2020年5月22日金曜日

「今どきの日本語」金田一さんによる日本語の話題

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日本語について考えていただきます。 
 日本語の面白さを再確認していただきます。
ねらい:
 今後、日本語にもっと関心を持っていただきましょう。 
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この項は、學士會会報2020年Ⅲ号に記載された
金田一秀穂杏林大学特任教授・言語学者著「今どきの日本語」
からのご紹介です。

著者は高名な金田一京助先生の孫、金田一春彦先生のご子息です。
本論は、ご両名のような学識豊富な学術的内容ではなく、
くだけた興味深い内容となっています。

こういう内容です。
1.嬉しみ、やばみ、つらみ、会いたみ、わかりみ、おいしみ
嬉しいの名詞形は嬉しさですが、面白みや甘みにならって
若い人たちがこう言うのだそうです。
「面白さ」と言うと、面白さの程度を測る尺度的な意味合いがあるのに対して、
「面白み」は既に面白いのです。
なるほどそうですね。

2.「犬と猫」か「猫と犬」か、西東(にしひがし)、浮き沈み
2音と3音では、2音が先→にしひがし、みぎひだり
良い意味の言葉が先→浮き沈み、(善悪、良否など多数あり)
犬と猫は言いやすさが違いますが、理由は研究されているが不明とのこと。

3.「1日おき」と「24時間おき」
「1日おき」は1日空けて翌々日、「24時間おき」は開けないで24時間ごと。
「1週間おき」はどちらか? 講演会での多数の判断は半々だそうです。
「オリンピックは4年おきに開く」はどうか?
先生は3年おきと言うべきと言われていますが、
私は、「3年おき」を使うなら、「3年おきで」開くといえば、
間が3年という意味になるのではないかと思います。

4.「机の前にいる」はどういう意味?
机の前を単純に受け止めれば、列として机が後ろにあることになる、
教壇で先生が机の前に立っている、のは机が前にある。
(なるほど、面白い着眼ですね)

5.カタカナで書くのはどういう場合?
1)外来語、2)ドキドキなどの擬音語・擬態語、
3)カラス・アサガオなど動植物が基本。
それ以外に強調したい場合などに使われる。
アホ、バカ、マヌケ、メガネ、ゲタ、アメ、、カギ、オバチャンはなぜ?

いろいろ面白い問題提起をしていただきました。
学生が画一的な思考で答えを書くことにも、やはり問題提起をされています。
こういうことも言われています。

学生たちの作文の書き方にもうんざりします。
国語教育では、言葉はコミュニケーションの道具であるという
基本的な考えに縛られていて、
文章は分かりやすく相手に伝わるように書けと教えているせいか、
冒頭に結論が書かれ、後から理由を列挙しているのです。

人は、自分が何を考えているか分からないから、文章をかくのです。
書いているうちに自分の考えが整理され、結論が見えてくるのです。
だから、書くことの意義があるとしたら、結論は最後に書くべきです。
文章を完成させて初めて、
ああ、自分はこんなことを考えていたんだなと分かるのです。

村上春樹もドフトエフスキーもプルーストも、
簡単に結論が出せない問題について、
そうやって何千枚も書くことで一所懸命に考えたのです。

書きながら考えがまとまってくることがあることには賛成ですが、
先生は文章を一緒くたにしています。
論文と創作ものは別でしょう。

さらに、気が付いたことがあります。
先生はやはり人文科学者です。
私の説では、人文科学者の著作は、
事実・意見の列挙が中心で全体としての論理展開がない、
したがって読者は、全貌を把握することが容易ではない、としています。

今回その自説を再確認できました。


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