2023年7月23日日曜日

経済学の「目的・ねらい」は何か?オモシロいですよ!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 経済学の「目的・ねらい」について考えてみました。
 その経済学の物差しで、
 日銀黒田前総裁の施策、岸田政権の「骨太の方針」を解釈してみました。
 フィンランドに学ぶべきことが分かりました。

ねらい:
 理屈はどうでもよいから、
 日本が早く長期停滞から脱却してほしいですね。
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先日、ある機会がありまして某先生の「経済学の歴史と経済政策」
という講演を聞きました。
その中でマクロ経済学、ミクロ経済学の歴代の先生たちの学説を
ご紹介いただきました。

正直、「それでどうなの?」と思いました。
私も経済学部卒業なのですが、
学生時代は経済学の勉強は全くしませんでした。
法学は法律の解釈をしているばかりで、
もっと興味が湧きませんでしたが、
経済学もとても実社会で役に立つとは思えなかったからです。

そういう私ですが、
今回の講演で、そもそも経済学の「目的・ねらい」は何なのか?
という疑問が湧きますと、とたんに興味が出てきました。

経済学の目的・ねらいはこういうことであるべきでしょう。
自明ですかね?
経済学の目的:
 国家あるいはそれに準ずる範囲の経済の構造を明らかにし
 経済が発展する方向を見出す。
経済学のねらい:
 国民の幸福感を実現する。

フィンランドは、
国土面積は33.8万㎢で日本の37.8万㎢と変わりませんが、
人口は554万人しかありません。
5年連続で世界幸福度ランキングの1位です。
フィンランドでは経済と幸福度が両立しています。
定時に帰り、残業はほぼなく、有休消化率もほぼ100%で、
それでいて、1人当りGDPは日本の1.25倍です。
どうすればこうなるかを経済学は解明する必要があります。

マクロ経済学は、
経済の構造を、GDP(国民総生産)、需要と供給、消費・投資などの
全体数値の関係で分析します。
ミクロ経済学は、
個人、企業、財政という経済主体の経済活動の結果として
経済成果が実現するという観点で経済を分析します。

マクロ経済学で把握するのは経済主体の活動の結果数値ですから、
それを直接的に操作することはできません。
具体的な経済政策は、ミクロ経済学の分析によらざるを得ないのです。

大雑把に言いますと、
原因と結果の関係、または全体と部分の関係ですから
一方だけの分析で経済状況の判断はできるはずがありません。

ということですから、
最近はマクロ経済学とミクロ経済学の融合が起きているそうです。
当然でしょうね。どちらも「目的・ねらい」は同じなのですからね。

そこで、最近の日本の金融政策を分析してみました。
ご承知のように、黒田前日銀総裁は、
インフレ率2%の実現を目指して、
長期にわたり超金融緩和政策をとりました。

インフレ率2%という目標は、需要が供給を多少上回って
(イメージとしては好景気です)、
その結果物価が僅かに上がる状態を想定していたのです。
そのために、金融機関として、市場に資金を潤沢に供給して、
投資を引きだそうとしたのです。

この政策が成功しなかったのは、こういうことです。
投資を行う経済主体である法人は、いくら金利が安いからといって
見返りが期待できないことに投資はしません。
有効な投資対象が存在しなかったために、
資金を供給しても投資を引きだすことはできなかったのです。

有効な投資対象を作り出すのは財政の役割です。
有効な財政政策(税務政策を含む)が不十分・不備だったのです。
よく言われたことですが、
アベノミクスの3本の矢の2本目、3本目が不十分で、
1本目の金融政策が孤軍奮闘して力尽きたのです。

因みに、最近はインフレ(物価上昇)率が2%を超えています。
しかし好景気とは程遠い経済状態です。
その物価上昇は
健全な需要と供給の関係から生まれているものではなく、
輸入原材料の上昇によるものだからです。

そのために、
個人の「実質」所得はマイナスとなる影響を受けています。
輸入物価の高騰は、
一般国民の誰にとってもプラスの恩恵はありません。
(唯一、商社が売上比例でマージンを取りますから大儲けです。
ケシカラン!)

名目、実質という分析もマクロ経済学の範疇です。

ところが、最近の法人の投資対象は、人的資本投資の伸びが
研究開発や設備投資を上回るようになったのです。

政府が「従業員の給与を上げよ」といくら叫んでいても、
20年間大卒者の初任給は、ほぼ20万円で横ばいだったのです。

それがどうですか!
昨今のDX人材をはじめとする高度人材の不足状況を受けて、
高度人材要員の給与アップだけでなく、
大卒初任給が一挙に25万円とかに上がる状況なのです。

それができるなら、なぜもっと早くしなかったのか、と思われます。
法人の経営者は、悪者ではないのですが、保守的です。
「給与を上げないと、会社がもたない」
となって初めて行動するのですからね。
会社を守らなければならない経営者としては
ある面で当然の行動なのでしょう。
それは、ミクロ経済学的分析です。

実は、3本の矢の3本目の民間投資を喚起する成長戦略が、
経済政策の根本対策のはずです。

最近の岸田政権の経済政策(2023年「骨太の方針」)は、
成長戦略を中軸に据えて、
ミクロ経済学的な経済主体の行動に変容を与えよう
ということで意欲的です。
以下がその骨太の方針の骨子です。

1.三位一体の労働市場改革による構造的賃上げの実現と
 「人への投資」の強 化、分厚い中間層の形成 
 2.投資の拡大と経済社会改革の実行 
 (1)官民連携による国内投資拡大とサプライチェーンの強靱化 
 (2)グリーントランスフォーメーション(GX)、
   デジタルトランスフォーメ ーション(DX)等の加速 
 (3)スタートアップの推進と新たな産業構造への転換、
   インパクト投資の促 進 
 (4)官民連携を通じた科学技術・イノベーションの推進
 (5)インバウンド戦略の展開 
 3.少子化対策・こども政策の抜本強化 
 4.包摂社会の実現 
 5.地域・中小企業の活性化

労働市場改革として、成長産業への人材流動の促進、
少子化対策として児童手当や育休給付の拡充、が目玉です。 

私は過去に、日本の労働生産性が低い=低経済成長について
以下のような分析をしました。
拡大してご覧ください。













製造業の生産性が低いのは、
「市場ニーズに合った製品が提供できていない」で
「過去の延長でビジネスを継続している」から。

現場型サービス業の生産性が低いのは、
「提供サービスの工夫が足りない」で
「過去を踏襲したサービス提供方法をしている」から。

オフィスワーク型サービス業の生産性が低いのは、
「新規サービスの創出が不十分」で
「ホワイトカラーの生産性が低い」から。

すべてに共通して
「労働の流動性が低い」ことが原因としています。

労働の流動性の結果は、一時的に失業率が高まります。
先進各国の失業率と経済成長率には正の相関がありました。



これらの表層的原因の奥に、以下の真因が潜んでいます。
1「雇用維持制度がある」 
2「既存産業・企業の温存政策がある」コロナ対策で拡大しました。
3「国民に安住マインドがある」
4「国民に現状肯定マインドがある」
5「国民の挑戦心が希薄である」
6「女性差別がある」
7「企業に現場尊重風土がある」
8「能力評価・処遇制度に欠点がある」
9「能力向上対策が不備である」

今回の「骨太の方針」は、これの1、2、6、8、9番の、
主に社会もしくは企業に存在する要因に対する対応です。
しかしながら、その対策は、
政策の目的に合致した実績に対する給付が中心で、
元になる制度(雇用維持制度等)の改革には踏み込んでいません。
抵抗が感じられる施策には及び腰なのです。
そこに踏み込まなければ、効果の実現はなかなかでしょう。

3、4、5番の国民の意識(マインド)に関する要因への対策は、
取りあげられていません。
対策があるとすれば幼児期からの長期にわたる教育の改革でしょう。

このマインドは縄文時代から続く日本人の伝統的なものですから、
明治維新や敗戦並みのショックがないと変わらないものです。

「自民党をぶっつぶす」と宣言した小泉元首相のような方が、
長期に腰を据えて取り組まないとならない難題です。

因みに前掲のフィンランドは、
国土の70%近くを占める森から得られる森林資源を活かした
製紙産業からスタートして、その産業機械、
さらには船舶などの輸送機械産業を展開しました。
(73%が山岳・丘陵地である日本と似ています。
産業構造も日本と似ています)。
有名なノキアの通信機械をてこにして
IT産業にもすそ野を広げました。

その国民性は、学士會会報2023-Ⅳ号に掲載された
フィンランド大使館員であるラウラ・コピロウさんの紹介によると
こうなっています。













1)心身の健康や幸福度、暮らしを大切にする。
2)仕事も休みも同じくらい大切にする。
3)企業よりも自分のためを重視する。
4)プロセスでなく成果・結果を重視する。
5)WHY?を重視する教育をしている。
 (「目的重視思考」なのですよ!! 因みに教育費は大学まで無料)
6)飲み会はしないが「コーヒー休憩」を取る
 (1日15分2回が法律で定められている)。
7)多様性を重視する。
 (現在の首相は30代の女性です!!

前掲の日本の国民性の真逆です。
真面目にフィンランドの国民性に学ぶべきでしょう!!

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