2010年4月16日金曜日

トヨタ頑張れ!(続き)

 先月号の「トヨタの反省すべき点」をご覧になった
 名古屋在住の読者から、3月1日の当メルマガ発行当日に、
 以下のご意見をいただきました。
 
 ①トヨタのJITは納入者に負担を押し付ける
 とんでもない仕組みである。

 高速道路のトヨタインターの駐車場は、
 トヨタへの納入時間を待つトラックでいっぱいである。
 トヨタのJITは、
 あのソニーでさえ、真似しようとしたが
 (そこまでの「力」がなく)できなかった仕組みである。

 ②トヨタ主催で、お客様(ディーラ)をお招きして
 ゴルフコンペを実施したときのこと。

 若い社員たちがゴルフ場の入り口で整列している。
 お客様が来られても、この人たちは頭を下げない。
 ところが、自社の「偉い」人たちが来ると一斉に頭を下げていた。

 ②は事実とすれば、
 前号私の主張「トヨタが偉いという傲慢意識の表れ」
 の一つの証拠です。

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 ここでの改善方向は、
 私の年来の主張「目的・ねらいを明らかにする」
 の観点からするとこうなります。
 
 「何のためにそこに並ぶのか(並ぶは何かの手段です)」
 ですが、「参加者を出迎える」が直接目的です。
 
 しかし、これで終わりにすると、
 挙げられたようなまずいことが起きるのです。

 「出迎えるのは何のためか(そのねらいは何か)」
 ということをさらに追求しなければなりません。

 そうすると、「参加者に気持ちよく、嬉しく思っていただき」
 「ゴルフの会の目的(参加者との親睦を深める)を達成する」ことが
 最終目的(ねらい)だということになるでしょう。

 そうなれば、だれに対してどのような出迎え方をするか、
 ということが方向づけされ、
 お客様を放っておいて「偉い」さんにぺこぺこする、
 などということにはならないはずです。

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 ①は、自社の在庫をなくすために、
 相手に自分の都合のよいときに納品を要求するものです。

 確かに、「どれだけの物を買います」という予定が分かることは
 納品者にとってのメリットです。
 
 しかし、納品時間まで指定されると、
 それに遅れないようにするには渋滞・事故等のリスクを考えて
 余裕を見る必要があります。
 
 これは納品側の負担となります。
 悪く言えば、納品側への在庫負担しわ寄せの仕組みなのです。
 
 しかし、この「しわ寄せ」は、
 小売りと流通卸業の間では当たり前のことになっていて、
 業界全体の商慣行として確立してしまっています。

 流通業界での「しわ寄せ」といえば、
 「小口配送」があります。

 「小口配送」は、小売りへの配送をケース単位
 (複数個の商品を運搬等のためにまとめて収納している箱)
 ではなく、
 ケースの中に入っている単品の「バラ」の単位で行うことです。

 多品種少量生産・消費の今でこそ当然の仕組みですが、
 この要求を始めたのは約30年前のイトーヨーカドーです。

 当時の卸売業では、
 「小口」の取り扱いに対応する倉庫の仕組みも
 配送の仕組みもありません。
 従来のケースを取り扱う仕組みの例外処理として、
 たとえば倉庫の片隅のスペースで対応していました。
 
 卸売業には大変な負担がかかり、
 このコストは、
 イトーヨーカドーから十分な上乗せはもらえませんでしたから、
 間接的にイトーヨーカドー以外のお客様の負担となっていました。
 
 現に、その負担はできないと言って
 イトーヨーカドーとの取引を断った大手卸売業もいました。
 
 そのときに、食品卸売業界に偉人が登場します。
 ㈱菱食の廣田正氏(当時専務、のち社長)です。

 私が感服した、廣田氏の名言は多数あるのですが、
 ここに関係するものは以下の二つです。

 「私は、大事な案件に遭遇すると、
 何週間も四六時中そのことを考えている。
 寝ても覚めても考えている。
 そうするとあるときフッと答が出てくる」

 「投資をしなければ新技術はものにできない。
 高いお金を払うから、
 無駄にしてはいけないとみんな一所懸命やるのだ」
 
 話を戻します。

 廣田氏は、
 「世の中は多品種少量生産・消費の時代になる。
 その時代の要請に対応するには、
 例外扱いではなく、基本の処理として対応できるシステムが必要である」
 と考えられて、

 厳しい経営環境の中で大変な投資をされ、
 独自の小口配送のシステムを作り上げられました。
 

 そのシステムは、流通業界全体として発展してきています。

 その意味では、イトーヨーカドーは、
 当時の流通業界では自己中心思考の「悪者」扱いされましたが、
 結果的には社会の発展に貢献したことになります。
 
 ちなみに、イトーヨーカドーとの取引を断った大手卸売業は、
 その後、時代の要請に対応できずに没落してしまいました。

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 そう見ると問題は、トヨタ側に「共存共栄でいきましょう」
 という意識があって運営されているかどうかでしょう。
 
 たとえば、一方的な仕様や納期の変更といったことはしないで、
 相手のことも配慮した対応を行う、とかです。
 その意識があれば、納入者は不満を言わないでしょうし、
 そのシステムが業界の進歩につながるのです。

 現状はどうなのでしょうか。
 豊田章男社長のお考えは、僭越な言い方ですが正当です。
 この精神が現場まで浸透するかどうかです。
 
 「慢心」に毒された現場はなかなか変わりません。
 社長のリーダシップ、組織のガバナンスがどこまで効くか、
 経営学者やコンサルタントの大きな関心事でしょう。

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