目的:
国際刑事裁判所なるものがあることを知っていただきます。
その現状と限界を確認いただきます。
その活動に、日本は年間30億円出していることを
知っていただきます。
ねらい:
これからはどうなるのでしょうか?
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本項は、学士會会報2023-Ⅳ号に掲載されました
中央大学法学部特任教授、元国際刑事裁判所裁判官尾崎久仁子氏の
ねらい:
これからはどうなるのでしょうか?
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本項は、学士會会報2023-Ⅳ号に掲載されました
中央大学法学部特任教授、元国際刑事裁判所裁判官尾崎久仁子氏の
寄稿のご紹介です。
本項もあまり知らないことでした。
この寄稿の要旨はこのように紹介されています。
ジェノサイド、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪は
「コア・クライム」と呼ばれる。
コア・クライムを犯した個人は、国内の裁判所のみならず、
国際法に基づいて国際刑事裁判所で処罰することができる。
国際刑事裁判所が常設されるまでの経緯、機能と課題、
ロシアによるウクライナ侵略における役割などについて、
元・国際刑事裁判所の裁判官が語る。
私にとって難しいテーマでしたが、以下のように整理しました。
1.国際刑事裁判所とは
2.戦争犯罪等を裁く条約
3.国際刑事裁判の仕組み
4.国際刑事裁判所で裁く犯罪
5.国際刑事裁判所の運営費
6.国際刑事裁判の現状
7.国際刑事裁判の課題
1.国際刑事裁判所とは
国際刑事裁判所規程(ローマ条約)で
国際刑事裁判の基本原則を規定した。
1998年採択、2002年発効、
締約国123か国だが、米、ロ、中国が未締結。
これを管轄する国際刑事裁判所(ICC)の職員は約千名。
上野注;中国やロシアは、
「侵略」を行う可能性を自覚しているのでしょう。
ですから加盟しません。
米国は、
「侵略」される被害者になると思っていませんから加盟しません。
仮に「侵略」された場合には自分の力で反撃します。
現に、9・11の同時多発テロ事件に対しては、
首謀者のビン・ラーディンを10年間かけて追跡し殺害しています。
2.戦争犯罪等を裁く条約
上掲のローマ条約以外に以下がある。
1)ジェノサイド条約
ジェノサイドを裁く。
1948年採択
2)ジュネーブ4条約
1949年採択、1977年追加議定書発効
締約国
196国(米国、ロシア、中国、北朝鮮!を含む)
規定内容 武力紛争中(敵国領域の占領中を含む)に、 傷病兵、捕虜、文民などに対し、 殺人、拷問、性犯罪などの虐待行為を行ったり、 故意に民用物や学校などを攻撃、破壊すると 戦争犯罪に問われます。 |
3.国際刑事裁判の仕組み
寄稿文ではよく分かりませんでしたので別途確認しました。
外務省の資料です。
対象の犯罪は、各国で捜査・訴追するのが基本である。
各国が被疑者の捜査・訴追を行う能力や意思がない場合に
ICCにより捜査・訴追が行われる。
ただし、ICCが捜査や裁判ができるのは、
1)被疑者の国籍国又は犯罪の実行地国が、
条約締約国であるか合意している場合、
2)それ以外は国連安保理が付託する場合。
と限定されています。
ということは、ロシアや中国の「犯罪」は対象とできないのです。
4.国際刑事裁判所で裁く犯罪
1)ジェノサイド
対象とするジェノサイドとは、
国民的、民族的、人種的または宗教的な集団
の全部または一部に対し、
その集団自体を破壊する意図を持って行われる殺害、
身体や精神への重大な傷害、出生の妨げ、
児童の強制移動などの行為を指す。
2)人道に対する犯罪
①殺人
②絶滅させる行為
③奴隷化すること
④住民の追放または強制移送
⑤国際法の基本的な規則に違反する拘禁その他の身体的な自由の
著しい剥奪
⑥拷問
⑦性的暴力
⑧政治的、人種的、国民的、民族的、文化的または宗教的な理由
などによる迫害
⑨人の強制失踪
⑩アパルトヘイト犯罪
3)戦争犯罪
前掲、ジュネーブ4条約の違反行為。
4)侵略犯罪
侵略は通常、国が主体の行為で、
その国は国際法違反に問われますが、
侵略犯罪とは、
「侵略行為を主導した個人の刑事責任を問う」という
ニュルンベルグ裁判や東京裁判で初めて登場した新しい概念。
5.国際刑事裁判所の運営費 これも外務省資料で確認しました。
各国の分担金拠出によって賄っています。
日本は最大の拠出国で、2022年に15.4%、
約30億円を拠出している。
その計算からすると、全体では195億円となります。
6.国際刑事裁判の現状
これも外務省の資料です。
2003年から始まって、10数件しかないのですね。
4番のスーダンの事案、6番のリビアの事案は、安保理の付託案件で、
それなりの意義があったと思われますが、
最後のウクライナ案件を除きますと、
他は失礼ながら小国の紛争案件です。
ウクライナ案件の帰趨がどうなるかで、
国際刑事裁判の有効性が評価されるのですが、
どうなるのでしょうか。
7.国際刑事裁判の課題
そもそも、世界を動かす大国が割れているような状況で、
国連を含む世界的活動はまとまりようがありません。
ロシアが、「俺は侵略などしていない」と主張すれば、
他国は「そんなことはないだろう!」と言えても、
ロシアをその可否を判断する場に引き出すことはできないのです。
中国のウィグル族迫害にしても、中国が
「迫害などしていない。内政問題だ、ほっといてくれ」と言えば、
他国は非難はしても干渉はできないのです。
現在、民族紛争を除く戦争をする可能性のある
中国とロシアが参加していない当条約は
有効に機能しようがないでしょう。
そもそも、戦争を裁くというのは、東京裁判にしても、
戦勝国が戦勝国の論理で相手を断罪するのですから、
公平な裁きとはいえないものです。
ところで、国際刑事裁判所の「目的・ねらい」はこうです。
目的=前掲の戦争犯罪を犯した者を処罰する。
ねらい:そのような戦争犯罪の発生を防止する。
これは全く異論のない正論です。
しかし、その目的をどうやって実現するか
の国際的制度設計ができていないのです。
それが不十分な状態で運営しているのですから、
ICCの職員千人は欲求不満でしょう。
この論文の著者尾崎さんは、
2009年から10年間もICCの判事をしておられたのです。
よく健康で過ごされましたね!ご苦労様でした。
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