2023年7月30日日曜日

ビッグモーター事件で損保事業の弱点が確認できました!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 とんでもない会社だったビッグモーター事件の一部を確認します。

ねらい:
 「性善説」はだんだん通らなくなるのでしょうか。
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テレビで大々的に宣伝を繰り広げていた
中古車ディーラー「ビッグモーター」社の事件では、
いろいろな悪行があぶり出されています。

その一つは保険金の不正請求です。
とんでもないことですね。
売り上げを不当に増やすための完全な不正行為です。

こういう背景があるようです。
自動車のディーラー(販売代理店)は損保会社の代理店をしています。
自動車を買う人は、自動車を買うときに、
そこで一緒に自動車保険の加入手続きもします。

損保会社からすると、ディーラーはお客様なのです。
自動車で事故に遭った人は、ディーラーで修理をしてもらいます。
ディーラーは、損保会社に費用請求をします。
損保会社は、
その請求内容を精査して正当な請求であるかどうかを判断し、
OKであれば、支払いを行います。

その際に、大手ディーラーは大顧客ですから
損保会社としては「弱い」立場です。
多少怪しいことがあっても認める(ことがある)ようなのです。
ビッグモーターの不正請求についても、
黙認していたのではないかという説もあります。
損保会社の調査・査定には。甘辛加減があるようです。

「損保会社は、不正請求の共犯者である」ということを言っている
業界通の評論家がいました。

こういう状況を一般には「利益相反」といい、規制があります。
米国や、中国でも!、
ディーラーの保険代理店契約は禁止されているのだそうです。
日本は、性善説の国ですから遅れているのです。
ビッグモーターにその弱点を突かれました。

それで思い出したことがあります。
昔のことですが、
私がクルーザーヨットを網代の漁港で保有していた時のことです。
近くに、立派なヨットハーバーがあったのですが、
満員か高いかで利用しませんでした。
親しくしていた漁師の「親分」に頼んで漁港内に係留しました。

その時に保険をかけるのですが、
関係者から「東京海上は厳しいから他を利用した方がいいよ」
と言われてそうしました。

その後、大型台風がやってきて、
なんと!ヨットは岸辺に打ち付けられて木っ端みじんになりました。
台風の力は凄いですね!!

そこで大破の写真を撮って保険請求をしました。
保険の条件に、「しかるべき設備のあるハーバーに係留していること」
とかいうことがありました。
そこで、漁師のおじさんに署名をもらって届けたのです。

厳密に言えば✖なのですが、
書類審査だけで数百万円の保険金が振り込まれました。
東京海上であれば、
現地確認がされた結果、保険金が出されなかった可能性があります。

今にして思えば、なるほどそうだったか、と思います。

損保会社としては、
お客様サービスのためには迅速な査定行為をしなければなりませんが、
かたや、的確・適正な査定も必要です。
その両者の条件を成立させるために,AIの活用が増えてくるでしょう。
ビッグモーター扱いの最大手である損保ジャパンは、
AI活用をしていなかったのでしょうか?


2023年7月27日木曜日

DXに関する新たな情報のご提供です!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 DXで実現すべき事項(DX目的)につきましては、
 当然ながらビジネス特性によって異なるという点を
 ご紹介いたします。
ねらい:
 その前提で、適切なDX目的を選定しましょう。
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本項は、DX開発の企画ガイドである「MIND-DX」を
各社にお勧めしているうちに見つけました
DX検討の「新原理」のご紹介です。

それは、DXで何をするかは、ビジネス特性によって大きく異なる、
ということなのです。

これは気が付いてみれば当然のことなのですが、
そういうご意見は識者からは述べられたことがありません。
ご担当からすれば「当たり前だ!」ということかもしれません。

以下に、若干順序だててご説明いたします。

1.啓蒙段階でDXについて理解すべき事項

私は、システム関係者が一般的にDXについて理解すべき事項は、
以下の6項目ではないかと考えます。
皆様のところにもしこのような啓蒙ガイドがありましたら
比較してみてください。

DXの企画ガイドであるMIND-DXでは、
この表にありますように、その中にこの6項目を収録しています。

この第2項である「DXの基本的選択肢」(前掲「新原理」)
につきましては、
一般にそのような考え方を見たことがありませんので、
今回、ご紹介いたします。

ビジネス特性によって、好ましいDXの選択肢が変わるということなのです。
 

啓蒙段階で理解すべきDX事項

その内容

MIND-DXにある参照手法

1.DXの本質

DXは何であるかの理解

「DXの本質」

2.DXの基本的選択肢

各社のDXには選択肢があることの理解

「DXの基本的選択肢検討ガイド」

3.DXの成功事例

日本のDXの代表的成功事例の理解

「DX代表的成功事例」

4.DXの成功要因

日本のDXの成功要因の理解

「DXの成功要因」

5.DXの利用技術特性

日本のDXの主要な利用技術の理解

「DX一般的利用技術」

6.DXの検討手順

DX検討の進め方の理解

「MIND-DXのタスク構成」


注:MIND-DXの「DX代表的成功事例」では、
  下記のDXタイプを表示しています。

2.「DXの基本的選択肢」の内容
少し長いですが、以下のとおりです。

DXの基本的選択肢検討ガイド

 1)    DXの基本的選択肢の理解

   DXの基本的選択肢としては、以下のAタイプとBタイプが存在します。

DXの基本的選択肢

実現すること

検討の起点

DX目的・事業競争力強化の実現

成功時の効果

開発リスク

Aタイプ

(外向き)

お客様が望んでいる価値の実現

1)既存サービスの革新

または

2)新規サービスの開発

お客様の潜在的ニーズを、調査・分析によって引きだす。

直接的

Bタイプ

(内向き)

それを可能とする社内体制の整備

1)基幹業務の高度化・効率化

2)従業員能力・満足度の向上

社内基幹業務革新の有効性を、分析により把握する。

間接的

内容次第

内容次第

 

2)    DXの基本的選択肢とビジネス特性の組み合わせ

 ・ DXの基本的選択肢は、
   ビジネス特性との組み合わせで以下の4通りの選択肢
  (DXタイプ)ができます。
 ・ 個人向けビジネスのPはPrivateのPで、
   法人向けビジネスのQはQuantity(多数)のQです。

ビジネス特性

DXの基本的選択肢

Aタイプ

(外向きDX)

Bタイプ

(内向きDX)

個人向けビジネス P

PA

PB

法人向けビジネス Q

QA

QB

  ・IT協会と実施した54件の成功事例調査では、

   上野則男のブログ: 「DXはじめの一歩と成功への道筋」が出ます!!    (uenorio.blogspot.com)
   以下の構成比でした(一部重複を含みます)。
    PA 21件 39%
    PB 12件 22%
    QA 15件 28%
    QB 11件 20%

  3)    DXタイプの選択肢の優先度

   ビジネス特性による選択肢(DXタイプ)の選択基準は以下であると考えられます。

ビジネス特性

Aタイプ

Bタイプ

備考

個人向けビジネスの場合 P

PA

PB

事業競争力強化を目指すのであれば、まずはAタイプを検討すべきであるが、BタイプDXの期待効果が大きいのであれば、それも検討対象とする(以下の5)参照)

法人向けビジネスの場合 Q

QA

QB

両者の効果・リスクで判断する。(以下の4)5)項参照)

  ・ 個人向けビジネスのDXは、Aタイプを検討すべきなのですが、
   (前掲のデータでも,PAは最大です)
   法人向けビジネスの場合は、一概にそうとも言えない、
   ということです。

 

4)    法人向けビジネスAタイプDX(QA)の効果・リスクの判断の目安

QAの場合の「効果」「リスク」項目は以下が一般的です。
・ これを参考に、その大小を評価します。

現在のビジネスの状況等

効果

リスク

自社の主力ビジネスである

競合の多いビジネスである

 

競合に対して劣位にある

 

DX方式のヒントがある

 

注:法人相手のビジネスでのAタイプDX(QA)は、
  基本的には製品・サービスの提供方法に対する革新であり
  その多くは納期短縮です。
  (製品自体の改良や用途開発は
  ことさらDXの範疇には入らないのです)
  
  前掲のデータで,QAは16件ありましたが、
  そのほとんどは新サービスをビジネスとして提供しようとするものです
  から(お客様は売込相手)、当然お客様の価値を訴求します。

  ですが、DXは「事業競争力強化」を目的としますので、
  その新製品が売れて初めて「事業競争力強化』の実現になるのです。
  事業競争力強化になるほど売れるまでは,DXをした、とは言えないのです。
  正確には、「DX」ではなく「DX準備」と言うべきものです。

  そうではなく、
  自社のお客様に対するサービス改善の実現は、2件しかないのですが、
  その改善価値は、実質的に「納期短縮」でした。

  そのうちの1件の納期短縮は、
  社内業務の改善の結果実現しているもので、
  お客様に対する納期改善の目的で実現した納期短縮案件は、
  「富山の薬売り」方式を実現した原材料納入案件だけでした。

 5)   BタイプDX(PB、QB)の効果・リスクの判断の目安

  ・ PB、QBの場合の「効果」「リスク」項目は以下が一般的です。
  ・ これを参考に、その大小を評価します。

現在の検討対象基幹システムの状況

効果

リスク

安定して稼働している

 

利用者からの改変要望が多い

 

利用者のシステム内容に対する不満が多い

 

ソフトウェア保守の生産性が低い

システムの機能追加の際に時間がかかる

 

システム改革のヒントがある

 

稼働して20年以上経過している

 

システムの規模が巨大である(1万本以上)

 

システム内容の精通者がいない(少ない)

 

システムドキュメントが不備である

 


3.(ご参考)MIND-DXにおける検討指針を示す
  「タスク定義書」のサンプル


 

このように、タスク定義書から必要な「様式」「事例」「参照手法」が
リンクでご利用いただけるようになっています。

前掲の「参照手法」も参照できるようになっていることがお分かりいただけるでしょう。


もし、啓蒙段階で、参照手法のガイドを学んでいただいていますと、
啓蒙段階の基本的理解から具体的検討までがシームレスに
連続することになります。

2023年7月26日水曜日

たまには漢字の勉強もいかが?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 漢字のあれこれを整理してみました。
ねらい:
 もっと研究しなければいけませんね。
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これは、中学1年の孫のために作ったものです。
ご参考までに、公開します。


個々の文字についての由来や解釈については、
南鶴渓氏著「文字に聞く」が非常に勉強になります。
「〇 丸は四角、四角は丸?」
「十 横棒は人生、縦棒は歴史」
「愛 鷲づかみにされた心」
「學 学ぶは真似ぶ」
などの項目があります。




1.漢字の日本における歴史
以下は、「ことば研究館」の「ことばの疑問」からの転載です。
本格的に、日本人が漢字を使いだしたのは、
538年の仏教伝来と相前後していると言われています。




日本語を話す人々が漢字に最初に出会った時期は、
金印(福岡県志賀島出土)や銅銭(長崎県シゲノダン遺跡出土)
などから、1世紀ごろだと推定されています。
いずれも中国大陸で製作された品で、
金印には「漢委奴国王」、銅銭には「貸泉」という漢字が
記載されています。

5世紀ごろになると、日本で制作された鉄剣や銅鏡に、
日本の地名や人名が漢字を用いて記載されるようになります。
稲荷山古墳(埼玉県行田市)出土の鉄剣の銘文には
「乎獲居(ヲワケ)」「意富比垝(オホヒコ)」という人名、
「斯鬼(シキ)」という地名が刻まれています。
江田船山古墳(熊本県玉名郡和水町)出土の鉄剣の銘文や、
隅田八幡宮(和歌山県橋本市)伝来の銅鏡にも
人名・地名が漢字を用いて記されています。
ただし、これらの品の製作には
渡来人が関わっていた可能性が指摘されています。



2.平仮名、カタカナの歴史
(1)万葉仮名
ひらがな、カタカナができる前は、
日本語の音を漢字に当てはめた万葉仮名が使われていました。
出典:Wikipedia


万葉仮名の例1 仮名主体表記:
安思比奇能 夜麻毛知可吉乎 保登等藝須 都奇多都麻泥尓 奈仁加吉奈可奴
(あしひきの やまもちかきを ほととぎす つきたつまでに なにかきなかぬ)


万葉仮名の例2 訓字主体表記
春過而 夏来良之 白妙能 衣乾有 天之香来山
(はるすぎて なつきたるらし しろたへの ころもほしたり あめのかくやま)

(2)ひらがなの由来
以下のように漢字を崩してひらがなが生まれました。
西暦900年頃の平安時代のことでした。
出典は、「ゆめりんく キッズスクール」です。



(3)カタカナの由来
以下の出典:Wikipedia
漢字の一部を使いその文字の代わりとして用いることは
7世紀中頃から見られるが、片仮名の起源は
9世紀初めの奈良の古宗派の学僧たちの間で漢文を和読するために、
訓点として借字(万葉仮名)の一部の字画を省略し付記したものに始まる
と考えられている。



3.漢字の成り立ち(六書・りくしょ)
漢字の成り立ちや構造には6タイプがあり、
これを「六書(陸書)」と言うようです。
以下出典は「漢字の歴史」です。


(1)象形(しょうけい)文字
物の形を象(かたど)って作った漢字です。
「山」は山が並んでいる様子、「人」は人が立っている様子、
「門」は家の入口の様子です。
これら以外に、日・月・川・羊・馬・目・口・刀などが象形文字です。









(2)指事(しじ)文字
図や記号を使うなどして抽象度の高い概念を表した漢字です。
「本」は木の根元に印をつけ根元を表しました。
一・二・三・上・下などが指事文字です。


(3)会意(かいい)文字
象形文字や指事文字を意味的側面から組み合わせ
新しい意味を持たせた漢字です。
「林」は木を二つ並べたもので、木がたくさんある場所を示しています。
「休」は人と木で、人が木にもたれて休んでいる様子を表しています。
このタイプの漢字には北・炎・明・見・祭・進、岩、男、位、品、鳴
などがあります。
(上野注:男は田で力を出さねばなならないのです)



(4)形声(けいせい)文字
象形文字や指事文字を意味と音の両側面から組み合わせて
新しい意味を持たせた漢字です。
部首からは意味を、旁(つくり)からは音を取って組み合わせます。
「湖」はサンズイ+胡で、サンズイは水を表し、旁である胡は音を表し、
日本語の音読みでは「コ」となり「湖」を表します。
このタイプの漢字には清・菓・酒・抱・校などがあります。
漢字の80%以上は形声文字だと言われています。


(5)転注(てんちゅう)文字転注とは何か、実ははっきりしていません。
お互いに意味を注釈し合う文字どうしのこととか、
ある漢字を意味のつながりによって
他の漢字に転用することなどいろいろな説があります。


以下は、別のところからの転載です。
 転注とは、元の意味に類似した別の意味になった文字です。
 たとえば、「音楽」の意の「楽(がく)」の字を「ラク」と発音し、
 「たのしい」の意味になることです。
 例は以下です。
 「楽」「長」「悪」


(6)仮借(かしゃく)文字
ある文字を借りてきて同音の新単語を作ることです。
たとえば「北」は「背(そむ)く・離れていく」という意味でしたが、
同じ音なので「(方向としての)北」を意味するようになりました。



4.国字
これも出典は「漢字の歴史」です。
国字とは日本人が漢字の構成法を使って作り出した和製漢字のことです。
日本人は「会意文字」の方法、
つまり意味的側面から漢字を組み合わせて新しい漢字を作りました。
たとえば、
 峠:とうげ 山の上り下りの境目
 辻:つじ  十字路
 畑:はたけ 穀物や野菜などを作る農地。昔は焼き畑を意味した。
 「畠」も国字でこちらは焼き畑ではない畑作農地
 躾:しつけ 礼儀作法を教え込むこと
 鱈:たら 冬捕れる魚。または身の白い魚
 鰯:いわし 弱くて傷みやすい魚



これは別のところからの転載です。 
 小学校で習う、いわゆる教育漢字
 (漢字検定協会では「学習漢字」と呼ぶ)は、 1006字ある。
 その中で「国字」は、畑(3年)と働(4年)だけである。
  常用漢字まで広げると、
 峠(とうげ)、込(こ・む)、枠(わく)、塀(へい)、
 搾 (サク/しぼ・る)、腺(せん)、匂(にお・い)、栃(とち)
 の8字が加わる。


上野注:
魚や植物の名前にはたくさんありそうです。


5.漢字の書体
歴史的にはもっとあったのですが、ご承知のように
現在も日本で使用されているのは楷書、行書、草書です。
行書も草書も急いで書くために崩された文字です。
例示は省略します。


6.読み
漢字の読み方には、ご承知のように、音読みと訓読みがあります。
中国での漢字読みが音読みで、日本語対応での読み方が訓読みです。
 例:湖 音読み=コ、訓読み=ミズウミ
音読みの音には、もとが漢時代の漢音と唐時代の唐音があります。
行燈、行火のアンは唐音なのだそうです。


7.漢字の文字数
1)異体字(体、躰、體、軀)を含まない正字数で29,921字ある
 (中華民国(台湾)行政院教育部の「異體字字典」)
2)漢和辞典の元祖、大修館書店で出版されている大漢和辞典では、
  約50,000字が記載されている。
3)JISのUnicode数(PCで使える数) 70,234字
4)日本の常用漢字
  2,136字、4,388音訓(2,352音、2,036訓)からなる。
5)日本の小学校で習う教育漢字
  1,006字
6)日本の人名用漢字
  861字
  (愚息誕生のときには使えなかった隼の字がその後使えるようになるなど、
  拡大されています)



8.漢字の部首
漢字の字体は左右や上下などで分解して、その部分から分類することができます。
それらは位置によって「偏(へん)」「旁(つくり)」「冠(かんむり)」「脚(あし)」「構(かまえ)」「垂(たれ)」「繞(にょう)」の七種に分けられます。
これを偏旁(へんぼう)、または偏旁冠脚(へんぼうかんきゃく)、
部首といいます。


小学校で習う漢字のすべての部首別の漢字一覧は、
以下で参照することが可能です。
漢字ミュージアム「部首と漢字いちらんシート」
a37d5cc25ac4ce4f9a9c4760e2e8d7cf.pdf (kanjimuseum.kyoto)

以下の表の例示では、分かりにくい部首のみの字形を示しています。

部首名

説明・例示

偏(へん)

 

主に漢字の左側に位置する部分のことです。
「にんべん・てへん・さんずい・きへん・ごんべん」などが該当します。

以前、公文発行の小学校で習う教育漢字表で、その数を調べたことがありましたが、上掲の「部首と漢字いちらんシート」によると、以下の数でした。 

 にんべん 43個、さんずい 41個
 ごんべん 32個、きへん 30個
 てへん 22個、でした。

人間は、水と木のそばでしゃべりながら育ったのですね。

旁(つくり)

 

主に漢字の右側に位置する部分のことです。
「りっとう刂・ちから力・おおざと阝・ぼくづくり僕・おおがい頁」などが該当します。

冠(かんむり)

 

漢字の上側に位置する部分のことです。
「くさかんむり・うかんむり・あなかんむり・たけかんむり・あめかんむり」

などが該当します。

脚(あし)

 

漢字の下側に位置する部分のことです。
「ひとあし儿・こころ心・れっか灬・さら皿・にじゅうあし弁」などが該当します。

構(かまえ)

 

漢字を包むように外側に位置する部分のことです。
「くにがまえ・もんがまえ・ぎょうがまえ行・はこがまえ匡・かくしがまえ匸」などが該当します。

垂(たれ)

 

漢字の上側から左下にかけて位置する部分のことです。
「がんだれ厂・まだれ广・しかばね尸・とだれ戻・やまいだれ疒」などが該当します。

繞(にょう)

 

漢字の左側から下にかけて位置する部分のことです。
「しんにょう辶・そうにょう走・きにょう鬼・えんにょう廴・かんにょう凶」などが該当します。

 


2023年7月24日月曜日

「ヨーロッパにおける冷戦終結を問い直す」そういう裏があったのですか!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 ロシア・ウクライナ対決の背景を少し知りましょう。
ねらい:
 あらためてロシアは恐ろしい国である認識をしましょう。
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この項は、学士會会報2023-Ⅳ号に掲載されました
東京大学大学院法学政治学研究科板橋拓己教授の寄稿のご紹介です。













この内容は、今まであまり知らなかったことでした。
この寄稿はこういう文言から始まっています。

【NATO東方不拡大の「約束」をめぐって】
2022年2月24日、ウクライナ侵攻直前に放送された
国民向け演説の冒頭で、ロシアのプーチン大統領は
NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大を
「根元的な脅威」と呼んだ。
そして、西側は
「NATOを1インチたりとも東方に拡大させないという約束」
をしたが、「われわれは騙されたのだ」のだと主張した。

こうした「西側の裏切り」とか
「われわれは欺かれた」といった議論は、
2007年2月のミュンヘン安全保障会議での激しい非難以来、
プーチンが繰り返し述べ立ててきたものである。
2014年のクリミア併合に際しても、
西側の「噓」を口実の一つにしている。

そもそも「1インチ」発言は、
ベルリンの壁崩壊後の東西ドイツ統一をめぐる
国際交渉から出たものだ。
具体的には、1990年2月9日、
モスクワでのゴルバチョフとの会談で、
アメリカの国務長官ジェームズ・ベーカーが、
「NATOの管轄および軍事的プレゼンスが
1インチたりとも東方に拡大されることはないという保証」
について言及している。
ここで、ベーカーは、ゴルバチョフに対し、
東西統一(および米軍の西ドイツ領域への駐留継続)
を容認してくれるならば、
NATOを当方に拡大させないという保証を
ちらつかせたのである。

この約束をめぐっては、ここ10年余り、
とりわけアメリカ外交研究の領域で盛んに議論されてきた。
かたや、「NATOの東方拡大については
条文や公式声明の形で文書化されていないがゆえに
「公式の合意」は成立していない」とする。

かたや、「国際政治における「合意」に関しては、
そうした公式の条文だけでなく口頭での発言も
一定の拘束力を持つ。
冷戦期のキューバ危機などは
そうした口頭での「合意」で乗り越えられてきた」
と主張するものもいる。

現実には、その後アメリカのブッシュ政権が
(当方不拡大の)方針を転換し、
統一ドイツ全体のNATO帰属をめざすようになる。
そうして1990年2月24.25日に開催された
キャンプ・デーヴィッドでの米独首脳会談で、
ブッシュ政権とコール首相は同方針で一致した。

明らかに、1インチ発言はあったのでしょう。
その時はそれが正解(何に対する正解かは疑問ですが)
だと思っての米国発言だったのでしょう。
しかし、状況が変わったのです。

米国的な目的思考からすれば、
その時に自分たちに都合のよい判断をするのは
違和感がないのでしょう。
前例踏襲の日本的思考ではそんなご都合主義は認められません。

当時のソ連側も、口約束でも「1インチ」発言をとりつけることで、
本当にそれが実現できるとは信じなくても当時の力関係の現実論として
受け入れたのではないでしょうか。
国民の納得感も得られたのでしょう。

こういう経緯からすると、
国際政治に「正解」や「筋」はないと考えるべきでしょう。
正解を判定する超国家的司法は存在しないのですから。
(別項をご参照ください。

ロシアは歴史的に、
北の外れの地域からの領土拡大(脱出?)を目指してきています。
そうしないと、単に貿易港の存在についてみても、
国は発展できないのですから。
北方四島にしても、その方針からすると、
理屈抜きでその返却はありえないのではないでしょうか。

その状況からすると、ロシアとしては、
NATOは非常に大きな足かせに感じられるでしょう。
国の周りをNATOで固められたらどうにもなりません。
ご承知のように、
現在のNATOは軍事同盟ですから、参加国が攻撃されたら、
同盟国は自国への攻撃とみなして相手と戦うのです。

西側の反発を覚悟で、ウクライナ侵攻をするのですから、
その領土拡大意欲は強大なものです。
恐ろしい思考法ですね!!!

「国際刑事裁判所の機能と課題」ウクライナはどうなる?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 国際刑事裁判所なるものがあることを知っていただきます。
 その現状と限界を確認いただきます。
 その活動に、日本は年間30億円出していることを
  知っていただきます。
ねらい:
 これからはどうなるのでしょうか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本項は、学士會会報2023-Ⅳ号に掲載されました
中央大学法学部特任教授、元国際刑事裁判所裁判官尾崎久仁子氏の
寄稿のご紹介です。











本項もあまり知らないことでした。
この寄稿の要旨はこのように紹介されています。
ジェノサイド、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪は
「コア・クライム」と呼ばれる。
コア・クライムを犯した個人は、国内の裁判所のみならず、
国際法に基づいて国際刑事裁判所で処罰することができる。
国際刑事裁判所が常設されるまでの経緯、機能と課題、
ロシアによるウクライナ侵略における役割などについて、
元・国際刑事裁判所の裁判官が語る。

私にとって難しいテーマでしたが、以下のように整理しました。
 1.国際刑事裁判所とは
 2.戦争犯罪等を裁く条約
 3.国際刑事裁判の仕組み
 4.国際刑事裁判所で裁く犯罪
 5.国際刑事裁判所の運営費
 6.国際刑事裁判の現状
 7.国際刑事裁判の課題

1.国際刑事裁判所とは
国際刑事裁判所規程(ローマ条約)で
国際刑事裁判の基本原則を規定した。
1998年採択、2002年発効、
締約国123か国だが、米、ロ、中国が未締結。
これを管轄する国際刑事裁判所(ICC)の職員は約千名。

上野注;中国やロシアは、
「侵略」を行う可能性を自覚しているのでしょう。
ですから加盟しません。
米国は、
「侵略」される被害者になると思っていませんから加盟しません。
仮に「侵略」された場合には自分の力で反撃します。
現に、9・11の同時多発テロ事件に対しては、
首謀者のビン・ラーディンを10年間かけて追跡し殺害しています。

2.戦争犯罪等を裁く条約
上掲のローマ条約以外に以下がある。
1)ジェノサイド条約
 ジェノサイドを裁く。
 1948年採択
2)ジュネーブ4条約
 1949年採択、1977年追加議定書発効
 締約国 
  196国(米国、ロシア、中国、北朝鮮!を含む)
 規定内容 
  武力紛争中(敵国領域の占領中を含む)に、
  傷病兵、捕虜、文民などに対し、
  殺人、拷問、性犯罪などの虐待行為を行ったり、
  故意に民用物や学校などを攻撃、破壊すると
  戦争犯罪に問われます。
 

3.国際刑事裁判の仕組み
寄稿文ではよく分かりませんでしたので別途確認しました。








外務省の資料です。
対象の犯罪は、各国で捜査・訴追するのが基本である。
各国が被疑者の捜査・訴追を行う能力や意思がない場合に
ICCにより捜査・訴追が行われる。
ただし、ICCが捜査や裁判ができるのは、
1)被疑者の国籍国又は犯罪の実行地国が、
 条約締約国であるか合意している場合、
2)それ以外は国連安保理が付託する場合。
と限定されています。
ということは、ロシアや中国の「犯罪」は対象とできないのです。

4.国際刑事裁判所で裁く犯罪
1)ジェノサイド
 対象とするジェノサイドとは、
 国民的、民族的、人種的または宗教的な集団
 の全部または一部に対し、
 その集団自体を破壊する意図を持って行われる殺害、
 身体や精神への重大な傷害、出生の妨げ、
 児童の強制移動などの行為を指す。

2)人道に対する犯罪
 ①殺人
 ②絶滅させる行為
 ③奴隷化すること
 ④住民の追放または強制移送
 ⑤国際法の基本的な規則に違反する拘禁その他の身体的な自由の
  著しい剥奪
 ⑥拷問
 ⑦性的暴力
 ⑧政治的、人種的、国民的、民族的、文化的または宗教的な理由
  などによる迫害
 ⑨人の強制失踪
 ⑩アパルトヘイト犯罪

3)戦争犯罪
 前掲、ジュネーブ4条約の違反行為。

4)侵略犯罪
 侵略は通常、国が主体の行為で、
 その国は国際法違反に問われますが、
 侵略犯罪とは、
 「侵略行為を主導した個人の刑事責任を問う」という
 ニュルンベルグ裁判や東京裁判で初めて登場した新しい概念。

5.国際刑事裁判所の運営費 これも外務省資料で確認しました。
各国の分担金拠出によって賄っています。
日本は最大の拠出国で、2022年に15.4%、
約30億円を拠出している。
その計算からすると、全体では195億円となります。

6.国際刑事裁判の現状
これも外務省の資料です。
2003年から始まって、10数件しかないのですね。
4番のスーダンの事案、6番のリビアの事案は、安保理の付託案件で、
それなりの意義があったと思われますが、
最後のウクライナ案件を除きますと、
他は失礼ながら小国の紛争案件です。

ウクライナ案件の帰趨がどうなるかで、
国際刑事裁判の有効性が評価されるのですが、
どうなるのでしょうか。


























7.国際刑事裁判の課題
そもそも、世界を動かす大国が割れているような状況で、
国連を含む世界的活動はまとまりようがありません。

ロシアが、「俺は侵略などしていない」と主張すれば、
他国は「そんなことはないだろう!」と言えても、
ロシアをその可否を判断する場に引き出すことはできないのです。

中国のウィグル族迫害にしても、中国が
「迫害などしていない。内政問題だ、ほっといてくれ」と言えば、
他国は非難はしても干渉はできないのです。

現在、民族紛争を除く戦争をする可能性のある
中国とロシアが参加していない当条約は
有効に機能しようがないでしょう。

そもそも、戦争を裁くというのは、東京裁判にしても、
戦勝国が戦勝国の論理で相手を断罪するのですから、
公平な裁きとはいえないものです。

ところで、国際刑事裁判所の「目的・ねらい」はこうです。
目的=前掲の戦争犯罪を犯した者を処罰する。
ねらい:そのような戦争犯罪の発生を防止する。
これは全く異論のない正論です。

しかし、その目的をどうやって実現するか
の国際的制度設計ができていないのです。
それが不十分な状態で運営しているのですから、
ICCの職員千人は欲求不満でしょう。

この論文の著者尾崎さんは、
2009年から10年間もICCの判事をしておられたのです。
よく健康で過ごされましたね!ご苦労様でした。

「人口減少時代の地方社会の希望」どうすればよい??

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 これからの社会・経済モデルは「地方分散型」であることを
 確認いただきます。
ねらい:
 国民全体がその方向を認識する必要があります。
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本項は、学士會会報2023-Ⅳ号に掲載されました
京都大学人と社会の未来研究院の広井良典教授の寄稿のご紹介です。













少し前のことになるのですが、
2017年9月に公表された研究成果の内容が紹介されています
(それがなぜ今回登場したのかは不明です)。

日本社会の現在そして未来にとって重要と考えられる約150個の指標
(人口、経済、高齢化、エネルギー等)に関する因果連関モデルを構築し、
AIを用いたシミュレーションにより、
2018年から2052年までの35年間の期間にわたる
約2万通りの未来シナリオ予測を行い、分析を行った。

分析にあたっては、
①人口
②財政・社会保障
③都市・地域
④環境・資源
という4つの領域の持続可能性と
a.雇用
b.格差
c.健康
d.幸福
という4つの社会領域に注目した。

シミュレーション結果の要点をごく完結にまとめると、
それは次のような内容だった。

(1)2050年に向けた未来シナリオとして主に「都市集中型」と
「地方分散型」のグループがあり、その概要は以下のようになる。

a)都市集中型シナリオ
主に、都市の企業が主導する技術革新によって、
人口の都市への一極集中が進行し、地方は衰退する。
出生率の低下と格差の拡大がさらに進行し、
個人の健康寿命や幸福感は低下する一方で、
政府支出の都市への集中によって政府の財政は持ち直す。

b)地方分散型シナリオ
地方へ人口分散が起こり、出生率が持ち直し手格差が縮小し、
個人の健康寿命や幸福感も増大する。
ただし、地方分散型シナリオは、
政府の財政あるいは環境(CO²排出量など)を悪化させる可能性を
含むため、このシナリオを真に持続可能なものとするには、
細心の注意が必要となる。

(2)8-10年後までに都市集中型か地方分散型かを選択して
必要な政策を実行すべきである。

8-10年程度後に、
都市集中型シナリオと地方分散型シナリオとの分岐が発生し、
以降は両シナリオが再び交わることはない。
持続可能性の観点からより望ましいと考えられる
地方分散型シナリオへの分岐を実現するには、
労働生産性から資源生産性への転換を促す環境課税、
地域経済を促す再生可能エネルギーの活性化、
まちづくりのための地域公共交通機関の充実、
地域コミュニティを支える文化や倫理の伝承、
住民・地域社会の資産形成を促す社会保障などの政策が有効である。

中略
思えば、デジタルが浸透する情報化の時代、
ひいては今後の「ポスト・デジタル」の時代
――医療、生活・福祉、環境、農業等、
「生命」を基本コンセプトとする領域が大きく展開していく時代ーー
とは、遠隔地にいても、あるいはそれぞれ自分の地域にいても、
あるいはそれぞれ自分の地域にいながら
相互に情報の伝達やコミュニケーションがとれる時代であり、
それは「新・分散型社会」と呼びうる社会像である。

さらに、イノベーションや経済活力という点からみても、
アメリカやドイツの例にも示されるように、
一定以上の「分散」ないし分権こそが新たな創造の土壌となるだろう。
これまでの日本のような過度の「一極集中」は、
実はとりもなおさず社会の「画一」「均質」を意味するものであり、
そうした中からは多様なイノベーションや価値の創発は生まれにくい。

著者は、この地方分散型モデルは、
現在の若い世代に多く見られる「ローカル志向」にも合致している、
と言われています。

この論文の主張の主軸はこうなります。
1.日本が持続的に発展していくためには地方分権が必要である。
2.それを明確な目標にした政策を実施すべきである。
3.地方分権に踏み切るチャンスは、8-10年後までである。
 (現在からすると3-5年後となる)

1.の主張は、これまでも大前研一氏など識者が主張していることで、
新説ではありません。
しかしそのことを
シミュレーションで証明したということがユニークなのですが、
残念ながらそのシミュレーションの詳細が分かりませんので、
「証明」には疑問符が付きます。

都市集中型と地方分散型の分岐点に時限があるというのは新設ですが、
これも当論文では詳細不明です。

以下、上野説です。
これからの時代に適合するのは、
集中型ではなく分散型であるということは以下の点からも言えることです。
1.これからの時代は多様化の時代です。
2.多様化の時代には、
  多様化した製品・サービスが受け入れられます。
3.多様化した製品・サービスは
  多様化した環境や人材から生まれます。
4.したがって、
  多様化した環境で多様化した人材を育てることが必要です。

日本は、縄文時代は、
地域特性に合わせた多様な狩猟採集生活をしていたのですが、
米作中心の農業社会になってから、
そして徳川幕府の全国支配体制になってから、
一極集中型(一律型)になってしまいました。
戦後大発展した大量生産モデルによる日本型製造業も、
一律型思考がベースになっています。

現在のテレビによる情報提供も、
一極集中型思考を助長していると思われます。

いろいろな面で、日本は思想的大転換をする必要があるのです。
別項「経済学の目的・ねらいは何か」もご参照ください。