目的:
SNSの特徴を理解いただきます。
その上で「賢く利用しましょう」という提言をご紹介します。
ねらい:
SNSを賢く利用いたしましょう。
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本項は、學士會会報2020年Ⅲ号に記載された
三浦麻子大阪大学人間科学研究科教授の寄稿のご紹介です。
こういう記述があります。
SNSというインターネットメディアが市民権を得て久しい。
SNSは「ソーシャルネットワーキングサービス」の頭文字をとったもので、
2005年前後に相次いで開始された
TwitterやFacebookがよく使われている。
本稿では,SNSを利用するという前提に立って、
社会心理学的な立場から,SNSの特徴と、
SNSでのコミュニケーション、特に情報受信に際する留意点を解説する。
社会心理学では、人の心理やその表象としての行動の規定因を考える際に、
その人自身の特性だけでなく、どのような状況に置かれているかを重視する。
SNSという場そのものや、そこに集まる情報の特徴をよく知ることを
賢く使うことにむすびつけていただきたい。
0.SNSの普及率
総務省「令和元年版情報通信白書」によれば、
2018年現在のSNS利用率は調査対象者(6歳~80歳以上28,875名)
全体の60.0%で、13歳~49歳では70%を超えている。
個人同士の会話の場としては、電話やメールを凌駕しつつあり、
(中略)
人が何らかの情報と触れあう(広義のコミュニケーション)際の
主要なメディアとなっている。
1.SNSでの情報発信の特異性
SNSでの情報発信は、
参加者を介して特定の仲間を超えて展開していく可能性があるので、「家族」「親友同士」「職場仲間」といった
文脈に応じたコミュニケーションを困難にする。
東洋と西洋を比較すると、
東洋人は自分自身を周囲の人々との関係性を踏まえて捉える
相互依存的自己観をもつ傾向が強いため、
関係性すなわち文脈の混在は,SNSで提示する自己を定まりにくくさせる。
そのため、ある個人が複数のアカウントを登録して、
文脈に応じてそれらを使い分けることで混在を避けるケースも少なくない。
2.SNSで入手する情報の偏り1 タコツボ化
SNSの仲間は、ある目的を持って集まっているので、
そこでの情報流通には何らかの偏りが発生する。
個人が政治的イデオロギーを鮮明に持つ傾向が強いアメリカでは、
SNS上でも保守とリベラルはつながりが弱く、
意見はほとんど分断されている。
「タコツボ」化の可能性がある。
3.SNSで入手する情報の偏り2 我田引水
SNSでの情報は、見る情報ではなく、
自分が読んで解釈するものである。
したがって、読む時点で自分の考えが影響する。
自分が都合のよいように解釈する。
我田引水となりやすいのである。
4.SNSで入手する情報の偏り3 確証バイアス
不安があると不安を助長する情報は伝わりやすい、
強い不安を伴う投稿は極めて強い伝播性をもつ。
確証バイアスは
「仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、
反証する情報を無視する、あるいは集めようとしない傾向」
という定義のようです。
不安があるとそういう情報がどんどん伝わっていくということです。
その中にはデマ情報も含まれます。
2020年1月末現在、
中国・武漢に端を発する新型コロナウィルスによる
肺炎の感染が世界的拡大の様相を呈している。
時あたかも春節で、中国人旅行客が数多く来日するから、
中には不心得者もいるかもしれない、と思っていると、
「武漢から関西国際空港に入国した感染疑いのある観光客が
病院から逃げた。USJと京都に行くらしい。気をつけて」
という情報が信頼性の検証を経ぬままに真実味を帯びて見えてくる
(結局、この情報は発信されたその日のうちに
空港運営会社によって公式に否定された)
緊急事態では殊更に慎重に情報の信頼性判断をしていただきたい。
このブログもSNSです。ご留意くださいませ!!
で終えていましたら、5月23日美人女子プロレスラー木村花さんの
死亡ニュースが伝わってきました。
母親に対する次の言葉が残されていたようです。
「お母さんごめんなさい、産んでくれてありがとう」
彼女は、心ない人たちからの誹謗中傷に悩んでいました
(本人のツィッターによる)。
中には「死ね、気持ち悪い、消えろ」などという言葉もあったようです。
女子プロレス界の人気あるスターだったのに、たいへん惜しいことです。
次の5.を追加すべきです。
5.SNS情報の危険性
SNS情報は匿名でも発信可能です。
そのため、無責任な誹謗中傷が横行する危険性があります。
この取締り強化も検討開始されているようですが、
実効性はかなり疑問で、
個人の自覚・倫理観に期待することが基本です。
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