2021年1月27日水曜日

「共通テスト」の評価はどうなのでしょうか?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「共通テスト」が目指した「思考力をテストする」は
 実現できたのかどうかを確認します。
 「共通テスト」の今後はどうあるべきかについて
 検討してみます。
ねらい:
 共通テストが「国家及び社会の有為な形成者を育成する」
 ことに貢献することを期待いたしましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「大学入試センター試験」の後継である
「大学入学共通テスト」が1月16・17の両日に実施されました。

前者の試験が、知識偏重で何も考えなくても暗記をしていれば
高得点がとれる、その延長で、
社会人になっても自分で考える習慣のない人間を育ててしまっている
という反省の基にこの新テストが生まれたことは、
ご承知のとおりです。

暗記力・知識力だけでなく、
思考力・判断力を測定できるテストでありたいということです。

コンピュータ用語で言えば、
メモリ能力ではなく,CPU能力を見る、ということです。

教育が有能な社会人を育てるということを目的にするのなら、
このテストの方向性は至極もっともなことです。
今や知識はネットでいくらでも入手ができます。

知識があるから仕事ができる職業は、
法律関係やそれに準じた専門職業だけです。
この人たちは、ネット等で調べる以前に
ある程度の知識を持っていなければ仕事になりません。

多くの場合、人生は創造性を含む思考力・判断力が勝負です。

共通テストの「脱知識偏重」の評価はまだ定まっていないようですが、
テスト直後の日経新聞にはこういう見出しが出ていました。

「思考力」測定 道半ば
大学入試センター試験が暗記型学習への偏りを招いたとの批判から
導入が決まった共通テストは、思考力をより重視する方針を掲げた。
知識だけでは歯が立たない問題は増えたものの、
盛りだくさんの情報を読みこなす力も必要になり、
物事を深く考える力の測定には課題を残した。

そこでそもそも高等学校の教育は何を目的にしているのかを
確認しました。
学校教育の目的と異なるテストを実施するのは矛盾だからです。

高等学校の教育方針は、
以下のような体系の下に定められています。
 教育基本法
   ⇓
 学校教育法
   ⇓
 高等学校学習指導要領

この順番にその内容を確認してまいります。
私もあらためて勉強させていただきました。

1.教育基本法の規定

1947年日本国憲法と同時に制定され、
2006年に改正された教育の理念を定める基本法は、
こう述べています。

(教育の目的)

第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

(教育の目標)

第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操 と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。

二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。

三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。 

四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。

五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。



2.学校教育法の規定
これを受けた学校教育法第4章高等学校の規定はこうなっています。
この規定も2006年に改正されたものです。

第4章 高等学校

第四十一条 高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。

第四十二条 高等学校における教育については、前条の目的を実現するために、左の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。 

一 中学校における教育の成果をさらに発展拡充させて、国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うこと。

二 社会において果さなければならない使命の自覚に基き、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な技能に習熟させること。

三 社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、個性の確立に努めること。



3.高等学校学習指導要領 総論
これは文部科学省が2.を受けて定めたものです。
第1章 総則 第1款 高等学校教育の基本と教育課程の役割
ではこう述べられています。
(抜粋)

学校教育全体及び各教科・科目等の指導を通して

どのような 資質・能力の育成を目指すのかを明確にしながら,

教育活動の充実を図るもの とする。

その際,生徒の発達の段階や特性等を踏まえつつ,

次に掲げることが 偏りなく実現できるようにするものとする。

 (1) 知識及び技能が習得されるようにすること。

 (2) 思考力,判断力,表現力等を育成すること。

 (3) 学びに向かう力,人間性等を涵養すること。 


4.高等学校学習指導要領 各教科
これは3.の各論編です。
その思考力、判断力、表現力の部分のみを掲載します。
一部科目の内容省略です。

これをキーワードで要約するとこうなります。

教科

キーワード

国語

論理的・批判的・創造的に考える力、伝え合う力

深く共感したり豊かに想像したりする力

地理歴史

多面的・多角的に考察する力、課題の解決に向けて構想する力

考察、構想したことを効果的に説明したり議論する力

公民

多面的・多角的に考察する力、公正に判断する力、構想する力

構想したことを議論する力

数学

論理的に考察する力、統合的・発展的に考察する力

数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表現する力

理科

自然の事物・現象について科学的に探究する力



5.これまでの要約
これまでの情報を要約するとこうなります。

高等学校教育の目的は
国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うこと
それには一般的な教養の習得と専門的な技能の習熟が必要
社会について広く深い理解と健全な批判力を養うことも必要

ここで言う必要な資質とは
知識及び技能、思考力,判断力,表現力、
学びに向かう力,人間性等
を指す。

つまり高等学校教育の目的の一番は
「国家及び社会の優位な形成者として必要な資質を養うこと」です。
この意味は二つあると思われます。

一つは本人が「優位な形成者」となるために必要なことを学ぶ、
平たく言えば社会に出てから役に立つことを学ぶのです。
その点からすると、
高度な数学や物理・化学の知識はほとんど役に立ったことがありません。
ではなぜそういうことを学ぶのでしょう。

それで二つめの意味が登場します。
「国家及び社会の優位な形成者」は、自分に役に立つことだけではなく
国家・社会のために役に立つ研究や開発をする人をも意味します。
そのためには、そういう領域に関心を持つような準備工程が必要なのです。

それで高等学校で、
社会に出て自分の役には立たない勉強をさせられている
ということなのです。

私立大学の文系学部で理系の試験科目がないのは、
二つ目の目的を意識しないからです。
ご尤もと言えます。

さて、肝心の各教科の、思考力、判断力、表現力は
教科により異なります。

1)自然科学系の教科(数学、理科)について
思考力が中心である。
思考力は、数学的思考、化学的思考などを指し、
それを理解するだけでなく、
それを使った解決策を検討する構想力も含む。
(判断力は登場しない)

2)社会科学系の教科(歴史地理、公民)について
思考力のほかに構想力も要求され、
公民では「公正な」判断力も求められる。
(判断力が求められるのは公民だけである。
公民は「正解はない」世界であり、判断が重要なのです)

3)国語科について
私は不勉強で、
国語科は日本語の勉強をする教科だと思っていましたが、
違うのです。

論理的・批判的・創造的に考える力、伝え合う力
深く共感したり豊かに想像したりする力
つまり、
思考法を学び、コミュニケーション方法を学び
感性を養うことまで目標にしているのです。

スゴイ教科なのです。
今回のテストの問題を見て思いました。
各教科のテストは、
各教科の知識を利用しますが、考えるのはその教科の学びではなく
国語の力なのです。

かみくだいて言うとこういうことになります。
 問題は何を聞いているのかを理解し(=国語力)
 提示されている条件を整理し
 (これも国語で習っていることです)、
 その教科の知識を利用して正解を求めるのです
 (ここだけ各教科の知識が必要)。

これでは、今後の共通テスト受験者は、
国語だけ力を入れて勉強すればよいということにならないでしょうか?

以下に問題例を示します。
この問題の場合、
フランス革命のごくごく基本的なことを知っていれば
あとは文章題の読解力の問題です。

世界史Bの問題例

次の文章は、歴史家マルク・ブロックが著した「歴史のための弁明―歴史家の仕事」の一節である。ブロックは自分の村の歴史を書きたいという研究者の訪問を受けた際、そのような研究者にいつもどのように助言するかを、次のように述べている。(引用文には、省略したり、改めたりしたところがある。)

 農村共同体が文書資料を保有しているのは、珍しいことです。あったとしても、それは古い時代のものではありません。反対に領主所領は、比較的よく組織され継続性もありますから、概して文書資料を長く保存しています。それゆえ、1789年以前の、非常に古い時代に関して、あなたがその利用を期待できる主な文書資料は、領主所領からもたらされるでしょう。

 とすれば、次にあなたがはっきりさせるべき肝心な最初の問題は、1789年当時、村の領主は何者であったか、ということになります。三つの可能性が考えられます。まず、領主の所領が教会に属していた場合、次に革命下に亡命した俗人に属していた場合。そして俗人だけれども、反対に決して亡命しなかった者に属していた場合です。

 もっとも望ましいのは、第1の場合です。資料がより良い状態で、まとまって長く保管されている可能性が高いだけではありません。1790年以降、聖職者市民法の適用によって、一連の文書は領地と同様に、没収されたに違いないでしょう。その後どこかの公文書保管場所に預けられた資料は、今日までほとんど手つかずのまま、研究者が利用できる形で保存されていることが合理的に期待できます。

 亡命した者に属していたという第2の場合も、悪くありません。その場合もまた、資料は押収され別の場所に保管されたに違いありません。せいぜい、嫌われた体制の遺物として、意図的に破棄されたことが危惧される程度でしょう。

 残るは最後の可能性です。これは、極めて厄介です。実際、旧貴族たちはフランスを去らなかったし、公安委員会が定めた法によって咎められることもなかったでしょう。彼らが財産を奪われることはなかったのです。恐らく領主の権利は失ったでしょう。それは普遍的に廃止されたのですから。しかし個人的な所有物の全部、したがって経済活動関連の書類については、彼らは保有し続けました。ただ、現在の保持者にはあなたにそれを見せる義務はまったくないのです。

 

問4 上の文章中でブロックが、訪問した研究者に助言する際に、前提としたと思われる歴史上の出来事あ・いとと、文書資料についてのブロックの説明X~Zとの組み合わせとして正しいものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ

 前提としたと思われる歴史上の出来事

あ 国民議会が、教会財産を没収(国有化)した。

い 総裁政府が共和制の成立を宣言し、国王が処刑された。

 文書資料についてのブロックの説明

X 村の歴史を書くために利用できる主な資料は、村の領主の資料ではなく、農村共同体の資料である。

Y 資料がよく保管されている可能性があるのは、村を支配していた領主が教会である場合ではなく、俗人である場合である。

Z 研究者が利用できる形で資料が保管されている可能性が高いのは、村を支配していた俗人領主が、亡命しなかった場合ではなく、亡命した場合である。

   あ-X ②あーY ③A-Z ④い-X ⑤い-Y ⑥I-Z

 

問5 上の文章中で、ブロックが言う「嫌われた体制」の特徴について述べた文として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

   産業資本家の社会的地位が高かった。

  征服された先住民が、ヘイロータイとされた。

  強制栽培制度が実施されていた。

  貴族が第二身分とされていた。

 


極論すれば思考力=国語力なのです。
他の各教科は知識を教えているだけということになります。

では、
思考力と並べられる判断力についてはどうなるのでしょう?
判断力はその人の考え方ですから、
判断力自体は国語力ではありません。
正解もありません。

現在も判断を聞いているような設問がありますが、
これは前提条件との整合性を聞いているのであって、
前提条件の正否は問題にしていません。

ということは、この問題は判断力を問うているのではなく、
論理性を聞いているのです。
となると、この種の問題も
国語科のテストだということになります。

判断は正解がない世界ですから、
正解を要求するマークシート方式テストでは対象にできません。

6.共通テストの今後の方向性

ということからしますと、
目指すべき「思考力」はどうなるのでしょう。

現在のテストでは、
学校教育法の定める高等学校教育の目標である
社会について広く深い理解と健全な批判力を養うこと
がまったく取り残されているのです

それには記述式問題で受験生の考えを聞くしかありません。
筋が通っているかどうかで判断するのです。
この領域は、単純な正解のない世界です。

たとえば、
共産主義、社会主義、自由主義、民主主義、資本主義
の何を信奉しようとその是非でなく、
その前提での考え方ができているかどうかを確認する
ことになります。

このような問題はすぐ作れますが、
問題は採点者です。
共通テストのような大人数を対象にしたテストでは
それはムリです。

将来すぐれたAIが登場し、
解答を判定することができるようになるかもしれません。
いつ頃ででしょうね?

それまでは、
共通テストとしては、無いものねだりをせずに
マークシート方式でできる範囲の思考力テストの品質向上
を目指すべきでしょう。

今の延長で改善していけばよいと思われます。
今回のテストで気が付く改善点はこうです。

考えさせるということに執着するあまり、
問題文が長くなっていることは改めるべきです。
今の状態を進めると、
すべての教科が国語の試験になってしまいます。

今回のテスト結果で、科目による平均点が大きく違う科目の
平均点の補正が行われました。
    科目    受験生の平均点
 公民の倫理    71.96点
    政治・経済 49.87点
    現代社会  51.96点
 理科の生物    72.65点
    化学    51.06点

おそらく、聞いている内容が難しかったことよりも、
設問が長くて理解するのに時間がかかり、
全問の解答ができなったのではないでしょうか。

「ジョブ型雇用」の前提となるのは個人の適性判断です!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 経団連が「ジョブ型雇用」の旗振りを始めたことを確認いただきます。
 ジョブ型雇用の前提条件を確認いただきます。
ねらい:
 前提条件の充足に動いてください。
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1月26日の日経新聞第2面に以下のような記事が載りました。
  経団連、企業向け指針で導入促す
    日本的雇用崩すジョブ型

ジョブ型雇用につきましては、
日本産業の停滞を打破する一つの対策として
先進企業で模索されているものです。

ジョブ型雇用の逆の日本のメンバーっシップ型雇用は
以下の弊害があるとされています。
1)従業員が安住してしまい革新が生まれにくい。
2)雇用の流動性が損なわれ、産業の構造転換が進まない。
3)同じ原因で、労働力不足と人員過剰が併存する。

保守的な日本社会では、
年功序列を打破して実力主義の評価制度にしていくのにも
50年もかかっているのです。
人事制度の変革は並大抵のことではできません。
(2018.11.24)

しかし「雇用を不安定にする」という労働組合の反対も押し切って
経団連も旗振りをせざるをえなくなったところまで
日本産業は追い詰められているということです。

この記事にはこういうことが述べられています。

ジョブ型制度は社内各ポストの職務内容を明確にし、
その能力を持った人材を起用する。
肝は、社員間の競争を活発にする点にある。
専門性が必要で報酬も高い職務に就くには、
自らの能力を向上させなければならない。
ポスト獲得競争を通じて個々人のレベルを引き上げることが
ジョブ型制度の眼目だ。

就きたいポストに立候補できなければ、
自らの能力を伸ばす意欲も高まらりにくい。
キャリアアップ支援策の一つはポストの公募制だ。

2020年10月、
全管理職約5千人にジョブ型の人事制度を導入した三菱ケミカルは、
まず約200のポストの人事を社内公募で決めることにした。
今後、公募対象のポストを広げる。
(上野注:うまくいくのか疑問です)

日本企業のジョブ型導入は現在、管理職が中心。
経団連は新卒者も対象とするよう求めている。

ということです。

ジョブ型雇用の当然の前提となるのは、
自分の能力を発揮でき有利な処遇を得られるジョブを
各人が判断できることです。

それが、従業員の皆様は分かっておられるのでしょうか。
「急にそんなこと言われても」「今さら!」
が多くの方の実感ではないでしょうか。

そもそも具体的なポストの選択以前に、
自分はどのような職種に向いているかを
冷静に判断することが必要です。

 専門技術者・技能者向きか、
 企画型業務向きか
 対人関係職種向きか
 サービススタッフ向きか
 マネージャ向きか、
 等々です。

その一助になるのが、システム企画研修社が提供している
CATCHです。
CATCHは、システム/IT関係職種の判定が特に優れています。
数十種類ある適性・適職診断ツールの中で、
システム/IT関係に強いのは、なんと、CATCHだけなのです。

適職判定結果のサンプルをご覧ください。

ご関心ある方は、以下をご覧ください。
CATCHご説明資料

これは面白い!!「むかし話」の原典

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「野の古典」という古典に親しくなれる著書をご紹介します。
ねらい:
 ぜひ、皆様も本書をお読みください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本テーマは、能楽師安田登さんの「野の古典」のご紹介です。
この本は、400頁に亘る大著ですが、
以下のような古典の原典の解明や注釈をされています。

「なぜそんなに調べることができるのだろうか?
世の中にはスゴイ人がいるものだ」と
感服いたしました。

本書で取り上げている古典
古事記、万葉集,御伽草子、風土記、論語、中庸、伊勢物語、
源氏物語、古今和歌集、新古今和歌集、平家物語、能黒塚
風姿花伝、方丈記、徒然草、鶉衣、好色一代男、日本永代蔵、
松尾芭蕉、おくのほそ道、東海道中膝栗毛、死霊解脱物語聞書、
雨月物語、詩経、笑府、南総里見八犬伝、武士道

例示:浦島太郎の物語
若干抜粋しながらご紹介します。
本書そのままの表現ではなく、少し変えている部分もあります。

他の物語は、順次ご紹介してまいります。

この物語は、
風土記、日本書紀、万葉集にも登場する奈良時代に成立した
千年以上の歴史を持つ物語です。

浦島太郎はどんな男か
浦島本人についての描写が詳しいのは「風土記」です。
それによると、まず彼は姿が美しく、「風流なること類なし」
と書かれています。
つまり詩歌や書画などをたしなむ、イケメンの文系男子なのです。
中世の「御伽草子」では性格描写も加わり、
親孝行で慈悲深く、人を敬い、身を守り、情けも深い
24,5歳の独身男子と書かれます。

浦島の行動
そんな浦島が亀を釣りました。
(御伽草子)浦島は釣った亀に対して
「汝、生有るものの中にも、鶴は千年、亀は万年とて、
命久しき者なり。たちまちここにて命をたたん事、
いたわしければ、助くるなり」
と亀を海に返します。

その翌日、また釣りをしようと思って浦島が浜辺に出てみると、
美しい女性がたった一人で小さい船に乗って
彼のもとにやってきます。
「乗った船が難破をしたので、里まで送ってほしい」
そう彼女に言われ、彼が送るとそこは竜宮城だった、
そしてじつはこの女性こそ助けられた亀だった、
という話の流れになります。

「風土記」ではこうなっています。
島子(風土記ではまだ浦島太郎となっていない)は亀を釣ったあと、
なぜか眠ってしまい、その間に亀は
「忽ちにその顔麗しく、また比ぶ人ない婦人」
になってしまったのです。

島子が不思議がるので、女性が答えます。
「風流な男子が、たった一人で海に浮かんでいたので、
お話ししたいという欲求に勝つことができずに、
風雲に乗ってここまで来てしまったのよ」
と答えます。

怪しむ島子に彼女は
「お願いだから疑わないで。相談(かたらい)の愛を給え」
というのです。
「相談(かたらい)の愛を給え」というのは、
「お話しましょ」というよりは「エッチしましょ」というのに近い
かなり直接的な表現です。

たたみかける彼女に、了解すると
「じゃあ、常世(とこよ)の国に行きましょう」と言って
島子を眠らせてしまいます。

浦島の経験
女性に連れていかれたのは、
わたくしたちは竜宮城だと思っていますが、
じつは「書記」でも「風土記」でも蓬莱山になっています。
蓬莱山というのは、
不老不死の仙人が住むという東方海上にあると言われていた島です。

そこでまずは、大宴会の接待があります。
やがて黄昏時、辺りが暗くなると
舞い遊んでいた仙神たちはひとりふたりと去っていき、
浦島と乙女二人だけになります。

そこで「肩を並べ袖をあわせ、夫婦の理(まぐわい)を成しき」
となるのです。
この「夫婦の理」とは古事記で、
イザナギとイザナミが、
「体の余剰部分」を「体の不足部分」に刺し塞いで性行為をした
ときに使われたアダルトな表現です。

平安時代に書かれた「続浦島子伝記」では
この状況が詳しく書かれています。
いろいろな体位をして楽しんだのです(省略)。
平安貴族はそういうのを読んで楽しんでいたのです。

帰りにもらった玉手箱は、
「御伽草紙」では、これを開けると浦島は鶴になり、
虚空を飛んで蓬莱山の亀姫と会いめでたしめでたしとなります。

この物語は、男性の願望を如実に表しています。
 イケメンでありたい。
 女性にもてたい。
 女性といい思いをしたい。
 若返りたい。
そういうことで、成長した物語なのでしょうね。

こういうことですから、
子どもには聞かせられないということで、
明治期にまとめられた国定教科書で、
今の話に作り替えられたのだそうです。

この項の冒頭に、安田さんはこういうことを述べておられます。
面白いご意見です。
今の子どもはこう思うのではないか。
亀を助けたら、結局年をとってしまって一人ぼっちになるのか、
タイやヒラメの舞踊りやご馳走がなんだってんだ。
やってられない!!

2021年1月26日火曜日

「原発事故、国の責任認めず」の東京高裁判決は妥当か??

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 福島原発事故東京高裁の無能ぶりを確認します。
 裁判官も神様ではありません、
  いろいろなレベルの方がいることを確認いただきます。
ねらい:
 そういう目で裁判を見ていきましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1月21日東京高裁は、
福島第一原発事故について、以下の理由で国の責任はない、
という判決を出しました。

本件での国の責任とは、国が的確に責任を果たしていれば、
この事故は発生を防げたのか、ということです。

1)2002年7月に政府機関が出した地震予測
 (三陸沖北部から房総沖でマグニチュード8級の地震が
 30年以内に発生する確率は20%程度)
 の信頼性に疑問があり、
 国は大津波は予見できなかった。

2)仮に国が予見をして東電に対応を指示し、
 東電が防潮堤などの対策を講じたとしても
 事故発生は防げなかった。

この判断については
裁判官の無能ぶりを露呈しているとしか言いようがない
ものです。

まず1)の津波来襲予測ですが、
東北地方では過去千年以上にわたり、
ほぼ百年単位で大津波が来襲しているという事実があるのです。
いつ来るかは現在の地震予測能力からして
確実な予測はできません。

2002年の予測が当てになるかならないかは
問題ではありません。
大地震・大津波が発生するという前提で
対策を講じるべきなのです。
結果的には大地震・大津波が発生しているではないですか!!

したがって、1審判決のように
「東電から津波対策の記載がない耐震性評価の中間報告
を受けた」2008年3月ころには、
東電に対する対策実施を指示すべきだったのです。

2)ですが、東電の対応策が防潮堤であるという考えが
何も知らない、勉強もしていないことを示しています。
東電が、冷却装置一式の防水化工事をしていれば、
事故は発生しなかったのです。
ほぼ同じ立地の福島第2原発は、
予備電源がまともに機能したために
何のトラブルも発生しませせんでした。

この点につきましては、以下のブログをご参照ください。

福島原発事故の原因-上野見解最終集約


しかし、第1原発の予備電源が不備であることは、
国は当然知らなかったでしょう。
東電内でも、一部の人しか、
予備電源不備の問題点を認識していなかったと思われます。
そうでなければ、
こんな単純なことの対策が講じられなかったことは
考えられません。

「東電は官庁以上に官僚的である」
ということを聞いたことがあります。
おそらく、余計なことに口を出さない、
という「文化」があり問題が放置されたのです。

2008年時点で、
国が津波対策の実施を強く東電に要請していれば、
そして、それを受けて東電内で本格的な検討をしていれば
予備電源の不備は認識できたと思われます。

結局、当裁判官の挙げた、国に責任がない二つの理由は
まったくピント外れなのです。

国の責任の有無の判断としてはこうすべきです。
1)大津波は必ずやってくるという前提で対策を講じるべきである、
  と考える。
2)対策不備と感じられることが発生したら
  強くその是正を求めるべきである。

その結果、東電がどういう対策を講じたかは東電の責任となります。
2008年に国から強い改善指示が出ていたら
どうなっていたのでしょうね。
仮定のことですが、非常に興味のあることです。

以上、あくまで国の責任は監督責任であって、
実際の事故責任は100%東電の責任です。
天災ではありません。完全な人災なのです。

当事者責任と監督責任のウェートはどう考えるのでしょう。
この東京高裁判決に先立つ2020年8月の仙台高裁判決では、
国と東電の責任は半々であるとしています。
この配分には「正解」がないと思われます。

この仙台高裁判決はまともです。
その後なのに、こんな不勉強な判決をだすということは、
裁判官の質も問題ですね。

ついでながら、東電は、
大事故が発生した2年強前のIAEA(世界原子力機関)の監査で
「 構造物、 系統、 機器 の 旧式 化 の 影響 を 検討 せよ」
という指摘をされたのに無視をした、のです。

2021年1月18日月曜日

楽しみながら学べる「リモート会議方式 問題解決手法研修」のご紹介!!

【本テーマの目的・ねらい】
目的:
 リモート方式で楽しく研修できるプログラムをご紹介します。
ねらい:
 ぜひ早急に、実施のご検討をなさってください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本テーマは、リモートビジネス時代を迎えて様変わりする
当社の往年の名作研修復活のご紹介です。

ーー「ここ掘れワンワン」の手法を学ぶ!!ーー
リモート会議方式 問題解決手法研修 のお勧め 
(略称:RPS研修)

システム企画方法論MIND-SAをベースにした
MIND-SA研修は、
2万人以上の受講生に大きな感銘・影響を与えてまいりました。
特にその演習コースは楽しみながら学べるということが評判でした。

しかし近年はビジネス環境の変化から、
企業内の本格的集合研修は実施困難となりました。

ところが、
コロナウィルス感染症のために
一挙にリモート会議方式が普及しました。
どこにいても集合検討ができるようになったのです。

そこで弊社では、このリモート会議システムを利用して
チームで取り組む演習コースを実施させていただくことと
いたしました。
在宅勤務でもこの研修に参加できるのです。
「楽しみながら学べる」が復活します。

「ここ掘れワンワン」とは?
「ここ掘れワンワン」の手法を学ぶ!!と銘打っていますのは
こういうことです。

世の中に数ある以下の「問題解決手法」と言われる手法類は
穴の掘り方を教えてくれます。

提唱者

手法

日科技連

QC七つ道具、新QC七つ道具

川喜多二郎

KJ法

ゴールドラット

TOC

ナドラー

ワークデザイン手法:注

ケプナー、トリゴー

KT法

オズボーン

発想チェックリスト

コトラー

コトラーの発想法

ウィルソン・ラーニング社

カウンセラー・セールス

 しかし、「どこが『ここ』なのか」つまり
「どこを掘れば宝がでてくるのか」については教えてくれません。
注:ワークデザイン手法はその例外です。

せっかく穴の掘り方を学んでいても、
「ここ」が分からなければ、腕の振るいようがありません。
多くの問題解決手法を学んだ方は、そこで躓いてしまい、
単に「お勉強をした」ということになってしまうのです。

この研修では、
まず「ここ」(=目的・ねらい)の探求法を学んでいただき、
それから優れた「穴の掘り方」を学んでいただくようになっています。

ここから当研修のご紹介です。

個人学習のe-LearningであるWeb-SPで基礎知識を学び、  
リモート演習コースで実際の応用方法を学んでいただくようになっています。

1.    Web-SP研修

以下の4コースで構成されています。

コース名

セッション数

概要

システム企画の思考法

24

システムとは何か、問題・課題とは何か、目的・ねらいとは何か、意思決定とは何か、などコース全体の基礎概念を学んでいただきます。

目的・ねらいの設定手法

12

「目的・ねらい」とは何か、「目的・ねらい」の利用局面、「目的・ねらい設定ワークシート(3種」について学んでいただきます。

問題点連関図手法

21

問題解決の目的・ねらいを設定し、その解決策を探求する問題点連関図手法の概要を学んでいただきます。

5W2H手法

16

意思決定条件を的確に表現する「5W2H」式企画・提案書の作成方法を学んでいただきます。

合計

73

 

 

各コースの初めに、
「本コースの学習目標」「(コースを構成する)各章の学習目標」が示されます。

各セッションはこういう構成です。

解説

そのセッションのテーマの解説1画面

様式

ワークシートを使用する場合、その様式が表示されます。

必要に応じその例が表示されます。

小テスト

そのセッションの理解度の選択式問題です。

2回間違えると、解説に戻ります。

 

「解説」の例

システムって何でしょうか? 答えてみてください。

・この質問で、コンピュータとか情報に結びつけた方が多いのではないでしょうか?
・企業の中では、そういう意味でシステムという言葉を使うことが多いのです。
・しかし、もともとのシステムという言葉は次のような意味です。
・ウエブスター辞典ではこう定義しています。
 「共通の計画または目的に従って形成された、多数にしてしばしば多種の部品の
複合的な統一体]

・これを分解すると、

   >>多数の部品から成り立っている。
   >>その部分が統合されている。
   >>統合しているのは計画または目的である。

ということを言っています。

・つまり、複数の部分がある目的を持って合成されているもの、ということです。

 

「小テスト」の例

システムの一般的定義に入っている項目は次のどれですか(正解は3個です)

〇多数の部品から構成されている。

〇コンピュータを手段として利用している。

〇多数の部品が共通の計画または目的を遂行するために統合されている。

〇共通の計画または目的に従って形成されている。


各コースの最後に総合テストがあります。 
択一式の10問です。
回答を事務局に送信しますと点数と正解解説が送付されてきます。

「総合テスト」の例

当講座におけるシステム企画の説明として不適切なものを一つ選んでください。

  

a.システムを業務実行の仕組みとしてとらえている。
b. 業務実行の仕組みをどうするかの企画がシステム企画である。
c. 企画書はシステム案の具体化が必須条件である。
d. 企画は企画対象が価値を実現するものでなくてはならない。
e. システム企画書は、誰かがその企画に対する意思決定をするために作成される。


2.    リモート演習コース
これまで1万人以上に受講いただいたMIND-SA演習コースの
リモート版での復活です。

MIND-SA演習コースの原型は2泊3日でした。
初日の夜は、全員参加の情報交換会がありました。
「勇士」は明け方まで寝なかったという「昔懐かしい」状況でした。

その原型の内容をほぼ忠実に再現しているのがこのコースです。
残念なことに、目下のところは情報交換会(リモート飲み会)は
計画されていません。

その概要は後記のとおりですが、
以下の理由でたいへんな熱気で検討が進められます。 

この研修の楽しさ

1)コンペであること

競争心は人間を駆り立てます。

2)架空のコンサル会社であるとして活動します。

ゲーム性があり、楽しいものです。

3)具体的なテーマで検討すること

現実の状況を踏まえた検討です。その気になります。

4)社長表彰があります。

やはり嬉しいことです。

5)新しいことを学ぶのは楽しい

問題点連関図手法は斬新です。

オンラインホワイトボードも楽しいのではないでしょうか。


リモート演習コースの概要

1.当研修の目的・ねらい(Why)
 

(1)目的

1)目的追求思考(「ここ掘れワンワン」のここを

見つける思考です)を身に付けていただきます

 2)「世界に冠たる」問題点連関図手法を

習得していただきます。

 3)素直な企画提案書が作成できる5W2H手法を

習得していただきます。

(2)ねらい

1)あらゆる場合に

  「目的は何か?」「それは何のため?」

と考えるようになっていただきます。

これは、日本的思考の弱点の改善になります。

 2)複雑な問題を問題点連関図手法で

解明していただきます。

 3)企画提案がすんなり通るように

   なっていただきます。

 

 以上を前提に切磋琢磨いただき、ビジネス世界の勝者になっていただきます。

 

2.当研修の方式(How1)

1)リモート会議システムを利用します。

リモート会議システムの音声・画像・データの共有の機能しか使いませんので、ZOOMTeamsなど種類は不問です。

2)オンラインホワイトボードシステムを利用します。

これによって、演習で作成する連関図等を共有します


3.当研修の内容(What)

(1)演習テーマ

主催者として以下のような総合演習テーマを設定いただき、

各チームがその中で具体的なテーマを選定し、

実際の改善として検討いただきます。

業務の生産性の改善

   業務の達成感の改善

お客様からの評価の改善

   在宅勤務の改善

   コミュニケーションの改善

   特定業務の改善

(2)学んでいただく手法

1)問題点連関図右方展開(目的・ねらいの設定手法)

 2)問題点連関図左方展開(解決策探求手法)

 3)5W2H手法(企画・提案書作成手法)

 

4.当研修のご参加者(Where)

・3チームの対抗戦(コンペ)といたしますので、

最低3人×3=9人から,最大6人×3=18人までです。

・演習テーマの検討に参加できる方であれば、システム経験等は不問です。

 

5.当研修の実施方法(How2)

・ご参加の3チームは、演習テーマについての企画を依頼されたコンサル会社であるとします。

・そこで、チームメンバは社長(総括リーダ)ほかの仮想役割を設定し任じます。

・演習は3ラウンド(「目的・ねらい検討」「解決策検討」「企画・提案書作成」)を実施します。

・各ラウンドとも3時間の演習、2時間の演習発表、1時間の講師講評とで構成されます。

・ラウンドごとにリーダを決め、演習と演習発表を進めます(リーダシップの訓練にもなります)。

・最後にメンバ間の相互評価によって優秀チームを決定し、実際の社長からの表彰を行います。

 

6.当研修の日程(When)

・原則午後3時間×7日間をかけます。

・1週間1日が基本で、日程は自由にご決定いただきます。

 

7.当研修の担当講師(Who)

・MIND-SAのベテラン講師が担当いたします。

 

8.当研修の実施料金(How much)

・定額料金制(消費税別)

Web-SP団体ご利用料金

20万円

PSM演習コース実施料金

70万円

合計

90万円

9人から18人までの副教材「MIND-SA基本手法ハンドブック」「目的達成手法コンパクトガイド」(印刷版)のご提供を含みます。


是非、皆様の幸せのためにこの研修の実施をご検討くださいませんか。