2021年1月26日火曜日

「原発事故、国の責任認めず」の東京高裁判決は妥当か??

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 福島原発事故東京高裁の無能ぶりを確認します。
 裁判官も神様ではありません、
  いろいろなレベルの方がいることを確認いただきます。
ねらい:
 そういう目で裁判を見ていきましょう。
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1月21日東京高裁は、
福島第一原発事故について、以下の理由で国の責任はない、
という判決を出しました。

本件での国の責任とは、国が的確に責任を果たしていれば、
この事故は発生を防げたのか、ということです。

1)2002年7月に政府機関が出した地震予測
 (三陸沖北部から房総沖でマグニチュード8級の地震が
 30年以内に発生する確率は20%程度)
 の信頼性に疑問があり、
 国は大津波は予見できなかった。

2)仮に国が予見をして東電に対応を指示し、
 東電が防潮堤などの対策を講じたとしても
 事故発生は防げなかった。

この判断については
裁判官の無能ぶりを露呈しているとしか言いようがない
ものです。

まず1)の津波来襲予測ですが、
東北地方では過去千年以上にわたり、
ほぼ百年単位で大津波が来襲しているという事実があるのです。
いつ来るかは現在の地震予測能力からして
確実な予測はできません。

2002年の予測が当てになるかならないかは
問題ではありません。
大地震・大津波が発生するという前提で
対策を講じるべきなのです。
結果的には大地震・大津波が発生しているではないですか!!

したがって、1審判決のように
「東電から津波対策の記載がない耐震性評価の中間報告
を受けた」2008年3月ころには、
東電に対する対策実施を指示すべきだったのです。

2)ですが、東電の対応策が防潮堤であるという考えが
何も知らない、勉強もしていないことを示しています。
東電が、冷却装置一式の防水化工事をしていれば、
事故は発生しなかったのです。
ほぼ同じ立地の福島第2原発は、
予備電源がまともに機能したために
何のトラブルも発生しませせんでした。

この点につきましては、以下のブログをご参照ください。

福島原発事故の原因-上野見解最終集約


しかし、第1原発の予備電源が不備であることは、
国は当然知らなかったでしょう。
東電内でも、一部の人しか、
予備電源不備の問題点を認識していなかったと思われます。
そうでなければ、
こんな単純なことの対策が講じられなかったことは
考えられません。

「東電は官庁以上に官僚的である」
ということを聞いたことがあります。
おそらく、余計なことに口を出さない、
という「文化」があり問題が放置されたのです。

2008年時点で、
国が津波対策の実施を強く東電に要請していれば、
そして、それを受けて東電内で本格的な検討をしていれば
予備電源の不備は認識できたと思われます。

結局、当裁判官の挙げた、国に責任がない二つの理由は
まったくピント外れなのです。

国の責任の有無の判断としてはこうすべきです。
1)大津波は必ずやってくるという前提で対策を講じるべきである、
  と考える。
2)対策不備と感じられることが発生したら
  強くその是正を求めるべきである。

その結果、東電がどういう対策を講じたかは東電の責任となります。
2008年に国から強い改善指示が出ていたら
どうなっていたのでしょうね。
仮定のことですが、非常に興味のあることです。

以上、あくまで国の責任は監督責任であって、
実際の事故責任は100%東電の責任です。
天災ではありません。完全な人災なのです。

当事者責任と監督責任のウェートはどう考えるのでしょう。
この東京高裁判決に先立つ2020年8月の仙台高裁判決では、
国と東電の責任は半々であるとしています。
この配分には「正解」がないと思われます。

この仙台高裁判決はまともです。
その後なのに、こんな不勉強な判決をだすということは、
裁判官の質も問題ですね。

ついでながら、東電は、
大事故が発生した2年強前のIAEA(世界原子力機関)の監査で
「 構造物、 系統、 機器 の 旧式 化 の 影響 を 検討 せよ」
という指摘をされたのに無視をした、のです。

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