2021年11月28日日曜日

みずほ銀行の不始末はなぜ???

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 みずほ銀行の再々の障害発生原因を探ります。
 信じられないことが起きていることを確認します。
ねらい:
 「他山の石」とするには特殊過ぎているでしょうか。

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1.今回の問題
11月26日、金融庁の業務改善命令を受けて、
みずほの首脳は総退陣することになりました。
その命令では、
「短期間に複数のシステム障害を発生させ個人・法人の顧客に
重大な影響を及ぼした」と指摘しています。
金融庁の約8か月にわたる長期検査で浮き彫りになったのは、
みずほのIT(情報技術)に関する統治体制の欠如だ。
改善命令は経営陣の認識の甘さを厳しく指摘した。

2.これまでの経営陣の認識不足問題の発生状況
ご承知のように、みずほは過去何度も大規模障害を起こしています。
まず、2002年の3行合併の際に起こしました。
そのときに、前田頭取が「お客様に迷惑をかけているわけじゃない」
と開き直って物議を醸しました。
トップの認識不足はこの時から始まっているのです。
この問題児が2009年まで
みずほフィナンシャルグループの社長を務めるのですから、人材難です。

その後2002年6月に発刊された
日経BPの「システム障害はなぜ起きたか」
ではこういう指摘がありました。

障害発生前ですが、合併3行の頭取が顔を揃えて
新会社の役員体制を発表しました。
その際、CEO、COO、CFOが紹介されているのに、
CIOはありませんでした。金融機関でですよ!

それで、日経の記者は、
これは危ないぞと目をつけてフォローしていました。
そうしたら、案の定2011年に大規模障害を発生させました。
そこで、「システム障害はなぜ2度起きたか」が
2011年に7月に発刊されたのです。
これにはこういう主張がされています。
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今回のシステム障害の原因は30項目にわたるが
これらの原因の根っこは「経営陣のIT軽視」だ。

その結果は、こうなった。
「失敗を恐れ、システム刷新を先送りした」
 問題を起こした勘定系システムは
開発から23年間経ったものである。
「必要なIT投資を見送ってきた」
 システム統合・システム刷新には、
  2~3千億円かかる。
「システム部門の強化を怠った」
 その結果、障害対応能力が落ちた。
「システム障害のダメージを想定できなかった」
  これだけの大ごとになると分かっていたら
  適切な対応策をとっていただろう。

「経営陣のIT軽視」は以下の点からも分かる。

5月23日の記者会見で発表された
「システム障害の再発防止策」には4つの問題点がある。
1.35項目に及ぶ再発防止策のうち、
  経営陣自らの意識・行動の改善に向けた取り組みが
ほとんどない
2.「今回の事故の原因は、
9年前の統合の時の原因と異なるので
  防ぐことができなかった」
と言っていて原因を表層的にしかとらえていない。
3.事故から2か月経っているのに、
  新任のシステム担当役員を決められなかった。
4.「推進中のみずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行の
  システム統合費用が、この事故によって大きく増えることはない」
と言っているが認識が甘い。

システム強化の対策としては
1.CIOには将来経営トップになる人材を当てなさい。
2.CIOは取締役にして
   取締役会に出席し意見を述べられるようにしなさい。
などが重要である。

筆者たちの予想は、「このままだと3度目が起きる」でした。
そうなってしまったのです。
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この時の指摘と今回の金融庁の指摘はまったく同じです。
この指摘のうち、システム再構築の投資だけは、
4000億円かけて実現したのですが、
他はまったく改善されなかったのです。

システム軽視はとんでもないことです。
私は金融業や流通業は「システム依存ビジネス」で、
システム力=ビジネス力であると言っています。
システム依存ビジネスの場合、
システムはモーターボートのエンジンでこれなしでは動きません。
システムを軽視するということは考えられない愚行です。

ヨットの場合のエンジンは補助で、
これが機能しなくても風があれば動けます。
ヨットである製造業の場合は
製品や技術が主役でシステムは脇役でいいのです。

因みに、同じく合併してできたメガバンクでも、
三菱東京UFJ銀行はCIO経験のある畔柳信雄頭取が、
3行のシステム統合の陣頭指揮を執り、
2009年のIT Japan Award 2009(日経BP社主催)で
経済産業大臣賞(グランプリ)を受賞されています。

このことを見ても、みずほグループの弱体ぶりがよく分かります。

3.問題発生の真因
なぜ20年も、経営者の意識が変わらないのでしょうか。
私は、こういう見立てをしています。

当社は、
みずほ銀行創立(興銀、富士銀、第一勧銀が合併して成立した)の際に
それぞれの銀行とのお取引があり影響を受けました。
その経験からの判断です。

3行は、対等合併の形式的条件を守るためにお互いに遠慮して
有機的に一体化するということができませんでした。

それは情報子会社でもまったく同じことでした。
情報子会社では、3行のうちの1行に
非常に積極的で優秀な社長がおられました。
その方が新会社(みずほ情報総研)の社長になられれば、
時間をおかずに有機的な一体化が実現し、
優れたサービス提供が開始できたと思われます。

非常に残念なことに、新社長は無難な調整型の方がなったのです。
その結果、あらゆることが停滞しました。
3社ともで当社が毎年実施していた研修もストップしました。
「現在、新研修体系を検討中でそれができましたらご相談します」
ということでした。

2年待っての結論がこうでした。
「まずは公的な資格を取得する研修をすることになりました。
PMP資格等です。御社の研修は当面対象外です」
この結論もナンセンスですが、
2年もかけてその結論か、というのが驚きです。
本質的なことは何も決められないということです。

リーダシップがないというのは、こういうことになるのです。
社員たちはよくそんな会社で我慢しましたね。
やはり一流企業に勤めているというステータスを捨てたくない
のでしょう。

お互いに合併相手に遠慮する、ということが高じると、
他人・他組織のことに口を出さない、関心も持たない、
ということになります。
その結果が、この無責任状態を引き起こしたのです。

システムのことはシステム部門に任せておけ、となるのです。
丸投げです。システム部門はこれまたベンダに丸投げです。

こういう無責任状態ではいかんと、改革型のトップが現れて、
強力に旧弊を打破することをすれば変われたのでしょうが、
そうならなかったのです。

みずほの新首脳陣は、従来と同じ調整型の人材であれば、
4度目の大障害が起きるでしょう。

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