【このテーマの目的・ねらい】
目的:
児童虐待の事実を知っていただく。
児童虐待への対応状況について知っていただく。
児童虐待の発生原因とその対策上野案について
知っていただく。
ねらい:
児童虐待に対して大きな関心を持って行動していただく。
児童虐待が少しでも減ることを期待する。
-----------------------
4月26日の当ブログ
「小さな子供が犠牲になっている
何とかならないものでしょうか!!」で
幼児虐待問題を取り上げましたが、
不勉強で「児童虐待防止法」のことを知りませんでした。
現在は、孫が幼児なので、
児童虐待に極めて関心が高いのですが、
以前は無関心だったという反省です。
友人のYTさんから
その法律の存在や解説書を教えていただきましたので
早速調べてみました。
「いっしょに考える 子ども虐待」
(小林登監修、2008年)
「児童虐待 現場からの提言」
(川崎二三彦著、2006年)
以下がそのご報告です。
1.児童の虐待を防止する「児童虐待防止法」は
以下のように制定・改訂されています。
2000年11月施行
2004年改正
児童虐待を受けた【と思われる】児童を発見した者は、
速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所
若しくは児童相談所又は児童委員を介して
市町村、都道府県の設置する福祉事務所
若しくは児童相談所に通告しなければならない。
注:【 】の中が追加され、疑わしい場合でも
通告の義務が課せられました。
その他のこの法律の特色を
Wikipediaの記述がよくできていますのでご紹介します。
・児童虐待の定義
同法第2条において、18歳に満たないものを児童とし、
保護者が行う以下の行為を「児童虐待」と定義している。
注:数字は2011年実績の検挙人数
1.身体への暴行 282人
2.児童へのわいせつ行為と、わいせつ行為をさせること
97人
3.心身の正常な発達を妨げる減食・長時間の放置
18人
4.保護者以外の同居人による前記の行為と、
その行為を保護者が放置すること
上記18人に含む
5.著しい暴言・拒絶的対応・著しい心理的外傷を与える
言動を行うこと 1人
・児童虐待の早期発見努力
同法第5条において、学校・病院等の教職員・医師・保健師・弁護士等は、
児童虐待に関して早期発見に努めなければならないとしている。
・児童虐待の通告義務
同法第6条において、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、
速やかに福祉事務所・児童相談所に通告しなければならないとされている
(警察ではなく、「通報」でもない)。
この際には、
刑法134条の守秘義務違反には該当しないと明記している。
・児童虐待に対する強制調査
同法第9条において、都道府県知事は、出頭を求め、また必要に応じて
自宅へ立ち入り調査を行うことが出来ると定める。
保護者がこれらを拒否する場合、
裁判所の許可状(令状)を得て、臨検・捜索(強制捜査)を
行うことが出来るとされている。
注:2010年からは、臨検を積極的に活用すべしとの通達が発された。
・児童虐待に対する警察の介入
同法第10条において、都道府県知事・児童相談所長は、
必要に応じ警察署長へ援助を求めることが出来るとされている
(警察官を同行させ、保護者が抵抗した場合に取り押さえが出来る)。
・虐待児童への保護者の接触制限
同法第12条において、児童虐待を受けた保護された児童に対し、
児童相談所長は必要に応じて、保護者の面会・通信を制限する
ことが出来るとされている。
また、必要に応じて、保護者に
対し通学路等の児童の近辺を徘徊することやつきまとうことを
止めるよう命令することが出来るとされている。
2.児童虐待を防止する組織
(1)児童相談所の職務
児童福祉法第11条の規定による。
イ 各市町村の区域を超えた広域的な見地から、
実情の把握に努めること。
ロ 児童に関する家庭その他からの相談のうち、
専門的な知識及び技術を必要とするものに応ずること。
ハ 児童及びその家庭につき、
必要な調査並びに医学的、心理学的、教育学的、
社会学的及び精神保健上の判定を行うこと。
ニ 児童及びその保護者につき、
ハの調査又は判定に基づいて必要な指導を行うこと。
ホ 児童の一時保護を行うこと。
(2)福祉事務所の職務
社会福祉法第14条の規定による。
福祉事務所は、生活保護法、児童福祉法、
母子及び寡婦福祉法、老人福祉法、
[身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法]に定める
援護、育成又は更生の措置に関する事務をつかさどる
ところとされており(同法第14条第5項、第6項)、
その具体的な内容については、
各法に詳細に定められている。
児童相談所の活動は、
まずは相談件数の増大に体制が追い付いていない、
という状況にあります。
さらに、相談・通告を受けて現場で対応した時に
それが児童虐待であるかどうかの判断が難しい、
保護者からの抵抗にあう、
などの大変なご苦労があるようです。
3.児童虐待に関する事実データ
(1)幼児虐待による死亡事件
2004年 53事例、 58人死亡
2006年 100事例、126人死亡 2.2倍
2008年 64事例 67人死亡
(64事例の内、0歳児が59%、1歳児が14%、
0―5歳児が89%。
加害者は実母59%。実父16%)
注:この間では、なぜか2006年が突出している。
子供を不憫に思って
「慢性の疾患や障害の苦しみから子どもを救おう」
という理由はありそうですが、
2006年には「1件もない」のだそうです。
(2)児童虐待で児童相談所が取り扱った件数
1990年 1,101件
1999年 11,631件
2008年 42,664件 3.6倍
4.児童虐待に関連するデータ
(1)核家族の割合
2005年の国勢調査では
6歳未満の子供を育てる家庭に占める核家族の割合は
全国で81.2%、東京で92.1%
(2)生活保護世帯数
1985年 78.1万世帯 保護率21.0%
1990年 62.4万世帯 15.5%
2000年 75.1万世帯 16.5%
2010年 141万世帯 26.5%
注:保護率は、所得が生活保護基準以下の家族の内で
実際に生活保護を受けている比率
2010年までの10年間で倍増しているのは、
貧困層が増えたというだけでなく、
生活保護への受け入れ基準の緩和(保護率増加)も
あるようです。
5.児童虐待の発生する根本原因(上野意見)
法律の改正・強化、児童相談所の奮闘にも拘わらず
児童虐待は増え続けています。
その根本原因は以下の二つだと思われます。
(1)核家族化
核家族では、夫婦が一体で事に当たらない限り、
児童を養育する母親は孤立し、
不安や悩みを相談する相手もいなく
時に暴走しても制止する者もいない
という状態になります。
大家族世帯においては
児童虐待は起こりえないことを思えば、
核家族が、
児童虐待発生の一番の原因だと言えるでしょう。
(2)貧困
2000年以降の日本経済の低迷期から
生活保護世帯が急増しています。
その趨勢と児童虐待の件数増加は
軌を一にしています。
経済的に厳しければ、
児童への養護も行きとどかなくなります。
足手間といであると思うことも
自然の成り行きかもしれません。
6.児童虐待防止対策
(1)生活困窮者に対する救済
これに関しては、
社会保障制度の充実(ベーシックインカム制度など)が
実現すれば、かなり改善されるでしょう。
日本はまだまだ社会保障低開発国です。
(2)核家族化に対する対策
大人2世代、親子3世代で一緒に住む住宅に対する補助
を出すべきだと思います。
これについては、
別項「2世代・3世代同居を考える」をご参照ください。
この対策は、
児童虐待防止に有効なだけでなく、
日本社会全体の活性化に
大きな効果があると思われます。
いずれにしても、絶対数はそれほどでないとはいえ、
子どもを大事にしなければならない少子化時代、
もっともっと子供を大事にしなければなりません。
0 件のコメント:
コメントを投稿