2021年4月27日火曜日

青少年の自殺者増加 死ぬ人、生きる人 

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 青少年の自殺者が増えている現状を認識しましょう。
 死ぬ人もいますが、強く生きる人もいます。
ねらい:
 生きる人を応援してあげましょう。
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3月17日の日経新聞にこういう見出しの記事が載りました。
 自殺者11年ぶり増 2万1000人
 経済苦・孤立背景か
 コロナ禍、女性・20代目立つ



20年の自殺者数は前年比912人増の21,081人となり
11年ぶりに増加に転じた。
男性は14,055人と11年連続で減少したのに対し、
女性は7,026人と2年ぶりに増加に転じた。
年代別では、40代が3,568人と最も多く、
中高年層の割合が高かった。
50代、60代が減少したほかは増加し、
特に20代が404人増の2,521人と最も増加率が高かった。

遺書や遺族らへの聞き取りをもとに自殺の動機を分析したところ、
「健康問題」が全体の48.4%
「経済・生活問題」が15.3%
「家庭問題」が   14.8% だった。

「経済・生活問題」は3,216人で5.3%減ったが、
30代以下は増加。
20代は男女ともに増え、22.3%増の計417人と
 2年ぶりに増加。
30代では女性がほぼ倍増の67人となった。

年代別の過去10年の変化をみると、
60代は49.6%減
50代は36.3%減
30代は41.4%減 となったが、
20代は23.7%減で減少幅が小さい。
10代は25%増えている。

相談窓口には、
「コロナで職を失った」「パート先を解雇された」など、
非正規雇用の若い女性からの相談が目立つそうです。

コロナ禍で、経済苦や孤立の状況になり、
特に女性や20代の自殺者が多い、ということです。
若い世代で弱い立場の勤務者にしわ寄せがいっているのです。
コロナ禍が、病死やビジネス不振だけでなく、
別の影響が出ているという事実です。

原因は「経済・生活問題」でしょうが、
若い人が自殺を選ぶ判断には、
木村花さんの自殺事件が影響しているのではないかと思います。
自殺を身近なものと考えさせたのではないでしょうか。

そういう推定報道は、
木村花さんを攻めることになりますので表に出ていませんが
ありうると思います。

別の報道記事で、
小中高生の自殺は昨年過去最多の499人となっている。
休校・外出自粛影響か?
月別では7-12月に増加に転じている。
著名人の自殺が影響した可能性も指摘されている。
となっています。

木村花さんは、女子プロレスラーで肉体的には強い人なのに、
何故、中傷投稿で死を選ぶほどに追い詰められたのでしょうか。
誰か、彼氏とか相談する人でもいれば
こういうことにならなかったでしょうに。
可愛い人だし、本当に惜しいことです。

別項の「私の名前を知って」の著者は、もっとひどい目に遭いながら
戦い抜いています。

どの程度のことを書かれたのかは公表されていないので分かりませんが
木村花さんの番組での発言を非難したもので
暴露記事でもありませんからしれているのではないでしょうか。
その後、中傷を書き込んだ男性2人が侮辱罪で起訴されました。

そういう処罰や被害救済手続きの強化も必要でしょうが、
上述の若い人一般の自殺者対策と同様に、
相談に乗ってあげられる仕組みの強化の方が有効なのではないでしょうか。

因みに、世界における日本の「自殺者率」(人口比)は、
以下のように韓国に次いで2番目に多いのです。
順位は、韓国、日本、ロシア、フィンランド、フランスです。
(中国は不明なのです)
なぜ日本の自殺が多いのかは、研究対象ですね。
おそらく、現状重視で現状から逃れられない農耕民族風土が
影響しているのでしょう。

木村花さんは惜しくも亡くなられてしまったのですが、
かたや、強く立ち直っている若き女性もいます。
池江璃花子さんです。
皆さまご承知のとおりですが、
白血病をどう克服されたのかは不明ですが
「ガンに勝つ」はすごいことです。

「ガンには精神力で勝てる」は、
私の持論で何度もブログでご紹介しています。

池江さんは、ガンと戦っている人に希望を与えてくれています。
生きる方に端を振ってくださっているのです。
たいへん嬉しいことです。

病と闘って勝利を収めた人も何人もいますが、
最高は、3月24日に本当に惜しくも53歳で亡くなられた
古賀稔彦さんです。

皆さまご承知のように古賀さんは、
1992年のバルセロナ五輪の直前に左膝を負傷して
足を引きずるような状態だったのに、弱気を見せずに頑張り通し
金メダルを獲得されました。

不撓不屈という言葉は彼のためにあるようなものです。
2000年の現役引退後は、後進の指導にあたられ
日本の柔道界の発展に大きな成果を上げられています。
偉いかたですね。

こうしてみると、生きる人、死ぬ人、人生さまざまです。
「つらくても生きる」という方向に導いてあげられる社会
にしたいですね。

追伸:散漫なレポートで失礼しました。お許しください。

2021年4月26日月曜日

BPR成功要因に学ぶDX成功要因、やはりトップ次第です!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 あらためて、DXの成功要因を確認してみましょう。
ねらい:
 どうすれば、トップの強いリーダシップが実現できるか
 考えてくださいませんか。
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私の書庫をひっくり返していましたら
MIND-SA実践研究会編「業務革新ガイドブック」という
1994年初版刊行の書籍が出てきました。

本書の監修をしてくださった青山大学学長を務められた
鵜沢昌和先生にはたいへんお世話になりました。
2019年2月に100歳のご長寿でお亡くなりになりました。
あらためてご冥福をお祈りいたします。
















バブル崩壊で混迷していた日本に、
米国からマイケル・ハマーの「リエンジニアリング」が
経営革新の切り札として紹介されブームを巻き起こしました。
リエンジニアリングの基本思想は、
「今の仕組みを白紙に戻して一から考え直せ」
というものでした。

ブームと言っても話題としてです。
「これは別に珍しいことではないではないか」
「日本のギョーカクとどこが違うのか」
となって実践のブームにはなりませんでした。

そこで当書の編者たちが、実践のガイドを出そうということになって
この本が出たのです。

そこでの業務革新の成功要因は以下のとおりだとされています。

業務革新の成功要因

概要

1.トップの強いリーダシップ

トップが明確な意思を持って旗振りをする必要がある。トップの本気度によって会社は動く。


2.ミドル・マネージャの積極的参画

現場を率いる部長クラスの積極的参画が必須条件である。


3.強いプロジェクト・チーム

業務革新を検討する強い問題意識を持ったメンバによるプロジェクト・チームが具体的な業務革新を検討する。

閑職者や片手間では革新はできない。


4.明確な革新目的の設定

全社としてはトップが提示する。それを受けて各部門が自分たちの革新目的を設定しその実現に立ち向かう。


5.有効な基本アイデアの導出

革新を起こすためには、改善型でない解決策が必要で、そのアイデアを絞り出さなければならない。


6.情報技術(IT)の活用

有効なIT活用策を考案しなければならない。


7.方法論・支援ツールの活用

有効かつ効率的に検討を進めるための方法論やツールの活用が必要である。



起点かつ最大の成功要因は、トップの「強い」リーダシップです。
単に、トップが指示をしても、部下が動くわけではありません。
普通は「聞いておく」ということになります。

ところが本気でやる気を示せば、
よほどの状況でなければ部下たちは動きます。
動かないと、自分のクビが危なくなります。

部長たちが動けば、業務改革の推進メンバに優秀な人材を振り向け
「強いプロジェクト・チーム」ができます。

トップは、強いリーダシップで
「業務革新の目的」を明確に示します。
「当社は何のために業務革新を推進するのか」です。

強いプロジェクト・チームは、
どうすればその目的を達成できるかを探求して
業務革新が実現できる「基本アイデア」を考え出します。
その際,ITの有効活用は必須条件です。

また、全社で共同して業務革新を進めるためには、
推進の手法やツールが必要です。

いかがですか。
「6.情報技術(IT)の活用」を,DX技術の活用に代えれば、
DXの成功要因になるのです。

「DXの成功要因」とかいう解説が多数出回ってますが、
DX固有の条件はほとんどありません。
基本的には、経営革新、業務革新の成功要因なのです。

システム企画研修社の経験では、
「トップの強いリーダシップ」で大きな成果を上げた経営改善として
MIND-VIP(価値観変革プログラム)があります。
トップが旗振りをして、部長たちが部下を率いて、
自分の部門の改善を実施するのです。

半年限定で、
自己責任で完遂でき、定量的に成果が把握できる、改善を実施します。

「基本アイデア」の例を二つ示します。
 その1:K電気工事会社のある支店での改善事例
 ・この支店にはラインとして、
  営業部門、設計部門、工事部門が存在する。
 ・ それまで、営業部門は、顧客から見積り依頼を受けると、
  そのままの内容を設計部門に回付していた。
 ・  設計部門はすべての案件に対して
  労力を投入して見積りを作成していた。
  内部工数で不足する場合は外注も利用していた。

 ・ところが、見積り依頼案件の中には、
  当社は当て馬で受注の可能性のないものも多く含まれていた。
 ・支店内の検討でその状況が明確になったので、
  営業部門は受注可能性のある案件であるか
  当て馬であるかの区分をして、
  設計部門に見積り作成を依頼することとした。

 ・当て馬の場合は、顧客に確認した想定落札金額を付記する。
  設計部門は当て馬の場合は、
  落札想定金額を上回る見積金額を適当に作文して
  見積りを作成した。
 ・ こうすることによって、
  10以上ある内の1支店だけで
  半年で4515万円の経費削減が実現した。
 ・ それまでは、
  部門の壁によってこのような不合理が
  まかり通っていたのである。

  その2:R流通会社の配送経費削減の事例
  ・R流通会社の支店には、
   営業部門、物流部門、管理部門が存在する。
  ・それまで商品の配送は、
   客先の指定する時間に納品できるように
   配車計画を組んでいた。
  ・それだと、かなりのムダな配送ルートを編成
   しなければならない。
   たとえば、1か所の配送先のために2度同じ方面に配車
   しなければならない、などのことが起きていた。

  ・ 物流部門が、営業部門に
   「お客様に配送時間の変更をお願いしてもらえないか」
   と打診すると、
   「とんでもない!お客様第1だろうが」と却下されていた。
  ・   ところが、支店長が参画して支店としての検討を行うと、
   「それだけの配送ロスがあるなら、お客様に頼んでみようか」
   ということになった。
  ・ 実際にお客様に依頼してみると、
   「いいですよ、時間変更しましょう」
   と言ってくださるお客様もあった。
  ・ この改善は、その支店だけで、
   年間数百万円のコストダウン効果があった。

このような事例は、分かってしまえばバカバカしいようなものですが、
このようなことは、現状業務の中にたくさん隠れているのです。

全員仕事をしながらの改善ですから大きな負担ですが、
なんと1回、標準的に15部門参加で、
半年で数千万円から数億円の改善効果が実現したのです。
最大は大手電気工事会社で、2回で年間20億円の利益を稼ぎ出し、
経営危機を乗り越えられました。

MIND-VIPは半年勝負ですから、
IT化などをしていると間に合いませんので
IT化は含んでいません。
IT化は経営改善の一つの手段に過ぎないことを
如実に示している事例です。

さてこれまで私は、機会あるごとに会社を変えていくのはトップである、
と主張してきました。

1)2012年10月26日
上野則男のブログ: サムスンが発展しているのは人事制度のおかげ? (uenorio.blogspot.com)
2)2020年12月13日日曜日
上野則男のブログ: 「私の履歴書」ハイライトー大成功には「原体験」がある!! (uenorio.blogspot.com)
3)2021年3月13日土曜日
上野則男のブログ: 日本の産業構造転換どうする? (uenorio.blogspot.com)

業務革新にしてもDXにしても会社を変えられるのは、
トップしかいないのです。
そのことを明確に認識しましょう。

日本を変えられるのは、
「自民党をぶっつぶす」と言った小泉純一郎首相のような方しかいないのです。
(前掲3)参照)
今の日本の状況では、小泉元首相に再登板いただかなければなりませんね。

おまけでのご提案です。
DXでトップを支援する強力なDX推進リーダを養成するプログラムを
ご提案中です。
リモート方式で10セッションに亘る本格研修です。
ご関心ございましたらご覧ください。
「DXリーダ養成プログラムのご案内」




2021年4月23日金曜日

セクハラ

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 セクハラがなぜ起きるか、その対策は何かを
 アリストテレスモデル(アリス・モデル)で分析しました。
ねらい:
 「セクハラだ!」と言われないようにしましょうね。
 (女性のセクハラもありうるのですよ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この項は、別項米国のレイプ事件の告発書を受けて、
2018年に私が書いたものを掲載しています。
日本ではレイプと言わず、
もっと広くセクハラという無難な言葉で語られていることです。

レイプとセクハラの共通点は、相手の意思です。
合意・了解していれば、
レイプにもセクハラにならない、ということです。
この判断が極めて重要だということになります。
判断は定性的なものですから、問題が起きるのです。

ここで利用しているアリス・モデルとは、
ギリシャの哲学者アリストテレスが考案した事象の分析モデルを基に
上野が変成したもので、こういう4要因で分析を行います。

名称

内容

目的要因

当事者の目的・意図。

環境要因

問題が起きた環境条件。

前提条件と言ってもよい。

間接要因

直接因を起こした原因・要因。

直接因の当事者の状況。

直接要因

問題が起きた直接動作または発生事象。

事を起こした引き金。


Ⅰ.アリス・モデルによるセクハラ事件の分析図

Ⅱ.アリス・モデルによる「セクハラ事件」の分析の解説

1.    セクハラ事件の状況

(1)セクハラの定義

・そもそもセクハラ(セクシャル・ハラスメント)とは何か、
 ということですが、 法律上の定義があるのは、
 厚生労働省管轄の「男女雇用機会均等法」だけなのです。

・厚生労働省のホームページでは、
 セクハラ関連の件数について以下のように記述しています。

 

・この均等法では、セクハラをこのように定義しています。

職場におけるセクシャルハラスメントは、「職場」において行われる
「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応により
労働条件について不利益を受けたり、
「性的な言動」により就業環境が害されることです。

 ・そして「性的な言動」を以下のように定義しています。

性的な内容の発言および性的な行動を指します。

事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、患者、学校における
生徒などもセクシャルハラスメントの行為者になり得るものであり、
女性労働者が女性労働者に対して行う場合や、
男性労働者が男性労働者に対して行う場合についても含まれます。

【性的な言動の例】

 ① 性的な内容の発言
  性的な関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を流布すること
  性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、
  個人的な性的体験談を話すことなど

 ② 性的な行動
  性的な関係を強要すること、必要なく身体へ接触すること、
  わいせつな図画を配布・提示すること、
  強制わいせつ行為、強姦など


・この【性的な言動の例】は、職場における場合だけでなく、
 一般にも当てはまる説明であると思われます。

・最後の「強制わいせつ」と「強姦」は刑法上の規定があるものです。

(2)セクハラの本質

・ご認識のように、
 性的な言動自体が即セクハラになるわけではありません。
 性的行動を相手が厭だと思わないのなら、
 セクハラにならないのです。

・つまり、セクハラの必要条件はこうなります。
1) 性的な言動や行為である。
2) 相手の意思に反している。
3) 相手に不快感や不安を与える。

・相手が合意していれば、セクハラになりませんし、
 合意していなければ
 夫婦でもセクハラになりうるということになります。

・この「合意している」かどうかは、主観的な判断であり、
 この判断が両者で食い違っていることから
 セクハラ事件は起きるのです。

・判断力の鈍い人は、問題を起こしやすいということになります。

2. アリス・モデルによる原因と対策の分析

・ここでのセクハラは、前掲の定義のセクハラ全般ではなく、
 「性的な行動」に限定しています。

・(目的要因)
 男性であれば女性と「いい関係になりたい」と思うのは自然です。
 この気持ちを無くすことはできません。
 その気持ちを常識・倫理感で抑えるということが対策です。

・(間接要因)
 セクハラは、女性にも責任の一端があります。
 男性と2人だけの環境に入って来ていることはOKなのだなと、
 男性は思ってしまいます。

・(直接要因)
 「イヤよ、イヤよも好きのうち」という言葉がありますから、
 男性は 都合のよいように判断しがちです。
 しかし、その後の女性の対応では「これは本気でダメな人だ」
 と判断しなければならないのです。
 それができないのは男性の経験不足です。

・(環境要因)
 男性・女性の本質は変えられないでしょう。
 その前提で問題を起こさないように行動しなければならないのです。

以下に、2018年に実際に発生した2件のセクハラ事件の分析をします。
両事件の状況とも、ほとんどがここに示した原則どおりなのです。

セクハラ事件 例1 TOKIOY氏事件

要因区分

要因

対策

目的要因

・男性が相手と特別な関係を持ちたいと思う

・常識・倫理感で抑える

環境要因

・男性は一般的に征服欲・好色欲がある

女性は一般的に男性への依存       
 心・信頼感がある

 Y氏は離婚している

・なし

 

・なし

間接要因

・女性が二人きりの環境に入って来ている

・女性が何か自分に有利になることを期待している

(将来の芸能関係活動に有利になることを期待)

・女性が相手を甘く見ている(女性の経験不足である)

・男性が相手の好意の意味を誤解している(男性の経験不足である)

・男性にHを避ける女性もいるという認識がなかった(男性の知識不足である)

・男性がセクハラに対する認識不十分である

・女性が的確に状況判断する

 

・なし

 

 

・女性が的確に状況判断する

 

・男性が的確に状況判断する

 

・男性が学ぶ


・教育指導する

直接要因

・セクハラ行為に及ぶ

・男性が相手の拒絶態度を誤解している(男性の経験不足である)

・(間接要因にしか対策はない)

・男性が的確に状況判断する

 

・太字部分がこの事件固有の内容です。ほとんど汎用版のままです。


セクハラ事件 例2 財務省事務次官事件

要因区分

要因

対策

目的要因

・男性が相手と特別な関係を持ちたいと思う

・常識・倫理感で抑える

環境要因

・男性は一般的に征服欲・好色欲がある

・女性は一般的に男性への依存心・信頼感がある

家庭での夫人との関係は?

・なし

 

・なし

間接要因

・女性が二人きりの環境に入って来ている

・女性が何か自分に有利になることを期待している

(価値ある情報が入手できることを期待している)

・女性が相手を甘く見ている(女性の経験不足である)

・男性が相手の好意の意味を誤解している(男性の経験不足である)

・Hを避ける女性もいるという認識が男性になかった(男性の知識不足である)

・男性がセクハラに対する認識不十分である

相談を受けた上司が放置した

・女性が的確に状況判断する

 

・なし

 

 

・女性が的確に状況判断する

 

・男性が的確に状況判断する

 

 ・男性が学ぶ 


・男性に教育指導する

・男性にセクハラ問題の重要性を教育指導する

直接要因

・セクハラ行為に及ぶ

・男性が相手の拒絶態度を誤解している(男性の経験不足である)

・(間接要因にしか対策はない)

・男性が的確に状況判断する

 

・太字部分がこの事件固有の内容です。

・汎用版と違うのは、被害者が上司に相談していたことです。

・上司は仕事優先で、彼女の相談を無視しました。
 この上司にも指導が必要です。

2021年4月22日木曜日

「私の名前を知って」ですって!!

[このテーマの目的・ねらい]
目的:
 性暴力を受けたために大変な生活を送った
  米国女性の警世の書をご紹介します。
ねらい:
 日本ではこの内容は教訓になるのでしょうか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これはたいへんショッキングなレポート
米国のシャネル・ミラー著「私の名前を知って」
のご紹介です。

本書は22歳の若き美女がレイプされたことを訴えた
裁判にまつわる事実を赤裸々に報告したものです。
邦訳で468頁の大著なのですが、
どうなるのだろう?とつい一気に読んでしまいました。

一般の書籍であれば、「はじめに」と目次を見て
関心のあるところを読むのですが、
「小説」はそうはいきませんから。

私が受けとめた本書の概要はこういうことです。

1.事実
2015年1月、22歳の大学卒業したばかりのOLが
妹とその友人に誘われて、
自宅近くのスタンフォード大学内で開催された
フラタニティ・パーティに参加した。
(注:フラタニティとは、
北米ではもっぱら大学・大学院の男子学生社交団体を意味するそうです
(Wikipedia))

屋外で泥酔した彼女に何かをしていた男性を
通りがかりのスウェーデン人男性二人が気がつき、
男を追いかけ警察につき出した。
警察が記録した彼女の様子がその後捜査記録として公開されていた。
彼女の名前を除くすべてです。

「後に『被害者』として特定される女性」
「ゴミ箱の後ろ、地面で発見。女性は黒いタイトなワンピースを着用」
「ワンピースは腰のあたりまで引き上げられており、
 ウエストの近くでまとまって、皺になっていた」
「臀部全体が露出しており、下着は着用しておらず」
「下腹部と陰部が目に入り、膣と尻が見えた」
「彼女の長い髪は乱れ、絡まり、全体が松葉に覆われていた」
「彼女は45度から90度の角度(胎児のような姿勢)で
 脚を曲げた状態で横たわっており、両腕は胸の前、
 両手は顔の近くの地面についていた」
「彼女のドレスは両肩で引き下ろされ、ブラジャーが引っ張り出されていた」
「ブラジャーは彼女の右胸しか覆っていなかった」
「ネックレスは首に巻き付いており、ペンダント部分は背中に回っていた」
「白と黒の水玉模様のパンティーは「被害者」の腹部の前、
 約15センチ先の地面に丸まって転がっていた」
「彼女の銀色のiPhoneは地面に落ちており、臀部の後ろにあった。
 青い携帯電話ケースはiPhoneから外れた状態で、約10センチ先にあった」
「彼女は茶色のブーツを履いており、紐は解かれておらず、
 紐はリボン結びされていた」


泥酔していた彼女が、目を覚ました場所は病院でした。
警察官がそばにいました。

その後、たいへんな検査をされました。
(その様子が丁寧に書かれているのです)
完全に裸にされて全身の写真をとられた。
尿検査をされた。
肛門に木の綿棒2本を挿入されて検査媒体を採取された。
膣をつぶさに検査され、顕微鏡カメラで写真もとられた。
膣内の粘液物も採取された。

彼女の検査キットは、検査するまでの何百人もの順番待ちで
数か月を要しました。
それだけ案件が多いということで驚きです。

2.何故訴えたのか。
警察官に訴えるかどうか聞かれて、Yesと言っています。
そこから彼女の苦闘が始まったのです。
こういう記述があります。
「検査」が終わって自宅に引き上げる車の中でのことです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私たちが車道に入ると、妹の電話がなった。
キム刑事からの電話だ。
テイファニーは私に談話を渡した。
「告訴しますか?」と彼は言った。
「どういうことですか?」と私は尋ねた。

手続きについてはあまり話せない、
それはむしろ地方検事の管轄だから、と彼は答えた。
当局は、法的に起訴する意向だが、
私が協力するかどうかは自由意思だという。
私が協力した方が当局は助かるが、義務ではないとも言われた。
私は少し考える時間が欲しいので、折り返し電話すると伝えた。
私は電を切ると、妹の方を見た。

誰にも相談できる人はいなかった。
ティファニー(妹)にも分からない。
「した方がいいかな?いいよね?
でも告訴しない方がいいかも。
でもどちらにせよ起訴はされるんだから、私も協力した方がいいよね。
ええと何を?どうやって?」

私は座ったまま辺りを見回し、途方に暮れた。
「告訴した方が、いいよね。そうだよね?検察が起訴するなら」

この時は嘆願書に署名するようなものだと思っていた。
この事件を追及する警察の決定を支持する旨を表明する、
ちょっとした確認の印だと考えていた。
私が告訴しないと言えば、容疑者の側につくことになるんじゃないか、
なんて思っていた。

裁判なんて、脳裏をかすめてもいなかった。
裁判なんて、テレビでやっている大袈裟で分かりにくい対決以外の
何物でもなかった。
それに男は既に逮捕されている。
彼が何もしていないことが判明すれば、釈放されるだろう。
そうでなければ、彼はそのまま刑務所に残って服役する。

有罪判決を下すに足る証拠はすべて揃っていた。
これは単に形式的なものなのだ。
私は刑事に電話をかけ直した。
「ええと、イエス、分かりました。告訴します。
よろしくお願いします」

お金を積めば、刑務所の扉を開けられるなんで、知らなかった。
暴力が起きた時に女性が酔っていたら、
まともに話が聞いてもらえないなんて知らなかった。
暴力が起きた時に男性が酔っていたら、
みんなから同情されるなんて、知らなかった。
私が記憶を失ったことが、彼のチャンスになるなんて、知らなかった。
被害者であるということが、
信じてもらえないことと同義だなんて知らなかった。
(これらのことは、その後で知ることになり、
彼女を徹底的に苦しめました)

私道に座っていた時には、知らなかった。
この小さな「イエス」によって、私の体が再び曝され、
切り傷を激しく擦られ,
公に向けて私の脚がこじ開けられることになるなんて、
予備審問とは何なのか,公判が実際のところ何を意味するのか、
全く知らなかった。
被告人の弁護士から共謀と咎められないよう、
妹と話すのをやめるよう指示されることなんで、思ってもみなかった。
あの朝の「イエス」という3文字の言葉が、未来の扉を開けた。
その未来の中で、
私は23歳、24歳、25歳、26歳になりようやく事件が決着した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ということなのです。
起訴の罪状では、
「酩酊者の強姦、意識不明者の強姦、酩酊女性への異物による性的挿入、
意識不明女性への異物による性的挿入、強姦の意図を持った暴行」
の5件の罪でしたが、その後の検査結果の判断により、
強姦の二つはなくなりました。

何故訴えたのかについて、私なりに整理するとこうなります。
1.おそらく、酩酊して眠ってしまいレイプされていても、
  そのまま自分で目覚めていれば、訴えなかったでしょう。
2.訴えたのは、救急車で運ばれ、警察沙汰になったので、
  穏便に済ますことができなくなった。
3.恥ずかしい検査を受けたということで相手への憎しみが沸いた。
4.訴えることが、後々こんなに大変なことになるとは思わなかった。

この4番目の判断が最大理由と思われます(上述のとおりです)。

3.裁判経緯
1)公判は、裁判所側(被告側の要因もあるかも)の都合で何度も延期され、
 生活が狂ってしまいます。
 まったく不条理です。同感できます。
 その精神的負担がどのくらいのものかが詳述されています。

2)公判では、陪審員に対して、
 彼女の検査結果等がスクリーンで公開されてしまうのです。
 証拠として必要なのでしょうが、
 プライバシーは認められないのでしょうか。
 大変な恥辱です。
 こういうことがあると思ったら、誰も訴えを起こしませんね。

3)最後は、陪審員全員が3つの罪状に対して有罪と判定しました。
 良かったです。

4)2016年6月の判決
ところが裁判長は、被告側の状況も斟酌して
(有数な水泳選手であることを棒に振ってしまい
社会的制裁をすでに受けている、など)
甘い判決を出します(禁固6か月)。

5)控訴
被告側は2017年12月に控訴しましたが、
2018年8月8日に控訴棄却の判決が出ました。
これで事件発生から3年半ぶりの決着です。

4.陳述書の公開
第1審判決の前に彼女が陳述書を裁判所に提出しています。
それが直後に、彼女の許可でネットで公開されました。
巻末にその詳細が記載されています。

この陳述書には、こういうことが訴えられています。
事件の経緯、それによってどれだけの影響を受けたのか、
被告人が素直に謝らずに言い訳をしようとしている
(私も合意していた、2人が酔って正当な判断力を失っていた、など)
その言い訳は通らない、私が酩酊していたのなら、
どうして助けようとしてくれなかったのか。
結局、素直に謝らずに裁判沙汰にしたことに憤慨しているのです。

その内容が反響を呼び、1800万人が読みました。
そうして、判決は不当であるということで、
裁判官罷免の活動を引き起こし、裁判官は罷免されました。

この陳述書は、ヒラリークリントンやバイデン副大統領も読み、
感想をコメントしています。

5.本書の著述
仮名で通すか、実名を出すかについて悩んだようですが、
彼女の開き直りです。
裁判過程ですっかり批判精神のできた彼女は、
あえて実名を出し、性暴力の不当性、それがどれだけの影響を
関係者に与えることになるかを示そうと考えるに至り、
小説ではない事実に基づく警告書となったのです。
  
彼女の言いたいことは、
過ちでこのような事件を起こしてほしくない、
ということでしょう。

この陳述書の影響で
一部の州で性犯罪の重罰化の法改正も行われたようです。

上野の感想
本書が世に出ることになったのは、
いくつかの偶然が重なった結果だと思います。
1)彼女がそれなりに魅力的な女性であった。
  そうでなければ、レイプの対象にならなかった。
2)彼女が結構アルコールを飲むのが好きだった。
  そうでなければ酩酊して、
  自分が好意を感じない男性に誘われることはなかった。
3)彼女がしっかりした自尊心を持っている女性だった。
  そうでなければ、
  泣き寝入りをせず訴訟を起こそうと思わなかった。
4)相手が示談を選ばずに対抗しようとした。
  相手が素直に非を認めて謝罪していれば
  彼女も許して大事にならずに済んだ
5)彼女が強靭な精神の持ち主だった。
  そうでなければ、3年以上の逆境に耐えられなかった。
6)彼女に優れた文筆の才があった。
  そうでなければ、
  多くの人に感動を与える「陳述書」を書けなかった。

ということで、これは稀なケースだと思うか、
一般に学ぶべき点があると考えるか、は個人によるでしょう。

それにしても、
何でここまでのことになってしまったのだろう?と思います。
相手の出方が悪かったのです。
謝って示談にすればよいものを、
無実で対抗しようとしたのが間違いです。

この事件の加害者は若い将来有望な水泳選手だったのです。
彼はこの事件で一生を「棒にふって」しまいました。
彼が彼女をレイプ対象に選んだのは、
「美人だし酔って乗っている、受入れOKだろう」と考えたのです。
その選択がまさに「一生の不覚」だったのです。
自ら蒔いた「タネ」とは言いますが、
ある面で彼も「事件」の犠牲者です。

この事件の教訓は、
「酔って意識不明状態の女性に性暴力をふるうな」
ということに尽きます。

皆さまご承知のように性行為は、
両者の合意があれば全く問題ないことです。
合意がない場合に犯罪となりうるのです。
合意がなければ夫婦でもDVとなり、訴えの対象となります。

ことの性質上、合意はかなりあいまいな面もあります。
酔っていて正当な判断力を失っている場合は、
イエスと言ったとしても
「合意と認められない」ということなのです。

そんな当然のことのために、
こんな陳述書や著書が話題になるということは、
米国の性風俗が退廃していることを示しているのでしょうか。
疑問に思いました。

米国では、「強姦」を意味するレイプ(rape)という言葉は、
日本語の強姦という言葉より、気楽に使われている感じがします。
「強姦」は完全に犯罪的ニュアンスの言葉で
日常会話に出てくることはありません。
米国ではそうではなく、もっと気楽に使われる言葉のようです。
「やってしまった」というニュアンスです。
その文化に対して警鐘を鳴らしたのでしょうか。

日本でこういうことに多く使われる言葉は「セクハラ」「痴漢」です。
セクハラの定義も、言動の客観的内容ではなく、
相手が不快に思うかどうかです。

セクハラについて、
私が2018年にまとめたレポートを別項にご紹介します。

2021年4月13日火曜日

空飛ぶヘビの研究「アニマルモーション」という学問!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:

 「アニマルモーション」について知っていただきます。
 「そんなことがあるのか」を知っていただきます。
ねらい
 そういう目で、動物たちを見てみましょう。
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ジョージア工科大学教授(機械工学・生物学 スゴイ学科ですね)
ディヴィッド・フー著「動物たちのスゴ技から生まれたテクノロジー」
のご紹介です。

ビックリですね。
ビックリは自然界での動物たちの環境対応の素晴らしさではなく
こういうことを研究している学者がたくさんいる、ということです。
感心しました。

動物たちの巧妙な動きを解き明かす研究を「アニマルモーション」
というようですが(日経新聞の書評欄)、ネットで検索すると
その言葉は出てきません。

私なりに、本書を読んで、
この研究の「目的・ねらい」を整理してみました。

「目的」:動物たちの不思議な行動の原理を解明する。
「ねらい」:その原理を応用した仕組みや機器を開発する。
      そこまでいかなくても、
      人間としてその原理を学んで行動の改善をする。

「それが何の役に立つのか、無駄な研究だ」
と社会から白い目で見られる、と本書の中で紹介がありましたが、
「目的」で留まっていればそうなるでしょう。

しかし、「ねらい」にあるように、
「その原理を応用した仕組みや機器を開発する」ことができれば、
誰も「無駄な研究だ」とは言わないでしょうね。

本書では、今のところ単に研究で終っていることと、
研究結果の応用で人類に貢献していることとがあります。
それを〇△✖を付けてみました。
✖は「役に立っていない」ものです。

△水上を移動するアメンボ
 軽いからだが水の表面張力を破壊しないで、
 トランポリンで跳ねるように浮かびかつ前進する。
 足には無数の毛が生えていて水の侵入を防ぎ
 空気膜をつくり出している(これは浮力になる)。
 

 
 水上を移動できるアメンボロボットが多数開発されている。

 しかしまだ実用にはなっていない。

✖ヘビが空を飛ぶ
 (正確には真下に落下せずに、ハングライダー状態で遠くまで浮遊できる)
 これは、ヘビが「飛ぶ」ときに胴体の断面が
 飛行機の翼の断面のような形状になって浮力を得るためである
 ことが解明された。
 

 しかし、すでに飛行機は開発されており学ぶことはない。

△クラゲの推力
 クラゲは水を体に吸い込みそれを押し出す推力で進んでいる。
 様々な形のクラゲのエネルギ―消費と推力を比較研究した結果、
 アスペクト比が4程度が最適であることを解明した。
 

 そのクラゲの原理を応用して、音が静かに進む潜水艦を開発した
 とありますが、
 おそらくそれは模型でまだ実用にはなっていないでしょう。

△ヒアリは集団で構造物を作り目的を達成する
 水の中に入ると筏状になる、
 行先に間があると自分たちがはしごになって仲間が渡るのを助ける、
 など集団で最適解を求める行動をする、指揮者がいないのに。
 このなぞは解けていません。


 解けたとすれば、自律型のロボットなどに応用できるのかもしれません。

△ゴキブリは体を分解して数分の1の薄さになる
 写真のようです。


 折り畳み式になっているのです。
 この方式は災害救助用のロボットに応用可能です。

✖蚊は豪雨の中でも雨に打たれずに飛ぶ
 蚊は軽い(雨粒の2%しかない)ので、
 雨に打たれると抵抗なく押されるがままにして受け流してしまう。
 浮いている風船をパンチしても割れないのと同じ。
 応用はないでしょう。


✖まつ毛の長さの最適解
 まつ毛を持つあらゆる動物のまつ毛の長さは、
 測定結果目の幅の3分の1であった。
 その状態が目の乾燥を防ぎかつ視界を妨げないことが
 実験結果で証明された。
 自然界にはこのような「アイソメトリー」(同率性)が存在する。
 これの応用はないでしょう。
 
△サメ肌は水の抵抗を下げると同時に生物の付着も防止できる。
 サメ肌応用の水着を着た選手は世界記録を続々更新し、
 直ちに使用禁止となったのはご記憶の方もおられるでしょう。

〇砂の中を泳ぐサンドフィッシュ
 これは泥・砂に潜り込まない移動機械の研究に活かされています。
 この写真はイモリの方からの研究のイモリ型ロボットです。

✖膀胱からの排尿時間
 「パスカルの原理により、液体の圧力は高度差による」として
 以下の記述があります(原文のまま)。
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 尿道を長くすれば、重力を利用して圧力を高め、
 おしっこを出すのに利用できる。
 成人女性の尿道は、長さ5センチメートルで、
 幅はコーヒーマドラー程度。
 
 一方、ゾウのメスの尿道は長さ1メートルで、
 幅はヒトの拳ほどもある。
 この寸法のおかげで、
 ゾウはシャワーヘッド5個分の流速で排尿できる。
 流速が早く、パイプの断面積が広いおかげで、
 巨大な膀胱をすばやく空にできるため、
 大型動物は小動物と同じ時間で排尿を完了できるのだ。

 大学院生のパトリシアは、排尿時間を算出する数式を考案し、
 僕らはこれを「排尿の法則」と名づけた。
 尿道のアスペクト比(注:縦横比)が等しければ
 膀胱の容量を問わず排尿時間は一定で、常に21秒だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 「長い尿道の方が圧力が大きい」のです。
 一方でこういう記述がありました。
 「人間の男性のアスペクト比は25:1、女性は17:1である
 (男性の尿道は長い)」

 だとすると、この説にはいくつかの疑問があります。
 1)排尿速度は圧力によりますので尿道の長さに関係しますが、
 排尿時間はたまっている尿の量(膀胱の容量ではなく)
 に依存するはずです。
 動物は膀胱が満タンにならないと排尿しないということであれば、
 「膀胱の容量と時間当たり流量(=長さ×断面積に比例する)が
 比例しているので排尿時間は一定になる」というなら分かりますが、
 「膀胱の容量に関係なく」という理屈はおかしいです。

 2)尿道の先端(水柱の下部)で受ける圧力は、
 尿道部分の高低差だけではなく膀胱に入っている液体の高低差も
 影響するはずではないでしょうか、
 つまり圧力の計算には膀胱の縦の長さも加算すべきではないか、
 と思います。
 
 3)人間の男性のアスペクト比は女性より大きいので、
 筆者たちの理屈からすると、
 男性の方が排尿時間が短くなりそうですが、
 以下の検証によれば、男性の排尿時間の方が長いのです。

 【2018年日本抗加齢医学会での研究発表】
 20歳以上の男性2373人(平均年齢63.36±11.72歳)、
      女性1336人(52.63±13.05歳)の調査結果
 「通常の尿意の際の排尿時間の自己計測」
  男性は29.00±20.62秒、女性18.05±12.48秒
  20~50歳の男性は21.98±17.87秒
 (「この数値は21秒仮説に合致する」 (上野注:疑問です)
  「加齢とともに時間が延びる」
  と研究発表者がコメントしています) 
 
 膀胱と尿道は、
 以下の図(出典:ネット・詳細不明)のようになっていますが、
 男性の尿道は高低差に貢献せずに、「長いので余計に時間がかかる」
 ことになっているのではないでしょうか。 

 4)筆者らは、人間の男女の排尿時間について、何も述べていません。
 21秒だとするとそれがどちらのことを言っているか不明です。
 男性のことだとするなら、
 「存在しない女たち」の筆者が主張するように、
 女性のことを無視していることになります。

 この21秒仮説は平均値だとしても、
 分散はかなりの幅があるのだとすると
 医療現場での判断材料とはできません。
 他に、この研究結果を活かす場面はおそらくないでしょう。

 筆者は、自分の研究結果だけでなく、
 弟子や仲間たちの研究結果を紹介しているのですが、
 その分については、若干大ざっぱなところがあるようです。