銀杏は年によって豊作不作があるという人がいます。
私はその説には賛成していません。
その木ごとに年により豊作不作があるのだと観察しています。
しかし、今年は猛暑のせいか全般的に不作でした。
今まで収穫対象であった木の何本かが
ほとんど実をつけないという状況でした。
台風が来なく、したがって大風や大雨がなく、
実が一気に落ちなかったことも
不作の印象を強くしていました。
成熟した銀杏は風や雨(特に風)に弱いのです。
私は、毎年5千個以上は収穫しているのに
今年は多くて3千個どまりかな、と思っていました。
そうしましたら、10月26日夜半に少し強い風が吹きました。
これは今年最後のチャンスだと思い、
27日に早起きして、6時ころ、まず近所の小学校に行きました。
小学校の校庭に植えてあるイチョウの枝が道路に出ていて
実が道路に落ちるのです。
残念ながら、実のたくさん落ちている校庭には入れません。
(写真1 第1猟場の校庭)
その第1猟場に到着すると、びっくりしました。
なんと本当に同着で一人の男性がいるのです。
大きな実が沢山落ちていましたから
二人とも必死で採りました。
ものの2.3分でその現場の銀杏はなくなりました。
5分遅れたら全くありつけなかったことになります。
タイミングというのはありますね。
その日、私の基本猟場である蘇峰公園に行きました。
(写真2 基本猟場 蘇峰公園の門)
9時の開門と同時に入るのですが、
なんと、ここではいつもの採集仲間が一人も来ていないのです。
公園の中に入ると、
晩熟(おくて)の木の下にびっしりと落ちているのです。
(写真3 蘇峰公園、3本のイチョウの下にギンナンが落ちている)
(写真4 蘇峰公園、正面の樹から実は小さいがたくさん落ちる)
(写真5 蘇峰公園、写真4のあづま家の横の流れに集まっているギンナン)
競争相手の常連さんたちはなぜ来ないのかと思いました。
彼らは近所の奥さんたちだったり定年後の男性ですから
私と違って毎日通っているのです。
この前日ころはほとんど落ちていなかったようですから
(管理人さんからの情報)、
もう今年は終わりだと思ったのでしょう。
あるいは、
もう十分採ったから終わりということにしたのかもしれません。
それはともかく、競争相手がいないのですから
短時間に良い実を2500個くらい採りました。
まだ1000個くらいは残っていましたが、
入れる袋がなくなったのと、
仕事にも行かなければなりませんので、諦めました。
当日の収穫で、5000個を超えましたので
もう終りにしようと思っていました。
そうしたら10月30日に台風が来たのです。
銀杏マニアとしては、
「これはどうなっているか見届けなければならない」と思いました。
31日に早起きして、先日のことがありましたから
明るくなるのを待って5時半ころに第1猟場に行きました。
そうしましたら、1個も落ちていないのです。
1個もないということは先に誰かが来て採っているのです。
夜明けの1番乗りだと思っていたのにがっかりでした。
もう銀杏が欲しいのではありません。
考えたことの成果がなかったことが悔しいのです。
この場合の私の目的は、
銀杏を得ること自体ではなく、
仮説が成立して収穫ができること、だったのです。
状況は推定できました。
東京の都区部は街灯がついています。
夜でも道路を明るく照らしていますから、
銀杏が落ちているのは分かるのです。
前日夕刻には嵐が収まりましたから、
その直後に採りに行った人がいたのでしょう。
第2・第3の猟場も同じでした。
一つ経験知識が増えました。
(写真6 第2猟場の見事なギンナン)
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第3猟場は神社の境内です。
(写真7 第3猟場の入り口)
(写真8 第3猟場のイチョウの樹々)
樹の下の地面には全く落ちていませんでしたが、
その横の塀の外に30センチくらいの幅の石垣の上縁部があります。
そこに30個くらい落ちていました。
この現場に採りに来た人も手が届かないので
そのままになっていたものでしょう。
そこで私は、1メートルほどの棒を探して
その銀杏を3メートルほど下の道路に落としました。
細い棒の先で小さな銀杏を突っつくのは結構一仕事でした。
漸く落とし終えて
神社の境内から回り込んでその道路に行ってみると、
6時前でほとんど人がいないときなのに
なんと、私が落とした銀杏を拾っているオバハンがいるのです。
犬の散歩をしていました。
こんな絶妙のタイミングで、びっくりしました。
そこへの到着時間はせいぜい30秒の差でしょうね。
「すみません。その銀杏は私が上から落としたものです!」
と叫びました。
そうしたら、そのご婦人は
「そうですか」と言って銀杏を入れた袋を私に差し出すのです。
その時私も冷静になりました。
「まあいいや、自分は銀杏自体を欲しいのではない。
びっくりしただけだ」と思い、
「いいですよ。差しあげます」と言いました。
婦人は「そうですか」と言って、
感謝のぞぶりも見せずにあっさり行ってしまいました。
道路に落ちている銀杏は拾った人の物ですものね。
それにしても、こんなどんぴしゃりのタイミング、
というのはあるものなのですね。
今回は同じ状況を2度も経験しました。
たまたま運命の2人の時間軸が交差して会う、
ということがあるのでしょう。
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この日・10月31日も9時に蘇峰公園に行きました。
27日にほとんど落ちてしまったのでしょう。
台風の大風があったのに、それほど多く落ちていません。
この日も競争相手がいませんでしたので
(これは例年にないことです。毎年顔を合わせていた
近所のおばあさんも姿を見せません。心配です)、
若干小ぶりでしたが、一人で2000個くらい採りました。
これで本当に今年は終わりです。
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今年の成果はもう一つあります。
それは、銀杏の収穫方法です。
今年の中盤から蘇峰公園で一緒になるご婦人がいました。
その人は、右手に昔の火鉢に使うようなバネで開閉するハサミを持ち、
左手に直径20センチくらいのお皿状の器を持っていて
それに一つずつ入れていくのです。
「かぶれるのが嫌で手袋を使わないのだろうな、
これでは遅くて競争に勝てないだろう」
と思って見ていました。
するとなんとその動きが早いのです。
1個収穫するスピードが、どうも我々より早そうです。
分析好きの私としてはなぜだろう、と考えました。
そうすると分かりました。
ハサミではさむ技術は訓練で早くなっているのでしょう。
挟んで器に持っていくまでは手の動きの早さが勝負で
それは若さの関数でしょう。
ところがそこから先がお皿方式が早いのです。
我々は食品等のポリ袋を使っています。
左手にその袋をぶら下げていますが
採った銀杏をその袋に入れるには
袋の口の隙間に押し入れなければなりません。
これが意外に手間取っています。
右手は単純な地面と袋との往復運動をしているようですが、
袋に入れる段階に若干の停滞時間があるのです。
単位時間当たりの収穫量を増やすという目的のためには
袋などの器に入れる段階を改善すべきだということなのです。
そのご婦人はそのことが分かってされていたかどうか
定かでありませんが、大したものです。
私は、その次から我が家の台所にあった
直径30センチほどの竹で編んだザルを使いだしました。
たしかに早いし、袋に入れるときのストレスがなく
大変スムーズに採集活動をすることができるようになりました。
別の男性に「新兵器を持ってきましたね」と言われました。
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今年の総決算は8000個くらいで
個人的には豊作ということになりました。
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沢山採れるのは嬉しいことですが、
その後の加工も結構大変です。
そのプロセスをご紹介しましょう。
(写真9 ギンナンの加工場)
1.採ってきた銀杏を水を入れた大きなポリバケツに漬けておきます。
(写真9の1番手前)
2.大きなごみ袋に入れて片足で踏み、紅いコロモを大よそ分離します。
(写真9の大きなポリバケツの右上)
3.小さなバケツに少しずつ移して、水を入れて流します。
コロモは軽いので先に流れ出ます。
(写真9の下から3番目)
4.残った銀杏の実を選別します。
割れているとか、芽が出かけているとか、ごく小さいとかは捨てます。
(写真9の青いバケツから隣の大きなザルで受けて、
カスはピンクの金だらいへ、実は小さなザルへ)
5.その後、あらためて洗剤を使ってコロモの残りかすを洗い流します。
ここまで、1000個処理するのに1時間程度かかります。
6.これをざるやトレイに入れて乾燥させます。
乾燥しきるまでは独特に匂いがして家の中には置けません。
今年はからっと晴れた日がほとんどなく乾燥には何日もかかりました。
好天で1日で乾いたものの方が美味しいようです。
趣味の話になると長くなりますね。
何ごともなく、これで終わりです。
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