目的:
経営の定石と言われるものも、簡単に成功につながるわけではない
ことを再認識していただきます。
ねらい:
「なるほど、そのとおりだ」なのですが、
どう活かせばよいのでしょうか?
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このテーマは、小林忍氏の著書名です。
小林氏は、京都大学経済学部卒業後、日銀・メーカでの15年、アーサー・D・リトル等でのコンサル経験16年の後、
NECの事業開発担当になっておられるというユニークな方です。
この本は2016年に出されたものです。
その時に購入したのですが、そのままになっていました。
「経営の定石の失敗学」という書名から、
「経営の定石と言われているものがあるが、これに従うと失敗する」
ということが書いてあると理解しましたので、
それは何だろう?と思ったのです。
そうしましたら、そうではなく、
「経営の定石と言われるものも、誤った使い方をすると失敗につながる」
という内容でした。
そういうことなら、
何でも、どんな場合でも、誤った適用はよい結果を生みません。
と、期待外れで読まなかったのです。
今回あらためて読んでみました。
そうしましたら、以下のようにたいへんよくできている本でした。
1.著者等の経験を踏まえた実例に基づき解説しています。
(これは貴重です)
2.このテーマで誰がこの本を読むのかが難題です。
そこで、各テーマの基本解説の後に「危機への処方箋」として
「経営者のあなたへ」
「本社部門のあなたへ」
「現場のあなたへ」
と分けて解説しています。
(実務的コンサルタントのスタンスとして「なるほど」と思います)
3.各テーマごとに失敗の予兆のチェックリストが提示されています。
(分かりやすくてたいへんよくできています。以下に例を示します)
コメットメント経営 危機の予兆CHECK LIST
□経営陣や上司が部下の「できません」
を聞き入れず、対応策を一緒に考えない。 口必達目標と努力目標が渾然一体となっている。 口現実的な計画を出した場合「気合が足りない」
と叱責が飛ぶ。
口具体策がなくても「できます」「がんばります」 「やり切ります」と言っておけば、 経営陣は目を細めている。 口3年連続で未達に終わった部門長が
いまだに部門長をしている。
口月間計画の未達の要因について、
毎月違う説明がなされる。
口計画が未達の場合、挽回策が報告されるが、 言いっばなしで終わる。 口計画の未達の責任が、 どんどん現場に近い方へと転嫁されていく。 口社長命令は、取りあえず実行されているようだが 成果が挙がらない。 口結局、コミットさせられるのは現場。 経営陣は気合を入れているだけのように思える。 |
(これで概要が把握できます。全テーマ分をご紹介します)
テーマ
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経営の定石としての説明
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失敗のリスク
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経営コックピット
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ITを用いて、様々な経営指標数値を端末情報や会議資料として一覧できるようにするものです。
経営状況の変化がリアルタイムで可視化され、経営者の意思決定材料が迅速、正確に提供されることから、航空機の操縦席にたとえて“コックピット"と呼ばれます。
経営数字を目に見える形にすることは、しつかりとした経営判断をするための“イロハのイ"で、筆者が顧客企業の事業再生に乗り出す際も、最初に行うことは「経営の実態把握」つまり、経営コックピットを立ち上げる(または、見直す)ことです。
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コックピットは作り方を誤れば、当然ながら正しい情報は読み取れません。
また、操縦するパイロットの技量にそぐわないコックピットは、パィロットを混乱させるだけです。
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俊敏な経営
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経営環境が時々刻々変化し、昨日の敵が今日の友となったり、これまで歯牙にもかけていなかった相手が、突如、業界最有力プレーャーに急浮上したり、画期的なイノベーションで、自社の経営の柱が一夜にしてシロアリだらけの柱のような有様となったり、という今日の経営環境においては、迅速に必要な判断をすることは極めて重要・有用です。
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しかし、「俊敏な経営」は、一歩間違えると、考えることなく直感的に反応したり、どこかの工程を手抜きしたりという「速いだけの経営」に陥る危険性をはらみます。
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リーダシップ
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激変する経営環境の中で会社のかじ取りをするためには、社長をはじめとする経営陣が「組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に確立」し「目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する」ことはマストです。
その意味で、現代の経営において、経営陣にはさらなるリーダーシツプの発揮を求められることは間違いありません。
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しかし、リーダーシップは発揮の仕方を誤ると、拙速な判断を招いたり(「俊敏な経営」の項参照)、本来優れた「経営の定石」である方法論が、歪んだ形で運営される原因となる(「ワイガヤ」「現場主義」の頂参照)おそれがあります。
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ワイガヤ
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様々な意見を吸い上げて、より良い考えを取りまとめるために非常に有効な手法です。
カルロス・ゴーン氏が日産自動車で導入したクロスファンクショナルチーム(CFT)は、ワイガヤを人為的に作り出す仕組みと言えるかもしれません。
仕組みに頼らなくても、社員同士が自然発生的にワイワイガヤガヤと議論できる社風があるならば、会社はそう簡単には危機に陥らないはずです。
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しかし、文字通り「ワイワイガヤガヤ」と堂々巡りの議論に陥ったり、一見自由闊達に見えて、実は「誰か」あるいは「何か」に操られた挙旬に無責任な結論を導いたりするおそれもあります。
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現場主義
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机上の空論に陥ることなく、現地・現物・現実に立脚して打ち手を取りまとめ、実行するために有効な手法です。
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しかし――、1 現場訪問時の見間を「現場の声」として金科玉条にする
2 経営陣が自らの知見を振りかざして現場のHow論(どうやるか)に介入する
3 現場発の情報を鵜呑みにする一― といったことによって、思わぬ副作用に苦しめられることもあり得ます。
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コミットメント経営
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日産自動車の再建に取り組んだカルロス・ゴーン氏が劇的な成果を挙げたことから、広く知られるようになりました。「必達目標」とも訳されます。
「数値目標をはっきり示す」「数値目標の責任者を明確化する」「各人が目標達成に向けて仕事をする」ことで企業の底力を発揮することと要約できるでしょう。
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ある意味、当たり前の経営の姿ですが、取り組み方を間違えると、経営陣が会社の実態を把握できなくなります。
また従業員が、目標未達を当たり前の状況と思うようになって、モチベーションを低下させるおそれもあります。
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モチベーション経営
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職場環境の整備等によって社員の働きがい、やる気を引き出すことで、従業員満足度を上げ、優秀層を中心に社内を活性化して成果を引き出す手法です。
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うまくいけば企業成長・改革の推進力となり得ますが、モチベーションという言葉のポジティブな響きに惑わされ、打ち手の選択や優先順位を誤ると、逆に優秀層に見限られて会社を危機に陥れかねない側面も持っています。
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選択と集中
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自社がコストと品質で1番か2番になれる(つまり、自分の運命を自分で切り開ける)事業領域を明確化し、そこに事業を絞り込んで経営資源を集中的に投下する戦略です。GEのジャック・ウェルチ前CEOは、この戦略によって、就任前年(1980年)に249億ドルだった売上を、その後の15年で700億ドルまで拡大し、さらに利益率を3%も高めました。このGEの目覚ましい成長とともにこの言葉も有名となり、今やビジネスの現場でもごく一般的に使われています。
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だからといって、これを業績向上の特効薬と考えるならば、思わぬ落とし穴が待ち構えています。
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ポートフォリオ経営
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展開する事業群について、リスクマネジメントの観点と、個別事業の競争力・将来性の観点から入れ替えをしながら、全社としてのリスク分散を図り、経営の健全性を維持しようとする手法です。
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リスク分散には有効な手段ではありますが、一歩間違うと、単に弱い事業の集合体を作るだけになってしまい、安定した経営を行うことが困難となります。
また、連結グループを通じた事業展開をする場合には、親子間の壁が経営の足を引張る場合があります。
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花形商品経営
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圧倒的な競争力、収益力を持つ「花形商品」を育成し、その地位を守ることは、経営の安定化、企業成長の実現に非常に有効です。
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しかし「花形商品」に過度に依存したり、社内でこれを聖域化したりするようなことになってしまうと、結局は「花形商品」を持ったがゆえの大きな落とし穴にはまるおそれがあります
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本書の出版には、
非常に多くの方が関わられたようです。
非常に多くの方が関わられたようです。
たいへん難しいテーマを、
いかに分かりやすく伝えるかをよく研究されています。
再販・重版が続いてもいいような力作ですが、
どうだったのでしょうか?
どうだったのでしょうか?
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