2021年11月11日木曜日

コロナ感染者急減の理由

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日本で新型コロナ感染者数が急減している原因を研究します。
 驚くべきその新説を知っていただきます。
ねらい:
 新しい分野では「専門家」の言うことは
  あまり信用しないようにしましょう。
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ドイツなど欧州では新型コロナ感染者が再急増しているのに、
日本の感染者数が急減し、世界の注目を集めています。
因みにインドやブラジルインドネシアでも急減しています。

急減した原因についても話題になり始めています。
11月8日の日経新聞にも「コロナ感染、なぜ急減」という
1頁を使う特集がありました。

そこでの意見は集約するとこういうことでした。

氏名

真の理由

ワクチン

3密回避 マスク着用

集団免疫実現

ウイルスの変異

黒木登志夫氏

 

 

◎?

館田一博氏

 

 

松浦善治氏

不明

 

 

◎自滅

仲田泰祐氏

不明

〇?

 

 


氏名

肩書等

黒木登志夫氏

東大名誉教授。専門はがん研究。

館田一博氏

東邦大教授。長崎大医学部卒、日本感染症学会前理事長

松浦善治氏

阪大特任教授。ウイルス学を研究。日本ウイルス学会理事長

仲田泰祐氏

東大准教授。専門はマクロ経済学。計量モデルでコロナの分析実施


当然ながら、まだ証明はできません。仮説です。
自信を持っている方はないようです。

黒木教授の意見
「デルタ型ウイルスは新規感染者数の増え方も減り方も指数関数的だ。公表データから夏の「第5波」について計算すると、東京では8月下旬から11月1日にかけての下降期に新規感染者数が8.6日で半減のペースで急降下した。減少率は99.9%とあり得ないような数字だ。このまま行けば12月上旬には1人になる」

館田教授の意見
「ワクチン接種が急速に進み、同時にタイミングよく不顕性感染を含めて免疫を持つ人が急増したことで国内で一時的な集団免疫効果が強く表れ、8月半ば以降に感染者が急減した可能性があるのではないか」

松浦教授の意見
「強い感染力を持つ新型コロナのデルタ株はあまりに多くの変異を起こしすぎ、人間に感染した時に増えるのに必要な物質を作らせる遺伝情報が壊れるなどして、自滅しつつあるのかもしれない。以前に優勢だった株は、デルタ株の流行に押されて勢力を弱めた」

仲田准教授の意見
「(感染数に影響を及ぼすいろいろな要因を分析したが決定打に欠ける)追加的な人流抑制をしなくても感染が急速に減少することがあるというのが、この夏の最大の教訓だ。ロックダウンは慎重に検討すべきだ」

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ところが、大和田潔氏(前東京医科歯科大学臨床教授)の
PRESIDENT Onlineへの寄稿にはこのような意見が公開されていました。

日本人やアジア人は、
コロナウイルスに強い体質を持っているというたいへん興味深い主張です。
おそらくそれは事実なのでしょう。

「(専門家は)激減した理由すら説明できないのはおかしい」
(前略)

なぜコロナ被害が国・地域で偏るのか
中国を中心としたアジア・オセアニアの周辺国や
中東、アフリカでは被害が少なく、南北アメリカ大陸、欧州諸国で
被害が大きいことがわかります。
アフリカ大陸では南アフリカの被害が目立ちます。

もし、コロナウイルスがエボラ出血熱のような
どの人類も経験したことのない致死的ウイルスだったとしたら、
世界中の老若男女が死亡したためこのような偏りは出なかったでしょう。これが観察された事実です。

流行当初から私はこの偏りに注目してきました。
アジアの一つである日本で被害が少ない理由は、
守ってくれている“何か”があるからに違いありません。
私は2つ要因を考えています。
ウイルス側の要因と、ホストのわたしたち側の要因です。

まずはウイルス側の要因を見ていきましょう。

私たち日本の町医者には、「コロナウイルス」は
冬季に流行する弱毒ウイルスとしてなじみ深いものです。
そのため、季節性コロナウイルスは注目されることなく、
特別検査することも他のウイルスと鑑別診断することもなく
「冬のカゼ」として対症療法薬の処方で治療してきました。

季節性コロナウイルスは4種類が知られていて、
その流行パターンは地道に研究される対象でした。

私たち日本人のほとんどは、
子供の頃から季節性コロナウイルスに暴露されてきました。
もともとコロナウイルスは変異しにくく、
インフルエンザの10分の1程度であることを
ウイルス学研究者で医師の本間真二郎先生が示されています。

コロナウイルスは、
nsp14というウイルス自身の遺伝子修復を行う部位を持っていて
あまり変化しないのです。
新型コロナウイルスは、
たまたま世界に拡散できるように変異したため
世界流行したと考えられます。

ウイルスには、変異する部位と変異しない部位があります。
季節性コロナウイルスの感染でも、
ある程度の免疫を発揮したのではないかと私は推測しています。

もう一つは、ホスト側の私たちの要因についてです。

人間は、一度入り込んだ外敵を排除する免疫システムを持っています。
ワクチンはそれを利用したものです。

これまであまり知られていませんでしたが、
免疫系だけでないウイルスに対抗する手段も持っています。
それが、APOBEC(アポベック;
apolipoprotein B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-like)
というヒトの細胞内にある酵素です。
ウイルスが侵入すると細胞は危険信号のサイトカインを発します。
サイトカインで誘導される酵素の一つです。

ウイルスの遺伝子に変異を起こして、
エラーを起こさせウイルスを自滅させる働きを持ちます。
国立遺伝学研究所と新潟大のチームから、
日本人をはじめとしたアジア・オセアニアに酵素活性が強い人が多いことが
報告されました。
アルコール分解酵素と同じように細胞内の酵素なので
先天的に親から遺伝してくる生まれつきのものです。

コロナウイルスの遺伝子にエラーを起こして、
コロナが遺伝子を修復できないようにしていたようなのです。
ウイルスはほぼ最小限の遺伝子とカプセルでできているので、
その遺伝子にエラーが生じて修復できないことは
ウイルスにとって致命的になります。

それでは、なぜアジア・オセアニアにAPOBECの活性が強い人々が
多いのでしょう?そこがまさに面白いところです。

中国のジャコウネコ、中東のラクダ

コロナウイルスは、動物由来の感染症の側面を持ちます。
「過去のコロナウイルスの教訓」という面白い論文があります。
コロナウイルスは、
豚やコウモリ、ラクダから人間に伝染してきた歴史を記した論文です。
豚からの胃腸炎も報告されています。

感冒ウイルスを鑑別することができなかった時代にも、
地域的コロナウイルスの大流行が
過去にも世界的に繰り返されてきたはずです。

通常コロナウイルスが自然界で住処すみかにしているのは
コウモリです。
呼吸器感染症のSARSがジャコウネコ(ハクビシン)を経由し中国発祥、
MERSではラクダ経由の中東発祥であることが有名です。
これらは、
人類がウイルスの遺伝子を分析できるようになったのちのものです。
アフリカのエボラ出血熱もフルーツコウモリが起源です。

森を切り開き
家畜や食糧の元になる野生動物と共に暮らすようになった有史以来、
数々の獣を経てコロナ感染症に人間はさらされてきたことでしょう。
そして、ヒト―ヒト感染するコロナウイルスだった場合に
時折パンデミックとなったのかもしれません。

このように中国周辺国や中東などの地域では、
昔から動物由来のコロナウイルス感染にさらされてきたわけです。
コロナウイルスのエラーを引き起こすAPOBEC酵素活性が強く
病気に強い人が淘汰されてきたと考えると自然です。

逆にウイルスが淘汰される循環

そしてコロナウイルス側も、
いたずらに細胞を刺激してサイトカインによる
APOBEC誘導が起きないように弱毒変化していったのかもしれません。
季節性コロナウイルスは、
動物由来感染症を離れて目立たないようにヒト―ヒト感染することで
生き延びるようになったコロナウイルスだと考えています。

私は、このような地政学的な理由から、
季節性コロナウイルスによる免疫やAPOBEC活性によって
日本の流行被害は小さくなったのではと考えています。

ウイルスの毒性が強くなってヒトの細胞が刺激され
APOBEC活性が強まると
ウイルス遺伝子にエラーが起きて不利になります。
ウイルス側としてはヒトの細胞をあまり刺激しない無毒化したものが
生き延びて淘汰されていくことでしょう。

新型コロナウイルスが流行してエラーを起こして廃れて、
変異型がやってきてまた流行する。
でも、そのたびに毒性が減っていった周期的な流行の繰り返しも
それで説明ができるかもしれません。
5波では、はっきりした「陽性者数と被害のリンク切れ」
が観察されました。
もちろん、それまでの流行波による獲得免疫も追加され
被害を減らしたことでしょう。

これからも新型コロナウイルス(SARS-COV2)が
ヒト―ヒト感染で生き延びるとするなら、
無毒の5番目の季節性コロナウイルスにならざるをないと
私が考える理由です。
2019年末にコラムでお伝えしたとおりです。
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11月7日の日経新聞の「コロナ再流行あるか」という記事内で、
国立遺伝学研究所の井ノ上逸郎教授の意見が紹介されています。
「第5波のウイルスはゲノムの変異をうまく修復できなくなり
自滅した可能性がある。
ただしこれは状況証拠を説明する仮説であり、実証はできていない」

前掲の松浦教授の意見と共通しています。


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