目的:
ロシア・ウクライナ対決の背景を少し知りましょう。
ねらい:
あらためてロシアは恐ろしい国である認識をしましょう。
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この項は、学士會会報2023-Ⅳ号に掲載されました
東京大学大学院法学政治学研究科板橋拓己教授の寄稿のご紹介です。
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この項は、学士會会報2023-Ⅳ号に掲載されました
東京大学大学院法学政治学研究科板橋拓己教授の寄稿のご紹介です。
この内容は、今まであまり知らなかったことでした。
この寄稿はこういう文言から始まっています。
【NATO東方不拡大の「約束」をめぐって】
2022年2月24日、ウクライナ侵攻直前に放送された
国民向け演説の冒頭で、ロシアのプーチン大統領は
NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大を
「根元的な脅威」と呼んだ。
そして、西側は
「NATOを1インチたりとも東方に拡大させないという約束」
をしたが、「われわれは騙されたのだ」のだと主張した。
こうした「西側の裏切り」とか
「われわれは欺かれた」といった議論は、
2007年2月のミュンヘン安全保障会議での激しい非難以来、
プーチンが繰り返し述べ立ててきたものである。
2014年のクリミア併合に際しても、
西側の「噓」を口実の一つにしている。
そもそも「1インチ」発言は、
ベルリンの壁崩壊後の東西ドイツ統一をめぐる
国際交渉から出たものだ。
具体的には、1990年2月9日、
モスクワでのゴルバチョフとの会談で、
アメリカの国務長官ジェームズ・ベーカーが、
「NATOの管轄および軍事的プレゼンスが
1インチたりとも東方に拡大されることはないという保証」
について言及している。
ここで、ベーカーは、ゴルバチョフに対し、
東西統一(および米軍の西ドイツ領域への駐留継続)
を容認してくれるならば、
NATOを当方に拡大させないという保証を
ちらつかせたのである。
この約束をめぐっては、ここ10年余り、
とりわけアメリカ外交研究の領域で盛んに議論されてきた。
かたや、「NATOの東方拡大については
条文や公式声明の形で文書化されていないがゆえに
「公式の合意」は成立していない」とする。
かたや、「国際政治における「合意」に関しては、
そうした公式の条文だけでなく口頭での発言も
一定の拘束力を持つ。
冷戦期のキューバ危機などは
そうした口頭での「合意」で乗り越えられてきた」
と主張するものもいる。
現実には、その後アメリカのブッシュ政権が
(当方不拡大の)方針を転換し、
統一ドイツ全体のNATO帰属をめざすようになる。
そうして1990年2月24.25日に開催された
キャンプ・デーヴィッドでの米独首脳会談で、
ブッシュ政権とコール首相は同方針で一致した。
明らかに、1インチ発言はあったのでしょう。
その時はそれが正解(何に対する正解かは疑問ですが)
だと思っての米国発言だったのでしょう。
しかし、状況が変わったのです。
米国的な目的思考からすれば、
その時に自分たちに都合のよい判断をするのは
違和感がないのでしょう。
前例踏襲の日本的思考ではそんなご都合主義は認められません。
当時のソ連側も、口約束でも「1インチ」発言をとりつけることで、
本当にそれが実現できるとは信じなくても当時の力関係の現実論として
受け入れたのではないでしょうか。
国民の納得感も得られたのでしょう。
こういう経緯からすると、
国際政治に「正解」や「筋」はないと考えるべきでしょう。
正解を判定する超国家的司法は存在しないのですから。
(別項をご参照ください。
ロシアは歴史的に、
北の外れの地域からの領土拡大(脱出?)を目指してきています。
そうしないと、単に貿易港の存在についてみても、
国は発展できないのですから。
北方四島にしても、その方針からすると、
理屈抜きでその返却はありえないのではないでしょうか。
その状況からすると、ロシアとしては、
NATOは非常に大きな足かせに感じられるでしょう。
国の周りをNATOで固められたらどうにもなりません。
ご承知のように、
現在のNATOは軍事同盟ですから、参加国が攻撃されたら、
同盟国は自国への攻撃とみなして相手と戦うのです。
西側の反発を覚悟で、ウクライナ侵攻をするのですから、
その領土拡大意欲は強大なものです。
恐ろしい思考法ですね!!!
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