2019年2月26日火曜日

「くらべてわかるオノマトペ」「オノマトペは面白い」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 少し気分転換をしていただきます。
 オノマトぺについてご研究いただきます。 
ねらい:
 ご関心お持ちいただけましたら、原著をお読みください。
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「くらべてわかるオノマトペ」は、
オノマトペの第1人者小野正弘明治大学教授の著作、
「オノマトペは面白い」は、
官能小説研究の第1人者永田守弘氏の著作です。


実は私は、最近までオノマトペという言葉を知りませんでした。
たまたま、新聞のコラムで見つけ、
何だろうと思い2冊買ってみたのです。


ご存じの方が多いと思いますが、
オノマトペは、フランス語に由来するそうですが、
擬音語(動物の鳴き声や物音を人間の言葉に置きかえたもの)、
擬態語(ものごとや人間の様子、感情や感覚を、
言葉の持つ感性で表現したもの)の総称です(小野教授の著書)。


擬態語は、世界のどの言語にもあるというものではなく、
日本語、韓国語などで特に発達しているものです。
日本語の擬態語を深く細かく理解することは、
日本語の細やかさと深さを測ることにつながります(同上)。


「くらべてわかるオノマトペ」は、
似た意味をあらわす擬態語のセットを作って
そのどちらがその意味が強いか、を比較しています。
「ぷりぷり」と「つんつん」 どっちの方がおかんむり?
「へとへと」と「くたくた」 どっちの方が疲れている?
「こつこつ」と「せっせと」 どっちの方が真面目に取り組んでいる?
「ふわふわ」と「ぷにぷに」 どっちの方が心地よい?
など50組が取りあげられています。


単に、感覚の比較をするだけでなく、
古典に遡ってその語源を極めたりしています。
以下の例をご覧ください。
何気なく使い分けていますが、
あらためてニュアンスの違いを認識させられます。
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「にこにこ」と「にやにや」 どっちの方が好意を感じる?

「にこにこ」と「にやにや」、
どちらも〈軽く笑みを浮かべる様子〉という点が共通する
オノマトペです。


このどちらに好意を感じるかということですが、
少なくとも、私と同世代の五十代以上であれば、
当然、「にこにこ」の方が好意を持っていると答えると思います。


たとえば、次の例を比べてみましょう。

○無邪気に遊ぶ子供を「にこにこ」と眺める。
○無邪気に遊ぶ子供を「にやにや」と眺める。

これらの例の、「にこにこ」からは、
〈温かなまなざし〉を感じるのに対して、
「にやにや」からは〈軽くバカにしたようなまなざし〉を感じます。


もっと言えば、
〈粘っこい視線で薄気味悪く、
なにを考えているかよくわからない〉
といったニュアンスさえただよいます。

こんな視線を感じたら、その子供の親御さんは、
すぐに、子供をほかの場所に移すか、
視線をさえぎろうとするでしょう。


「にこ」と「にや」という要素を持つ、
別の言葉にも目を転じてみましょう。


「にこ」からは、
「にこっ」「にこり」「にこやか」などの言葉が思い浮かびます。
みな、〈温かみのある好意的なまなざし〉を感じる言葉です。


これに対して、「にや」からは、
「にやっ」「にやり」「にやつく」「にやける」
のような言葉を思いつきます。

これらからは、たいてい、
〈軽くバカにしたようなまなざし〉を感じますが、
「にやける」からは、必ずしも悪意を感じないようにも思われます。
そのことは後で述べます。


「にこにこ」の基本要素「にこ」は、オノマトペだけでなく、
和毛(にこげ)」「(にこ)(ぐさ)」のような普通の言葉も生み出します。
「和毛」は、産毛のような柔らかな毛で、
「柔草」は、今は耳慣れない言葉ですが、
葉や茎の柔らかい草のことです。


この「にこ」は〈柔らかい様子・穏やかな感触を持つ様子〉
を意味しています。
そのような、〈柔らかさ〉〈穏やかさ〉といった、
ずいぶん抽象的な意味感覚が、
「にこにこ」にも引き継がれているように思えます。


一方、「にやにや」は、
古くは〈ねばつく様子〉を意味していました。



そのことは、鎌倉時代につくられた語源辞書『名語記(みょうごき)』に
「ねばき物をにやにやとあるといへる、にや如何」
と書かれていることから、確認できます。


さきの「にやにやと眺める」に感じられた、
なにか粘っこい感じというものは、
ここに由来しているわけです。

そして、ここにも、
抽象的な感覚が流れ込んでいるのを見てとることができます。


オノマトペの意味が引き継がれるとき、
そこには、繊細で抽象的な感覚が橋渡しをしています。


また、「にやける」は、現在では〈だらしなく笑みを浮かべる〉
という意味ですが、
「生まれたばかりの娘の写真を見てはにやける」という例からは、
〈軽くバカにしたような悪意あるまなざし〉は感じられません。

「にやける」の語源には、実は諸説あって

「若気(にやけ)る」なのだとされることもあります。
「若気」とは
〈男が女のように色っぽく、浮わついた様子を見せること〉
という意味です。

「にやける」の〈だらしなさ〉は、
ここに由来するのかもしれません。


さて、最近の、特に若い世代における「にやにや」は、
感覚が変わってきているようです。

ブログにこんな例を見つけました。


○私はにやにやする話が好きです。
 その展開はかっこよすぎるでしょ―とか
 それは可愛すぎるでしょ―、とか
 そこでそんなこと言っちゃうの最高でしょ―とか
 思いながらにやにやしてしまう感じの。


この例からは、これまでの「にやにや」が持っていた
〈軽くバカにしたようなまなざし〉や
〈粘っこさ〉の感覚は希薄になって、
むしろ、好意的な微笑みに転じています。


ほかに、
「もらったプレゼントを見てにやにやする」みたいな例もあります。
これまでならば、
たとえば「にまにま」で表されていたような感覚です。


このような「にやにや」の意味の変化が進めば、
「にこにこ」と「にやにや」の、どっちに好意を感じるか
という感覚が変わってくるどころか、
意思疎通が世代間でうまくいかなくなるかもしれません。


「プレゼントもらって、すっごいにやにやしちゃった」
とうれしそうな娘に、
「そんなに変なものだったのか?」とお父さんが返してしまう、
なんてことになってもおかしくありません。
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「オノマトペは面白い」は、
著者が40年以上にわたり年間300編の官能小説を読破してきた
集積をまとめた「オノマトペ官能編辞書」です。


女性編、男性編と大きく分かれ、
それぞれが部位別に編集されています。
あまり露骨でないところで、お尻は「むっちり」「ムッチリ」などですが、
こういう言葉は400ページに亘り3000語以上の使用例がが
収録されているのです。


この蓄積には脱帽です。
具体的な使用例のご紹介は遠慮させていただきます。


間に10編ほどのコラムが入っています。
その1例を以下にご紹介します。
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「むっちりした白いお尻」

お尻を表現するオノマトペとして一般的に思いつくのは
「むっちり」「ぷりぷり」「ぶるるん」などがありそうだが、
官能作家の発想にかかると、
これまたバラエティに富んだものになる。


男性たちはだいたい女性のお尻が大好きだ。
おっぱいに執着する男性たちはいるが、
それでもお尻が好きでないというわけではない。


動物学者の一説によると、人間が三足歩行になる以前は、
女性の外見でいちばん目立つ性徴はお尻だったわけで、
お尻を誇示することは生殖行動の重要なポイントだつた。


二足歩行ではまず女性と対面して目立つのは乳房だが、
それでも前面からは見えないお尻の誘惑から逃れることはできない。
女漁りをすることを「女の尻を追いかける」
というのはそのためだろうか。


たとえば
「むっちりした白桃のような豊かなお尻」といった表現は、
いやおうなく男性たちの欲情をそそる。

大きめの白いお尻というのが、
おおかたの男性読者の好みのようで、
スタイルとしての小尻には人気のある昨今でも、
硬そうで小さなお尻というのは、
官能小説ではほとんどお目にかからない。


現実には若い女性たちの脚が長くなって、
相対的にお尻が小さくなっているらしいが、
ソレとコレは別なのでは?

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2019年2月15日金曜日

世界最強の日本のパスポート。なぜ国民は持たないのか!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的: 
 各国のパスポートの「強さ」をご確認いただきます。
 多くの日本人がなぜパスポートを持たないか
  を考えていただきます。
ねらい:
 これからも素晴らしい分析に出会いたいですね。 
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これは、Webネタです。
まず「世界最強のパスポート」とは何ぞや?」なのですが、
これはその国のパスポートがビザ無しで何カ国に入国できるかです。


日本は、2019年2月時点で190カ国でトップなのだそうです。


因みに、以下のような状況ですから大して自慢になりません。
  • 1位|日本(190ヵ国)
  • 2位|シンガポール(189ヵ国)
  • 3位|ドイツ・フランス・韓国(188ヵ国)


  • 4位|デンマーク・フィンランド・イタリア・スウェーデン・スペイン
  • (187ヵ国)
  • 5位|ノルウェー・イギリス・オーストリア・ルクセンブルク・オランダ
  • ・ポルトガル・アメリカ(186ヵ国)
  • 6位|ベルギー・スイス・アイルランド・カナダ(185ヵ国)
  • 7位|オーストリア・ギリシャ・マルタ(183ヵ国)
  • 8位|ニュージーランド・チェコ(182ヵ国)
  • 9位|アイスランド(181ヵ国)
  • 10位|ハンガリー・スロベニア・マレーシア(180ヵ国)


  • 以下は、TABIZINEのサイト
    「世界最強なのに所持率は4人に1人。
    日本人がパスポートを持たない理由」の記載内容です。


    各国のパスポート保有率
     日本:24%
     米国:42%
     カナダ66%
     イギリス:76%
     (中国:5%。別資料)


    日本人がパスポートを持たない理由
    こうなっています。


    ・言葉の壁(外国語が苦手な日本人が多い)
    ・安全面の不安(日本よりも安全な国もあるのですが)
    ・島国ゆえ海外が遠い(飛行機に乗らないといけない)


    ・日本発着便の運賃が高い(ほんとにそうなのだそうです)
    ・長期休暇がとりにくい
    ・日本国内の観光資源が多い(上野もそう思います)


    (上野意見)あと、他から学ぼうとしない,いわゆる「島国根性」や
    経済的理由もある思いますが、
    どこと比較するかで理由になるかどうかが決まるのでしょう。


    いずれにしてもこの分析は、多面的で非常に素晴らしい思います。
    普通は自分の経験や判断だけで決めつけるので、
    客観的・公平な分析ができません。


    久しぶりに、素晴らしい分析に出会いましたので、
    ご紹介させていただきました。






    2019年2月14日木曜日

    「経営の定石の失敗学」

    【このテーマの目的・ねらい】
    目的:
     経営の定石と言われるものも、簡単に成功につながるわけではない
     ことを再認識していただきます。
    ねらい:
     「なるほど、そのとおりだ」なのですが、
     どう活かせばよいのでしょうか?
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    このテーマは、小林忍氏の著書名です。
    小林氏は、京都大学経済学部卒業後、日銀・メーカでの15年、
    アーサー・D・リトル等でのコンサル経験16年の後、
    NECの事業開発担当になっておられるというユニークな方です。


    この本は2016年に出されたものです。
    その時に購入したのですが、そのままになっていました。


    「経営の定石の失敗学」という書名から、
    「経営の定石と言われているものがあるが、これに従うと失敗する」
    ということが書いてあると理解しましたので、
    それは何だろう?と思ったのです。


    そうしましたら、そうではなく、
    「経営の定石と言われるものも、誤った使い方をすると失敗につながる」
    という内容でした。


    そういうことなら、
    何でも、どんな場合でも、誤った適用はよい結果を生みません。
    と、期待外れで読まなかったのです。


    今回あらためて読んでみました。
    そうしましたら、以下のようにたいへんよくできている本でした。


    1.著者等の経験を踏まえた実例に基づき解説しています。
      (これは貴重です)


    2.このテーマで誰がこの本を読むのかが難題です。
      そこで、各テーマの基本解説の後に「危機への処方箋」として
      「経営者のあなたへ」
      「本社部門のあなたへ」
      「現場のあなたへ」
      と分けて解説しています。
      (実務的コンサルタントのスタンスとして「なるほど」と思います)


    3.各テーマごとに失敗の予兆のチェックリストが提示されています。
      (分かりやすくてたいへんよくできています。以下に例を示します)



    コメットメント経営 危機の予兆CHECK LIST

    □経営陣や上司が部下の「できません」
      を聞き入れず、対応策を一緒に考えない。
    口必達目標と努力目標が渾然一体となっている。
    口現実的な計画を出した場合「気合が足りない」
     と叱責が飛ぶ。
    口具体策がなくても「できます」「がんばります」
     「やり切ります」と言っておけば、
     経営陣は目を細めている。
    口3年連続で未達に終わった部門長が
     いまだに部門長をしている。
    口月間計画の未達の要因について、
     毎月違う説明がなされる。
    口計画が未達の場合、挽回策が報告されるが、
     言いっばなしで終わる。
    口計画の未達の責任が、
     どんどん現場に近い方へと転嫁されていく。
    口社長命令は、取りあえず実行されているようだが
     成果が挙がらない。
    口結局、コミットさせられるのは現場。
     経営陣は気合を入れているだけのように思える。

     
    4.各テーマの冒頭にそのテーマのサマリが表示されています。
      (これで概要が把握できます。全テーマ分をご紹介します)




    テーマ 

    経営の定石としての説明

    失敗のリスク

    経営コックピット

    ITを用いて、様々な経営指標数値を端末情報や会議資料として一覧できるようにするものです。

    経営状況の変化がリアルタイムで可視化され、経営者の意思決定材料が迅速、正確に提供されることから、航空機の操縦席にたとえて“コックピット"と呼ばれます。

    経営数字を目に見える形にすることは、しつかりとした経営判断をするための“イロハのイ"で、筆者が顧客企業の事業再生に乗り出す際も、最初に行うことは「経営の実態把握」つまり、経営コックピットを立ち上げる(または、見直す)ことです。

     

    コックピットは作り方を誤れば、当然ながら正しい情報は読み取れません。

    また、操縦するパイロットの技量にそぐわないコックピットは、パィロットを混乱させるだけです。

     

    俊敏な経営

    経営環境が時々刻々変化し、昨日の敵が今日の友となったり、これまで歯牙にもかけていなかった相手が、突如、業界最有力プレーャーに急浮上したり、画期的なイノベーションで、自社の経営の柱が一夜にしてシロアリだらけの柱のような有様となったり、という今日の経営環境においては、迅速に必要な判断をすることは極めて重要・有用です。

     

    しかし、「俊敏な経営」は、一歩間違えると、考えることなく直感的に反応したり、どこかの工程を手抜きしたりという「速いだけの経営」に陥る危険性をはらみます。

     

    リーダシップ

    激変する経営環境の中で会社のかじ取りをするためには、社長をはじめとする経営陣が「組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に確立」し「目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する」ことはマストです。

    その意味で、現代の経営において、経営陣にはさらなるリーダーシツプの発揮を求められることは間違いありません。

     

    しかし、リーダーシップは発揮の仕方を誤ると、拙速な判断を招いたり(「俊敏な経営」の項参照)、本来優れた「経営の定石」である方法論が、歪んだ形で運営される原因となる(「ワイガヤ」「現場主義」の頂参照)おそれがあります。

     

    ワイガヤ

    様々な意見を吸い上げて、より良い考えを取りまとめるために非常に有効な手法です。

    カルロス・ゴーン氏が日産自動車で導入したクロスファンクショナルチーム(CFT)は、ワイガヤを人為的に作り出す仕組みと言えるかもしれません。

    仕組みに頼らなくても、社員同士が自然発生的にワイワイガヤガヤと議論できる社風があるならば、会社はそう簡単には危機に陥らないはずです。

     

    しかし、文字通り「ワイワイガヤガヤ」と堂々巡りの議論に陥ったり、一見自由闊達に見えて、実は「誰か」あるいは「何か」に操られた挙旬に無責任な結論を導いたりするおそれもあります。

     

    現場主義

    机上の空論に陥ることなく、現地・現物・現実に立脚して打ち手を取りまとめ、実行するために有効な手法です。

     

    しかし――、1 現場訪問時の見間を「現場の声」として金科玉条にする

    2 経営陣が自らの知見を振りかざして現場のHow(どうやるか)に介入する

    3 現場発の情報を鵜呑みにする一― といったことによって、思わぬ副作用に苦しめられることもあり得ます。

     

    コミットメント経営

    日産自動車の再建に取り組んだカルロス・ゴーン氏が劇的な成果を挙げたことから、広く知られるようになりました。「必達目標」とも訳されます。

    「数値目標をはっきり示す」「数値目標の責任者を明確化する」「各人が目標達成に向けて仕事をする」ことで企業の底力を発揮することと要約できるでしょう。

     

    ある意味、当たり前の経営の姿ですが、取り組み方を間違えると、経営陣が会社の実態を把握できなくなります。

    また従業員が、目標未達を当たり前の状況と思うようになって、モチベーションを低下させるおそれもあります。

    モチベーション経営

    職場環境の整備等によって社員の働きがい、やる気を引き出すことで、従業員満足度を上げ、優秀層を中心に社内を活性化して成果を引き出す手法です。

     

    うまくいけば企業成長・改革の推進力となり得ますが、モチベーションという言葉のポジティブな響きに惑わされ、打ち手の選択や優先順位を誤ると、逆に優秀層に見限られて会社を危機に陥れかねない側面も持っています。

     

    選択と集中

    自社がコストと品質で1番か2番になれる(つまり、自分の運命を自分で切り開ける)事業領域を明確化し、そこに事業を絞り込んで経営資源を集中的に投下する戦略です。GEのジャック・ウェルチ前CEOは、この戦略によって、就任前年(1980)249億ドルだった売上を、その後の15年で700億ドルまで拡大し、さらに利益率を3%も高めました。このGEの目覚ましい成長とともにこの言葉も有名となり、今やビジネスの現場でもごく一般的に使われています。

     

    だからといって、これを業績向上の特効薬と考えるならば、思わぬ落とし穴が待ち構えています。

     

    ポートフォリオ経営

    展開する事業群について、リスクマネジメントの観点と、個別事業の競争力・将来性の観点から入れ替えをしながら、全社としてのリスク分散を図り、経営の健全性を維持しようとする手法です。

     

    リスク分散には有効な手段ではありますが、一歩間違うと、単に弱い事業の集合体を作るだけになってしまい、安定した経営を行うことが困難となります。

    また、連結グループを通じた事業展開をする場合には、親子間の壁が経営の足を引張る場合があります。

     

    花形商品経営

    圧倒的な競争力、収益力を持つ「花形商品」を育成し、その地位を守ることは、経営の安定化、企業成長の実現に非常に有効です。

     

    しかし「花形商品」に過度に依存したり、社内でこれを聖域化したりするようなことになってしまうと、結局は「花形商品」を持ったがゆえの大きな落とし穴にはまるおそれがあります

     

    本書の出版には、
    非常に多くの方が関わられたようです。 
    たいへん難しいテーマを、
    いかに分かりやすく伝えるかをよく研究されています。

    再販・重版が続いてもいいような力作ですが、
    どうだったのでしょうか? 

    2019年2月13日水曜日

    堺屋太一さんが亡くなられました!!

    【このテーマの目的・ねらい】
    目的:
     堺屋太一さんの早すぎる死を悼みます。
    ねらい:
     堺屋太一さんのご冥福をお祈りいたします。
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    ご承知のように堺屋太一さんが2月8日に83歳で亡くなられました。
    通常はこういう場合、氏名の前に何か肩書きが付くのですが、
    多すぎて入りません。


    小説家・作家、評論家、
    元通産官僚、元 経済企画庁長官、元大阪万博プロデューサー
    いくつかの大学の客員教授、
    どれか一つでも十分なのに、それがいくつもあります。


    橋下徹さんが大阪府知事になる時に応援し、
    2012年には大阪維新の会が政治家の育成を目的に設立した
    維新政治塾の名誉塾長に就任しておられます。


    有名な「団塊の世代」の中で、
    少子高齢化時代の到来を予測していたといいますから
    すごい先見の明のある方です。
    東京オリンピック後の日本のことも心配しておられました。


    人生100年時代、83歳はまだまだこれからの年齢です。
    早すぎますよ!!!本当に残念な方を亡くしました。


    私は、2,3度しかお会いしたことはありませんが、
    お酒はお好きだったと思います。
    多臓器不全はそのことと関係あるのではないでしょうか。


    私と堺屋さんの関係はこういうことです。


    私は堺屋さんとは東大経済学部の同期なのですが、
    当時は面識がありませんでした。


    私が2004年に「価値目標思考のすすめ」を出版しました時に、
    ある方のご紹介でお会いしました。
    推薦をお願いしたのです。


    そうしましたら、原稿を全部読んでくださって、
    「自分の主張する「知価社会」にとって重要な思考法である」
    として、以下のような言葉をご自分で書いてくださいました。
     「目的は何か」
     自明に見えることが「知価社会」では重要だ。
     実効ある<改善>思考術の「入口」がここにある。


    上から目線で申し訳ありませんが、非常に的確なコメントです。

    その折に私は、
    「何か『知価社会』の思考の普及に貢献できることを
    一緒にやりましょう」
    と申しあげ賛同いただきましたが、具体化できませんでした。


    あらためて「偉人」の死を悼み、
    心からご冥福をお祈りいたします。

    2019年2月8日金曜日

    統計不正問題の原因を考える!

    【このテーマの目的・ねらい】
    目的:
     統計不正問題の本質を考えてみます。
     ソフトウェア保守業務との共通性を整理します。
    ねらい:
     統計の方の抜本解決は難しいように感じます。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    国の統計不正問題は、
    日本の国全体の信頼を損ねる大事件です。
    発端は、毎勤統計ですが、
    その後の調査で、出るわ出るわ、ビックリです。
    なぜこのようなことが起きるのか、考えてみましょう。


    まず、毎勤統計の不正はこうです。
    1.本来従業員数500人以上の事業所は
    全数調査しなければならないのに、
    2004年から東京都分について、勝手に3分の1にした。
    これは意図したことです。


    2.3分の1のサンプリングにしたのなら、
    他の県の全数調査のデータと合算するときには、
    3倍にしてから行う必要がある。
    ところがそのまま加算した。


    東京都の事業所は他の県の事業所よりも高い所得ですから、
    3倍していないということは
    実態よりも過少に答えが出ることになります。


    この過少であることが、雇用保険の給付額に影響した、
    という大問題になったのです。


    3倍にしなかったのはおそらく故意ではなく、
    初歩の初歩の初歩的ミスでしょう。
    こんなことは、統計の専門家でなくてもすぐにわかることです。


    因みに、
    フジテレビのPrimeサンデーでこの問題を取りあげた時に
    登場した統計局のOBとかの二人は、
    「統計の内部の計算ロジックなど素人にはわかりません」
    とうそぶいていましたが、
    問題はまったく違うところにあるのです。


    フジテレビもこんなことを報道するから、
    視聴者は混乱してしまうのです。
    フジテレビの日曜朝の報道番組はレベルが落ちましたね!!


    さて、このような統計不正・不備が発生する原因は何でしょうか。


    それは、統計を担当する統計局が地味な日陰部署だからです。
    1.予算削減となると真っ先に対象となります。
     2004年の時もそうだったのでしょう。
     予算削減されるなら全数調査はできない、ということになります。
     でもそれを内密にしているというのは、やはり「不正」です。


    2.積極的で優秀な人材は配属されない。
     この仕事では、手柄の立てようがないのです。
     何か新しいことをする、ということもできません。
     優秀な人材は行きたがりません。


     たまたま、
     異動のタイミングで優秀な人材が配属された場合
     のことを指して「休憩所」というのだそうです。
     作業者以外は、誰も計算の中身に関心を持たないのです。


    なぜ、私がこのことをリアルに感じられるかというと、
    現在私が取り組んでいるソフトウェア保守の現場との共通性
    があるからです。


    ソフトウェア保守の現場も、1,2ほぼ同じです。
    この業務では、人も予算も不十分です。


    2、もほぼ同様なのですが、保守業務は統計業務よりましです。
    それは何かというと、
    保守業務は、お客様(ユーザ)に直結しています。
    工夫して改善すれば評価されるチャンスがあるのです。


    ただ、ほとんどの保守業務担当は、
    時間制約が厳しいこともあって
    新しいことや改善に取り組んでいないだけのことです。
    改善をするように私は日夜働きかけています。


    その点、統計業務は厳しいですね。
    優秀な人材がその職についてもやることがあるのでしょうか。
    これもフジテレビで、元知事の片山善博さんが、
    「統計部局に優秀な(か普通のか)人材を投入すべき」
    と言っていましたが、現実は難しいでしょう。

    明石市長の暴言騒動

    【このテーマの目的・ねらい】
    目的:
     この事件を題材にハラスメントとは何かを
      もう一度考えてみます。
    ねらい
     ハラスメントを正しく認識しましょう。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    明石市長の暴言がマスコミで問題になり、
    市長は辞任に追い込まれました。
    この前市長は善政をして市民は
    誰も文句を言っていません。
    リコール要求もありません。


    暴言で「叱咤激励」をされた部下も
    市長のことを悪く言っていません。
    できていないのは自分たちが悪いと認めているのです。
    つまり部下の信頼も厚いのです。


    ところが、2月3日のフジテレビの報道プライムサンデーで
    ハラスメントの専門家と称するどこかの先生が
    「部下がハラスメントだと思っていないのは問題だ、
    これは立派なハラスメントだ」と言われていました。


    この専門家の「無知」はなんたることでしょう!
    行為者が悪気がなくても受け止め側が問題視すれば
    ハラスメントになるのです。


    つまり、ハラスメントかどうかは受け手側の問題なのです。
    したがって、受け側が問題ない、ハラスメントとは思わない、
    と言ったらハラスメントではないのです。


    以下、ご参照ください。
    当ブログ2019年1月9日「ハラスメントは想像力欠如」!!
    http://uenorio.blogspot.com/2019/01/blog-post_9.html


    そんな基本中の基本がわかっていない専門家がいるのですか。
    しかもリッパなテレビ番組に登場するのですよ。
    呆れてしまいます。
    嘆かわしいことです。
    その先生とフジテレビ、両方ともです。


    この明石市長は短気なところがあり勇み足があるのです。
    今回の辞職も、もう少し待てば、
    市長の再選選挙は4月の統一選挙でできたのです。


    待たなかったために、
    短期に2度も市長選挙をしなければならないのです。
    そのコストはいくらとか言っていましたがかなりのものでしょう。


    そういう頭が回る前に瞬間湯沸かし器で行動してしまったのです。
    これは「バカ」ですね。

    少女虐待死事件再論

    【このテーマの目的・ねらい】
    目的:
     心愛ちゃんが死に至った原因と対策を探求します。
    ねらい:
     何とかこういう事件の再発を皆無にしたいものです。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    千葉女児死亡事件のことです。
    私は、
    この事件が起きた時にすぐにこのブログで取りあげました。
    「またも女の子が父親の犠牲に!」 (1月27日)
    http://uenorio.blogspot.com/2019/01/blog-post_27.html


    目黒幼児虐待死事件との共通点を整理して、
    再発防止対策を考えてみたのです。


    その後、この事件は毎日報道され毎日進展があります。


    そこでの疑問を改めて整理しました。
    1、父親の非道さ・ワルさ
    こんなに虐待するのは、
    何か恨みか復讐心でもなければしないことです。
    また母親の連れ子かと思いましたが、
    心愛ちゃんは父親似なのでそういうことはなさそうです。


    では、何なのか?
    とてもシツケだなどとは考えられません。


    虐待がばれないようにする、無かったことにする、
    ワル知恵もずい分発揮しています。


    こういうことを起こさない対策は今のところ不明です。


    2.母親の責任
    母親は、父親がすることを見て見ぬふりしているのかと思いましたら
    虐待に加担しているのですね。
    まったく信じられません。
    あの男はそんなに怖いのでしょうか?


    この対策はなんでしょうか?
    やはり、自分が怖くても娘が可哀そうなら、
    どこかに相談する、ということでしょう。


    それだけの知恵が回らないのなら処置なしですね。


    3.野田市教育委員会の対応
    ご承知のように、ここが心愛ちゃんの暴力訴えメモを
    父親に渡してしまいました。
    父親の恫喝に負けたようです。


    父親の火に油を注いで
    心愛ちゃんの死に最後のとどめを刺したのかもしれません。


    これは、とんでもないことです。


    日本人はほとんどが穏健な性格です。
    日頃から対人関係が厳しくないのです。
    最近はクレーマも多いようですが、
    基本的には争いごとを好みません。


    したがって、攻撃されることに弱いのです。
    だから、少し脅されるとあたふたしてしまう、
    すっかり、常識がどこかに行ってしまって
    こういうことになるのです。


    恐喝・恫喝されていると思ったら、
    その場で済まさずに、
    「警察に連絡しますよ」と言えばよかったのです。
    厳しい状況の経験不足です。


    対策は、自分で決着しないで、
    「上司に相談する」とか「警察に連絡する」とかすることです。
    今からならマニュアルに入れられます。


    4.学校・児相の不備
    これはまたもか、です。


    今回の特別事情は、父親が心愛ちゃんを転校させ、
    しかも登校させないようにして
    学校でのフォロをしにくくしていることです。
    かなりのワルです。確信犯です。
    厳罰に処さなければなりません。


    安倍総理は、
    2月8日に「児童虐待防止に関する関係閣僚会議」を開く、
    ことを決められたようです。


    総理は、このテーマに積極的関心を持っておられます。
    目黒の事件の時にも、
    緊急で児相の要員大幅増強対策を打ち出されました。


    私は、この時、ブログで
    「量の拡大も必要だが質の強化をしないとダメだ」と書きました。
    正にそのとおりでしょう。


    児童福祉司は、一時保護した子供を、その後どうするかの判断や、
    その後の状況把握・判断を、自分でしなければなりません。
    たいへんな権限・責任を持たされているのです。
    児童福祉司の制度がそう決めています。


    しかも教育期間はたった3か月だそうです。
    その間にそんな重大な判断ができるようになれるとは思えません。


    未熟さを補うのは組織です。
    上司の権限を明確にして、
    児童福祉司の判断を補強できるようにすべきです。


    また、学校・児相の職員が、
    何か危険を感じたらすぐに警察に連絡することも重要です。
    そのため、警察の連絡窓口を明らかにしておきます。


    この2件の事件は一般に知られ大騒ぎになっていますが、
    なんと年間50人が虐待死しているのですって。
    組織間の連携網の整備が重要です。


    5.近隣の協力
    心愛ちゃんがいじめられているということが分かったら
    近隣はすぐに児相または警察に連絡する、ことが必要です。


    今回の件では、
    沖縄の時には近所にも知れることがあったようですが、
    千葉に来てからは近所に知れないようにしています。
    これも父親のワル知恵です。
    「コノヤロー」です。


    2月7日の日経新聞に以下の記事が載っていました。


     警察庁のまとめでは、虐待の警察への通告件数は
     5年で倍増した。


    目黒事件があった18年に特に伸びているわけではありません。
    虐待の通告(内部。本人からを含む)は
    今や国民の常識になりつつあるようで結構なことです。


    その後、こういうことになりました(日経新聞2月8日)。
     国連の子供の権利委員会が、日本政府への勧告を公表した。


     委員会は日本で子供への虐待などの暴力が
     高い頻度で報告されていることに懸念を示し、
     政府に対策強化を求めた。


     虐待などの事案の調査と、
     加害者の厳格な刑事責任追及を要請した。


     7日に記者会見した子供の権利委員会のサンドバルグ委員は、
     千葉県野田市立小4年の女児が死亡して
     両親が逮捕された事件について
     「起きてはならない残念な事件だった。
     誰か大人が対応すべきだった」
     と述べ、日本社会全体で向き合うべきだと指摘した。


    正にそのとおりです。
    日本の子供虐待は世界的に有名になってしまいました。
    早く根絶しましょう!!


    8日の政府の関係閣僚会議の結論は、
    この国連の委員会の勧告にも整合し、
    「(首相)子どもの命を守ることを最優先にあらゆる手段を尽くし、
    やれることはすべてやるという強い決意で
    児童虐待の根絶に向けて総力をあげて取り組んでほしい」とし、


    虐待の通告元や資料は外部に一切明かさないとのルールを
    新たに設けると表明しました。
    先刻決定した児童福祉司を19年度から4年間で2千人増やす目標を
    前倒しして19年度で千人増やすことにもしました。


    繰り返しますが、量的拡大だけでなく、
    質の改善もしなければなりません。
    今回は、学校、児相、教育委員会の担当すべての関係者の未熟さが
    犠牲者を生みました。
    誰かが気が利いていれば心愛ちゃんは死なないで済んだのです。
    心愛ちゃんが本当に可哀そうです。
    国連の委員の言う「誰か大人が対応すべきだった」のです。
    まったくそのとおりなのです!!


    追伸  
    【2月15日の報道】
    文部科学省は14日、全国の学校や教育委員会などに対し、
    長期欠席している子供の安全を面会して確認するよう求めた。
    3月8日までに確認し、
    同14日までに文科省に報告することとしている。


    そうすべきです。
    こうしていれば、-----です。
    要求期間も早くていいですね。

    「汚職清潔度 日本18位」ですって??

    【このテーマの目的・ねらい】
    目的:
     「腐敗認識指数」について知っていただきます。
    ねらい:
     (この調査のねらいは何か?)誰が何に使うのか
     を考えてください。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    こういうのがあるのだそうです。
    世界の汚職を監視する非政府組織
    「トランスペアレンシー・インターナショナル」(本部ドイツ)


    ここが1月29日に発表した2018年版では、
    日本の汚職「清潔度」は180カ国中18位だそうです
    (1月31日日経新聞)。


    汚職が多い少ないなど、どのようにして測定するのか?
    と関心を持って調べてみました。


    そうしたらこういうことでした。


    正式には、「腐敗認識指数」と言い、
    各国の公務員と政治家が、
    どの程度汚職していると「認識されるか」のデータなのです。
    事実を明確に把握できるデータはないし、
    国の規模によっても異なります。
    そうでしょうね。


    今年度の世界1位は、デンマーク、
    最下位は12年連続ソマリアです。
     1位 デンマーク
     2位 ニュージーランド
     3位 フィンランド
     4位 シンガポール
     5位 スウェーデン
     6位 スイス
     7位 ノルウェー
     8位 オランダ
     9位 カナダ
     10位 ルクセンブルグ
     11位 ドイツ(お膝元?) 隣国フランスは21位
     11位 イギリス


    シンガポールだけがアジアです。
    シンガポールは街もきれいなようですね。


    米国は22位で、それまでの10番台から落ちてしまいました。
    トランプ政権がうさんくさい目で見られているのです。


    因みに、アジアの主要国のランキングはこうです。
     台湾  31位
     韓国  45位
     インド  78位
     中国  87位 


    中国はもっと低そうですけれどね。
    習政権は必死に汚職追放を進めているようですが、
    この数年間、ずっと80番台のままです。
     
    こうして見ると、日本の18位はましな方かもしれません。


    このデータの基は、
    世界の10の機関が調査した13種類のアンケート調査結果で、
    それを統計処理しているのだそうです。


    10の機関の代表例はこうです。
     アジア開発銀行
     アフリカ開発銀行
     世界銀行
     世界経済フォーラム
     国際経営開発研究所(IMD)


    調査対象は、
    「一般市民」ではなく、ビジネスマンや国家の分析専門家です。
    その理由は、こうなのだそうです。
     彼らが、いわゆる小口の汚職・腐敗よりも、
     政治資金、談合など大口の腐敗を、より熟知しているからである。
     表面的な腐敗だけでなく、暗部に隠された腐敗も含めて、
     その国の状態をより客観的に把握しようとしているからである。


    その考えは良いとして、そんな調査を10の機関がしているのでしょうか。


    また、
    この調査はそれだけの手間暇かけて何の目的でしているのか疑問です。
    汚職に対する歯止めをかけようということかもしれませんが、
    誰がスポンサーなのでしょう?
    謎です。