目的:
万引きについてあらためて考えていただく。
万引きの歴史について考えていただく。
万引きが欧米の過去において極刑だったことを知っていただく。
万引きが無くなりそうにないことを考えていただく。
ねらい:
何かを考えていただく(不明です)。
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レイチェル・シュタイアという米国の大学の先生が書かれた
「万引きの文化史」という本を読んでみました。
万引きの語源は、
万から一つを抜くという説と間引くからなまったという説とがあるらしいですが、詳細は不明のようです。
万引きを研究しているのは、
被害者である小売業者くらいのものだと思っていましたら、
研究している人がいるのですね。
話が多岐に亘っていますので、
システム企画研修社が提唱している
企画書の項目5W2Hを少し変形してご紹介してみます。
1.Why なぜ万引きをするのか
万引きの動機・目的は単純ではないようです。
単なる遊び(若年層)
仲間からの圧力(若年層)
経済的理由
不満や鬱屈した気分のはけ口
スリルを求める冒険的行為
病気
「大金持ちの女は不安感や憂鬱な気分に襲われそうになると、
とにかく買い物しまくり、ときには一つか二つ万引きをする。
それほど金のない女は窃盗症になり、
自分に足りないと思うものを盗むことで、
不安感や欠乏症を解消しようとする。
そして貧しい女は、
単に家族に必要な物―食品や衣類などの必需品ー
を万引きする。
貧困の猛威をいくらかでも和らげようと、
ときに余分な物も万引きする」(1990年ルイーズ・カプラン)
2.Where どこで万引きは行われるのか。
(以下は主としてあとがきでの情報)
小売業
日本の場合、
破損等を含むロス率は売上高の1.04%
(他国と比較すると率はそれほど高くないが、
損失総額は世界2位)
その内、万引きは構成比1位で
被害額は4500億円以上。
小売業の利益は数%なので万引き防止は大課題。
書店
日本の場合、
ロス率は1.91%、損失額は262億円
その内、74%(194億円)が万引き被害
3.WhatとHow 万引き防止するための課題と対策
この項は、本来は万引きを成功させるための課題と対策
でなければならないのですが、
反社会的な表現となりますので、裏返しの防止対策としました。
万引きを摘発する監視員であるLPエージェント向けの
ガイドがこうなっている。
(1992年にどこかで発表されたもののようです)
1)容疑者が商品に近づくのを確認する
当りをつけているか挙動不審者をマークしていて。
2)容疑者が商品を取ったことを確認する。
3)容疑者が商品をどこに隠したか確認する。
4)容疑者から目を離さずに監視を続け、
商品をどこかに戻していないか確認する。
5)容疑者がその商品の代金を支払わなかったことを確認する。
6)質問をするために声をかけるのは容疑者が店を出てからにする。
5)までで、万引きであることは確定ですが、
ヴァージニア州では3)段階で相手に接触してよい、
ということになっている、
シアーズやメーシーズでは5段階まで確認する、
ウォルマートでは4)までで追求するようになっている、
のだそうです。
安売りスーパーではそんなに手間をかけていられませんものね。
万引き防止対策は以下のとおりです。
極刑による抑止
犯人に対する損害賠償請求による抑止または損害補てん
警備員の配置
陳列方法変更(高級品のガラスショーケース収納など)
防犯タグ(精算していないと出口で警報音が鳴るタグ)
(これが絶対的対策と思われたが、そのタグを切ったり、
ラジオ波とセンサータグを遮断する素材を裏打ちした
ブースターバッグの使用などで破られる)
ビデオ監視カメラ
高性能なCCTVカメラ
インクタグ(タグをはがそうとするとインクが飛び出す)
サブリミナルメッセージ(潜在意識に思いとどまることを訴える)
アグレッシブホスピタリティ(積極的にお客様に声かけする)
これらの対策にはかなりの費用がかかりますが、
万引き被害よりも小さいということでしょう。
そういえば、保険はないのです。
損害が証明できにくいでしょうからね。
4.When 万引きの歴史
窃盗の元祖はイブ
窃盗は人類の生誕から付いて回っています。
動物は種族の維持(生存)のためにしか物を盗まないそうです。
初めは人類もそうだったのでしょう。
その後、複雑な目的で窃盗が行われるようになりました。
16世紀後半、ロンドンでは多くの商店が誕生した。
その時、流浪の窃盗団も誕生した。
その後、一般の大衆も万引きに参加するようになり、
後掲の6.で述べるような極刑が課されても
なくなることはなかった。
19世紀パリをはじめ百貨店が次々と登場し
女性の疾患としての窃盗症が増加した。
スカートを大きくふくらませたペチコートや
普通のドレスの上に付けるキックと呼ばれる
短いオーバースカートに細工を施し
大きなポケット代わりとした。
その後は、大規模店舗の増大とともに
万引きも増大した。
5.Who 誰が万引きをするのか
冒頭の「1対8対1」ですが、
あるLPエージェントの説として紹介されていました。
1割 絶対に万引きをしない人
8割 チャンスがあれば万引きする人
1割 必ず万引きする人
つまり、誰でも万引きをする誘惑にかられるということです。
全米万引き防止協会の発表によると、
万引き犯罪の検挙者数は2700万人にのぼり、
総人口の9%を占める。
2001年の4万人の米国人を対象にした調査では、
万引き経験のある人は11%で、
10%の人々が生涯万引きをやめられないと答えた。
上掲の目的からして、いろいろな人が万引きに手を染めます。
女性
伝統的に万引き犯は女性の方が多いとされています。
美しく飾りたいという欲求からも、
子供に「パン」を与えたいという欲求からもそうなるでしょうね。
デパートやディスカウントショップで
化粧品、衣料品、宝飾品、香水を盗む。
2001年米国30歳の大人気女優ウィノナ・ライダーは
百貨店でデザイナーブランドの衣類5500ドルを万引きした。
男性
ホームセンター、工具店で。
電子機器、テレビ、電動工具を盗む。
かのルソーも窃盗を行ったことを
自著「告白」で述べている。
「こうして私は、何かを欲すると、
ごまかし、嘘をつき、しまいには盗むことを学んだのだが、
それも初めて盗むまでは考えてもみなかったことである。
しかしその後は、
一度身についた盗癖から脱することはできなかった」
それが高じて来ると、万引き依存症になる。
6.How much 万引きの費用
費用(負担、処罰)
今でもアラブ社会の一部では
窃盗犯は手首切断刑が行われる。
中世以降の英国では
親指にVの字の焼印が入れられた。
1699年に制定された英国法律で
窃盗犯は絞首刑に処せられることになり
多くの処刑が行われた。
1771年、夫を海軍に徴収されて貧窮した女性が
赤ん坊に着せるリネンを盗んで絞首刑に処された。
(とんでもなく可哀そうなことですね!!)
それでも窃盗は減らなかった。
1821年は絞首刑に処された万引き犯が16人いた。
この法律は1832年ようやく廃止された。
植民地時代の米国では奴隷による万引きは
盗品の価値にかかわらず厳しく罰せられた。
北部で18歳の混血奴隷が
女主人に衣服を与えてもらえなかったために
身にまとうささやかな衣料品とハンカチなどを盗んだとき、
女主人の被害額に見合う金額で売り払われた。
その罪で他の州では即座に絞首刑だった。
フランスでは、フランス革命の前には、
食品を盗んで死刑に処せられた者は
全犯罪者の5%だったが、
1790年代には15%になっていた。
現代以前には、
窃盗を防止することが社会秩序の維持にとって
それだけ重要だったということです。
効果(稼ぎ)
万引きで生計を立てるプロもいたようですが、
それは例外で、
多くは、1.項の「万引きの目的」が達成できる
ということでしょう。
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