2018年11月27日火曜日

プーチン大統領のロシア国民の評価は?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 プーチン大統領に対する
  ロシア国民の支持がどうなっているかを確認します。
ねらい:
 北方領土返還交渉はどうなるのでしょうね。
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本項は、學士會会報2018-Ⅵ号掲載の
雲 和広一橋大学経済研究所教授による
「ロシア経済を取り巻く環境変化」のご紹介です。


多くの日本人にとって、
ロシアに関する関心事は北方領土以外にはありません。
その帰趨を握っているのは、大物のやり手プーチン大統領です。


阿部首相が頑張っていますが、
阿部首相の説得力でプーチンが動く、
ということはあり得ないでしょう。


それでは、プーチンはどう考えるのだろうか、という情報が
日本国民にとっては必要です。


「戦後70年以上経って、
自国民が1人も住んでいない領土を返せというのも例のないことだ」
という誰かのコメントも気になることではあります。


雲教授の主な論点は以下のとおりです。


1.2000年代初頭から半ばまで、ロシア経済は原油依存で、
 原油価格の上昇と軌を一にして急成長をした。


2.2014年のクリミア併合に対する西側諸国の制裁の影響もあり、
 2015年には国内総生産年間成長率がマイナス3.7%まで落ち込んだ。


3.その後、原油価格の回復とルーブル減価等により
 2018年には実質可処分所得も増加に転じた。


4.しかしその間一貫して、
 政権・プーチンに対する支持は高いレベルを維持していた。


5.支持率の高さを支えたのは、教育水準が高く、所得の高い層の
 愛国心の高まりであろうと推定される。


 所得階層と支持率の正の相関がある。
 年齢階層と支持率も正の相関がある。
 村落での支持率は低下したが
 社会のエリート層や軍関係者の支持は強化された。


6.ところが、2018年6月に年金改革の一環で、
 年金給付開始年齢の引き上げが発表されると
 (男性は現在60歳を2028年迄に65歳、
 女性は現在55歳を2032年迄に63歳とする)
 政府およびプーチン大統領に対する支持は急落した。


7.経済制裁に伴って実際に生じた経済の停滞が
 政権支持率に否定的影響を与えず、
 10年以上先に現実化する社会福祉政策における給付縮小の意向が
 政権支持率を大きく低下させる、ということは、
 それ自体興味深いものである。
 (上野注:それはそうですね)


8.(結論として)
 強権的と指摘されることの多々あるロシア・プーチン政権であるが、
 その足下は存外強固なものではないのかも知れず、
 世論の動向を見ながら手探りの経済運営を続けていく必要は
 かえって大きいとも考えられよう。


以上です。
ということは、残念ながら日ロ交渉においても、
プーチンの独断で日本に譲歩する期待はあまりできない、
ということになりましょう。


危機的状況の日本の「下層階級」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 現代日本の「階級」はどうなっているのかを認識していただきます。
 「下層階級」は1000万人近くもいて、生活苦に喘いでいるのです。
ねらい:
 高齢単身者世帯も1割を超えたと言いますし、日本はどうなるのでしょうか。
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本項は學士會会報2018-Ⅵ号掲載の
橋本健二早稲田大学人間科学学術院教授の「日本の新しい階級社会」
のご紹介です。


日本には新しい下層階級(「アンダークラス」という)ができている、
という主張です。
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一時は「1億総中流」とか言われて日本には階級は存在しない、
ということになっていましたが、それは過去のことになったのです。
実は、1980年前後から格差拡大が始まっていることを
データで示されています(掲載省略)。


その上で主張される新しい下層階級とはこういうことです。
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日本の階級構造には、近年になって大きな変化が生まれている。
非正規労働者が増加した結果、
労働者階級内部の格差が拡大したからである。


とりわけ1980年代以降になると非正規労働者が、
学生アルバイト、パート主婦、定年後の嘱託などのように
人生の1時期のみの存在ではなくなり、
学校を卒業した直後、
あるいはさほど期間を置かずに非正規労働者となり、
中高年になるまで非正規労働者であり続けるケースが増えた。


このため労働者階級が、
正規労働者と非正規労働者へと
上下に二分されるようになってしまった。


こうして階級構造の底辺に、
低賃金で雇用が不安定な新しい下層階級が形成されることになった。
これをアンダークラスと呼ぶことにしたい。


アンダークラスの実態を実証的に明らかにするためには、
これを数量的に把握可能な形で操作化することが必要である。


パート主婦と非常勤の管理職・専門職を除く非正規労働者を
アンダークラスとみなし就業構造基本調査からその規模を推計すると、
実数で928.6万人、全就業人口に占める比率は14.0%に達する。


2002年にはそれが709.8万人だったから、
わずか10年間で218.8万人も増加したことになる。


図表2は、その特徴を他の階級と比較したものである
(ただしこの表のアンダークラスからは、
年金を受給している人の多い60歳以上を除外した).

労働時間はアンダークラスがいちばん短いが、
それでも平均週36.3時間で、
内訳をみると過半数が週40時間以上働いている。


個人収入はわずか186万円で、貧困率は実に38.7%にも達し、
31.5%は資産をまったく持たない。


そして男性では有配偶者はわずか25.7%で、
66.4%までが未婚である。
経済的に苦しいため結婚できない状況がよいわかる。


生活に満足している人の比率、自分は幸せだという人の比率は、
いずれもきわだって低い。


衝撃的なのは
いじめにあった経験をもつ人が31.9%にも上っていることで、
学校教育からの排除が
アンダークラスへの所属につながっていることがわかる。


また健康状態のよくない人の比率が高く、
うつ病など心の病気で診断・治療を受けた人は
20.0%にも上っている。


自民党支持率は際立って低いが、全体の7割近くは
支持政党がない。
彼ら・彼女らには支持できる政党がないのである。


極めて低所得で、貧困と隣り合わせで、
満足や幸福とはほど遠く、
肉体的にも精神的にも追い詰められ、
生殖という生物種としての基本条件すら満たすことができず、
政治からも疎外された人々、それがアンダークラスである。


格差拡大が40年も続いた日本の社会には、
すでにこのような人々が膨大な規模で出現しているのである。
危機的状況といわねばならない。
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氏の主張は若干極論の面がありますが、
そういうことがあることは確かなのでしょう。


アンダークラスの実態に関する氏の主張の根拠となっているのは、
SSM調査です。
SSM調査とは以下のようなもので、
こういう大掛かりな調査を実施しているグループがいる
ということは驚きです。


SSMとは、
Social Stratification and social Mobility(社会階層と社会移動)のことで、
この調査は1955年以来10年ごとに、
社会学者のグループ100人以上によって行われています。


全国800地点での20~79歳の
日本国籍を持つ男女15,000人強を対象にした
聞き取り方式による調査です(有効回答率は50.1%)。


「本事業は、独立行政法人日本学術振興会から、
特別推進研究事業(課題番号:25000001)として
助成を受けて実施しました」
というものの凄い手間暇のかかっている調査です。


こういう調査によって、橋本教授が説明される
アンダークラスの実態が明らかになっているのです。


話変わりますが、
2018年11月26日の日経新聞に
日本の単身高齢者世帯が全世帯の1割を突破し、
医療費・介護費厖大化の危機にあるという記事が載っていました。


アンダークラスとの重なりも多少あるのでしょうが、
この人たちもいわゆる社会的弱者です。


こういう社会的弱者が多い社会は、
単に少子高齢化社会である、というようなことでは片付けられない
大きな問題を抱えていることになります。


誰がこの人たち、
特にアンダークラスを何とかしようと力を貸すのでしょうか。
日本の社会は崩壊しないで済むのでしょうか?
どうしたらよいのでしょうか?

2018年11月26日月曜日

カルロス・ゴーンの抜かり

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 ゴーン氏の失敗原因を想定してみます。
ねらい:
 あまり他の役には立ちません。
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カルロス・ゴーン氏の事件は、
これだけ世間を騒がせているのですから、
このブログでも触れないわけにはいきません。


彼の失策は、公私混同・私利私略・倫理感の欠如です。
氏は、天才的に優れた判断力を持っておられることは
万人の認めるところです。


そういう人が、そして十分巨万の富を獲得した人が、
なぜこのようなことをしでかしたのか、です。


公私混同・倫理観の欠如は、
前東京都知事舛添要一氏にもみられたことです。


そういう過ちを起こす原因は
幼少時の育ち・家庭環境にあるのではないかと思います。


ゴーン氏は レバノン出身男女のブラジル移民の子供です。
安定した家庭では育っていないことが想定されます。
金銭に対する非常に強い欲求は、
そこから来ているのではないでしょうか。


ただし、貧しい家庭でもきちんと子供に対するしつけ・指導がされて
模範的な社会人に育っている人も多数いますので、
「貧困が倫理欠如を招く」とは言いきれません。


ゴーン氏の場合は、残念な結果を招いたパターンなのです。

「公立校教員における上限規制なき長時間労働」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 公立校教員の勤務時間について考えてみます。
 本当に、超超過勤務なのでしょうか?
ねらい:
 もっと客観的・公平な主張を聞きたいですね。
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本項は、學士會会報2018-Ⅵ号掲載の
名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授内田良氏の寄稿の
ご紹介です。


その主張点は以下のとおりです。


1.公立校の教員は、時間外労働時間規制の対象外である。
 この6月に成立した働き方改革関連法案として改正された労働基準法では
 時間外労働の時間数に上限が設けられたが、
 公立校教員の時間外労働の規制は適用除外となっている。


2.公立小中学校の教員の労働時間は非常に長い。
 2016年度に文部科学省の調査では、
 平日の平均労働時間(持ち帰り仕事の時間を含まない)は、
 小学校が11時間15分
 中学校が11時間32分 である。


 厚生労働省が定める「過労死ライン」(時間外労働が月80時間以上)
 を超える教員が、
 小学校で33.5%
 中学校で57.6% を占めている。


3.文部科学省の解釈は「残業は教員の自発的行為」であるとしている。
 所定労働時間を超えた実労働時間について
 そもそも残業時間としてカウントされない仕組みとなっている。
 
 公立校教員に適用される「給特法」では、給料月額の4%分を
 「教職調整額」として支給されている(固定残業代の位置づけ)。
 
 「給特法」では、
 「超勤4項目」の場合には時間外労働が認められることになっている。
 その4項目は、
  校外実習などの実習
  修学旅行などの学校行事
  職員会議
  非常災害 である。


 ところが、大半の残業時間はそれ以外である。


4.部活動指導の時間が増加している。
 2006年調査と2016年調査を比較すると
 小学校の平日で43分増、土日で49分増
 中学校の平日で32分増、土日で109分増、となっている。
 特に、中学校の土日の部活動指導が突出して増加している。


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ところが、内田准教授の指摘には多くの不明点があります。


1)超勤4項目の場合は残業代が支払われるのか。
 その比率はどうなっているのか。
 その手続きはどうなっているのか。


2)そんなに過酷な残業をしているにも拘らず、
 なぜ教員はクレームをつけないのか。


3)教員には夏休み・冬休み期間があるが
 その間の労働はどうなっているのか。
 年間を通して見ても労働時間は一般の「労働者」より大きいのか。


私は、夏休みなどの長期休暇があるので、
それ以外の期間は頑張っていられるのではないかと思います。
そのことに触れないのは一方的な議論で、
簡単には受け入れられませんね。


皆様はどう思われますか?

健康長寿の秘訣

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 健康長寿の対策を確認いただきます。
 楽に健康長寿ができる方法はないようです。
 最後は生きがいが最も重要ということです。
ねらい:
 できるところから始めましょう。
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本項は、學士會会報2018-Ⅵ号掲載の
筑波大学大学院人間総合科学研究科久野請也教授の講演記録
のご紹介です。


どうすれば、先生の言われる「ぴんぴん、ちょっと寝て、ころり」
が実現できるかを説いておられます。


「ちょっと寝て」が入るのは、
「ぴんぴんころり」だと、家族や友達に別れを告げられないので、
2-3か月は逝くまでの時間がほしいということです。


1.健康長寿に立ちはだかる二つの年齢の壁
1)一つは「60代の壁」
 60代で脳卒中や心筋梗塞が増える。
 ほとんど助かるが、障害が残る。
 日本人の寝たきり要因の第1位は脳卒中。


 中年期にメタボを放置したことが原因(だそうですよ!!)。


2)二つ目は「70代の壁」
 認知症、転倒骨折、虚弱が増える。
 60歳を超えると男女とも転び始める。


 転倒の確率に男女差はないが、
 女性の方が骨折の可能性が高い。
 女性は閉経後、ホルモン代謝が変わり骨が弱くなるから。
 骨粗しょう症の87%は女性。


 サルコペニア(筋肉の減少)を放置したことが原因


2.世界の死因ワースト
 2009年にWHOが発表した世界の死因ワースト20の高位は
 1位 高血圧、2位 たばこ、3位 高血糖(糖尿病)、
 4位 運動不足、5位 肥満
 (上野注:この死因は直接的なものと間接的なものが混在しています。
 たばこや運動不足で死ぬわけではありません。肺がんが死因です)


 先生によると、運動不足を解消すると、
 この5つのうち4つが解消される、のだそうです。


3.健康長寿に必要な3要素
 よく言われる運動(有酸素運動)、食事、に加えて筋トレが必要。
 1)食事(のコントロール)のみ
 2)食事とウォーキング
 3)食事とウォーキングと筋トレ
 いずれも3か月続けると体重は平均3.5キロ減る。


 しかし1)や2)の場合、筋たんぱくの分解が進むので
 脂肪だけでなく筋肉も落ち、転びやすい体になってしまう。
 3)がお勧め。


4.ウォーキング(有酸素運動)の有効性
 一般にウォーキングの重要性が説かれているが、
 今は「まとめて歩いても、細切れに歩いても、
 合計歩数が同じなら同じ効果がある」ということになっている。


 10万人のデータによると、以下のように
 1日の歩数と年間医療費の関係には相関関係がある。
 ただし、75歳では55歳に比較して有効性は低くなっている。
 歩くだけではダメ、ということ。


 


5.ウォーキング等に対する先生のアドバイス
 「必ずひとつ前の駅で降りて歩く」とか
 「階段は絶対に登る」などと生まじめに決めないこと。
 そうすると続かなくなる。
 その日の天気、体調、荷物の多寡に合わせて
 できる時に多めに歩くようにするのがよい。
 
 (上野意見、ありがたいご託宣です。
 そのようにできることが理想でしょうが、
 何らかの縛りをかけないとゼロになってしまうのが
 人間の弱さではないでしょうか)


6.75歳以上が維持すべき「移動能力」ー筋肉対策の必要性
 60代までは生活習慣病(動脈硬化、メタボ、脳卒中)
 の対策が重要だが、
 70代以降は筋肉対策が重要。
 
 「移動能力」とは次の3つ。
 1)立ち座り能力
 2)転倒予防能力
 3)歩行能力
 これらを支えるのは筋肉である。


7.筋肉量の維持方法
 筋肉強化には筋トレが必要。
 ジョギング・ウォーキングなどの有酸素運動は、
 脳卒中・動脈硬化の予防や内臓脂肪を減らすには有効だが、
 筋肉量の強化はできない。


8.筋トレの実施方法
 下肢の筋肉を鍛えるにはスクワットが1番。
 以下の図の6種目のうち4種目以上を10回1セットとして
 1日1-2セットずつ10週間続ける。
 慣れてきたら負荷を増やす。
 
 


 (上野注:結構大変ですね。やりますか?
 健康長寿を目指すならそのくらいのことはしなければダメ
 ということですね)


9.筋トレで大事なこと
 1)筋肉は寝ている時に増える
 2)筋肉は食事で摂取したタンパク質から作られる。
  そこで、動物性たんぱく質を採る。
  特に豚肉が長寿の秘訣、週に最低2日は食べるようにする。
  アルブミンというタンパク質が高齢者の栄養不良を防ぐ。


 3)筋トレの効果は貯金できない。
  やめたらすぐに筋肉は落ちる。
  その代わり、何歳から始めても効果はある。
  98歳から始めた人でも効果があった。


10.社会とのかかわりを持つことが健康に有効
 「人と人との関係が健康に影響を与える」
 「コミュニティがある地域に住む人ほど健康度が高い」
 「週3日以上外出する人の健康度は高い」
 ということはデータでも証明されてきている。


11.健康長寿の十分条件は生きがいを持つこと
 以上の食事、有酸素運動、筋トレ、社会とのつながりは
 健康の必要条件でしかない。
 最後の決め手は生きがいを持つこと、
 楽しい人生を送ることである。
 (これが先生の結論です。そのとおりですね)  

2018年11月24日土曜日

飲酒の形式的規制の有効性は?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 飲酒で問題を起こす事件が話題になっていますが、
 飲酒規制のあり方を考えてみます。
ねらい:
 「〇〇時間以内は☓」などの形式的規制がはびこらない
 ことを願います。
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また飲酒事件が話題になっています。
今度は航空機のパイロットです。


日航のパイロットが英国で、警察当局に逮捕されたという事件です。
羽田行きの航空機に乗務予定だった副操縦士から
英国の法令の定める基準値の9倍超のアルコールが検出されたのです。


全日空でも、グループ会社の機長が前日の飲酒の影響で
体調不良になり5便が遅延し、
その機長は諭旨退職となりました。


厳しい処分だと思いますが、
自分の無責任で多くの人に迷惑をかけたということでは
当然の措置かもしれません。


当ブログ「『飲酒事故の3割は朝から昼』ですって! ]で、
以下のような記載をしました。


厚生労働省によると、
肝臓のアルコール分解能力は、
個人差はあるものの成人の男性で1時間に9グラム、
女性で6.5グラム程度。
ビールを500ミリリットル(アルコール分20グラム)飲めば、
完全に分解されるのに2-3時間かかる。


今回、日経新聞11月17日の記事「飲酒後の運転 分解時間目安」
ではこうなっていました。


厚生労働省は「節度ある飲酒」の目安を
「純アルコールで1日平均20グラム程度」とする。


ビールならロング缶1本(5%、500ミリリットル)
チューハイなら1缶(7%、350ミリりリットル)
日本酒なら1合(15%、180ミリリットル)程度でこれを超える。


NPO法人「ASK」では、
アルコール量20グラム程度を1単位と捉え、
分解にかかる時間を、男性は4時間、女性は5時間、とみる。


例えば、チューハイ2缶と日本酒1合を飲めば3単位、
男性でも分解しきるまで12時間かかる計算だ。
「夜遅くまで飲酒すると翌朝はアルコールが残る」
と断言する。


のだそうです。


ご承知のように、肝臓のアルコール分解能力は著しく個人差があります。
おそらく10倍以上の開きがあるでしょう。


男性で4時間とかいうのは、
どのくらいの強さを前提にしているのでしょうか。


この場合の「平均」はあまり当てになりません。
こういういい加減な「基準」のようなものが、
独り歩きするとよくないことが起きるのではないでしょうか。


日本の航空法では、
乗務8時間前の飲酒を禁じる通達も出ていますが、
8時間前ならいくら飲んでもよいということにはならないでしょう。


最終的には、正確な検査方法で判断するのが、
理に適っています。


いくら事前に飲んでいても正常なら良いわけですから。


検査技術が完全になれば、
間接的な基準は不要になります。


今の警察の検査技術はどうなのでしょう。
法廷で争っても勝てるのでしょうから完全なのでしょうか。



「入社10年で課長に」日本の制度変革は50年必要!

「このテーマの目的・ねらい」
目的:
 日本の人事制度の変革の遅さを再確認していただきます。
 日本社会の変革の遅さも同様です。
ねらい:
 これからはダッシュしないと日本沈没です。
 世界の進歩についていけません。
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11月3日の日経新聞に以下の見出しの記事が載りました。
   入社10年で課長に
 三菱商事、人事制度を刷新
 若手抜てきしやすく

「三菱商事は2022年3月期までの中期経営戦略を発表した。
約20年ぶりに人事制度を刷新し、
入社10年程度の若手を抜てきしやすくする仕組みを導入する。


デジタル化など経営環境の変化に対応し、
年齢にかかわらず最適な人材が事業を指揮できるようにする。
これまで子会社のトップや本社の課長級になるには、
早くても入社から20年程度かかっていた」


「入社10年で課長」には強い思い出があります。
私がT社に入社した動機の一つは、
その当時、入社試験を仕切っておられた人事課長が
まさに入社10年目だったのです。


「10年で課長」は非常に魅力的に感じました。
それで私は、
「この会社は若手が活躍できる会社だ」
と思って入社を決めたのです。


T社は、当時合繊事業が当たって急成長していました。
そのため私が入社した数年前からは大量採用が始まっていました。


入社後少し落ち着いた頃に、状況を把握してみました。、
昇進はほとんど完全に年功序列でした。
年功序列で昇進するとすれば、われわれ年次はいつになったら
課長になるか計算しました。
単純計算ですぐに分かります。


そこで私は、おこがましくも人事部門宛に「建白書」を出しました。
「現在のような年功序列方式では、優秀な人材も
いつまでも役職者になって力を発揮することはできない。
実力主義の制度に改めるべきである」


当時人事部門にいた1年後輩が
「上野さん、本当に実現してほしいなら言い方を変えた方がよい」
と忠告してくれたほどの直言だったようです。


私は、「すぐに実力主義に変わるわけはない」と判断して
実力主義の世界へ転職しました。
どちらかと言えば「結論ありき」の行動だったのです。


実は就職活動時に、その会社が「良いか悪いか」に関わりなく
5年で転職しようと思っていました。
「アメリカでは転職の繰り返しが当たり前、日本もいずれそうなる」
と思っていたからです。
ところがそうはいかなかったということです。


日本では国でも企業でも
基本になる制度が変わるには時間がかかるとは思っていますが、
今回あらためて、それが50年なのだと認識させられました。


このペースですもの、
しがらみなしで変革ができるのは至難の国ですね。
それを破れる異端児が、
辛うじて日本の維持をしてきているのです。


たとえば、著名な実業家です。
松下幸之助さん、本田宗一郎さん、ソニーのお二人、
日本電産の永守社長、ヤマトの小倉昌男さん、などなどです。


ソフトバンク孫社長は、
トヨタの豊田章男社長に「その行動に着目して学んでいる」
と言わしめるほどの剛腕です。


余談ですが、トヨタがカーシェアリング事業に乗り出すなど
普通ではとても考えられないことですが、
そういう「学び」の結果なのですね。


脱線しましたが、
「入社10年で課長」の思い出話・慨嘆話をさせていただきました。