2021年1月27日水曜日

これは面白い!!「むかし話」の原典

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「野の古典」という古典に親しくなれる著書をご紹介します。
ねらい:
 ぜひ、皆様も本書をお読みください。
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本テーマは、能楽師安田登さんの「野の古典」のご紹介です。
この本は、400頁に亘る大著ですが、
以下のような古典の原典の解明や注釈をされています。

「なぜそんなに調べることができるのだろうか?
世の中にはスゴイ人がいるものだ」と
感服いたしました。

本書で取り上げている古典
古事記、万葉集,御伽草子、風土記、論語、中庸、伊勢物語、
源氏物語、古今和歌集、新古今和歌集、平家物語、能黒塚
風姿花伝、方丈記、徒然草、鶉衣、好色一代男、日本永代蔵、
松尾芭蕉、おくのほそ道、東海道中膝栗毛、死霊解脱物語聞書、
雨月物語、詩経、笑府、南総里見八犬伝、武士道

例示:浦島太郎の物語
若干抜粋しながらご紹介します。
本書そのままの表現ではなく、少し変えている部分もあります。

他の物語は、順次ご紹介してまいります。

この物語は、
風土記、日本書紀、万葉集にも登場する奈良時代に成立した
千年以上の歴史を持つ物語です。

浦島太郎はどんな男か
浦島本人についての描写が詳しいのは「風土記」です。
それによると、まず彼は姿が美しく、「風流なること類なし」
と書かれています。
つまり詩歌や書画などをたしなむ、イケメンの文系男子なのです。
中世の「御伽草子」では性格描写も加わり、
親孝行で慈悲深く、人を敬い、身を守り、情けも深い
24,5歳の独身男子と書かれます。

浦島の行動
そんな浦島が亀を釣りました。
(御伽草子)浦島は釣った亀に対して
「汝、生有るものの中にも、鶴は千年、亀は万年とて、
命久しき者なり。たちまちここにて命をたたん事、
いたわしければ、助くるなり」
と亀を海に返します。

その翌日、また釣りをしようと思って浦島が浜辺に出てみると、
美しい女性がたった一人で小さい船に乗って
彼のもとにやってきます。
「乗った船が難破をしたので、里まで送ってほしい」
そう彼女に言われ、彼が送るとそこは竜宮城だった、
そしてじつはこの女性こそ助けられた亀だった、
という話の流れになります。

「風土記」ではこうなっています。
島子(風土記ではまだ浦島太郎となっていない)は亀を釣ったあと、
なぜか眠ってしまい、その間に亀は
「忽ちにその顔麗しく、また比ぶ人ない婦人」
になってしまったのです。

島子が不思議がるので、女性が答えます。
「風流な男子が、たった一人で海に浮かんでいたので、
お話ししたいという欲求に勝つことができずに、
風雲に乗ってここまで来てしまったのよ」
と答えます。

怪しむ島子に彼女は
「お願いだから疑わないで。相談(かたらい)の愛を給え」
というのです。
「相談(かたらい)の愛を給え」というのは、
「お話しましょ」というよりは「エッチしましょ」というのに近い
かなり直接的な表現です。

たたみかける彼女に、了解すると
「じゃあ、常世(とこよ)の国に行きましょう」と言って
島子を眠らせてしまいます。

浦島の経験
女性に連れていかれたのは、
わたくしたちは竜宮城だと思っていますが、
じつは「書記」でも「風土記」でも蓬莱山になっています。
蓬莱山というのは、
不老不死の仙人が住むという東方海上にあると言われていた島です。

そこでまずは、大宴会の接待があります。
やがて黄昏時、辺りが暗くなると
舞い遊んでいた仙神たちはひとりふたりと去っていき、
浦島と乙女二人だけになります。

そこで「肩を並べ袖をあわせ、夫婦の理(まぐわい)を成しき」
となるのです。
この「夫婦の理」とは古事記で、
イザナギとイザナミが、
「体の余剰部分」を「体の不足部分」に刺し塞いで性行為をした
ときに使われたアダルトな表現です。

平安時代に書かれた「続浦島子伝記」では
この状況が詳しく書かれています。
いろいろな体位をして楽しんだのです(省略)。
平安貴族はそういうのを読んで楽しんでいたのです。

帰りにもらった玉手箱は、
「御伽草紙」では、これを開けると浦島は鶴になり、
虚空を飛んで蓬莱山の亀姫と会いめでたしめでたしとなります。

この物語は、男性の願望を如実に表しています。
 イケメンでありたい。
 女性にもてたい。
 女性といい思いをしたい。
 若返りたい。
そういうことで、成長した物語なのでしょうね。

こういうことですから、
子どもには聞かせられないということで、
明治期にまとめられた国定教科書で、
今の話に作り替えられたのだそうです。

この項の冒頭に、安田さんはこういうことを述べておられます。
面白いご意見です。
今の子どもはこう思うのではないか。
亀を助けたら、結局年をとってしまって一人ぼっちになるのか、
タイやヒラメの舞踊りやご馳走がなんだってんだ。
やってられない!!

1 件のコメント:

上野 則男 さんのコメント...

大学の先輩からいただいたメールです。

浦島太郎のおとぎ話は、どう見ても荒唐無稽で、何かを比喩している、
とは思われますが、こうまで現実的に書かれると、
”やっぱりね~”ということになりますね。