2024年1月24日水曜日

インドはどういう国?

[このテーマの目的・ねらい】
目的:
 世界で台頭著しいインドについて研究してみました。
ねらい:
 日本も負けずに「日本色」を出していきたいですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本項は、学士會会報2024ーⅠ号に掲載されました
国際大学特任教授田所昌幸氏による寄稿
「国際政治の観点から見たインドを巡る情勢」のご紹介+αです。


A.インドはどういう国か(寄稿文対象外)

1.人口(2023年国連統計データ)
・人口では、2023年に世界一になりました。

インド

142,860万人

中国

142,570万人

アメリカ

3億4,000万人

インドネシア

2億7,750万人

パキスタン

2億4,050万人

ナイジェリア

2億2,380万人

12

日本

1億2,330万人


2.GDP(2023年IMFデータ)単位百万米ドル
・GDP総額でも世界第5位の大国です。

アメリカ合衆国

26,854,600

中国

19,373,586

日本

4,409,738

ドイツ

4,308,854

インド

3,736,882

イギリス

3,158,938

フランス

2,923,489


3.1人当たりGDP(2022年IMFデータ)単位米ドル
・ところが、1人当たりGDPでは、最貧国レベルです。
・大国なのに、国全体としてはまだまだ貧乏なのです。
・貧富の差は激しいでしょう。 

ルクセンブルク

132,370

アイルランド

114,580

ノルウェー

101,100

31

日本

35,390

147

インド

2,256


4.宗教

 ・ヒンドゥー教が8割。
 ・ムスリムが1億6千万人(11%)
  インドネシア、パキスタンに次ぐ世界で3番目のムスリム大国

5.言語
 ・連邦公用語は、ヒンディー語であるが、多くの国民が英語を使う。
 ・このことが、科学技術の発展に貢献している。

6.政治体制
 ・インドでは、インド憲法に基づき、
  連邦の議会議員選挙と州の議会議員選挙とが 定期的に実施されており、
  政党制度のもとで選挙結果に基づき政権が樹立される。 
 ・また、憲法上、三権分立が採用されており、
  また司法権に違憲立法審査権も認めら れている、
  立憲民主主義国家である。

7.科学技術
 ・原爆を開発して保有している。
 ・月面着陸を、ソ連、米国、中国に次いで実現している
  (最近成功させた日本は、その後5番目である)。
 ・重点投資志向です。

8.スポーツ

 ・インドがリオ大会までの五輪で獲得したメダルは
  初参加の1900年パリ大会(当時は英領インド)からの累計で
  わずか28個(金9、銀7、銅12)。
 ・このうち金8個を含む11個は、かつての「お家芸」だった
  フィールドホッケーでのものだ。
 ・それでも2008年の北京五輪では射撃で
  初めて個人種目での金メダリストが誕生。
  2012年のロンドン五輪では、
  レスリングや射撃などで銀2、銅4と過去最高の成績を挙げた。
 ・前回リオデジャネイロでは銀1銅1と低迷したが、
  その分東京大会にかける意気込みは大きかった。
 ・インド選手は重量挙げやバドミントン、レスリングなどで
  地道にメダルを積み上げ、男子やり投げでは
  陸上競技で121年ぶりのメダルとなる金メダルを獲得。
  選手団はこれまでの最多となる7個(金1、銀2、銅4)のメダルを
  母国に持ち帰った。

 ・インド・スポーツ庁(SAI)では陸上やレスリングなど、
  道具や施設にあまりカネがかからない競技に絞って重点的に強化し、
  厳しい財政の中で関連予算をやりくりして
  練習環境の改善や外国人コーチの招聘などに取り組んできた。
  これまでで最多、約120人の選手団を送り込んだ東京五輪は
  まさにこうした強化策の成果が問われる場となったのだ。
 ・インドがスポーツ不振なのは、
  スポーツを楽しむという文化がないのと、
  予算不足であるとされています。

 ・上野は、この点について2012年に以下の分析をしました。
 ・スポーツ不振理由は以下の点だとしています。     
1)肉体軽視
 ヒンドゥー教の教義 
 ・子供は運動よりも勉強に励む。
2)菜食主義
 ヒンドゥー教の教義 
 ・元気が出ません。
3)カースト制度
 ・自由な社会的交流の場が限定される。
4)貧困
 ・多くの国民はスポーツどころではありません。
5)国のスポーツ助成の貧困さ
 ・1)~4)の結果でしょう。

9.インドを率いるモディ首相
 1970年9月生まれ73歳
 カースト制度では低い階級の出身
 ヒンドゥー至上主義団体のRSS(民族奉仕団)の活動に参加しながら
 政治家を目指した。

 2001年に地元クジャラート州の首相になった。
 大規模な太陽光発電を実現し頭角を現わした。
 2014年にインドの首相になって、現在2期目

 メイクインインディアを掲げ、産業育成政策をとっている。
 その成果が自動車産業で世界有数の自動車輸出国になっている。
 現在も,クジュラート州に大型投資の誘致を行っている。
 (タタは半導体工場を新設する)

B.田所教授の意見
以下は田所教授の寄稿の転載です。

ヒンドゥー・ナショナリズム
・1990年代初頭に起こった経済危機をきっかけに、
 大幅に市場メカニズムを導入する改革を断行した。
・以降成長重視の開発主義的な方針が採られ、
 経済はおおむね順調に成長し、多数の中産階級が登場した。
・こういったインドの中産階級が、
 選挙を通じてモディの唱える多数派主義的ヒンドゥー・ナショナリズム
 を支持してきたことは重要だ。

・経済成長とともに寛容な価値観が強まりそうにも思えるが、
 競争的な環境では、少数派集団の保護のための制度は、
 多数派に対する差別だという不満も生んだ。

・しかもグローバル化によって、
 日常生活がますます欧米の生活様式に影響されるようになった
 人々には、自分のアイデンティティの再確認を、
 ヒンドゥー・ナショナリズムに求めたという面もあるのだろう。

インドの世界観と対外行動

・新自由主義的改革によって巨大な人口の活力を引き出した結果
 実現した経済成長が、インドの国際的存在寛を支えている。
・ヒンドゥー・ナショナリズムで国内をまとめる一方で、
 対外的には開発主義的政策を推進して国力の拡張に傾注しつつ、
 アメリカとも中国ともロシアとも良好な関係を維持して,
 国際社会での影響力を積極的に強化しようとしている。

・その底にある目標は、
 多極化した世界の中で一極の座を確立することなのだろう。
・巨大な文明圏国家を自認するインドにとっては、
 インドが大国であるのは当然のことなのである。
・よって核兵器であれ、国連の安全保障常任理事国の地位であれ、
 南アジアにおける勢力圏であれ、
 大国としての地位に付随する特権が承認されるのは当然のことだ
 ということになる。
・なにやらこれは中国の世界観を思わせるが、
 こういった大国意識によって周辺国との関係が困難になっている面も
 否めない。

・インドの戦略的自立に対する執着は根強い。
 平和や繁栄が重要なのはもちろんインドの人々にとっても
 日本人と違いはなかろうが、国際的な規範や制度への信頼は低く、
 同盟や国際協力を信頼して自国の行動の自由を犠牲にすることは
 あり得ない。

・戦略的自立のために大きな代償を受入れる覚悟のあるインドの姿は、
 周辺国や同盟国を常に気にしなければならない日本とは
 確かに異なった行動様式であり、核拡散であれ温暖化問題であれ,
 国際的コンセンサスをものともせずに自己主張をする姿に、
 憧れを感じる人も日本には多いのではないか。

・こういった基本的な世界観が安定している限りは、
 インドは自国の行動を制約するような同盟関係には
 与しようとはすまい。
・民主主義や法の支配といった普遍的価値観を説いても、
 おそらくそれは偽善と解釈されるだろう。
・様々な協力関係を様々な国々と問題領域ごとに合意する、
 それはギブアンドてイクに基づく取引である。
・中国かアメリカか、民主主義か権威主義かという選択を
 インドに強いても、それはムダというものだ。
・日印関係には大いに発展の余地はあるし、
 それはもちろん望ましい。
・しかし、日本は日本であるのと同様、
 インドはインドなのであるという前提からしか、
 建設的な関係は生まれない。

C.インドの世界観(私見)
インドは国境紛争を起している中国とも
決定的な対立を避けています。
ロシアやアメリカとも全方位外交で、どちらにも与しません。
そして、台頭著しい「グローバルサウス」のリーダとして
行動しています。

この全方位外交は、
長くイギリスの植民地だった経験から英米は信用せずに
バランスオブパワーを意識しての戦略でしょう。

地理的に比較的独立していることから、
自立を保ちやすいという面もあるでしょう。
隣国パキスタンとは、宗教上の相違もあり、
紛争は終わることはないでしょうが、
それ以外には中国やロシアと違って、
他国へ積極的に侵略する必要もないのです。
インドが東南アジアに侵略を仕掛ける
という心配をする国はないでしょう.

(補足)
ロシアは寒い国ですから、温かい地域への進出希望があり、
それがDNAに組み込まれて侵略国家となっています。
ウクライナ侵攻がその典型です。

中国は歴史的に他国・多民族と争わねば生きていけない
ようになっていて、それがDNAになっています。
いったん、領土を確保すると
近隣を支配するようになります。
決して、習近平個人の問題ではないのです。

それに引き換え、インドは地域的に独立性が高く、
自ら他国を侵略する要因がありません。
おそらく、超大国になっても、
侵略国家にはならないでしょう。

【インドの宗教観】
インドの準国教であるヒンドゥー教について
ChatGPTに聞いてみました。
結論として、ヒンドゥー教が好戦的でない、
ということは一概には言えないようです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ヒンドゥー教は、
キリスト教やイスラム教に比して好戦的ではない
ということは言えますか?

こんにちは、これはBingです。😊

ヒンドゥー教は、
キリスト教やイスラム教とは異なる歴史と思想を持つ宗教です。
一概に好戦的かどうかを判断するのは難しいですが、
ヒンドゥー教には以下のような特徴があります。

これらの特徴から、ヒンドゥー教は、自分のカルマやカーストに従って生きることを重視し、暴力や戦争を好まないという傾向があると言えます4。しかし、ヒンドゥー教徒は、自分の信仰や社会秩序を守るために、必要に応じて戦うこともあります5

実際に、インドでは、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒や仏教徒との間に、宗教的な対立や暴力が起こってきました 。

したがって、ヒンドゥー教は、キリスト教やイスラム教に比べて、好戦的ではないということは言えません。ヒンドゥー教は、他の宗教と同様に、時代や地域、政治や社会によって、その表現や影響が変化してきたと考えるべきです。

2024年1月23日火曜日

「共感革命」って何なのですか?

[このテーマの目的・ねらい】
目的:
 元京大総長による壮大な問題提起を確認いたします。
 人類の来し方行く末を再確認してみます
 (なかなか全貌は掴めません)。 
ねらい:
 著者の期待する世界が実現するといいですね!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本項は、山際壽一元京都大学総長の
「共感革命 社交する人類の進化と未来」のご紹介+αです。
とても著者の主張のすべてをお伝えすることはできませんので、
ご関心ある方は本書をご覧ください(河出書房刊968円)。















1.人類の足跡
・人類は、700万年前チンパンジーとの共通祖先から分かれた。

・ゴリラやチンパンジーとの競合を避け、
 ジャングルからサバンナに進出した。
 危険なサバンナでなぜ生き延びられたのかは謎である。

・ 現在のチンパンジーやオランウータンは道具を使う。
 700万年前の人類も道具を使っていたであろう。
 260万年前のタンザニアの地層から、石の破片が見つかっている。

・220万年前に離乳を早めた。多産を進めることに貢献する。

・ 180万年前にアフリカ大陸を出た。
・ サバンナには肉食獣がいたのでこれに対抗しなければならない。
 種の保存のために多産を選択した。家族だけでは育てられないので、
 複数の家族で共同体を形成した。
 多くの仲間と付き合うために脳は大きくなった。

・  直立二足歩行によって骨盤の形状が皿状に変形し
 産道を広げられなくなった、
 その結果未成熟の状態で出産するようになった。

・ 共同体は、互酬性によって成り立つ(「いずれお返しが得られる」)。

・ 人類が日常的に火を使いだしたのは80万年前である
 (上野注:これは猛獣から身を守ることに役立ったはずです)。

(脳の大きさ)
・ 人類の脳は200万年前に大きくなり始め、
 ホモサピエンスが登場する前(40万年前)に
 すでに現在の大きさになっていた。
・言葉が脳を大きくしたのではない(イギリスの霊長類学者ロビン・ダンバー)。
 ダンバーの研究によると
 大きな集団で暮らしている種ほど脳が大きいことを発見した(「社会脳仮説」)。
 「社会の中で他者と交わるために脳を大きくする必要があったと考えられる」

・ 700万年前から500万年間は、
 現在のゴリラやチンパンジーを同じくらいの脳の大きさで、
 集団サイズは10‐20人程度だった。
・その後、脳が大きくなるにつれて集団サイズは大きくなり、
 現代人の脳の大きさだと150人程度であるとされている。

・ 農耕牧畜は1万2千年前に始まった。
 そのときと比べると現代人の脳は10‐30パーセント縮んでいる
 という説もある。
・言葉によって自分の考えを他者に伝えるのが容易になったためと想定される。

(言葉の獲得)
・ 7万年前に言葉を獲得した。
・ 4万5千年前までにヨーロッパに進出したサピエンスは、
 先住民ネアンデルタール人を駆逐してしまった。
 それは言葉を持っているかどうかだと言われている。

・現代人は言葉を獲得したことで、
個々に発達した知性をつなぎ、
 比喩を使って創造性を高めて新しい環境に適応できたおかげで、
 言葉を持たないネアンデルタール人を追いやったのだろう。

・ ホモサピエンスはネアンデルタール人よりも広いネットワークを持ち、
 移動できる距離も長かった。言葉を駆使して交流できたために、
 急速に世界各地へ生息地を広げていったのだ。

(神殿)
・ 人類最初の神殿は、
 トルコ南東部で発掘されたギョグクリ・テベで1万2千年前のものである。
・ 農耕牧畜が始まったのは1万年前である。それより神殿が前なのである。

(戦い)
・ 1万2千年前の最古の戦闘跡が発見されている(スーダン)。
 その頃人類は定住生活を始めている。

・ ホセ・マリア・ゴメスたちの哺乳類の系統樹分析では、
 種内暴力による死亡率はこうなっている。

 全哺乳類で0.3%
 霊長類の共通祖先で2.3%
 類人猿の共通祖先で1.8%
 人類になって旧石器時代まで2%
 新石器時代、特に3000年前以降の鉄器時代になると
                    15~30%になる。

2.共感とは何か
・ 2足歩行を選択したのは、仲間の存在、
 気持ちを想像し仲間のために離れた場所から食物を運ぶためだ。
・二足歩行によって自由になった手で食物を安全な場所に持ち帰り、
 仲間と一緒に食べる。
・そこには信頼感が存在する。

・ サルや類人猿は、
 食べ物は見つけた場所でしか食べないし
 離れた場所にいる仲間に分配することもない。

・二足歩行によって、
 ぐるぐる回ってダンスを踊れるようになる。
 また喉頭が下がりさまざまな声を出せるようになる。

・ 言葉を獲得する以前の、意味を持たない音楽的な声と、
 音楽的な踊れる身体への変化によって共鳴する身体ができる。
 この体の共鳴こそが人間の共感力の始まりで、
 そこから音楽的な声は子守唄となり、やがて言葉へと変化する。

・ 人間はそうやって共感力を高めながら、
 社会の規模を拡大していったのではないか。

・ハラリは「サピエンス全史」で、ホモサピエンスが言葉を獲得し、
 意思伝達能力が向上したことを「認知革命」と呼び,
 種の飛躍的拡大の最初の一歩と考えた。

・しかし私は「認知革命」の前に「共感革命」があったという仮説を持っている。

・ もし7万年前に言葉を獲得したという説が正しければ、
 人類はチンパンジーから分かれた700万年の中で
 わずか1パーセントの期間しか言葉をしゃべっていないことになる。
 その点を踏まえれば、まず身体があり、
 次に共感という土台があった上で言葉が登場したと考える方が自然だろう。

・  共感は、他者についての情報を集め、
 それを他者と同じように感じるプロセスで,
 同情は、他者に対する気遣いと他者のお境遇を改善したいという
 願望を反映するものである。

・ 人間は、共感や同情の対象をほかの種に広げ、
 仲間に対してはさらに強めたところに特徴がある。

・ 白目は人類しか持っていない。白目によって、
 相手がどこを見ているかがすぐわかるし、
 微細な動きによって他人の気持ちを推測できる。

・ アフリカの原住民ピグミー族は、天性の踊り子である。
 1人1音しか持たないがそれを組みあわせて音楽にしている。

・ 人間が仲間と付き合うために持っているリズム感は文化ともいえる。
 その文化は言葉が登場する前につくられ、
 150人以下の小規模な集団内で通用するリズムとして共有された。
 そこに言葉は必要とされない。

・ 事実ゴリラは言葉を喋れないが、
 群れとして一つの生き物のように動くことができるし、
 その能力は現代人も持ち合わせている。
  お茶会でお茶を淹れる作法の流れの中で心が一つになる。

3.言葉のもたらしたもの
・ 長い狩猟採集生活を通じて
 人間の生存確率を高めるために必要だった共感力が,
 言葉の登場と定住化によって方向性を変えて力を増し、
 文明の発達とともに所有権を争う暴力となって噴出し始めたのではないか
 と考えている。

・  言葉は世界を集団の外と内を切り分けた。
 集団の仲間を思いやるがゆえに集団の外に敵を作っていく。

・  狩猟採集による移動生活の時代は、
 お互い違う場所へ移動して行けば取り合いにはならなかった。

・ ところが農耕牧畜によって定住が必要になり土地にしがみつくようになる。
 自分たちの共同体が努力して得た利益を守ろうとし、
 他の人たちを敵視するようになる。敵視は言葉によって顕在化する。
・オオカミのように陰険なやつだと、人間でないものになぞらえる。
 このアナロジーによって簡単に相手を敵視できるようになった。
 「鬼畜米英」である。

・ それまで共同体が生き延びるために使われ、発達もしてきた共感力が、
 方向性を変えて敵意となって外に向けられるようになった。

4.サルの生態
・ 熱帯や亜熱帯の森で暮らすサルたちはせいぜい1平方キロの範囲が生活圏だ。
 草原や日本のように雪の降る地域で暮らすサルは
 もう少し広く30平方キロに及ぶこともある。

・ メスザルは食物を獲得するために集団を組む。
 メスの集団にオスが付いて行く。そして食料を与える。

・ 群れをつくるサルたちは集団への帰属意識を強く持ち、
 めったに群れから離れない。
 ニホンザルのメスは生涯自分の生まれ育った群れを離れない。

・ サルのか赤ちゃんは半年から1年で離乳するので、繁殖力が強い。
・ サルにとって自分が手にしたものは自分のものだ。
・ サルは喧嘩をすると、優位なサルに加勢して終わらせる
 (勝ち負けをはっきりさせる)

・サルは共感する能力はあるが同情する能力は希薄である。

5.類人猿の生態
・ 類人猿の子どもはピルエット(立ってぐるぐる回る)
 という遊びをする。

・ ゴリラやチンパンジーなどの類人猿は、
 サルよりさらに胃腸の働きが弱いため、
 熟した果実が豊富にある熱帯雨林から離れられない。
・サルより広い範囲を動き回ったとしても、年間20平方キロほどである。

・ 森にすむピグミーと呼ばれる狩猟採集民は、
 年間100平方キロメートル以上、
 サバンナで暮らすブッシュマンと呼ばれる狩猟採集民は、
 数百平方キロメートル、ときには1000平方キロメートルに及ぶ
 範囲を歩き回って暮らしている。

・ 類人猿は、サルとは逆で、メスだけが群れをわたり歩く。
 ゴリラのメスは単独行動を嫌い、
 リーダーのオスが死んで所属する集団がバラバラになると
 直ぐに別の集団に合流する。

・  オスは基本的に他の群に入ることはない。
 ゴリラのオスは自分の群を出ると単独生活を送り、
 他の群からメスを誘い出して自分の群をつくろうとする。

・ チンパンジーのオスは生涯自分の群から出ず、
 血縁の近いオスたちと連携しながら暮らす。
 他の群のオスとは敵対的になりやすく、
 地域によっては群れ同士で殺し合いになることもある。

・  ゴリラは3年から4年、チンパンジーで5年、
 オランウータンは7年ほど、授乳する。その間は繁殖できない。

・ チンパンジーは、乱婚社会である。家族という意識のない共同体的な集団である。
・ ゴリラは一夫多妻の家族を形成している。
・ 人類は家族と共同体の二つを両立させている。

・ ゴリラは喧嘩をしそうになると、メスや子どもたちが介入してやめさせる。
・ 類人猿は、オスが手に入れた食料をメスや子供に分け与える。
 それをしないとメスに認めてもらえない。
・現代に残る狩猟採集民の社会も
 徹底的な食物の分配が当たり前となって成立している。

・ 類人猿は同情する能力も持っている。

6.ヒトの生態
・ 人類の祖先も類人猿のように子どもの成長に時間がかかる特徴を受け継いだ。
 しかし離乳の時期だけはサル同じように早めることに成功した。

・ 人類は、小さな脳で出産し、生後急速に脳を大きくする方法を採った。
・人間の親は、
 頭だけが大きく身体の成長の遅い子どもをたくさん抱えることになる。
・そのため、親だけでは子どもを育てられず、
 他の仲間の手を借りる必要が出てくる。
・そこに共感力が育つきっかけが生まれた。
 子どもを一緒に育てる社会がつくられていったのだ。

・ 人類の間違いのもとは、
 言葉の獲得と農耕牧畜による食糧生産と定住である。
・ 狩猟採集時代にはエキスパートがそれぞれの能力を駆使して
 多様な食料を集める。
 しかし平等を原則にして権威を作らない仕組みが作られた。

・ 共感力は、小規模な社会の場合,集団の内外に関係なく、
 お互いが助け合い、協力し合うことに役立っていた。

・ 農耕牧畜時代になると土地の価値が生じ、領土ができてしまった。
 所有を認める社会なので権威者に食料や所有物が集まり、
 それを権威者の意向によって分配する社会が生まれる。

・ 農耕牧畜で領土が生まれ、すっとその中だけで暮らしていると、
 領土内に住む人々の間でしか共感が通じなくなる。
・さらに人数が増え、領土を広げようとなった際には、
 武力行使が必要だと考えるようになる。
 言葉は同じ人間仲間を勝手に悪者に仕立て上げることができる。

7.人類の未来 新しい物語の始まり

・ 本書の終章はこういうタイトルです。
・  基本的には、
 人類が共感して一緒に暮らしていた昔に帰れないのかという壮大な問題提起です。

・ 人間の社会には三つの自由がある。
 動く自由、集まる自由、対話する自由である。

・ これは人類が第一の遊動生活の中で得てきたものである。
 これらの自由を制限することによって定住社会の文明は成り立ってきた。

・  現代の第2の遊動生活において、
 この三つの自由を取り戻せる環境が生まれ始めている。
 現代は個人の自由な意思で動き、移動できる時代だ。

・ しかし、政治情勢や治安の悪化によって
 大量に移民や難民が生じている現実がある。
 これは本来の遊動生活ではない。

・  ChatGPTは新しい共感の世界を創る助けにはならない。
 なぜなら、ChatGPTは
 過去しかも言語化されている過去からしか学べないからである。
 実現すべき共感社会は現在はどこにも存在していないので、
 ChatGPTはガイドしようがないのである。

・ 現在の若者たちは、旧世代人と異なり所有や定着に拘らなくなっている。
 どこにいても、仕事も生活もできる世界が実現しつつある。
 この延長で、新しい人類社会ができていく可能性に期待したい。

上野補足意見
1.著者の主張まとめ
要約するとこうなるようです。
ChatGPTならもっと的確に要約するでしょう。

1)人類が言葉を使いだしてから7万年しか経っておらず。
 それは人類の歴史の1%に過ぎない。
2)農耕牧畜を始めたのは僅か1万2千年前である。
3)したがって、人類に埋め込まれているDNAは、
 言葉を持たず狩猟採集生活をしていた時代に形成されたものである。

4)狩猟採集生活では、財の蓄積はできず、
 強いものが得た食料を皆に平等に分け与えて平和な生活を送っていた
 (戦争は起きていない)。
5)言葉がなくても、お互いに共感するという感性があった。
6)ところが、農耕牧畜生活になると土地が重要な意義を持つようになり、
 その所有が財の表現となった。

7)所有する土地を拡大しようとすると、そこに争いが生じる。
8)言葉は、現実を曲げることも可能で、争う敵を悪者にして
 戦うことを助長した。
9)これは、言葉の持つ負の局面である。

10)人類は、地球のキャパシティを超えて増大しようとしている。
11)人間は、動く自由、集まる自由、対話する自由を望んでいる。
12)現代は、技術進歩、ITやネットの力によって、
 実際に移動することも、架空で移動や会話をすることも可能となっている。
13)したがって、土地の束縛から離れて、
 世界中の人間が人間同士が共感する付き合いをするようにしたらどうか。

2.生物の声・言葉
・関連する話題を整理します。
・以下のことが明らかになってきています。
・あらゆる生物は、自己あるいはその種族の存続のために
 自己主張をするのです(これは生物本能です)。
・「人間だけが言葉を持っている」などという
 尊大な態度は捨てなければなりません。
 あらゆる生物を大事にしましょう。

1)植物
出典:日経新聞2023年12月17日「植物は多彩な『声』で訴える」



・「トマトやタバコは乾燥したり茎を切られたりすると、
 超音波の『悲鳴』をあげる」
 通常でも超音波を1時間に1回以下の頻度で出しているが、
 乾燥させると同11~35回、切断すると15~25回になる。
 研究チームは「水や養分を運ぶ維管束などにできた気泡が破裂して
 超音波が出た可能性がある」とみている。

・「害虫に葉を食べられたトマトは揮発性物質の一種を出す。
 それを受け取った他の株が食害を防ぐ化合物に作り替えて身を守る」

・菌類は会話のように双方向で電気信号をやりとりしている可能性を探る
 研究が進んでいる。

2)シジュウカラ
出典:国立7大学の総合情報誌NU7掲載の
鈴木俊貴京都大学白眉センター特定助教著「言葉を持つ鳥、シジュウカラ」

・シジュウカラは20個の単語を発声する。
 (集まれ、蛇だ、鷹だ、警戒しろ、
・語順(文法)がある。
 (ピーッピ・ヂヂヂヂ(警戒しろ、集まれ)は逆には言わない)
・この言葉は群れを組むことのあるコガラや近くの雀も理解する。
 (ただし、雀は理解できる雀とそうでない雀がいるという)
・一緒にいるとエサにありつかないコガラは、
 ヒヒヒヒ(鷹だ!)とうそ鳴きをしてシジュウカラを追い払い
 エサにありつく、などをする。

・別のどこかの文書で、以下の記事がありました。
 オスの鶏は、餌だ!と鳴くとメンドリが集まってくる。
 そのうちに嘘でメンドリを呼んで集まってきたメンドリとHをする、
 それを繰り返すと、メンドリも分かって騙されなくなる。
 (メンドリは、必ずしもやりたがりではないのですね。人間と同じ?)

3)その他の動物
・鈴木助教の発表後、動物の言葉の研究が始まっています。
・鈴木助教の始めの発表は2011年ですが、
 その後、各国で動物の言語研究が進んできました。
・その研究は「動物言語学」といい、次第に広がっているようです。
 いくつかの例が発表されています。
・私は、鳥類の中では非常に賢いと言われているカラスも言語を持っている
 と想定しています。エサを見つけると仲間を呼んでいます。
 「カラスなぜ鳴くの?中略、カワイ、カワイと鳴くんだよ」
 という歌がありますからね。
 
3.縄文時代の謎
・縄文時代は、1万年以上も続いたことが謎です。
・しかも縄文文化は定住型狩猟採集生活なのです。
・狩猟採集生活なのに定住したのは理由が分かっています。
 日本は東の果てでそれ以上、移動する場所がなかったからです。
 しかも、川や山林から得られる食料がそれなりにありましたから、
 これをうまく利用して生きていくことができそうだったからです。

・しかし、それが1万年以上続いたということについては、
 理由が必要です。
・今回の「共感革命」によって、
 狩猟採集時代には、基本的に人類同士の争いはなく
 150人程度を単位とする共同体生活をしていたことが
 明らかにされています。

・縄文人は定住で栗などの栽培はあっても、
 農耕ではなかったので土地を所有するということはなく、
 したがって土地の所有を巡る争いもなかったのです。

・これらは従来から分かっていたことで、
 残念ながら、この謎の解明に進展はありませんでした。



2024年1月19日金曜日

「脳を創る『紙の本』の効用」 賛成!!

[このテーマの目的・ねらい】
目的:
 紙の本の効用を再確認していただきます。
ねらい:
 紙とデジタルをうまく使い分けましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本項は、学士會会報2024ーⅠ号に掲載されました
東大大学院総合文化研究科酒井嘉教授の寄稿
「脳を創る『紙の本』の効用」のご紹介です。






1.読書はどのように脳を創るのか
上野注:これは、紙の読書に限定しない事項です。

1)読書を通して言葉の意味を補う「想像力」が自然に高められる。
想像力は書かれたことを超えて「行間を読む能力」
と言い換えることができ、
文意や書き手の意図を的確に解釈する力でもある。
この「眼光紙背に徹する」力は、読書の経験によって磨かれていく。

上野注:
この自分の頭で考える、ということが大事で、
テレビを見ている場合は、ほとんど自分の頭では考えていないので、
いくら見ていても脳の活性化(認知症阻止)には貢献しない
のだそうです。

2)読書を通して施策に耽ることで、
自分の言葉で考える力が自然と身につく。
文字の情報は脳で音声化され、
記憶の貯蔵庫からさまざまな概念を引き出しながら
思考を形成していく。

3)読書経験を通じて、脳が変化し成長する。
1回限りの人生で実際に体験できることは限られているが、
読書を通してさまざまな生き方について知恵を得ることができる。

2.なぜ「紙の本」がいいのか
1)本をパラパラとめくることによって、前の部分の内容や
後の展開を容易に確認することができる。
 デジタルの場合はそれは容易ではない。

上野注:
システム企画研修社の研修では、
印刷版のサブテキスト([MIND-SA基本手法ハンドブック」
「目的達成手法解説」等)を配布します。

 46頁20頁

 

演習中に、パラパラと必要な部分を参照できるからです。

このご時世に印刷版を配布するのは手間なのですが、
やめていません。今後もやめるつもりはありません。

2)新聞など大きな紙面は一覧性に優れる。
一挙に全貌を把握することができる。
新聞紙を広げたとたんに、多くの情報が一挙に目に入る。
その次は関心のある記事に自然と目が行くことだろう。
ときには、小さな死亡欄が目にとびこんでくることもある。
特に意識することなく、脳は紙面を一瞬でサーチしてくれるのだ。
デジタルのように、検索したい内容を指定しないですむ。

3)見開きの頁を有効に使って主張を展開することができる。
例として、ミステリー作家道尾秀介さんの作品が紹介されています。
「ページをめくったときに「あっ」と言わせるように
レイアウトを作っている」のだそうです。
著者は「頁をめくる楽しみがある」と言っておられます。

私の昨年の著書「DX成功ガイド」では、
見開きの左頁に論旨、右頁にそれに関する調査データ
を示すようにしました。
これ以外に、1項目を1頁に収めるとかの工夫をして、
参照しやすくしている場合などもありますね。

2024年1月17日水曜日

武者小路実篤さんの絵はお好きですか?

[このテーマの目的・ねらい】
目的:
 武者小路実篤氏が開祖の美術団体大調和会をご紹介します。
 大調和会の現在の代表をご紹介します。
ねらい:
 たまには、絵を見る余裕を持ちたいですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ご存じかもしれませんが、
武者小路実篤さんは、多才な方で多様な小説を書かれるだけでなく
画家としても活躍されました。
以下のような色紙絵は多くの人に親しまれています。





氏は、絵画の世界の活動で「大調和会」という美術団体を開祖しました。
岸田劉生のために設けたと言われています。
 岸田劉生作麗子7歳像





























大調和会は一時中断していましたが、
1960年に実篤会長の下に復活しました。
現在の会員数は187人だそうですが、
1976年の実篤氏の没後は会長をおいていません。

会長の代わりに「代表」を置いています。
その代表に、2021年9月1日に垣内宣子氏が就任しました。
  出典:「タウンニュース(川崎市)中原区版2024年元旦号」























垣内宣子氏は、実は私の大学同級生の夫人です。
彼女は以前から、ヨーロッパの街並みを独特の表現で描かれていて、
絵にはあまり関心のない私が気に入っていました。

この度、大調和会が発行している大冊子をお送りいただきましたが、
その中にある2点を以下にご紹介します。
その場にいて景色を見ているような気になりますね。
上の記事にある「本物以上」の美しさです。



ご関心のある方は、大調和会のホームページをご覧ください。

2024年1月16日火曜日

「睡眠の謎に挑む:原理の追求から社会実装まで」

[このテーマの目的・ねらい】
目的:
 睡眠の謎に迫ります。
 かなり睡眠の謎が解明されつつあることを知っていただきます。
 不眠状態だと思っている方に朗報があります。
ねらい:
 解明された成果を活用しましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


本項は、学士會会報2024ーⅠ号に掲載されました
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長柳沢正史教授の
寄稿のご紹介です。
日本の睡眠医学は世界の最先端を走っているのだそうです。
頼もしいことです。

1.睡眠に関して分かっている現象
1)多くの動物は眠る
・魚類も含めたすべての脊椎動物は眠る。
・陸生哺乳類の睡眠時間は、2時間から20時間近くまでばらついている。
・昆虫、線虫、イカ、タコ、貝類などの無脊椎動物も眠る。
・脳(中枢神経系)を持たないクラゲも眠る。
・そのことから、睡眠は脳よりも先に発生していることになる。

2)睡眠不足の疫学調査結果
・睡眠不足は、
 死亡率と疾病リスク(メタボ、うつ病、認知症)を高める。
 最善は7時間睡眠の場合である。
・重度のメタボリック症候群の場合、運動・食事療法をいくら頑張っても
 睡眠不足だとメタボは改善しなかった。
・不眠はうつ病の発症率を3倍高め、認知症の発症率を4倍高めた。
・4時間睡眠を2週間続けたら、内臓脂肪が11%、体重が0.5キロ、
 1日の摂取カロリーが308キロカロリ増えた。

3)睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠がある
・レム睡眠中は、筋肉が完全に弛緩し(レム脱力)、体が休息する。
 しかし眼球は素早く動き(Rapid Eye Movement)
 記憶の整理や定着が行われている。
・ノンレム睡眠は覚醒から入眠するとまず現れる。
 体と脳が休息している。
 眠りの深度は幅がある。

4)睡眠の時間経過
・睡眠の状態は以下の図のように変化する。
・一般にはノンレム睡眠とレム睡眠は交互に発生している。

以下は上野説
・1サイクル90分という説もありますが、絶対ではありません。
・長時間睡眠すると、後半で新たな事象が発生するのであれば、
 睡眠は長時間でなければならないことになります。
・しかし、1-2時間で繰り返すのであれば、
 連続しなくても睡眠総時間がそれなりにあればよい
 ということではないでしょうか。
・下の図をみても後半で別の現象が起きている
 ということはないようです。
 特に高齢者の場合はそうです。

・本寄稿文の後半に、「不眠を訴えた高齢者の睡眠を測定したところ、
 レム睡眠とノンレム睡眠が発生しており、
 途中覚醒していても問題ないと説明したら
 不眠(正確には不眠不安)は解消した」
 という例が紹介されています。

・つまり、
 途中目覚めがあっても、
 総睡眠時間が確保できていれば問題ない
 ということです。これで安心です。

・また、「昼寝は15分程度がよく、
 それ以上はかえって疲れてしまう」という説がありますが、
 こう考えられます。
 15分程度の短い睡眠だと、ノンレム睡眠だけで終わり、
 これで肉体的疲労は回復しますが、脳機能の修復は行われません。
 
 ところが、
 1時間とかの中途半端な時間だと、レム睡眠の途中になります。
 脳機能の修復が中途半端なところで中断されますので、
 脳機能の再起に手間取るのだと思われます。
 
 私はよく昼寝をするのですが、1時間半くらい寝ます。
 目覚めでぼうっとしているということはありません。
 脳がスッキリして仕事がはかどります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2.分かっていないこと(証明されていないこと)
1)睡眠の機能:なぜ眠らなければならないのか。
 休まないと壊れてしまうということでしょうが、
 そのことは証明されていないのだそうです。
 そうなんですかね?

2)睡眠の調節:眠気の正体とは? 
 種ごとに異なる睡眠時間はどのように決まっているのか。
 長く起きていると眠気が生じ、眠ると解消される。
 この眠気の正体も、睡眠と覚醒の調節機能も解明されていない。
 (上野注:著者たちは、かなりこの解明を進めています。後掲参照)

3.最近の解明事項
1)睡眠覚醒スイッチ
ここ10年の睡眠医学の成果は
「脳の各所に”覚醒を促進する神経細胞群”と
”睡眠を促進する神経細胞群”があり
それぞれネットワークを形成して互いに抑制しあっている。
脳内でどちらかが優勢になると、覚醒と睡眠のスイッチが切り替わる」
と分かってきたことである。

2)覚醒を促す物質
1998年に著者たちが発見した「オレキシン」は、
スイッチを覚醒側に切り替える最終的な要因である。

3)睡眠を制御する物質
10年ほど前に著者たちが以下を解明しました。
「大脳皮質で起きる”シナプスのたんぱく質のリン酸化”が
睡眠の質を制御し、
視床下部で起きる”シナプスのたんぱく質のリン酸化”が
睡眠の量を制御している」

4.解明事項の社会実装
1)睡眠薬
オレキシンの働きを抑えれば睡眠が促進されます。
そこで、そのオレキシン拮抗薬が開発されています。
(現在臨床試験中)
この睡眠薬は、従来の睡眠薬と異なり依存症を発生させない、
また、アルツハイマー型認知症をそくしんするということもない、
という利点があります。

2)睡眠検査キット
従来方式だと、1晩入院し5万円かかり、全身に多数の電極をつけるので
正常な状態での測定が困難です。
そこで筆者たちは筑波大学発ベンチャーで、
自宅で睡眠脳波を測定できる装置インソムノグラフを開発しました。














この睡眠検査は、一部の医療機関やウェブで申し込むことができます。
申込後、睡眠質問票に回答すると、自宅に機器が届くので、
土日を含む2晩、あるいは5晩連続で、自宅で睡眠を計測します。
機器が脳波データをクラウドに転送します。
機器をコンビニから返却すると、
医師のアドバイスのついた睡眠評価レポートが郵送かウェブで届きます。

素晴らしい最先端のビジネスモデルですね!!

「料理とはなにか?」

[このテーマの目的・ねらい】
目的:
 以下を認識していただきます。
  料理には1次加工と2次加工があること
  和食の優秀性・特長
  和食の異なる2面性
ねらい:
 そういう目で食事を見直してみましょうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本項は、学士會会報2024ーⅠ号に掲載されました
料理研究家土井善春氏の講演記録の抜粋です。
(論旨展開は上野が組み換えています)








1.料理の重要性
生食は、消化に多大なエネルギーと時間を要していた。
それが火を用いて料理するようになると、
消化の負担を大幅に削減した。
その余ったエネルギーが大脳の発達に回った。
(ハーバード大学リチャード・ランガム博士
 「火の賜物-ヒト料理で進化した」)

余裕時間も生まれ余暇も生まれた。
(上野意見:余暇の前に信仰が生まれたのではないでしょうか)

2.料理の基本
料理には、一次加工(食べられるようにすること)
と二次加工(味付け)がある。
一次加工では食材の選択が重要である。
味付けについては個性がある。
料理を作る人の感性と食べる人の好みである。

昔の家庭料理には味付けがなかった。
卓上に置かれた醬油や塩で各自が味をつけて食べた。

3.和食の優秀性
和食が2013年にユネスコの無形文化遺産になったのは
「日本の家庭料理が評価された」のです。
評価ポイントは、次の点でした。
「年中行事との密接な関り」
「自然の美しさや季節の移ろいの表現」(後掲)
「健康的な食生活」

4.和食の特徴
1)食材を尊重する。
すべてのものに神が宿っているという「八百万信仰」から
食材にも神が宿っていますので、
それに触れるには手を洗い清めました。
結果的に衛生が徹底し、安心して刺身なども食べられるのです。

2)素材の持ち味を生かすために和食は油を使用しない。
油と食材の間に幕ができて、
素材の味や匂いが感じられなくなるからです。

3)食材は混ぜることはなく「和える」
食材は自然の産物です。
この個性をのそのまま感じ取るべきなのです。
したがって、ごちゃごちゃに混ぜることはしないのです。
余計な加工を避けます。

4)和食にはレシピはない。
食材と調理法があるだけで料理の名前さえありません。
その土地の旬の食材は決まっています。
人間が献立を決めなくても、自然の摂理によって
その場に相応しい食材と調理法が決まっていたのです。

5.「自然の美しさや季節の移ろいの表現」
日本人は昔から自然と共存してきました。
料理をしようとしたらその季節の食材を選びます。
その食材は、初物、盛り物、食べ納めと移り変わります。
それぞれの味わいは異なり、それで季節の変化も感じ取ります。

6.ハレとケの区別
和食には、ハレとケの区別があります。
日本料理と家庭料理の違いです。

1)ハレの料理
ハレの料理は、人間が神様のために手をかけて作る料理です。
徹底してアクを抜き、白くして、きれいにします
栄養価などは無視して、色、姿、味をただ清らかなものにするのです。
たとえば、筍は何時間も湯がき、一晩以上水に晒してアクを抜き、
濃い出し汁を含ませる。芯まで出し汁の味に変えます。
これの延長上に料亭の日本料理があります。

2)ケの料理
ケの料理は、日常の家族のための家庭料理です。
素材の持ち味を生かします。
筍であれば、1時間ほど湯がいてさっと出し汁で煮る、
それを味噌などをつけていただきます。

根や皮も捨てずに丸ごといただきます。

家庭料理では、食べる人の健康状態などの状況も考えて作ります。
料亭ではそういうことは基本的にはありません。

3)昔のケの料理
昔の家庭料理は一汁一菜(汁飯香)でした。
漬物は発酵食品なので人間の手で美味しくもまずくもできません。
(上野疑問:このコメントの意義な何か?
美味しい漬物があるではないですか。みその違いや塩加減がある)

この一汁一菜は自然の摂理に適うので、
毎日繰り返しても飽きることなく、
自然と人間が重なり合う心地よい感覚や、
身体が浄化される感覚を得られます。

2024年1月12日金曜日

「洋画3本立」ぜひご覧ください!!!

[このテーマの目的・ねらい]
目的:
 昔のアメリカ映画を思い出していただきます。
 (ご存じの方は少ないかも)
ねらい:
 お笑い番組よりも楽しいのではないでしょうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

高校時代、よく映画を観に行きました。
新宿3丁目のビルの4階に「日活名画座」という映画館がありました。
封切後しばらく経ってから、この映画館が上映します。
洋画専門でしたが、ほとんど毎週観に行きました。
料金は、40円か50円でした、

当時はただの郊外駅だった下北沢に下北沢オデオン座という
映画館があり、ここは常時3本立てでした。
たまに観たい映画があると、土曜日の午後ここにも行きました。
こちらの料金は150円でした。

そんなわけで、
毎年の年度ベスト10に入る洋画はほとんど観ているものでした。

最近、倍賞千恵子さんの「私の履歴書」を見て、
「男はつらいよ」シリーズが50回まで続いたと書いていましたので、
その1作目を見てみよう思い立ちました。

探したら,DVDで安く見れることが分かりました。
「男はつらいよ」は、あまり感心しませんでしたし、
倍賞千恵子さんはそのキャラで出演しているだけで、
とても女優とは言えないようなしろものでした。

それでも、DVDが安く入手できることがわかりましたので、
以前からまた観てみたいと思っている映画を観たいと思いました。

それで観た映画が以下の3本立てです。
私が観た順番です。
「第3の男」1949年作品
「駅馬車」 1939年作品
「死の谷」 1949年作品

以下に3本の作品のご紹介をします。
ストーリーのご紹介は少し長いのですが(転載)、そのまま掲載します。
ご覧のように、かなり主役男女の結末が違います。
どのタイプの結末が好きかで性格判断もできそうですね。
 

映画名

第3の男

制昨年

1949年

監督

キャロル:リード

主演男優

ジョゼフ・コットン


主演女優

アリダ・ヴァリ


ストーリー

Wikipedia

舞台は第二次世界大戦後、米英仏ソによる四分割統治下にあったオーストリアの首都ウィーン。当時ウィーンの酒場で人々に親しまれたツィターのメロディ(アントン・カラスによるテーマ曲)をBGMに物語の幕が開く。

アメリカの売れない西部劇作家ホリー・マーチンスは、親友ハリー・ライムから仕事を依頼したいと誘われ、意気揚々とウィーンにやって来た。ハリーのアパートを訪ねるホリーだが、管理人はハリーが前日、自動車事故で死亡したと彼に告げる。ハリーの葬儀に出席するホリーは、そこでイギリス軍のキャロウェイ少佐と知り合う。少佐はハリーが街で最悪の密売人だと告げるが、信じられないホリーはハリーへの友情から事件の真相究明を決意する。

事件の関係者を調査すると、ハリーの恋人であった女優のアンナ・シュミットと出会う。ホリーと彼女は2人で事件の目撃者である宿の管理人に話を聞き、現場に未知の第三の男がいたことをつきとめる。しかし貴重な証言を残した管理人は何者かに殺害され、ホリーがその容疑者だと疑われて逃走。さらにハリーの知人であるポペスコからも追われ、キャロウェイ少佐に助けを求める。そこで初めてキャロウェイからハリーが粗悪ペニシリンを売り捌いて多数の人々を害した実態の詳細やその証拠の数々を見せられる。

友情・愛情と正義感の間で行き詰まったホリーは酒で気を紛らわせたが帰国を決意。酩酊状態のまま、別れを告げるために寄ったアンナの下宿の近くで、第三の男ハリーと邂逅するが、まるで幻かのごとくハリーは消え去ってしまう。ホリーはハリーを目撃したことをキャロウェイに報告。キャロウェイは疑っていたが、念のためにハリーの墓を掘り返すと、別人の遺体だったことが判明し、ハリーの生存を確信する。一方、国籍を偽っていたアンナがパスポート偽造の罪でソ連の憲兵に連行されてしまう。

ハリーのことを信じたいホリーは、彼とプラーター公園観覧車の上で話し合うが、改めて彼の非情ぶりを悟る。その後、キャロウェイからハリー逮捕の助力を促されたホリーは、親友を売るもやむを得ずと決意し、アンナの保釈を条件に承諾。

ホリーとキャロウェイの計らいで釈放されたアンナはホリーを烈しく罵る。アンナのハリーに対する愛を知ったホリーはキャロウェイへの協力を一時断念するが、病院を視察してハリーの流した害毒を目のあたりにしてハリー狩りに参加することを再度決意し、囮となって彼をカフェに待つ。店の裏口から現れたハリーは警戒を知るや下水道に飛び込み、ここに地下の追撃戦が開始される。

キャロウェイの銃弾で重傷を負ったハリーはその後、銃を手にしたホリーに追いつめられる。銃を向けるホリーに対してハリーが頷く。下水道内に一発の銃声が響き渡る。

その後、場面は、第三の男であったハリー本人の埋葬に。葬儀の後、ホリーはアメリカへ帰国する飛行機の出発時刻が迫っているにもかかわらず空港へ送ってくれる少佐の車を降りて、墓地の路傍でアンナを待つ。しかし、彼女は表情をかたくしたまま一瞥もせず彼の前を歩み去って行く。

二人の結末

ホリーは思いを寄せつつあるアンナを墓地の広い道路端で待ちますが、アンナは気が付かない風で通り過ぎていきます。

(この後どうなるかを観客に考えさせています。二人の関係に進展があるかも?)

感想

ジョゼフ・コットンは「カッコイイ」ですね。こんなにいい男だと認識していませんでした。

有名なチターの曲と共に、観るものは独特の世界に引き込まれていきます。最後の下水道の中の逃亡・追跡劇は圧巻です。

 

映画名

駅馬車

制昨年

1939年

監督

ジョン・フォード

主演男優

ジョン・ウェイン


主演女優

クレア・トレヴァー


ストーリー

Wikipedia

ジェロニモがアパッチ族を率いて居住地を出たという情報が飛び交っていた頃、アリゾナ準州トントからニューメキシコ準州ローズバーグに向かう駅馬車が出発した。乗客は町から追放されたダラス(クレア・トレヴァー)、アルコール中毒の飲んだくれ医者ブーン(トーマス・ミッチェル)、はるばるバージニアから来て夫のマロリー騎兵隊大尉に会いにいく貴婦人ルーシー(ルイーズ・プラット英語版)、小心者の酒商人ピーコック(ドナルド・ミーク英語版)であった。出発の際に南部出身の賭博師ハットフィールド(ジョン・キャラダイン)が「マロリー夫人の護衛」として乗り込んだ。御者(運転手)のバック(アンディ・ディバイン英語版)とカーリー・ウィルコックス保安官ジョージ・バンクロフト英語版)が加わり、駅馬車は出発する。

さらに出発してすぐにトントの町はずれで銀行家ヘンリー・ゲートウッド(バートン・チャーチル英語版)が駅馬車に乗り込んできた。彼は5万ドルを横領し、ローズバーグへ逃げて雲隠れするつもりであった。合計8名の駅馬車が砂漠にかかる時、突然銃声がして馬車が止まった。ライフルを軽々とクルリと回して現われたのは脱獄囚のリンゴ・キッドジョン・ウェイン)であった。保安官カーリーと御者バックはリンゴ・キッドとは旧知の間柄であった。リンゴが脱獄で500ドルの懸賞金がかけられていることも知っていたが、彼が父と兄弟を殺したプラマー兄弟に敵討ちをするためにローズバーグへ行くことも予知していた。そしてカーリーはリンゴがローズバーグに行くことを予想してこの駅馬車に乗ったのだった。「リンゴがプラマー兄弟と決闘しても殺される」に決まっていると考え、ライフルを取り上げてリンゴを逮捕した。リンゴの父とは同じ牧童仲間で父親代わりであったカーリーにとって、逮捕することがリンゴを安全にする方法であった。また皮肉なことに同乗した飲んだくれ医師ブーンは、かつてリンゴの殺された弟を治療したことがあった。

駅馬車は最初のステーションであるアパッチウェルズに到着する。ここでトントから随行してきた護衛の騎兵隊との交代の部隊がいなかった。ジェロニモアパッチ族を率いて居住地を出た情報がある中、護衛なしで前進してローズバーグを目指すか、引き返すかの投票が行われ、ローズバーグに向かうことに決定する。

道中の馬車の中で、賭博師ハットフィールドはさかんにルーシーのために気を使い、ルーシーに銀のカップを差し出す。ルーシーはそのカップを見て「これはグリーンフィールド家の紋章では?」[注釈 2] と問う。ハットフィールドはどこかで賭けて儲けたものと云う。ダラスに対しては皆の目は冷たく、無視されている。そのことでリンゴが怒ったりしていた。また酒商人ピーコックが販売拡大の営業のため持ってきたサンプルの酒が、飲んだくれ医師に飲まれてしまう。

次のステーションであるニューメキシコのドライフォークに到着するが、ここでメキシコ人のクリスから「マロリー大尉が負傷してローズバーグに運ばれた」と伝えられてルーシーは倒れる。ルーシーは妊娠していてショックで産気づいてしまう。メキシコ人の牧童たちがジェロニモの襲撃を恐れて夜のうちに逃げ出し、クリスの妻も姿をかくしてしまう。飲んだくれ医師ブーンがコーヒーを浴びるように飲んで正気に戻り、ダラスの助けもあって無事にルーシーは女児を出産する。リンゴは道中親しくなったダラスにプロポーズし、一緒にメキシコに住もうと誘うがダラスは答えなかった。そしてダラスに励まされ、リンゴは敵討ちを諦めメキシコに逃げようとして、アパッチの狼煙を発見する。狼煙は襲撃の合図であった。リンゴはメキシコ行きを諦める。そして駅馬車はドライフォークから川の渡し場に行き、川を渡ってローズバーグを目指そうとした。

だがすでに渡し舟を含め川の渡し場全体が焼討ちにあっていた。そこで駅馬車に筏をつけてそのまま浮かして川を渡りきり、難関を突破した。渡っている間にアパッチの襲撃はなく、一同は安堵するが、渡し場でアパッチの光信号のようなきらめきを見たハットフィールドは警戒を続けていた。危機が去ったとして終着駅がもうすぐだとしてブーンが祝杯を挙げようとしたその瞬間、突然弓矢が飛び込みピーコックの胸に突き刺さった。ついに総攻撃をかけてきたアパッチ族に、駅馬車の男たちは必死に応戦する。バックは腕を打たれ、リンゴが先頭馬まで飛び移り手綱を引いた。やがて弾薬が底をつき、観念したハットフィールドは辱めを受けさせまいと最後の一発をルーシーに向けた時、アパッチの流れ弾に撃たれて命を落とす。その直後にラッパの音が聞こえ騎兵隊が到着し、危機一髪で駅馬車は難を逃れた。結局一人の犠牲者と二人の負傷者と共にローズバーグに到着する。

ローズバーグに着いてから、リンゴはカーリーに「10分だけくれ、絶対に戻るから」と云う。カーリーはライフルを渡して「弾は無いぞ」と云う。しかし実はリンゴは3発だけ隠し持っていた。ダラスにも「きっと戻ってくる」と言い残してプラマー兄弟のいる酒場に一人向かった。酒場ではルーク・プラマーがポーカーをしていて、リンゴ・キッドがやって来たと知らされて、その場に捨てたポーカーのカードはA8の黒のツー・ペア[注釈 3] であった。ルークを筆頭とするプラマー三兄弟はリンゴと酒場の前でにらみ合う。一瞬の銃撃戦の末、酒場に再びルーク・プラマーが戻ってきた。ルークはカウンターに近付いた瞬間に床に倒れた。 リンゴは無傷でダラスの元に戻ってきた。カーリーとブーンが馬車を用意していて、リンゴはカーリーにダラスを牧場まで送るように頼む。カーリーはダラスもリンゴも馬車に乗せて送っていくことにすると言う。そういった後にブーンと馬車から降りる。カーリーとブーンは馬に石を投げ、彼ら(リンゴとダラス)を逃がすのだった。カーリーはブーンに「一杯おごるよ」と誘い、ブーンは「一杯だけな」と答え、ダラスとリンゴの二人が乗った馬車は荒野へ去って行った。

二人の結末

二人は、保安官の好意によって提供された馬車で新天地に去っていきます。

(完全なハッピーエンドです)

感想

戦前の作品ですが、典型的なアメリカ映画です。ジョン・ウェインは、はまり役です。

  

映画名

死の谷

制昨年

1949年

監督

ラオール・ウォルシュ

主演男優

ジョエル・マクリー


主演女優

ドロシー・マローン


ストーリー

Wikipedia

流れ者のウェスは脱獄し、最後の大きなヤマである列車強盗に希望をかけていた。  

(コメントの補強を募集中でしを)

(キネマ旬報web)上野手入れ

1870年代、中西部のコロラド。ともに裏街道を生きる牢破りのお尋ね者ウェス・マックイーンとたいへんな苦労をして生きてきた女ジュリー・アン・ウィンスローが不幸な絆ゆえに結ばれた。2人は誰ひとり祝福してくれる者もない荒野の荒れ果てた教会での結婚式に束の間の幸せを感じ、絶望の中にも一筋の希望を見出す。しかし、数十人の保安官団に追い詰められ、万策尽きて寄り添いながらシェリフの銃弾に倒れるのだった。

二人の結末

手を繋ぎあって息絶えるシーンが最後である。その後、荒れ果てた教会の澄んだ鐘の音が響き渡る。ジュリーが盗難金から少しをご喜捨箱に入れた資金でその教会の修道士が鐘を入手したのである。本来なら2人を祝うはずの鐘の音であった。

ウェスは地上では生きようのない脱獄強盗囚ですから、2人は天国で結ばれたのです。

別な形のハッピーエンドです。

感想

ドロシー。マローンは不遇な女性を見事に演じていました。

アメリカ映画なので、ハッピーエンドになるのだろうと期待して観ていましたが、さすがに強盗を認める結末は作りようがなかったのでしょう。