。
ねらい:
 もっと積極的にごみ収集に関わっていきましょう。
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当テーマは、大東文化大学法学部准教授藤井誠一郎氏の
「ごみ収集とまちづくり」のご紹介です。


著者の本書出版の意図を「はじめに」で確認いたします。
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2020年4月の第1回のコロナの緊急事態宣言で、
感染者のいる施設や住居からのゴミ収集の従事者は、
医療・福祉関係者とともに「エッセンシャル・ワーカー」であるとして
世間の注目を集めた。
そして、清掃従事者への感謝状がゴミ袋に貼られるようになった。
しかし、その状況も何回かの緊急事態宣言を経て、
元の状況(感謝なし)に戻ってしまっている。
(以上は上野要約)

このような状況において、筆者が考える、本書を通じて達成したい目的は、
今後到来するであろうポストコロナ社会において、
多くの住民に清掃事業への参加を促していきたいということである。
清掃事業への住民参加は様々な面に見られ、主にはごみの削減、分別の徹底、
リサイクルの促進、町内又は街の美化活動等が挙げられようが、
とりわけ自らの地方自治体の今後の清掃サービスのあり方や提供体制についての
議論が住民サイドから起こり、その議論が深まり、
あるべき清掃事業の形が展望されていくことを期待したい。

というのは、昨今の自然災害や今般のコロナウイルスの感染拡大により、
清掃サービスのあり方自体が大きく問われようとしているため、
住民が自らの地方自治体の清掃事業をいかに維持していくのかについて
思考を巡らせ、学習を重ね、そのあり方を展望していくような
自治が展開されていくことが必要不可欠になっていると思うからである。
(中略)
本書では、清掃事業の入口からもう一歩中に踏み込んで視野を広げ
清掃事業の奥深さを伝えるとともに、
体系的に清掃事業を把握するためのツールを提供していきたい。

誇りを持ってごみ収集の現場で活躍している方々の様子(第1章、第2章)、
それにもかかわらず進められていく人員削減の状況(第3章)、
コロナ禍での清掃行政の実態(第4章)
清掃職員への感謝の意が伝えられる一方で
これまで詳しく伝えられてこなかった清掃差別(第5章)
男性職場における女性の活躍(第6章)、
住民と行政の協働による繁華街の美化(第7章)
さらには産業廃棄物業界の概要とそこで推進されているDX(第8章)
までにも視野を広げ、
筆者がこれまでの調査で知り得たことを全て本書にて伝えていこうと思う。

それにより、読者の皆さんが自らの地方自治体の清掃事業の実態を把握し、
あるべき姿を考える一助にしていただければ幸いである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私自身は、清掃には非常に関心を持っています。
身近なところでは、
我が家の周りの道路(四辻を挟んで4本)を1年365日、
毎朝掃除をしています。
「ごみ」はそのほとんどが、
我が家の、河津桜、ブーゲンビリアなどの花と葉っぱですから
当然の責任行為なのです。
毎朝のことですから、イヌの散歩の方とかと馴染みになります。
挨拶を交わすのは楽しいものです。特に美女とは(?)。

資源ごみの集積所もわが家の前に設置していて、
集積容器の出し入れもしています。

10年ほど前、孫娘はまだ1歳の頃、資源ごみの回収トラックに
紙や段ボール類がボーン、ボーンと放り込まれるのに
強い興味を示しました。
それで、毎朝8時にこのトラックが来るのを待っていました。
トラックが向こうの角からこちらに曲がってくると
「ゴミシューシューシャ、ゴミシューシューシャ!!(が来た)」
と言って大はしゃぎしました。
そのお兄さんとも仲良しになり撮った写真がこれです。
(あまり嬉しそうな顔をしていませんね。人見知りなのです)














著者は、清掃従事者と住民の交流は、いろいろな意味で重要だ
と言っていますが、それを実践していたということです。

わが家の前にある
千坪ほどの大きな公園のゴミの片付けをしていた時もありますが、
今は近所の奥さんがやってくださっていますので、
私は子供たちが遊ぶ乗り物玩具の整理だけをしています。

わが家のごみ出しにも気を使っています。
ときどき行う樹木の剪定で出た枝木は小さくして
取り扱いやすいようにまとめます。
一度、1回に出せるごみの数に制限がある(現在は4個)ので
一つを大きくしたら「あまり重くしないでください」
と指摘を受けたことがありました。

近所の「ゴミ屋敷」の片付けを手伝ったことは、
以下のブログに書きました。

以下に、本書で私が関心を持った点についてご紹介いたします。

1.ゴミ収集に対する偏見(著者は「差別」と言っている)
昔は「ゴミや」と言われていた。
「くさい」とか「汚い」とかの暴言を浴びせられた。
学校の2階の窓からごみ収集を見て、先生が生徒たちに
「君たちも勉強しないとああなるぞ」と言った。

今もまだまだ、
住民の快適な生活を維持するために不可欠の重要な仕事である
という認識は不十分である、と述べられています。
そうだと思います。

2.事前打ち合わせの充実ぶり
毎日、決まったところに来るだけだと思っていましたが、
出発前に20分程度、
当日の収集予定。特記事項(道路の工事状況等)について確認し、
対応を検討している、ということが報告されていました。

3.ゴミ収集のリスク
たくさんのリスクがあるのです。
1)収集車の圧縮版に巻き込まれる
  これが最大のリスクです。過去に死者が出ました。
  そのため、停止スイッチは3個もついているのです。
  この圧縮力の強さには日ごろから感心しています。
  1台の収集車に凄い量のごみが入ります。
  それだけ強い圧縮力ですから巻き込まれたら即死です。


2)ゴミ袋が破れてゴミが散乱する
  丁寧に扱うしかないのですが時間制約との勝負です。

3)収集車で圧縮の際にゴミ袋の中の液体が飛び散る
  通行人がいれば、通り過ぎるまで待つ。
  自分がゴミ袋を収集車に入れ込むときの立ち位置を考える。

4)ゴミ容器の破損
  長年使用して劣化していても破損すれば補償となる。
  丁寧に扱うしかない。
  「新しくしてくれ!」と言いたくなるでしょうね。

5)収集漏れ
  戸別収集の場合、現地の確認をいい加減にしない。

6)カラス対策
  カラスが袋を破って散乱させます。
  「ネットをかけてください」と強制できない。
  散乱したゴミは集めて拾わなければならない。
  時間制約との絡みでつらいところです。
  
  これまで、我が家では、カラスの被害は受けていなかったのですが、
  1月ほど前に、カラスがどういう風に考えたのか分かりませんが
  はじめて、お向かいさんとわが家がやられました。

  そこで地元の清掃事務所に防御ネットはもらえないのか?
  と聞きましたところ、マンション等とかの集合ゴミ出し場用には
  用意しているが、個別の家庭用は自分で買ってください、
  ということでした。

  そこで近くのホームセンターで1500円位のネットを買い、
  半分に切って両家で使っています。
  当然ですが、それ以来カラスの被害はありません。

4.戸別収集の是非
家庭ごみの収集方法は、
ステーション(置き場)方式と各家庭ごとの戸別収集とがあります。
国立環境研究所の2020年の939自治体から回答を得た調査によりますと、
全国で8%(75自治体)が戸別収集をしているようです。

戸別収集は、以下のメリットがあります。
1)分別の徹底(これが最大の狙いです)
2)ごみ出しの責任意識の向上
3)出すのが楽
4)収集従事者との交流強化

回収の手間は増えるでしょうが、分別不備によるロスを考慮すれば、
コスト増だけではないので、
私は、責任意識の向上という観点から、ぜひ進めるべきだと考えます。
我が住まいの品川区は戸別収集です。

5.資源ごみ分別収集の方法
品川区では、資源ごみは、
新聞雑誌などの古紙、ビン、缶、ペットボトル、その他のプラスティック類
に分けて回収しています。
金属・硝子、粗大ごみは別です。
この回収は、4区分ごとに別のトラックがやってきて積んでいきます。

ところが、本書で 新宿2丁目での取り組みで、
これらを一緒に回収し、最終処分場近くの拠点で分別作業を行う、
という民間事業者の方法の紹介がありました。
この方法だと、何台もの車が広い範囲を回らないで済みます。

どちらの方法が安いか検討すべきだと思います。

というように、ごみの回収については、
著者の言われるように、まだまだ改善の余地がありそうです。
「ゴミ」扱いをしないで、有識者が知恵を出すべきです。

6.新宿2丁目の取り組み
1章を割いて紹介されています。
新宿2丁目の旧赤線地帯、現在はゲイバーの多い遊楽街のことです。
2019年の初めには、
一切のごみが一緒くたで集積所近辺に出されていました。
どんなごみも分別せずに、洗濯機などまで、
産業廃棄物なので有料であるにもかかわらずシールが貼られていないで
出されていました。
しかも新宿区では街の美観を損ねるということで、
そのままを毎日回収をしていました。
それをいいことにしてますます無法が広まる状況でした。
回収してくれるのだから、これでいいのだろう(分別しないで毎日出す)
と、事業者・住民は考えたのです。
まさにどんどん悪循環です。

これに対して、2代目の若手ビルオーナーが、
これはいかんだろうという問題意識を持って改善に取り組みだしました。
少しずつ同調者を巻き込んでいき、
集積所をやめて戸別回収にするというハード面と
事業者の意識改革とを合わせて進めました。

素晴らしい改善事例です。
改善アプローチの王道を熱意を込めて実践しているのです。
世界一清潔な街を目指して今も奮闘が続けられています。
皆さん、新宿2丁目を一度見に行って見ませんか。

2021年11月13日土曜日

「花芯」寂聴さんのご冥福をお祈りします

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 瀬戸内寂聴さんのご冥福をお祈りいたします。
 代表作のひとつ「花芯」の記述を確認します。
ねらい:
 皆さまも寂聴さんの作品を何か読んでみられたらどうですか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
瀬戸内寂聴さんが、11月9日に99歳でお亡くなりになりました、
心からご冥福をお祈りいたします。

若い頃の寂聴さん 出典:時事ドットコム













この際ですので、寂聴さんの出世作「花芯」を読んでみました。

以下の出典は、瀬戸内寂聴. 花芯 (講談社文庫). Kindle 版.です。 

(上野注:惚れ込んだ彼氏と箱根に逃避行をしたときの記述)
そこで四日、 私は胃の痛みのとれた後も、熱 を 出し、
温泉にも入らず寝てくらし た。
越智は完璧な看護人だっ た。
わたしたちはセックスを忘れたように、終日静かに話しあって暮した。
話はほとんど越智がし、私は微笑みながら、床の中でうなずいていた。
鶯と山鳩の声と、渓向うの山の腹に流れる雲のうごきが、 
私たちと共にあった。越智と暮した強羅の四日間だけに、 
私の恋は生きていた。   

その後二 ヵ月を経て、越智とはじめて肉体的に結ばれた時、
私の恋は終ったのだ。  

(そのときの描写)
越智の腕の中で、私はからだを和らげ、ひっそりと目を開いていた。
越智が静かに上半身をあげ、真上から私の眼をのぞきこんできた。
和らいだ越智の眼の尋ねる意味に微笑で応えかけ、 
私はふっと胸の奥に痛みがはしるのを感じた。 
越智の場合と、雨宮の場合と、私のセックスの感応度が、 
どれだけの差をもったといえるだろう。 
小肥りのなめらかな白い肌をもった雨宮と、 
筋肉質のひきしまった浅黒い肌の越智と、
皮膚にうける感覚はちがっ ても、 
私の子宮が享ける快楽になにほどの差があっただろう。 
越智は北林未亡人に対しても行ったであろう同じ動作、 
同じ順序で私のからだをさぐり、私のセックスに触れてくる。 
私は恋のあるなしに かかわらず、 
雨宮に応じたと同じ姿勢でからだ 開き、 
じぶんを放棄し、子宮は恥しらずなうめき声をあげるのだ。 
私の瞼によみがえってくる黒いあの影、ポンペイの地下のミイラは、 
強姦する主人と、犯された女奴隷であったかもしれ ない。   
人間は一番美しい憧れを心にいだい た時、 
どうして盗みや殺人とひとしなみに並べ られる 
悪徳の一つの行為と同じ行為に、 
身をゆだねなければならないのだろう。 
越智と分ちあっ た快楽の名残りに、 
私は全身を熱くけだるくゆだねながら、
私の恋が、潮のひくようにさめていく のを、ながめていた。   

この「花芯」は1958年、寂聴さん36歳のときの発表です。
その際に、「この小説はポルノであり、彼女は子宮作家である」
などと言われたらしいですが、まったくポルノとは言えません。
セックス自体の具体的描写がないのですから。

「花芯」は、女性作家がセックスを題材にしたということで
当時はめずらしく世間の注目を集めました。
花芯とは女性のあそこのことを言っているのでしょうから、
大胆な書名ではあります。

しかしこの小説は、セックスだけをテーマにしているのではなく、
男女関係を中心にした人間関係、親子・兄弟の人間関係、
同調心の薄い女性の生きざま、性にはまっていく女性の葛藤、
などを描いた立派な社会小説です。

既婚女性の性に対する嗜好をオープンにしたことは、
世のご婦人たちのオープンな性行動に
かなりの影響を与えたのではないかと想定されます。

寂聴さん自身も、夫婦を含む男女関係が経験豊富でした。
1973年51歳での出家は、
「煩悩」を絶とうということだったのでしょうか。
出家に際して、
師僧である今東光大僧正が「下半身はどうする?」と質問したのに対して
「断ちます」と答えたそうですが、その後の状況は不明です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ところで、前掲の引用個所の中に、以下の記述があります。
「越智とはじめて肉体的に結ばれた時、私の恋は終ったのだ」 

私は、ずい分昔にこういう定義をしていました。
「恋とは一体でありたいと思う気持ちであり、
愛とは一体であるという気持ちである」

一体になってしまえば、恋は終わるのです。
前掲の記述はまさにそのことを言っています。

恋が終われば、愛に転ずるか、何もなくなってしまうかです。
「花芯」の主人公たちは、愛に転じた形跡はありません。
この後、主人公は、
どんどん性に目覚めて他の男性にもはまり込んでいくのです。

私の恋と愛の定義は、対象が人間とは限りません。
自然を人間と同じように愛したのが縄文人から始まる日本人です。
日本人は、自然の語り掛けを聞き取ろうとしています。
自然の発する音を人間の言葉と同じ左脳で聞くのです。
以下のブログをご参照ください。




2021年11月12日金曜日

ブラザー工業会長のブログも1100回!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 ブログ発行回数が1000回を超えた方をご紹介します。
 「上野則男のブログ」の1000回の代表作をご紹介します。
ねらい:
 今後とも当ブログをよろしくお願いいたします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
10月28日の日経新聞の「私のリーダ論」コラムに、
ブラザー工業会長の小池利和氏が登場し、
以下のように述べておられました。
「私の考えや行動を発信する社内ブログ「テリーの徒然日記」は、
社長就任前の05年末に始めました。
自分で感じたり体験したりしたよしなごとをつづっています。
話題は趣味の花見、ゴルフ、野球などさまざまです。
ただ自分の話にとどまらず、家族のことも隠すことなくさらしてしまい、
妻にはよく怒られます」

「現在は隔週で分量は1回につき3,000~4,000字くらい。
従業員は職場にいる時間が長いので、
楽しく過ごせるヒントを提供したいです。
何事にも好奇心を持ってほしいという願いもあり、
書き続ける苦労に勝ります。
7割の従業員が私のブログを閲覧しており、
アクセス数は今も減っていません」

素晴らしい心がけですね。
たまたま、当ブログも年初に1000号を超えたところで、
非常に親近感を感じました。
私の方は開始が2010年4月です。
小池会長が5年先輩です。

私のブログの人気テーマは何だったのだろうと、
データを見てみましたら、ベスト10はこうなっていました。

1.東大卒にもこんな素晴らしい女性がいます!    405,000
2.怖ろしい!ケネディ暗殺の真相に迫る!        15,100
3.これはタメになる「できる大人のモノの言い方大全     4,603
4.南海トラフ大地震はいつ来るのか??                2,425
5.スタンフォード大学西教授ってご存じですか?            2,344
6.日本人と中国人・アングロサクソン民族の違い    2,278
7.「当たり前の経営」と言いますがたいへんな変革の実現報告です。
  1,860 
8.福島原発の状況、これが本当            1,551
9.私の趣味「銀杏採りのご紹介            1,531
10.インドはなぜオリンピックが弱いのか        1,096

ダントツの1位は、1億円トレーダとして有名になった村田美夏さんの紹介です。
ファンがいるのですかね。当ブログとしては、異常な数値です。
第5位も有名人紹介です。
第7位のは、今や日本の代表企業になったSCSK殿の成功物語です。
真相モノが2点入っています(2位と8位)
第6位は、ときどき掲載させていただく他の方の主張の紹介です。

なかなか自分としての力作が大ヒットになることはありません。
最近では、以下が「力作」です。

あらためて見ていただけませんか?

「すばらしい人体」に学ぶ「そうなんですか!」

[このテーマの目的・ねらい]
目的:
 人体に関する「いろいろ」を研究しましょう。
ねらい:
 今後の健康生活に活かしましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

日経新聞の書評欄に詳しい紹介がありましたので、
読んでみました。
外科専門医山本健人博士の経験に基づく解説書
「すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険」です。

以下の構成で展開されているのですが、
私が適当なテーマ別にまとめを作りました。
詳細をお知りになりたい方は本書をお読みください。

第1章 人体はよくできている
第2章 人はなぜ病気になるのか
第3章 大発見の医学史
第4章 あなたの知らない健康の常識
第5章 教養としての現代医療

  人体の優れ技


残念ながら。女性の生殖器に関する記述がありませんでした。
当先生は外科医です。女性は産婦人科の担当ですものね。

なお、肛門にいろいろなものを入れて出せなくなり医者にかけこむ
「病人」たちのことが紹介されています。
関心ある方は本書をお読みください。

【口の機能】
舌が多機能であることで思い出したことがあります。
それは、口の多機能の研究です。
昔、研修が合宿形式のときの夜の懇親会のネタでした。
十数人が輪になっているのですが、
「口の目的機能を上げよ」というテーマで順番に言っていくのです。
目的機能とは「楽器を吹く」のレベルで、
「トランペットを吹く」は物理機能だからダメ、という感じです。

どのくらいの数があると思いますか?
当初は10幾つだと思ったのですが、最後は100を超えたのです。
多いと思われたHに関することは数個しかありませんでした。
その時のメモを以下に示します。




























  怖い病原体

































 色の理由



人体に関わる数量

 
 












 
そうなんですか!


おならが口からのみ込んだ空気だということから思ったことがあります。
食べ物をかき込む、あるいはすすると空気をたくさん吸い込みます。
ラーメンなどの麺類は、日本流では音を立ててすすります。
おならを作っていることになります。
これで、女性が男性よりもおならが少ない(のでしょうね)
ことの説明ができました。
女性はおとなしく口にものを運んで食べますので、
空気をあまり吸い込まないのです。



2021年11月11日木曜日

コロナ感染者急減の理由

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日本で新型コロナ感染者数が急減している原因を研究します。
 驚くべきその新説を知っていただきます。
ねらい:
 新しい分野では「専門家」の言うことは
  あまり信用しないようにしましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ドイツなど欧州では新型コロナ感染者が再急増しているのに、
日本の感染者数が急減し、世界の注目を集めています。
因みにインドやブラジルインドネシアでも急減しています。

急減した原因についても話題になり始めています。
11月8日の日経新聞にも「コロナ感染、なぜ急減」という
1頁を使う特集がありました。

そこでの意見は集約するとこういうことでした。

氏名

真の理由

ワクチン

3密回避 マスク着用

集団免疫実現

ウイルスの変異

黒木登志夫氏

 

 

◎?

館田一博氏

 

 

松浦善治氏

不明

 

 

◎自滅

仲田泰祐氏

不明

〇?

 

 


氏名

肩書等

黒木登志夫氏

東大名誉教授。専門はがん研究。

館田一博氏

東邦大教授。長崎大医学部卒、日本感染症学会前理事長

松浦善治氏

阪大特任教授。ウイルス学を研究。日本ウイルス学会理事長

仲田泰祐氏

東大准教授。専門はマクロ経済学。計量モデルでコロナの分析実施


当然ながら、まだ証明はできません。仮説です。
自信を持っている方はないようです。

黒木教授の意見
「デルタ型ウイルスは新規感染者数の増え方も減り方も指数関数的だ。公表データから夏の「第5波」について計算すると、東京では8月下旬から11月1日にかけての下降期に新規感染者数が8.6日で半減のペースで急降下した。減少率は99.9%とあり得ないような数字だ。このまま行けば12月上旬には1人になる」

館田教授の意見
「ワクチン接種が急速に進み、同時にタイミングよく不顕性感染を含めて免疫を持つ人が急増したことで国内で一時的な集団免疫効果が強く表れ、8月半ば以降に感染者が急減した可能性があるのではないか」

松浦教授の意見
「強い感染力を持つ新型コロナのデルタ株はあまりに多くの変異を起こしすぎ、人間に感染した時に増えるのに必要な物質を作らせる遺伝情報が壊れるなどして、自滅しつつあるのかもしれない。以前に優勢だった株は、デルタ株の流行に押されて勢力を弱めた」

仲田准教授の意見
「(感染数に影響を及ぼすいろいろな要因を分析したが決定打に欠ける)追加的な人流抑制をしなくても感染が急速に減少することがあるというのが、この夏の最大の教訓だ。ロックダウンは慎重に検討すべきだ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ところが、大和田潔氏(前東京医科歯科大学臨床教授)の
PRESIDENT Onlineへの寄稿にはこのような意見が公開されていました。

日本人やアジア人は、
コロナウイルスに強い体質を持っているというたいへん興味深い主張です。
おそらくそれは事実なのでしょう。

「(専門家は)激減した理由すら説明できないのはおかしい」
(前略)

なぜコロナ被害が国・地域で偏るのか
中国を中心としたアジア・オセアニアの周辺国や
中東、アフリカでは被害が少なく、南北アメリカ大陸、欧州諸国で
被害が大きいことがわかります。
アフリカ大陸では南アフリカの被害が目立ちます。

もし、コロナウイルスがエボラ出血熱のような
どの人類も経験したことのない致死的ウイルスだったとしたら、
世界中の老若男女が死亡したためこのような偏りは出なかったでしょう。これが観察された事実です。

流行当初から私はこの偏りに注目してきました。
アジアの一つである日本で被害が少ない理由は、
守ってくれている“何か”があるからに違いありません。
私は2つ要因を考えています。
ウイルス側の要因と、ホストのわたしたち側の要因です。

まずはウイルス側の要因を見ていきましょう。

私たち日本の町医者には、「コロナウイルス」は
冬季に流行する弱毒ウイルスとしてなじみ深いものです。
そのため、季節性コロナウイルスは注目されることなく、
特別検査することも他のウイルスと鑑別診断することもなく
「冬のカゼ」として対症療法薬の処方で治療してきました。

季節性コロナウイルスは4種類が知られていて、
その流行パターンは地道に研究される対象でした。

私たち日本人のほとんどは、
子供の頃から季節性コロナウイルスに暴露されてきました。
もともとコロナウイルスは変異しにくく、
インフルエンザの10分の1程度であることを
ウイルス学研究者で医師の本間真二郎先生が示されています。

コロナウイルスは、
nsp14というウイルス自身の遺伝子修復を行う部位を持っていて
あまり変化しないのです。
新型コロナウイルスは、
たまたま世界に拡散できるように変異したため
世界流行したと考えられます。

ウイルスには、変異する部位と変異しない部位があります。
季節性コロナウイルスの感染でも、
ある程度の免疫を発揮したのではないかと私は推測しています。

もう一つは、ホスト側の私たちの要因についてです。

人間は、一度入り込んだ外敵を排除する免疫システムを持っています。
ワクチンはそれを利用したものです。

これまであまり知られていませんでしたが、
免疫系だけでないウイルスに対抗する手段も持っています。
それが、APOBEC(アポベック;
apolipoprotein B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-like)
というヒトの細胞内にある酵素です。
ウイルスが侵入すると細胞は危険信号のサイトカインを発します。
サイトカインで誘導される酵素の一つです。

ウイルスの遺伝子に変異を起こして、
エラーを起こさせウイルスを自滅させる働きを持ちます。
国立遺伝学研究所と新潟大のチームから、
日本人をはじめとしたアジア・オセアニアに酵素活性が強い人が多いことが
報告されました。
アルコール分解酵素と同じように細胞内の酵素なので
先天的に親から遺伝してくる生まれつきのものです。

コロナウイルスの遺伝子にエラーを起こして、
コロナが遺伝子を修復できないようにしていたようなのです。
ウイルスはほぼ最小限の遺伝子とカプセルでできているので、
その遺伝子にエラーが生じて修復できないことは
ウイルスにとって致命的になります。

それでは、なぜアジア・オセアニアにAPOBECの活性が強い人々が
多いのでしょう?そこがまさに面白いところです。

中国のジャコウネコ、中東のラクダ

コロナウイルスは、動物由来の感染症の側面を持ちます。
「過去のコロナウイルスの教訓」という面白い論文があります。
コロナウイルスは、
豚やコウモリ、ラクダから人間に伝染してきた歴史を記した論文です。
豚からの胃腸炎も報告されています。

感冒ウイルスを鑑別することができなかった時代にも、
地域的コロナウイルスの大流行が
過去にも世界的に繰り返されてきたはずです。

通常コロナウイルスが自然界で住処すみかにしているのは
コウモリです。
呼吸器感染症のSARSがジャコウネコ(ハクビシン)を経由し中国発祥、
MERSではラクダ経由の中東発祥であることが有名です。
これらは、
人類がウイルスの遺伝子を分析できるようになったのちのものです。
アフリカのエボラ出血熱もフルーツコウモリが起源です。

森を切り開き
家畜や食糧の元になる野生動物と共に暮らすようになった有史以来、
数々の獣を経てコロナ感染症に人間はさらされてきたことでしょう。
そして、ヒト―ヒト感染するコロナウイルスだった場合に
時折パンデミックとなったのかもしれません。

このように中国周辺国や中東などの地域では、
昔から動物由来のコロナウイルス感染にさらされてきたわけです。
コロナウイルスのエラーを引き起こすAPOBEC酵素活性が強く
病気に強い人が淘汰されてきたと考えると自然です。

逆にウイルスが淘汰される循環

そしてコロナウイルス側も、
いたずらに細胞を刺激してサイトカインによる
APOBEC誘導が起きないように弱毒変化していったのかもしれません。
季節性コロナウイルスは、
動物由来感染症を離れて目立たないようにヒト―ヒト感染することで
生き延びるようになったコロナウイルスだと考えています。

私は、このような地政学的な理由から、
季節性コロナウイルスによる免疫やAPOBEC活性によって
日本の流行被害は小さくなったのではと考えています。

ウイルスの毒性が強くなってヒトの細胞が刺激され
APOBEC活性が強まると
ウイルス遺伝子にエラーが起きて不利になります。
ウイルス側としてはヒトの細胞をあまり刺激しない無毒化したものが
生き延びて淘汰されていくことでしょう。

新型コロナウイルスが流行してエラーを起こして廃れて、
変異型がやってきてまた流行する。
でも、そのたびに毒性が減っていった周期的な流行の繰り返しも
それで説明ができるかもしれません。
5波では、はっきりした「陽性者数と被害のリンク切れ」
が観察されました。
もちろん、それまでの流行波による獲得免疫も追加され
被害を減らしたことでしょう。

これからも新型コロナウイルス(SARS-COV2)が
ヒト―ヒト感染で生き延びるとするなら、
無毒の5番目の季節性コロナウイルスにならざるをないと
私が考える理由です。
2019年末にコラムでお伝えしたとおりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
11月7日の日経新聞の「コロナ再流行あるか」という記事内で、
国立遺伝学研究所の井ノ上逸郎教授の意見が紹介されています。
「第5波のウイルスはゲノムの変異をうまく修復できなくなり
自滅した可能性がある。
ただしこれは状況証拠を説明する仮説であり、実証はできていない」

前掲の松浦教授の意見と共通しています。


衆議院選挙の結果総まくり つづき

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 衆議院選挙結果の分析をご紹介します。
ねらい:
 今後のより意義ある選挙の実現に期待しましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「衆議院選挙の結果総まくり」は、
上野の分析を中心に以下のブログでご紹介しました。

その後いくつかの新聞報道がありましたので、
記録として留めておきたいと思います。

その1:日経新聞11月7日1面トップ記事
   「投票行動分析」「日本に潜む政治の分断」
今回の衆院選について共同通信社の出口調査のデータを用い、
世代別や男女別に選挙を実施したらどうなるかを試算してみた。
全国289の小選挙区について各層別に最も得票の多い候補者を割り出した。
比例代表は全11ブロックの各党ごとの回答数をもとに
ドント方式で階層別に選挙した場合の議席数を算出した。
当記事に基づき表は上野作成

区分

仮定計算結果の議席数と実数との差

自民

5野党

維新

40歳未満

296 +35

95 -26

45 +4

60歳以上

223 -38

    ?

  ?

女性層

230 -31

149 +28

46 +5

 

区分

小選挙区だけの仮定議席数と実数との差

自民

5野党

維新

40歳未満

215 +26

42 -23

17 +1

女性層

15  -56

91 +26

18 +2


自民党の支持は、若い世代に多く、高齢層と女性層で低くなっています。その理由について、以下のように解説されています。
若い世代は経済が成長せず、
社会保障改革が進まなければ将来負担が膨らみかねない。
この危機感が自民支持に傾く背景と考えられる。
改革を強調した維新が近畿を中心に伸びた要因とも言えそうだ。

埼玉大の松本正生名誉教授は
「30歳代は旧民主党への拒否感を持つ層が厚い」と指摘する。
民主党政権下で就職活動を経験した年代にあたる。
20歳代は「そもそも政治への期待値が低い」と話す。

一方で社保改革のあおりを受けかねない高齢者は
分配志向の野党への支持を強めたとみられる。
新型コロナウィルス禍で雇用や生活の打撃が大きい女性、
感染が広がった大都市部は政権不信が根強い可能性がある。
(上野注:掲載省略しましたが、
自民の都道府県別の比例代表の得票率は、
2017年比で近畿他の大都市部で下落しています)

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上野コメント:
投票者層により選択が異なるのは当然のことです。
それが確認できたことはこの分析の意義があります。
問題は、次の「投票に参加しない人たち」です。

その2:日経新聞11月4日 コラム記事
   「政治の危機」「不参画 民主主義危うく」

6割弱の人で日本のかじ取りが決まるようになって久しい。
衆院選小選挙区の投票率は2012年以降、4回連続で50%台だ。
今回は55.93%と前回17年の衆院選より2.25ポイント上がったものの、戦後番目に低かった。
かつては7割前後だった。
低水準が普通になったのは初めて60%を割った1996年からだ。
「候補者よりも政党を選ぶ」ともいわれる小選挙区制を導入した年だ。
党首や公約で選ぶやり方が原因なのだろうか。

中略

日本経済新聞社などの世論調査で、「支持政党なし」と答える無党派層は3割程度いる。
共同通信の出口調査によると、
今回の衆院選で投票した人のうち「支持政党がない」と答えて人は1割だ。
無党派層の多くが投票に行かなかったのが低投票率の理由とみられる。

政治参画に消極的な人が増えれば、
政党は資金力や票を持つ組織しか相手にしなくなる。
あるいは投票率の高い高齢者向けの政策を優先する「シルバー民主主義」か、
トランプ氏のように極端な支持層に訴える分断の政治を招くのか。
民主主義を脆くするのも強靭にするのも有権者の選択だ。
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上野コメント:
そのとおりなのですが、この状況はどうすれば改善されるのでしょうか。