2020年5月27日水曜日

新型コロナ対応緊急事態宣言等の総括をします!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 緊急事態宣言解除までの経緯を整理してみます。
ねらい:
 第2波または今後の別の大流行感染症に備えましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
5月25日、緊急事態宣言はひとまず全国で解除となりました。
そこで、今後のために今回何が起きたのか(の一部)
を整理してみました。


1.まずは、第1波の封じ込めに成功
海外からは、
「強権で抑え込まずにあいまいな対策でよくできた」
と感心されているようです。
日本国民の優秀性の証拠だと思われます。


著名人が亡くなったことも、国民にショックを与えたのでしょう。
志村けんさん、岡江久美子さん、立石義雄氏、岡本行夫氏、
お若いのに気の毒な勝武士さん、
特に、志村けんさんの「貢献」は大きかったですね。


石田純一さんは回復しましたが、
「あんな元気な人でも」と、影響力大でした。
立石さんは分かりませんが、
皆さん何らかの健康的弱点をお持ちだったようです。


2.緊急事態宣言発令は遅かった。
ご承知のように4月7日です。
「すでに大きな山は超えつつあった」という説もあります。


東京都の小池知事が強い口調で、
3月26日に都民の外出自粛要請を出しています。
そのくらいのタイミングで出ていてもよかったのです。
専門家の意見の聞き過ぎでしょう。


3.インフルエンザ対策特別措置法の「要請」のあいまいさ
この法律は緊急事態宣言の根拠法ですが、
2012年野田内閣のときに公布されたものです。


この法で都道府県知事は、
必要な外出自粛や営業自粛等の「要請」ができるようになっています。


しかし、要請に従わない場合は
「正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、
当該施設管理者等に対し、
当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる」
となっています。


その措置とは、
一 新型インフルエンザ等の感染の防止のための入場者の整理
二 発熱その他の新型インフルエンザ等の症状を呈している者の
   入場の禁止
三 手指の消毒設備の設置
四 施設の消毒
五 マスクの着用その他の新型インフルエンザ等の感染の防止
   に関する措置の入場者に対する周知
六 前各号に掲げるもののほか、
  新型インフルエンザ等緊急事態において、
  新型インフルエンザ等の感染の防止のために必要な措置として
  厚生労働大臣が定めて公示するもの
であって罰則ではありません。
営業するなら「きちんとせい」というにすぎません。


4.インフルエンザ対策特別措置法は抜けている。
地方自治体の要請または指示で、
災害対応のために医療関係者・運輸関係者等が稼働した場合の
補償の規定はありますが、
それ以外の住民・業者が要請により休業した場合の補償のことは、
何も謳っていません。


法の立案者がそこまで考えられなかったのでしょう。
橋下徹氏曰くの「クソ法」です。


したがって、
法律上は休業した本人の損(負担)ということになります。
それはないだろうということで、
各都道府県が助成金や協力金という名目で
それぞれの基準を作って対応しています。


5.小中高の全国一斉休校は必要だったのか。
これは結果論ですが、子どもはほとんど感染しないか、
感染しても極めて軽症なのです。
これが季節性のインフルエンザと異なる点です。


「インフルエンザ!」の連想からの措置で、
安倍首相の「英断]と言えますが、
その悪影響はたいへんなものです。
「どう落とし前つけてくれるのか!というレベルです。


このウィルスの感染力の解明が待ち望まれます。
すでに、このウィルスはいくつかの変異体が見つかっており、
欧米系は、
元祖武漢系よりも感染力が格段に強いことが分かっています。
さらに感染力・重症化力を強めた変異ウィルスが、
第2波として世界を席巻しないことを願うのみです。


6.国と地方の連携の不慣れ
緊急事態宣言を発令するのは國です。
その宣言に基づき住民・事業者等に実際の行動要請を行うのは
都道府県知事の権限責任です。


そうなのですが、初めてのことで、
政府が都道府県に対する指針のようなことを発信するものですから、
混乱が生じました。
指針は参考であって指示ではありませんが、
従わなければならないと思った知事もおられたようです。


この点は次第に分かってきて落ち着きました。


因みに、安倍総理の全国一斉休校の要請に従わなかった
各地区の教育委員会がありました。
日本としては珍しいパターンで立派でした。


7.感染防止対策と経済活動維持とのバランス
各種の自粛要請は、「国民の命を守るため」であると言われました。
たしかに命を守ることは第1優先であるべきです。


ところが、調査によると、戦後の日本では、
失業率が1%増えると、自殺者が2千人程度増えるのです。


経済活動が停滞して破産倒産が発生し、失業者が増え、
自殺者が増えることも、国民の命が失われることです。


感染症から守るべき命と失業により失われる命とのバランス
をどう取るかの判断は優れて政治的判断です。
「専門家」の埒外です。


トランプ大統領は、事業家出身だけあって、経済優先です。
まだ感染が拡大中なのに出口戦略を探っています。
腹をくくって責任をとる覚悟ならよいのです。


8.PCR検査体制整備の遅れ
感染拡大を抑える重要な対策の一つがPCR検査です。
安倍総理がいくら目標数値を挙げてもさっぱりダメでした。


OECDが4月28日に発表した
日本の人口千人当たりのPCR検査実施人数は1.8人で
36カ国中35位です。


なぜそんなにダメなのでしょうか。
その原因は、当初は
指定された保険所(帰国者接触者相談センター)で検体採取をし、
地方衛生研究所で検査をする流れになっていたからです。


その2機能での能力に限界があったのです。
安倍総理の言われる目詰まりです。


そこで、その後、
地域の医師会で運営する「地域外来・検査センター」で検体採取し、
民間検査会社で検査をする方式もができるように改められました。
以下の図をご参照ください。
(出典:JIJI.COM「新型コロナ感染を調べるPCR検査の主な流れ」)
右の列の処理が追加されたものです。



この方式への変革が遅れたのです。
厚生労働省など関係者も、個別の技術・手法面に目が向き
業務改善の観点が希薄だったからです。
日本の「専門家任せの風潮」の弊害です。


なおその後、検体採取を医師しかできないネックの解消策として、
本人が唾液をとって検査所に送る方法や
スマホにつなげたセンサーでウィルスを確認する方法などが
次々開発され実用化も始まっています。
まさに、「必要は発明の母」に世界中が取り組んでいる、
という感じで素晴らしいことです。


9.自宅療養の限界
4月くらいまでは、
軽症者(本人はたいへんな症状でも人工呼吸器を必要としない人)
は自宅療養が原則でした。


社会から見れば、隔離でしょうが、
一人住まいでなければたいへんなことです。
普通の家庭では隔離する生活をすることが困難です。
橋下徹氏が経験して報告されていました。


その後、ホテル等を借り上げて収容ということになったのは
社会的経験による大きな進歩でした。


10.今回売上が伸びた業種、減った業種
売上が減った業種は外出禁止・自粛の影響を受けた業種で、
航空、旅行・ホテル、タクシー、レンタカー(アメリカではハーツが破たん).
飲食業などその状況はよく知られています。
コンビニもダメです(特にオフィス街のダメージが大きいです)。


ところが、売上が増えている業種もたくさんあるのです。
コンビニとの対比でスーパーは4月の売上が2桁増のところが
多くなっています。
学校給食がなくなり家庭での食材購入が増えたのです。
カップ麺から始まり、冷凍食品、小麦粉などが品切れになったりしました。


弁当屋やフードデリバリーも増えています。
UberEatsの自転車はずい分見かけるようになりました。
失業学生アルバイトの大きな受け皿になっているようです。


在宅勤務のためのノートパソコン・タブレットも特需で、
ボーナスが出るくらいなのではないでしょうか。
在宅関連では、テレワークのソフト、クラウド関連ツール、通信事業
などもかなりの売上増でしょう。


マスクも特需ですが、
トイレットペーパは、学校・オフィスの在庫が減らずに
家庭用に大量に出たのでしょう。


ゲーム機器・ソフト、動画配信・販売,は大幅増でしょうが、
本屋・出版業界はどうだったのでしょうか。
あまり売れているという情報には接しません。


宅配業者も大幅売上増でしょう。
置き配用ボックスもだいぶ売れているようです。


消毒・清掃用などのロボットも大増産のようです。


変わったところでは、ミシンも売れているようです。
在宅時間が増えて、裁縫できるようになったのです。
マスクを作っているだけではないと思います??


明日の命が分からないという感じの飲食店からすると、
「羨ましい」を通り越して妬ましいことでしょう。


11.「苦境の被害者は女性」
 アントニオ・グテレス 国連事務総長の寄稿
ユニークな発言なのでご紹介します。
5月3日の日経新聞に掲載されたものです。
女性が被害を受ける局面を以下のように挙げておられます。


1.DV被害の増大
 暴力をふるうパートナーと同じ空間に閉じ込められて、
 そのリスクが増える。


2.失業の増大
 臨時雇い労働者や小規模サービス業従事者など低賃金で
 手当がない仕事で働く比率が、女性は男性よりずっと高い。
 ILOは今後3カ月だけで世界で2億人近くが職を失うと推計した。
 その多くがこうした分野の仕事だ。


3.家事の増大
 通常でも女性は男性の3倍の家事をこなす。
 学校の休校になると、
 女性が子どもの面倒をみることが求められる可能性が高くなる。


おまけ.感染源不明の場合の感染源の可能性
感染源が分からないのは、非常に不安な状態です。
私は、不明の場合の何割かは硬貨ではないかと想定しています。


このウィルスの生存期間は、米国NIH研究所の予備的研究では、
 空気中 3時間
 段ボール 24時間
 ステンレス 48時間
 プラスティック 72時間
となっています。


硬いものの方が長生きするようです。
そうであるなら硬貨でも、何日かは生存します。


誰も硬貨が感染源であり得ることを言わないのは、
大恐慌になる恐れがあるからなのでしょう。
恐ろしいことですね。
もしそういうことがはっきりしたら、
日本でも一挙にキャッシュレスが進展するのではないでしょうか。



今回のコロナ騒動で、世の中が大きく変わっていきそうです。
在宅勤務の増加とそれに伴うライフスタイルの変化は
その最たるものです。そういう面で、ビジネス従事者は先を見越す必要が、
今まで以上に非常に大きくなってまいりました。


2020年5月23日土曜日

 「要請」のあいまいさ:「権力統制改革における課題」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 政府から出される「要請」の問題点について検討します。
 コロナ対策の「要請」の問題点について確認します。
ねらい:
 「要請」についての正しい認識をしましょう。
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本項は、學士會会報2020年Ⅲ号に記載された
曽我部真裕京都大学法学研究科教授の寄稿
「権力統制改革における課題」からのご紹介です。


本稿の本題は、日本の政治の仕組みに対する平成の改革で
首相(官邸)の権力が強大化しているが、
その権力の統制に対する改革が不十分である、
ことに対する問題提起です。


筆者は、平成の統治構造改革と称される
「2大政党制を確立し、
総選挙を実質的な首相選挙と位置付けることによって
首相が、直接的な国民の付託を背景に強力なリーダーシップを発揮し、
現代日本の山積する課題解決に立ち向かう」
という方向性については賛成しておられます。


問題提起の概要はこういうことです。


3権分立下においては、行政(その長総理大臣)を統制するのは、
立法と司法である。


立法の統制権は国政調査権であるが、
議院の過半数の賛成がないと発動されない。
与党の長が総理大臣である現行方式では、発動されにくい。
仏独国ではその壁を越えられる制度がある。


司法の統制の限界を示すのは、行政からの「要請」「指導」である。
建前上は、「要請」や「指導」は強制力がなく、
従うかどうかは受けている側に任されることになるので
司法の出番がない(上野:なるほどそういうことになるのですね)。


時宜に合致した以下の説明に納得いたしました。


こうした「要請」「指導」は従うかどうかの判断が国民に委ねられるが故に
公権力の責任の所在があいまいとなり、
また、強制力がないので訴訟で争いにくい
(つまり裁判所の出番がそもそもない)。


制度上「要請」「指導」する側の統制が困難な手法なのである。
また法律上の根拠がないことは、
事前の国会での議論もないことになり、
要するに(前述の国会による統制の実情も加味すれば)、
政府にほとんど統制を受けない権力を付与することになる。


法治主義はこうした事態を避けるための原理である。
もちろん、「要請」「指導」の手法すべてを否定する必要はないが、
日本では法治主義があまりにも軽視されているという印象を持つ。




ご承知のように、今回の緊急事態宣言は、
野田内閣のときに成立した「新型インフルエンザ特別措置法」に対して、
新型コロナウィルス感染症を同法の対象とするという改正案を
3月13日に国会で通して発令されています。


ところが、この法は、内閣が宣言を発令しますが、
実際の行動自粛要請等の対応は
都道府県知事の権限責任となっています。
(実際には、政府の権限外の「見解」が
都道府県を縛るという実態が問題になったりしています)


それでも、3月14日以降の「要請」は法に基づいたものなのですが、
3月2日からの首相による全国小中高校の一斉休校要請は、
法に基づかない曽我部教授の問題視される「要請」だったのです。


さらに、橋下徹氏が指摘しているように、
感染症対策のために活動する医療従事者や物流業者に対する「指示」
の補償は規定されていますが、
営業自粛要請等に従った場合の損失補償に関しては何らの定めのない
トクソ法ならぬ「クソ法」なのです。


したがって現在行われている飲食店・サービス業等に対する
営業自粛要請に基づき営業を中止した場合の補償は、
法律の埒外で行われているのです。


この点についてはさすがに
「勝手に自粛しているのだから補償できない」とは言えず、
國・自治体が補償する方向ですが、
どこまで補償するかは法の規定はありません。


あいまいで良い点(即効性など)・悪い点(対応内容)が
出てきていますね。


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(5月25日追記)
その後、にわかに、
検察官の定年延長条項を含む検察庁法改正案の
暗礁乗り上げ問題が浮上しました。


改正は、検察官の定年延長を定めるが、
内閣の判断によってさらに個別に延長が可能となる案です。
検察OBからも、
司法に対する行政の関与であるとして反対意見が出ていました。


この改正はご承知のように、
当の定年延長の対象となる検察官の辞職により立ち消えとなりそうです。
かけ麻雀を検察のトップ要人が騒ぎの最中にもしていたということは、
違法性の問題だけではなく、
常識的センス・倫理観が疑われるとんでもないことです。


でもこの一連の騒動は、3権分立に対する国民の認識が進展する
という効果があったようです。

若手力士コロナ感染死に思う!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 スポーツ関係者のコロナ被害をご同情申しあげます。
 各スポーツの感染可能性の大小を確認いただきます。 
ねらい:
 あまり役に立つことはないようです。
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5月13日に大相撲3段目の力士勝武士が、コロナウィルス感染症で
なんと20代では日本初の犠牲者となってしまいました。
元気で将来を期待されていた力士のようで非常に残念です。
ご家族や関係者の方々の落胆はいかばかりかと、
心からお悔やみ申しあげます。


残念なことになった原因や経緯はいろいろあるようですが、
それについてはここでは触れません。


かたや、今年の高校野球夏の甲子園大会も
5月20日に中止が決定になりました。
こちらも無念の方、特に3年生、が多いだろうと拝察したします。
他の競技でも、残念な関係者が多数おられることと思います。
ご同情申し上げます。


そこでスポーツ競技の感染可能性の大小はどうなのだろうと
考えて見ました。


感染する(うつされる)可能性は、
接触する相手の人数、接触時間、密接度によります。


代表的なスポーツ・競技の感染度(感染可能度)を整理してみました。
以下のとおりです。


各スポーツの競技による感染可能度(1試合当たり)

種目
競技人数
密着対象人数
標準競技時間(分)
密着時間(分)
密接度
ランク
感染可能度
野球
18  
17
120
10
340
サッカー
22
21
90
10
1050
ラグビー
30
29
80
10
1740
テニス
120
10
20
バレーボール
12
11
80
10
330
バスケット
10
40
10
360
卓球
20
10
20
 
 
 
 
 
 
 
相撲
21
レスリング
35
ボクシング
30
10
50
柔道
35
空手
15
剣道
25
 
 
 
 
 
 
 
注: 
この表の数値は1試合当たりですから、
 1日に数試合を行う競技の場合は1日当たりだと大きな数値となります。


密着対象人数は、競技人数(交代は無視の人数)から1(自分)を引いた数。
テニスと卓球の競技人数はシングルとダブルスの平均としています。   
標準競技時間は、ルールで決まっていない競技は、一般的な実績によります。  
密着時間は、競技時間5分以内の競技はその時間、
                 競技時間がそれ以上の競技は頭打ちで10分
        (それ以上の時間は感染可能性という観点では同じであると考える)
としています。

密接度ランクは以下で設定しています。
  1.常時2メートル以上離れている 卓球、テニス    
  2.通常離れていて時に近づく 野球
  3.陣地内で密接なチームプレー バレーボール
  4.入り乱れて接近戦。サッカー、バスケット
  5.至近距離、時に密着  ボクシング、空手、剣道
  6.接近戦で密着もあり ラグビー   
  7.常時密着 相撲、レスリング、柔道


密着度の高い相撲やレスリングが感染度が高そうに思えますが、

この表によりますと、競技人数の多い種目がやはり感染度が高い、
となっています。
やはり、肉弾戦のラグビーが一番で、野球もそう低くはありません。
低いのは卓球やテニスです。相撲もそれ並みです。


密着時間や密着度をどう設定するかで数値は変わると思いますが、
大勢は同じでしょう。
しかし実際の感染リスクは、
試合よりも練習や稽古の方が大きいかもしれません。


競技開催による感染可能性は、選手による場合よりも
観客同士の場合の方が圧倒的に大きいですから、
無観客で大相撲を開催したのは正解です。
高校野球を無観客で開催するということは、考えにくかったのでしょうね。


ところで、この数値は何に使えるのでしょうか。
作ってから疑問に思っています。申し訳ありません。

2020年5月22日金曜日

「SNSを賢く使うために知っておきたいいくつかのこと」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 SNSの特徴を理解いただきます。
 その上で「賢く利用しましょう」という提言をご紹介します。
ねらい:
 SNSを賢く利用いたしましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本項は、學士會会報2020年Ⅲ号に記載された
三浦麻子大阪大学人間科学研究科教授の寄稿のご紹介です。


こういう記述があります。


SNSというインターネットメディアが市民権を得て久しい。
SNSは「ソーシャルネットワーキングサービス」の頭文字をとったもので、
2005年前後に相次いで開始された
TwitterやFacebookがよく使われている。


本稿では,SNSを利用するという前提に立って、
社会心理学的な立場から,SNSの特徴と、
SNSでのコミュニケーション、特に情報受信に際する留意点を解説する。
社会心理学では、人の心理やその表象としての行動の規定因を考える際に、
その人自身の特性だけでなく、どのような状況に置かれているかを重視する。
SNSという場そのものや、そこに集まる情報の特徴をよく知ることを
賢く使うことにむすびつけていただきたい。


0.SNSの普及率
総務省「令和元年版情報通信白書」によれば、
2018年現在のSNS利用率は調査対象者(6歳~80歳以上28,875名)
全体の60.0%で、13歳~49歳では70%を超えている。
個人同士の会話の場としては、電話やメールを凌駕しつつあり、
(中略)
人が何らかの情報と触れあう(広義のコミュニケーション)際の
主要なメディアとなっている。


1.SNSでの情報発信の特異性


SNSでの情報発信は、
参加者を介して特定の仲間を超えて展開していく可能性があるので、
「家族」「親友同士」「職場仲間」といった
文脈に応じたコミュニケーションを困難にする。


東洋と西洋を比較すると、
東洋人は自分自身を周囲の人々との関係性を踏まえて捉える
相互依存的自己観をもつ傾向が強いため、
関係性すなわち文脈の混在は,SNSで提示する自己を定まりにくくさせる。
そのため、ある個人が複数のアカウントを登録して、
文脈に応じてそれらを使い分けることで混在を避けるケースも少なくない。


2.SNSで入手する情報の偏り1 タコツボ化
SNSの仲間は、ある目的を持って集まっているので、
そこでの情報流通には何らかの偏りが発生する。
個人が政治的イデオロギーを鮮明に持つ傾向が強いアメリカでは、
SNS上でも保守とリベラルはつながりが弱く、
意見はほとんど分断されている。
「タコツボ」化の可能性がある。


3.SNSで入手する情報の偏り2 我田引水
SNSでの情報は、見る情報ではなく、
自分が読んで解釈するものである。
したがって、読む時点で自分の考えが影響する。
自分が都合のよいように解釈する。
我田引水となりやすいのである。


4.SNSで入手する情報の偏り3 確証バイアス
不安があると不安を助長する情報は伝わりやすい、
強い不安を伴う投稿は極めて強い伝播性をもつ。
確証バイアスは
「仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、
反証する情報を無視する、あるいは集めようとしない傾向」
という定義のようです。
不安があるとそういう情報がどんどん伝わっていくということです。
その中にはデマ情報も含まれます。


2020年1月末現在、
中国・武漢に端を発する新型コロナウィルスによる
肺炎の感染が世界的拡大の様相を呈している。
時あたかも春節で、中国人旅行客が数多く来日するから、
中には不心得者もいるかもしれない、と思っていると、


「武漢から関西国際空港に入国した感染疑いのある観光客が
病院から逃げた。USJと京都に行くらしい。気をつけて」
という情報が信頼性の検証を経ぬままに真実味を帯びて見えてくる
(結局、この情報は発信されたその日のうちに
空港運営会社によって公式に否定された)


緊急事態では殊更に慎重に情報の信頼性判断をしていただきたい。


このブログもSNSです。ご留意くださいませ!!


で終えていましたら、5月23日美人女子プロレスラー木村花さんの
死亡ニュースが伝わってきました。
母親に対する次の言葉が残されていたようです。
「お母さんごめんなさい、産んでくれてありがとう」


彼女は、心ない人たちからの誹謗中傷に悩んでいました
(本人のツィッターによる)。
中には「死ね、気持ち悪い、消えろ」などという言葉もあったようです。
女子プロレス界の人気あるスターだったのに、たいへん惜しいことです。


次の5.を追加すべきです。


5.SNS情報の危険性
SNS情報は匿名でも発信可能です。
そのため、無責任な誹謗中傷が横行する危険性があります。
この取締り強化も検討開始されているようですが、
実効性はかなり疑問で、
個人の自覚・倫理観に期待することが基本です。

「今どきの日本語」金田一さんによる日本語の話題

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日本語について考えていただきます。 
 日本語の面白さを再確認していただきます。
ねらい:
 今後、日本語にもっと関心を持っていただきましょう。 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この項は、學士會会報2020年Ⅲ号に記載された
金田一秀穂杏林大学特任教授・言語学者著「今どきの日本語」
からのご紹介です。

著者は高名な金田一京助先生の孫、金田一春彦先生のご子息です。
本論は、ご両名のような学識豊富な学術的内容ではなく、
くだけた興味深い内容となっています。

こういう内容です。
1.嬉しみ、やばみ、つらみ、会いたみ、わかりみ、おいしみ
嬉しいの名詞形は嬉しさですが、面白みや甘みにならって
若い人たちがこう言うのだそうです。
「面白さ」と言うと、面白さの程度を測る尺度的な意味合いがあるのに対して、
「面白み」は既に面白いのです。
なるほどそうですね。

2.「犬と猫」か「猫と犬」か、西東(にしひがし)、浮き沈み
2音と3音では、2音が先→にしひがし、みぎひだり
良い意味の言葉が先→浮き沈み、(善悪、良否など多数あり)
犬と猫は言いやすさが違いますが、理由は研究されているが不明とのこと。

3.「1日おき」と「24時間おき」
「1日おき」は1日空けて翌々日、「24時間おき」は開けないで24時間ごと。
「1週間おき」はどちらか? 講演会での多数の判断は半々だそうです。
「オリンピックは4年おきに開く」はどうか?
先生は3年おきと言うべきと言われていますが、
私は、「3年おき」を使うなら、「3年おきで」開くといえば、
間が3年という意味になるのではないかと思います。

4.「机の前にいる」はどういう意味?
机の前を単純に受け止めれば、列として机が後ろにあることになる、
教壇で先生が机の前に立っている、のは机が前にある。
(なるほど、面白い着眼ですね)

5.カタカナで書くのはどういう場合?
1)外来語、2)ドキドキなどの擬音語・擬態語、
3)カラス・アサガオなど動植物が基本。
それ以外に強調したい場合などに使われる。
アホ、バカ、マヌケ、メガネ、ゲタ、アメ、、カギ、オバチャンはなぜ?

いろいろ面白い問題提起をしていただきました。
学生が画一的な思考で答えを書くことにも、やはり問題提起をされています。
こういうことも言われています。

学生たちの作文の書き方にもうんざりします。
国語教育では、言葉はコミュニケーションの道具であるという
基本的な考えに縛られていて、
文章は分かりやすく相手に伝わるように書けと教えているせいか、
冒頭に結論が書かれ、後から理由を列挙しているのです。

人は、自分が何を考えているか分からないから、文章をかくのです。
書いているうちに自分の考えが整理され、結論が見えてくるのです。
だから、書くことの意義があるとしたら、結論は最後に書くべきです。
文章を完成させて初めて、
ああ、自分はこんなことを考えていたんだなと分かるのです。

村上春樹もドフトエフスキーもプルーストも、
簡単に結論が出せない問題について、
そうやって何千枚も書くことで一所懸命に考えたのです。

書きながら考えがまとまってくることがあることには賛成ですが、
先生は文章を一緒くたにしています。
論文と創作ものは別でしょう。

さらに、気が付いたことがあります。
先生はやはり人文科学者です。
私の説では、人文科学者の著作は、
事実・意見の列挙が中心で全体としての論理展開がない、
したがって読者は、全貌を把握することが容易ではない、としています。

今回その自説を再確認できました。


台湾の国情から何を学ぶ?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 台湾の歴史・現状を再確認します。
 国としての大きな選択肢がありながら、
  現実的な中間派が多数を占めるという現状を確認します。
 ひるがえって、日本はどうなのかを考えてみます。
ねらい:
 正当なナショナリズム(愛国精神)を強化しなければなりません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この項は學士會会報2020年Ⅲ号に記載された
若林正丈早稲田大学教授台湾研究所所長の論考からのご紹介です。
その内容を基に、日本のことをつらつら考えて見ました。


この論考では、1996年から行われている台湾総統選挙の
背景や推移状況が詳しく紹介されています。
これまで台湾総統に選ばれたのは、以下のとおりです。


第1回 1996年 李登輝国民党
第2回 2000年 陳水扁民進党
第3回 2004年 陳水扁民進党
第4回 2008年 馬英九国民党
第5回 2012年 馬英九国民党
第6回 2016年 蔡英文民進党
第7回 2020年 蔡英文民進党


ご承知のように国民党は中国寄りであり、
民進党は独立志向です。
それが8年おきに変わっています。


戦後1党独裁であった国民党の支持は
大きな傾向としては低下しています。
しかし、民進党の不始末があると、
総統選では国民党が勝利したりしているのです。
日本の民主党政権の失敗のようなものでしょう。


「自分は台湾人である」という意識の人は、
変わらずに増え続けているます。


自分は中国人であるか台湾人であるかという設問に対する
世論調査結果はこうなっています。
1992年の第1回調査 「自分は台湾人である」は20%以下
1999年 それが40%近くになり
2007年 には43%となった。 
2014年 60%超えて
2016年以降 55%周辺である。


別の台湾のTV局が実施した世論調査(2000年と2013年の対比)では、
2択で「台湾人である」は約60%→約80%
    「中国人である」は約20%→約10%


同じ調査で興味深いのは
3択だと「台湾人である」は約40%→55%
     「中国人である」は9%→3%
     「両方である」が約50%→約40%と結構多いのです。
(両方であるが10%減ってその分が台湾人であるの増になっています)


当然、現在の台湾の状況になってから生まれ育った人は
台湾人であるという意識が強いでしょう。


台湾人のイデオロギーは
a.台湾独立を主張する「台湾ナショナリズム」
b.中国との統一を主張する「中国ナショナリズム」
c.その中間に「中国アイデンティティ」がある
(東京外語大学小笠原欣幸教授説)と言われています。


台湾アイデンティティとは、
1)自分たちの政治体は中国とは違うという認識からくる台湾主体性意識、
2)「台湾人」としての自己意識、
3)民主化された台湾への強い愛着
などを指す漠然とした言葉で、
独立・統一問題では「現状維持」となる最大多数の中間派を構成します。


現実を見た場合には、台湾独立も中国との統一も困難である、
という現実派です。
この中間派が、状況によって
右寄りや左寄りの選択をして国政を動かしているのです。


因みに、総統選挙での2大政党は、
「台湾独立」も「中国との統一」も主張していないのだそうです。


中間派がどちらを向くかで、
選挙結果(政権)の行方が決まるということなのです。


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そこで、日本はどうなのだろうと考えて見ました。
台湾の左右の選択肢はナショナリズムと中国依存です。


独立か現状維持かの選択肢を持っている国もあります。
戦後の多くの旧植民地国家がそうです。
しかしそういう選択肢が宙ぶらりんで
長く続いている国はなく。決着がついています。


ロシアに併合されたウクライナや、モンゴル、ネパールなども
大きな選択肢がある国です。


ひるがえって日本は、
大きく振れるだけの選択肢がないのです。


戦後の日本は、米国等の他国依存とナショナリズムのはずですが、
敗戦と戦後政策によって、
まっとうなナショナリズムが消されてしまいました。


安保反対運動も純粋なナショナリズムではなく。単なる反米です。
朝日新聞が知識人の思考をリードしましたが、
その主張原理はナショナリズムではなく単なる反米・反支配層です。


憲法改正も、
まっとうなナショナリズムの観点でも検討すべきなのですが、
今は憲法改正がタブー視されています。
なぜでしょうか?


多くの資本主義・自由主義国家での対立の構図は保守と革新です。
保守と革新は、資本家層と労働者層の基盤が基本です。
現状は資本家層が経済を握っているので
それを守ろうとするので「保守」となり、
それに対抗しようとする労働者基盤は「進歩・革新」
という位置づけとなります。


米国の共和党と民主党も基本的にはその構図です。
英国の保守党と労働党も同じでしょう。


日本の保守と革新も基本的にはその構図です。
日本の保守は農業を含めた事業者・産業基盤です。
革新は労働者・勤労者基盤であったのですが、
その階級意識が薄れましたので、
どちらかと言えば、低所得者層基盤でしょうか。?


しかし資本主義・自由主義国では、
保守と革新の政策は抜本的に異なるということはありません。
どちらかが政権を担っても
極端にどちらかの有利性で政策を動かすことはできません。


資本と労働は共同して経済を支えているので、
どちらかが弱くなれば経済すなわち国家がなりたたなくなってしまう
という認識があるから、です。


過去日本では民主党政権を選択しました。
これは単なる低迷状態の現状否定で
主義主張に基づいたものではありません。


日本の民主党政権は、
野党時代の無責任主張を一部実現しましたが、
機能せずに多くは撤回の羽目となっています
(沖縄基地問題、八ッ場ダム、,多くのバラマキ政策)


日本は1億総中流と言われた時もあるように、
多くの勤労者は資本家に対峙する労働者だとは思っていません。
ほとんどがその意味で中間層なのです。
中間層が多数を占めるという点では、台湾と同じです。
しかし、
日本国民は台湾と違って大きな選択肢を持っていないのです。


今後日本でも、何か非常時が発生し選択肢が出てくれば
台湾のように状況によって右か左かに振れる可能性があります。


何が選択肢として発生する可能性があるでしょうか?


一つの可能性は、
自由主義国家継続か中国圏国家に入るか、でしょうか?。
2030年ころ、中国が世界一の経済大国になる頃から
世界中の国にとってこの選択肢は現実問題となってくるでしょう。


米国が中国経済圏国家になることは考えられませんし、
世界中が中国のような1党独裁主義になることも考えられませんので、
この両者の選択肢状況は発生しうることです。


自由主義国家の場合、
米国が大きな経済力を持つということはあっても、
他国を政治的・軍事的にに支配しようという意図は持っていません。
自由主義国家にとって独立性は維持されるのです。


ところが、中国の場合は一党独裁の覇権主義であり、
他国を自国の勢力圏に組み込んでしまおうという動きをします。
現に、チベット、ウイグルの同化をはじめ、
モンゴルやネパールも狙われています。


中国の覇権主義は、
歴史的に見ても民族の血であると言われています。


近隣国だということで、そういう動きになってきたら
日本はどうなるでしょうか。


対抗するとすれば、その力になるのはナショナリズムのはずです。


ナショナリズム(愛国主義)をほとんど忘れてしまった日本人は、
どうするのでしょうか?


この問題を考える上で、ぜひ参考にしていただきたいのは、
渡辺洋一さんの「目覚めよ日本」です。
上野則男のブログでも以下のように3回ご紹介しています。


2013.4.1「いよいよ渡辺洋一さんの「目覚めよ日本」が出ました!! 」
http://uenorio.blogspot.com/2013/04/blog-post.html
2012.12.9「日本は本当に危ない!その意味分かってますか?」
http://uenorio.blogspot.com/2012/12/blog-post_9.html
2013.7.17「中国は「国家総動員法」で日本を狙っている!!! 」
http://uenorio.blogspot.com/2013/07/blog-post_2159.html