2018年5月30日水曜日

アリストテレス・モデルによる因果関係分析を始めます!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 因果分析を行う際の枠組み(フレーム)とすることができる
 「アリストテレス・モデル」をご紹介します。

ねらい:
 「なかなか面白いモデルだ」と応援してくださいませんか。
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私は、先月のブログ「物事のなぜ」で、
アリストテレスが元祖の因果分析方法について述べさせていただきました。

その後、この方法は
問題解決・因果分析に力を入れてきた私の研究の集大成に繋がるのではないか
と思い至りました。

そこで、これからこの因果分析方法をアリストテレス・モデルと命名し
取り組んでいくことにしました。
本項では、アリストテレス・モデルとは何かのご紹介をいたします。


1.アリストテレス・モデルとは  

アリストテレス・モデルは、
古代ギリシャの哲学者アリストテレスが作った因果分析モデルが
ベースになっています


アリストテレスの考えた「原理」は、
因果関係を追求する際に適用するモデルです。

因果関係を問う言葉は「なぜ」です。


「なぜ」は二つの意味を持っています。
「なぜそうなるの?」は、原因を聞いています。
「なぜそうするの?」は、目的を聞いています。


因果関係で言えば、前者が原因を聞いていて、
後者は結果を聞いています。
まったく逆のことに同じ言葉を使うのは、
考えてみれば不思議なことです。


子供は「なぜ?」と言わずに「どうして?」と言いますが、
「なぜ?」と同じに2面性を持っています。

子供が「どうして?」と聞くのは、
言葉が使えるようになってすぐに使う言葉です。
「どうして?」「どうして?」と聞いて母親を困らせます。


状況によって、原因を聞いているのか、
目的を聞いているのかは分かるのですが、
改めて聞かれると親も返答に困ってしまうこともあります。


2面性は英語の「WHY?」でも同じことです。
ご存じのように、英語で目的を聞いていることをはっきりしたい場合は、
「What for」を使います。


「なぜ」の2面性のためか、
原因と結果をごちゃごちゃにする、因果分析が苦手な人もいます。

「なぜなぜ5回」は、
「なぜ?と5回原因を聞きなさい」ということなのですが、
その苦手な人は、「なぜ?」と自問している時に、
途中で結果の方を考えてしまうことがあるのです。


原因と結果というのは、
簡単なことのようで案外難しいということです。


赤ん坊が聞くくらい、「なぜ?」は人間にとって根源的な問いですから、
太古の人類から「なぜ?」は追求されていたようです
(ピーター・ラビンズ著「物事のなぜ」英治出版)。


そして、因果関係について体系的な分析モデルを考えた元祖は、
あのアリストテレスだったのです(これも前掲書)。


アリストテレスが考えた分析モデルはこういうものでした(前掲書)。


アリストテレスの分析モデル

アリストテレスの用語

定義

ゼウスのブロンズ像における例示

 質量因

本来備わっている
元からあった

青銅の材料と、人の肉体を細かく表現するのに適した材料の配合比率

 始動因

始動する
誘発する

彫る職人と、その職人が発揮する技量

 形相因

体系的
相互作用に関わる

理想の肉体と、それを理想的に表現するという概念

 目的因

理由
目的

理想の肉体を称賛するとか、神の被造物を称えるなど、像を存在させる目的


この4分類は、論理的な整理法としてたいへん有効だと思われますが、
多少分かりにくい点がありますので、私が以下のように改変してみました。

上野モデルの名称

内容

アリストテレスが付けた名称

目的因

当事者の目的・意図

目的因

環境因

問題が起きた、または起きる環境条件
前提条件と言ってもよい

質料因

間接因

直接因を起こした、または起こす原因・要因
直接因の当事者の状況

形相因

直接因

問題が起きたまたは起こす直接動作または発生事象
事を起こしたまたは起こす引き金

始動因


この分析モデルは、発生した事象や問題の原因を探求する場合に使えますが、
前向きに「どうすればうまくいくのか」と成功要因を探求する場合にも、
適用が可能です。


そのために、目的原因、環境原因、間接原因、直接原因と言わずに、
目的因、環境因、間接因、直接因ということにしました。
アリストテレスの原型もそうなっています。

前向きの場合の「因」は、原因の因ではなく、要因の因です。


以下の例示をご覧ください。


【原因分析の例】


原因分析の場合は、対策を検討するのが目的ですから、
この例示でも対策を合わせて表示しました。


原因分析の例1 5/7滋賀県で小1女児が側溝で溺死


要因区分

要因

対策

目的因

下校時に流水で遊ぼうとした。

登下校時に寄り道や遊びをしないことの徹底をする。

環境因

大雨のため増水していた。

側溝に入れるようになっていた。

人間は溺死するものである。

なし

側溝に蓋をかける(コスト負担あり)。

なし(風呂で溺れる老人がいる)。

間接因

足を滑らせた。


足を掬われたときに立ちあがれる体力がなかった。

近くに保護者がいなかった。

 

(側溝に入ってしまったら避けられない)

なし(通常の成人は側溝で流されない)

危険な状態の時は下級生には保護者が登下校に付き添う。

直接因

ランドセルを背負ったまま深さ・幅各約40センチの側溝で80メートル流された。

(間接因にしか対策はない。近くに大人がいれば80メートルは流されなかった)
                  
可能な対策は、現在もその指導はされているはずですが、
(目的因の対策)登下校時に寄り道や遊びをしないことの徹底をする、ことと
(間接因の対策)危険な状態の時は下級生には保護者が登下校に付き添う、
ことです。


しかし後者については、現実的な運用は困難ではないかと想定されます。
「何かあったら困る」と考えると負担が増大し
現実的には実施困難となります。
そうすると「災害は忘れたころにやってくる」になりかねません。


原因分析の例2 セクハラ事件 (汎用分析)
      斜体はTOKIOのY氏の場合



要因区分

要因

対策

目的因

男性が相手と特別な関係を持ちたいと思う。

常識・倫理感で抑える

 
環境因

男性は一般的に征服欲・好色欲がある。

女性は一般的に男性への依存心・信頼感がある。

Y氏は離婚している。

なし

 

なし

 


間接因

女性が二人きりの環境に入って来ている。

女性が何か自分に有利になることを期待している。

(将来の芸能関係活動に有利になることを期待)

女性が相手を甘く見ている(女性の経験不足である)

男性が相手の好意の意味を誤解している(男性の経験不足である)。

男性にHを避ける女性もいるという認識がなかった。(男性の知識不足である)

男性がセクハラに対する認識不十分である。

女性が的確に状況判断する

 

なし

 





女性が的確に状況判断する

 

男性が的確に状況判断する

 



男性が学ぶ



 教育指導する






 
直接因

セクハラ行為に及ぶ。

男性が相手の拒絶態度を誤解している(男性の経験不足である)。

(間接因にしか対策はない)

男性が的確に状況判断する。

このテーマに関心の強い上野の分析としては、
基本的には両者とも経験不足ということになります。

 

【成功要因探求の例】

今回は省略です。

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【自然現象理解の例】

また、この分析モデルは自然現象を理解するのにも使えます。
この場合にも、「原因」でなく「因」の方が自然です。
対策は不要です。


1)リンゴが木から落ちる

因果類型

内容

対策

 目的因

種族の維持発展

(種が土に落ちて芽を出す)

 

 環境因

引力が存在する。

 

 間接因

リンゴが成熟している。

 

 直接因

リンゴの実が枝から離れる。

 

 
りんごが木から落ちるのは、万有引力があるからだけではないのです。


 2)川が流れる



因果類型

内容

対策

 目的因

水が低きに流れる。



 環境因

地表に高低差がある。

 

 間接因

水は流動性が高い。



 直接因

ある程度の水がある。

 

 当たり前のことですが、川が流れているのはこうなっているのです。


「川が流れる」の延長で、「洪水が発生する」というのがありますが、
これは単なる自然現象ではなく、人間が介入可能です。


実際に人間が対策をとっています。
対策は、環境因と直接因について可能です。
対策が不十分なときに、洪水が発生します。



3)洪水が発生する



因果類型

内容

対策

 目的因

水が低きに流れる。

奔流となって低きに流れる。

(洪水でも高きには流れない)

 

 環境因

地表に高低差がある。

高低差を緩くするように迂回させる。

 間接因

水は流動性が高い。

大量の水は力がある。

 

 直接因

大量の水がある。

 

水が堤防を破壊する。

大量の水が流れないようにダムを作る。

堤防を強化する。



4)尿が出る

因果類型

内容

対策

 目的因

老廃物を排泄する。

 

 環境因

体の機能維持のために水分を補強する。

老廃物が血液に乗って腎臓に至る。

 

 間接因

腎臓が尿を生成する。

尿管が尿を膀胱に送る。

膀胱は尿を貯める。

膀胱は尿を尿道に送る。

 

 直接因

尿道の出口が解放される。

 

 

 
環境因から直接因までのどこかが不良だと、
尿が出ない病気になります。



尿道の出口の解放が意図しない場合は「おもらし」となります。

 
5)生物の進化



因果類型

内容

対策

 目的因

生物の種族維持・発展

 

 環境因

環境が変化する。

 

 間接因

環境適応性が高い個体は生き延びる。

環境適応性が低い個体は淘汰される。

 

 直接因

DNAの突然変異が起きる。

 



現時点の進化論はこれで決着のようです。
ダーウィンは直接因を漠然と遺伝的事項ととらえていました。
環境適応性が個体の中で留まり子孫に継承されないものは
進化ではなく順応です。


2.アリストテレス・モデルによる個人の行動改善


今後私はこの領域を探求しようと思っています。


テーマ例だけ掲載します。

三日坊主(ダイエット、禁煙)
見て見ぬふり
自分の意見を言わない
なんでも人に同調する
なんでも反対する
自己主張が強すぎる
恥ずかしがりや
挨拶ができない
おはようが自然にでない
ありがとうが自然にでない
ごめんなさいが自然にでない
先延ばし
夫婦げんか





今後、他の領域の分析事例を含め順次ご紹介していこうと思います。
ご期待ください。