2013年4月25日木曜日

国民背番号制度には誰が反対するのか?

【このテーマの目的・ねらい】
目的
 国民背番号制度の歴史を振り返る。
 誰が何のために反対してきたかを確認する。
 今回のマイナンバー制度の特徴と問題点を理解する。

ねらい
 一般的に「反対派」の利害関係を考えるようにしていただく。

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マイナンバーという名称は今回付けられたものですが、
客観的な名称は国民総背番号制度です。

国民総背番号制度は、
何度も名称を変えながらその都度お蔵入りになっています。
国民総背番号制度という名称はイメージがよくないので、
今はあまり使われません。

「批判分子」朝日新聞の4月4日号には
マイナンバー制度を紹介する記事に
こういう見出しを使っていました。

 共通番号消えぬ不安
 利便性向上の反面、不正利用も

とネガティブで「不安を煽る」姿勢です。

蛇足ですが、
第2次大戦中の朝日新聞は
戦争強力で戦争参加を煽っていたそうです。

[グリーンカードに対する反対]

初めはグリーンカードと言いました。
1980年代初頭のこの時は、税務当局主導でした。
きっかけは、こうです。

国民1人400万円までの預貯金の利子に対しては
無税という「丸優」制度がありました。

ところが、
偽名を使ったり、1人で複数口座を設けてもチェックできず
高所得者優遇だという批判がありました。
この批判にに応えるためと増税目的で立案された制度です。

この制度が公表されると、
大量の預貯金が海外に流れました。
そのため、
郵政省(貯金)、金融業界が猛反対をしましたので、
政府はこの法案の成立を諦めました。

実際に、大量の資金が流出したということは、
現実に不正利用が大規模にあり、
「正常化」を恐れた層の反対で
制度がつぶれたというまったく不当なことだったのです。

【住基ネットに対する反対】

こちらの反対はもう少し複雑です。

次に2000年台に登場した背番号制度は、
住民基本台帳ネットワーク(略称:住基ネット)です。

国民全体の番号制度を諦めて、
地方起点の行政事務の効率化・住民サービスの向上
をねらいにした番号制度です。

その名のとおり、市区町村の住民基本台帳に記録されている者に
11けたの住民票コードが振られ、
この番号が記載された「住民基本台帳カード」が発行されます。

この番号は住民票コードと呼ばれますが、
この番号に付随して以下の情報が登録されます。
 氏名、生年月日、性別、住所、
 とその変更履歴(変更年月日、変更理由)

これを使って、以下のサービス等が可能となっています。
 
 全国どこでも住民票の取得
 パスポート申請・年金の請求・各種検定試験の申し込みに
  住民票添付の不要化
 年1回の年金の「年金受給者現況届」の不要化
 国民年金・厚生年金の照合作業への利用

これらの個人情報の利用を正当化する法律である
「住民基本台帳法」は2003年6月に成立しています。

しかし、この有効と考えられる制度に対しても、
個人のプライバシーの侵害であるとか、
不当な経費支出であるとかの訴えが
数多く出されました。

この住民基本台帳システムの運営主体は、
市区町村であるため、このシステムに参加しないと表明する
市区町村も出ました。
その不参加を不当とする訴えも出ました。

泥仕合の様相を呈したこの争いは、
2008年3月6日の最高裁判決で決着しました。
非常に常識的・合理的判決であると思われます。
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個人の情報は
公権力に対してもみだりに第3者に開示または公表
されない自由を有する(憲法13条の規定)。

しかし、住基ネットで使用される情報(前掲)は、
秘匿性の高い情報とはいえない。

その利用は法令等の根拠に基づき
住民サービスの向上及び行政事務の効率化という
正当な行政目的のために限定されている
(民間での利用は許されていない)。

さらに、容易に第3者がこのシステムに侵入して
情報を取得できるようにはなっていない。
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つまり、
利用目的と個人の情報公開のリスクを考えた時に
住基ネットは正当化できる、というものです。

どう見てもそうとしか考えられないのに、
誰が反対したのでしょう。

一つは、(地方の)政治家です。
国民側にこのシステムに対する不安があることを見て、
このシステムに反対ということで
住民からの支持(投票)を得ようということです。

弁護士達の場合は、
名を売ろうということでしょう。
これも動機が分かります。

ですが、それ以外に市民の集団が訴訟を起こしています。
その人たちは、
何を目的にこの訴訟とかを起こしているのでしょう。

正義感だけで行動する人が
そんなに多数いるとは思えません。
反対だと思ったとしても、
特別の利害関係がなければ
訴訟とかの行動には至らないはずです。
謎です。


【マイナンバー制度】

そういう経緯を経てきた
国民総背番号制度です。

今回のマイナンバー制度はどうなっているのでしょう。

3月1日に安倍内閣は
「社会保障・税番号制度に関する法案(マイナンバー法案)を
国会に提出しました。
4月中にも成立の見通しで、
政府は16年1月からの利用開始を目指しています。

今回の制度は、
住基ネットをベースにしていますが、
以下の点が異なります。
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日本全国一元化された番号制度
(住基ネットは地方単位の運営)
利用目的は、社会保障、税務、災害対策
(住基ネットは狭い範囲の行政事務に限定、税務は対象外)
ネットワークを通じて行政機関が連携する
(他の行政機関との連携は制限されていた)
将来的に他の目的への展開、民間での利用も視野に入れている
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住基ネットに比較するとかなりの拡大・前進です。
住基ネットでの最高裁判決も踏まえ、
政府側も自信を持って取り組んでいるのでしょう。

今度は反対派もいないことでしょう。
「情報保護は完全か」などと「知識人」やそのお先棒かつぎが
騒ぐ程度だと思われます。

最近のサイバーテロの動きなどをみても、
機密保護の完全ということはありえません。
そのリスクは覚悟をして臨まなければならないでしょう。

機密保護に完全を期すると、
そのためのコストは幾何級数的に上がっていきます。
コストと情報漏えいのリスクのバランスで
現実解を判断しなければなりません。

今回の仕組みでも
2000億円~3000億円の経費が必要と言われています。
情報サービス業界には特需ですが
青天井の対策費投入は正当化されるののではありません。

リスクを煽る人はその背景に情報サービス業界がいるのか、
と疑われます。

現実解で運営すれば、必ずある程度の問題は起きるのです。
問題が起きた時に
一方的に騒ぎ立てるマスコミ報道は止めてもらいたい
と思います。

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