2021年4月13日火曜日

空飛ぶヘビの研究「アニマルモーション」という学問!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:

 「アニマルモーション」について知っていただきます。
 「そんなことがあるのか」を知っていただきます。
ねらい
 そういう目で、動物たちを見てみましょう。
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ジョージア工科大学教授(機械工学・生物学 スゴイ学科ですね)
ディヴィッド・フー著「動物たちのスゴ技から生まれたテクノロジー」
のご紹介です。

ビックリですね。
ビックリは自然界での動物たちの環境対応の素晴らしさではなく
こういうことを研究している学者がたくさんいる、ということです。
感心しました。

動物たちの巧妙な動きを解き明かす研究を「アニマルモーション」
というようですが(日経新聞の書評欄)、ネットで検索すると
その言葉は出てきません。

私なりに、本書を読んで、
この研究の「目的・ねらい」を整理してみました。

「目的」:動物たちの不思議な行動の原理を解明する。
「ねらい」:その原理を応用した仕組みや機器を開発する。
      そこまでいかなくても、
      人間としてその原理を学んで行動の改善をする。

「それが何の役に立つのか、無駄な研究だ」
と社会から白い目で見られる、と本書の中で紹介がありましたが、
「目的」で留まっていればそうなるでしょう。

しかし、「ねらい」にあるように、
「その原理を応用した仕組みや機器を開発する」ことができれば、
誰も「無駄な研究だ」とは言わないでしょうね。

本書では、今のところ単に研究で終っていることと、
研究結果の応用で人類に貢献していることとがあります。
それを〇△✖を付けてみました。
✖は「役に立っていない」ものです。

△水上を移動するアメンボ
 軽いからだが水の表面張力を破壊しないで、
 トランポリンで跳ねるように浮かびかつ前進する。
 足には無数の毛が生えていて水の侵入を防ぎ
 空気膜をつくり出している(これは浮力になる)。
 

 
 水上を移動できるアメンボロボットが多数開発されている。

 しかしまだ実用にはなっていない。

✖ヘビが空を飛ぶ
 (正確には真下に落下せずに、ハングライダー状態で遠くまで浮遊できる)
 これは、ヘビが「飛ぶ」ときに胴体の断面が
 飛行機の翼の断面のような形状になって浮力を得るためである
 ことが解明された。
 

 しかし、すでに飛行機は開発されており学ぶことはない。

△クラゲの推力
 クラゲは水を体に吸い込みそれを押し出す推力で進んでいる。
 様々な形のクラゲのエネルギ―消費と推力を比較研究した結果、
 アスペクト比が4程度が最適であることを解明した。
 

 そのクラゲの原理を応用して、音が静かに進む潜水艦を開発した
 とありますが、
 おそらくそれは模型でまだ実用にはなっていないでしょう。

△ヒアリは集団で構造物を作り目的を達成する
 水の中に入ると筏状になる、
 行先に間があると自分たちがはしごになって仲間が渡るのを助ける、
 など集団で最適解を求める行動をする、指揮者がいないのに。
 このなぞは解けていません。


 解けたとすれば、自律型のロボットなどに応用できるのかもしれません。

△ゴキブリは体を分解して数分の1の薄さになる
 写真のようです。


 折り畳み式になっているのです。
 この方式は災害救助用のロボットに応用可能です。

✖蚊は豪雨の中でも雨に打たれずに飛ぶ
 蚊は軽い(雨粒の2%しかない)ので、
 雨に打たれると抵抗なく押されるがままにして受け流してしまう。
 浮いている風船をパンチしても割れないのと同じ。
 応用はないでしょう。


✖まつ毛の長さの最適解
 まつ毛を持つあらゆる動物のまつ毛の長さは、
 測定結果目の幅の3分の1であった。
 その状態が目の乾燥を防ぎかつ視界を妨げないことが
 実験結果で証明された。
 自然界にはこのような「アイソメトリー」(同率性)が存在する。
 これの応用はないでしょう。
 
△サメ肌は水の抵抗を下げると同時に生物の付着も防止できる。
 サメ肌応用の水着を着た選手は世界記録を続々更新し、
 直ちに使用禁止となったのはご記憶の方もおられるでしょう。

〇砂の中を泳ぐサンドフィッシュ
 これは泥・砂に潜り込まない移動機械の研究に活かされています。
 この写真はイモリの方からの研究のイモリ型ロボットです。

✖膀胱からの排尿時間
 「パスカルの原理により、液体の圧力は高度差による」として
 以下の記述があります(原文のまま)。
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 尿道を長くすれば、重力を利用して圧力を高め、
 おしっこを出すのに利用できる。
 成人女性の尿道は、長さ5センチメートルで、
 幅はコーヒーマドラー程度。
 
 一方、ゾウのメスの尿道は長さ1メートルで、
 幅はヒトの拳ほどもある。
 この寸法のおかげで、
 ゾウはシャワーヘッド5個分の流速で排尿できる。
 流速が早く、パイプの断面積が広いおかげで、
 巨大な膀胱をすばやく空にできるため、
 大型動物は小動物と同じ時間で排尿を完了できるのだ。

 大学院生のパトリシアは、排尿時間を算出する数式を考案し、
 僕らはこれを「排尿の法則」と名づけた。
 尿道のアスペクト比(注:縦横比)が等しければ
 膀胱の容量を問わず排尿時間は一定で、常に21秒だった。
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 「長い尿道の方が圧力が大きい」のです。
 一方でこういう記述がありました。
 「人間の男性のアスペクト比は25:1、女性は17:1である
 (男性の尿道は長い)」

 だとすると、この説にはいくつかの疑問があります。
 1)排尿速度は圧力によりますので尿道の長さに関係しますが、
 排尿時間はたまっている尿の量(膀胱の容量ではなく)
 に依存するはずです。
 動物は膀胱が満タンにならないと排尿しないということであれば、
 「膀胱の容量と時間当たり流量(=長さ×断面積に比例する)が
 比例しているので排尿時間は一定になる」というなら分かりますが、
 「膀胱の容量に関係なく」という理屈はおかしいです。

 2)尿道の先端(水柱の下部)で受ける圧力は、
 尿道部分の高低差だけではなく膀胱に入っている液体の高低差も
 影響するはずではないでしょうか、
 つまり圧力の計算には膀胱の縦の長さも加算すべきではないか、
 と思います。
 
 3)人間の男性のアスペクト比は女性より大きいので、
 筆者たちの理屈からすると、
 男性の方が排尿時間が短くなりそうですが、
 以下の検証によれば、男性の排尿時間の方が長いのです。

 【2018年日本抗加齢医学会での研究発表】
 20歳以上の男性2373人(平均年齢63.36±11.72歳)、
      女性1336人(52.63±13.05歳)の調査結果
 「通常の尿意の際の排尿時間の自己計測」
  男性は29.00±20.62秒、女性18.05±12.48秒
  20~50歳の男性は21.98±17.87秒
 (「この数値は21秒仮説に合致する」 (上野注:疑問です)
  「加齢とともに時間が延びる」
  と研究発表者がコメントしています) 
 
 膀胱と尿道は、
 以下の図(出典:ネット・詳細不明)のようになっていますが、
 男性の尿道は高低差に貢献せずに、「長いので余計に時間がかかる」
 ことになっているのではないでしょうか。 

 4)筆者らは、人間の男女の排尿時間について、何も述べていません。
 21秒だとするとそれがどちらのことを言っているか不明です。
 男性のことだとするなら、
 「存在しない女たち」の筆者が主張するように、
 女性のことを無視していることになります。

 この21秒仮説は平均値だとしても、
 分散はかなりの幅があるのだとすると
 医療現場での判断材料とはできません。
 他に、この研究結果を活かす場面はおそらくないでしょう。

 筆者は、自分の研究結果だけでなく、
 弟子や仲間たちの研究結果を紹介しているのですが、
 その分については、若干大ざっぱなところがあるようです。

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