2021年11月11日木曜日

「ペーパレス」論と「ペーパ賛成」論

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 ペーパレスについて考えてみましょう。
ねらい:
 印刷物としては最後は何が残るのでしょうか?
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11月7日の日経新聞の文化面に
直木賞作家篠田節子さん(1955年生まれ)の「ペーパレス」という
寄稿がありました。
なるほど、と思いましたので、その一部をご紹介いたします。

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令和の時代にあってアイデアの出所も取材もネットで、というのは、
大いなる誤解で、テレビや新聞でさえなく、情報が古びているとはいえ、まずは単行本となるのは、おそらくい吟味され、検証され、秩序立てられた内容が、記憶に残りやすく理解しやすいという理由だろう。
(上野注:これだけ長い1文章なのにすんなり読めるのは、
さすが直木賞作家の腕なのでしょう)

とはいえ、本は場所を喰う。それだけではない。
年老いた目に小さな活字は過酷だ。
もともと強度近視なので、ごく緩い度数の読書用眼鏡を作ったが、
それでも小一時間で目の奥が締め付けられるように痛み出す。

そうした紙媒体の欠点を電子書籍が容易く解決してくれる。
読書用端末を入手したこともあり、目は格段に楽になった。
採光の良くない場所でも快適な読書ができ、持ち歩きに適し、
もちろん本棚を壊され空間を占領されることもない。
(上野注:前段で、本があふれて本棚が崩れたことが紹介されています)

ところが、どうやっても資料本には使いないのだ。
しおりや検索の付箋や様々な機能が付いているというのに、
蛍光ペンや大小色とりどりの紙付箋、書にしがみつくのは
紙読書にしがみつくのは、物霊に呪縛された旧人類の限界か?
ツールは進化しても、情報を整理し理解し思考する人の頭は、
時代やツールに適応して数十年単位では進化してくれない。

導入部から起承転結を追って読み終わる、
小説のような「線の読書」はともかくとして、
構造を理解し情報を吟味する「面ないしは立体の読書」となると、
電子書籍は甚だ使い勝手が悪い。

論旨のまとまりを捉えるのに、たとえば提示された事例が、
本の厚みのどのあたりのページ、どのあたりの面に位置しているか、
といった空間的な記憶が、理解することに関係しているようなのだ。
理解や思考のための脳内の3次元地図と紙媒体の特定の活字の位置が緩く、しかしかなり確信的に結びついている気がするのだが。
(上野:それはよく分かります。毎日読む新聞だって、
1枚ずつバラバラにしてしまうと、読む頭が壊れます)

内容の空間的把握はそのまま、
救いがたく乱雑で本棚を壊して書籍が溢れている書庫にも持ち込まれ、
四半世紀も昔に読んだ本を動物的な勘で探し出すことを可能にしている。
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この後、電子媒体の良さにもう一度触れ、
でもそれが、何らかの事故で一挙に失われたら大変なことになる、
ということを述べています。
これは付け足しで、言いたいことはそれまで述べたことです。

要するに、紙媒体と電子媒体は一長一短で、紙媒体の有効性は残る、
という主張です。

篠田さんの言われる紙媒体の有効性は、
思考や発想の仕組みが紙媒体に結びついてできあがったからなのです。
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若干脱線です。
昔、私は画面で文字入力が可能になった頃、
「発想、構想するときには、紙でランダムにメモ書きしないとダメだ」
と富士通に勤めていた弟に言うと、
「自分は画面でできる」と言われました。
「そんなことあるか」と思いましたが、
今は画面で構想ができるようになりました。

上野が画面で新構想の検討をした例

【当初テーマ:マイクロサービスシステムの利用促進】

【構想検討】
以下のように考えを進めました(画面のメモ)。

保守業務の低生産性原因
テスト工程の肥大化である。証明する。
その原因は影響範囲が広いからである。

脱低生産性の道が見えてきた
ネックはあるが、それを突破する気があるかどうかである。

 ネック

ニコンシステム

米国Staple

「外部委託」責任不明

✖ 不問

✖(内製している)

「ブラックボックス化」

✖ 見える化

「現場任せの風潮」

✖ 介入

「現場の抵抗」

✖ 突破

✖ 米国ではありえない


野村證券の再構築の効果は?NRI事業本部人員が半減したのではないか?

そもそもは、日本の外部依存体制が原因。
これが根本問題。

受託企業には改善のメリットがない。どうするか?
発注企業に焚きつけるしかない。
しかし、火中の栗を拾おうとするか?

改善の手順
 診断 簡易診断は?経済産業省のDX審査は?

システム部門または情報子会社で
業務量調査の実施または分析実施
 保守業務のウェート把握  問い合わせ対応をどうするか?除く方向
 部門・チーム間比較
 まずはテスト工程比率 
 できれば影響調査工数も 複雑な影響のせいで仕様も複雑

生産性の測定 
 これは省略 実施すれば改善効果の予想ができる。
 実施しなくても「半減」で効果想定可能。

対策は保守業務の改善ではなく再構築
現状の低生産性は不問とした方がよい。
再構築手順を提示する。これが2025年の崖対策である。

ここまでの検討で、提案書作成に着手しました。

【作成した提案書】
以下に検討結果作成した提案書の項目を示します。
テーマ:
 「2025年の崖」対策としてのマイクロサービスシステムの勧め
1. MSSが新システムアーキテクチャーの本命
(1)米国の先進事例
(2)MSSが生産性改善の有効な手段になる根拠
2. MSSの有効性
(1) MSSとは
(2) MSSの有効性
(3) 影響調査・テスト工数削減効果

3.MSS有効活用の課題
4.MSSへの移行手順
5.MSSでも必要な保守業務運営手法
 これをお客様にアピールしたいのです。
(1)システム構造の見える化手法(随時変化していく見える化)
(2)見積り手法(変更機能規模の把握手法)
(3)要件定義手法(影響範囲の見極めを含む)
(4)変更仕様作成手法(ノーコード方式でもこれは必要)
(5)テスト手法(MSS適用効果の源泉であり熟慮が必要)
(6)保守業務の生産性把握手法(これのないビジネス業務はありえない)
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本題に戻ります。

したがって、初めから電子書籍で育った人は、
電子書籍で、篠田さんの言われる「面ないしは立体の読書」
もできるようになるのでしょう。

しかし私は、別の面で紙媒体・印刷物の利用を
前提としていることがあります。
それは、研修の副教材で「MIND-SA基本手法ハンドブック」や
「目的達成手法コンパクトガイド」というものです。
前者はA4版46頁、後者は同じくA4版で20頁の冊子です。
手法の詳細がギッシリ印刷されています。

これを参照しながら、研修し、事後実務でもこれを参照するのです。
先日リモート方式で研修した際に、この冊子の良さが判明しました。
この副教材は電子化もされているのですが、
画面では主テキストか演習の成果物を表示しています。
そのときに副教材のガイドの画面と行ったり来たりしないでも、
手許で副教材を開いていればよいのです。
画面と紙媒体の同時併用なのです。
今のところ、自由に書き込みのできる点も紙媒体有利です。

しかし考えてみれば、
これらもだんだんにペーパレスの方向に行くのかもしれません。

本項の結論は、「何が何でもペーパレスではない」
「その時々で自分がいいと思う方法を選択すればよい」
ということです。

印刷物としては、最後まで残るのは何なのでしょうか?

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