2011年11月29日火曜日

医療過誤1:「なぜ医療過誤は起きるのか」の本質解明

私は、医学者だった父の
30数年前の「不慮」の死に臨んでの
2週間の重い介護以来、
医療の現場や医療過誤に関心を持ってきています。

今回、初めてそのテーマに正面から取り組んだ名著
に出会いました。
大感激です。

ハーバード大学医学部教授
ジェローム・グループマン著(2007年)
「医者は現場でどう考えるか」
(石風社から2011年10月刊)です。


この本は、
多くの医師たちへの教育啓蒙用と
一般人に「医」の現場の裏を理解していただこう
という意図で書かれたものと思われます。

ベテラン医師を含め、
ぜひ多くの医師に読んでいただきたい本です。

大著ですが、
翻訳(美沢恵子氏)の良さもあって
たいへん読みやすくなっています。

私は非常に勉強になりました。
以下に私の目で役に立つと思われる点を
まとめてみました。

以下、原則として「 」で囲っている部分が
原著のままの引用で
そうでない部分は私の解釈も含めた紹介です。
以下の項目に分けて解説させていただきました。

本文はそのタイトルの別項をご覧ください。

プライマリケア医は難しい
患者が初めに訪問する先の医師が
プライマリケア医です。

医師の起こす誤りの原因 
これについて、
興味深い多くの原因を解説してくれています。

誤診を避ける医師対応法
どうすれば医師の陥りやすい過ちを
補正することができるかを教えてくれています。

愛は命を救う
当書の中で最も感激的な報告です。

医療過誤原因のビジネスへの教訓
著者の説く医療過誤原因は、
ビジネスへの教訓としても非常に有効です。

参考情報
以上の他、
以下のような情報・見解は私の関心を引きました。
ご参考までにご紹介します。

近年のオンコロジ―(腫瘍学)は
目覚ましい進歩を遂げ、
専門医は
制吐剤を使って吐き気と嘔吐を抑えることができ、
今の患者は以前のような副作用に苦しまないで済む。

複雑な症例に対する治療法は
大学(大病院)によって異なる、
大先生が開発したものを踏襲している。

外科医は「手」より「脳」(視覚空間能力を含む)が
大事である。
(上野:なるほど、そのとおりでしょう!!)

医は、患者の申告(論理)と患者の観察を融合する
「技、アート」である。
(なるほど!!)

――――――――――――――――――――――――
読み終わって
あらためてこの本を読むきっかけとなった
日経新聞の書評(最相 葉月氏)を読んでみました。

たいへん素晴らしい紹介文
(単なるようやくではなく)です。

脱帽ですので、その抜粋をご紹介します。
―――――――――――――――――――――――――
診察中、医師の頭の中では何が起きているのだろう。
酒臭い息を吐く男を
「また、薄汚れたアル中か」
と思いこまないよう訓練はしているのだろうか。

本書はがんやエイズを専門とする著者が
臨床現場の取材や自らの体験をもとに、
医師が陥りがちな思考のエラーやバイアスと
それらが治療に与える影響を
明らかにしたルポである。

医師歴30年の誤診を全部記憶しているという著者は
「誤診は、医師の思考が見える窓」と考え、
失敗談に耳を傾けた。

ミスは技術的な理由で起きるという思い込みは、
次々に覆される。
最初に下した診断に固執する、
指示に従わない患者に嫌悪感を抱く、
医師の感情はまさしく行動を左右していた。

ある救急医はアスピリン中毒で呼吸困難になった
先住民の女性を肺炎と誤診した。
彼らの村で肺炎が大流行し、
肺炎は最も確定しやすい診断だったためだ。

またある心臓外科医は
少女の心臓の周りの液を排出するため
剣状突起下という胸骨の下に針を刺して心筋を傷つけ
緊急手術する事態を招いた。
剣状突起下を刺した理由は、
それが単に恩師に教わった方法だったから。

こうした思考のエラーの連鎖が
やがて医療ミスにつながることは容易に想像できる。

一方、
熟練した医師(上野注:優れた医師)に共通するのは、
自分の内面を洞察できること。
そして患者のために何ができて何ができないかを
見極めていることだった。

30人近い医師に診察されながら完治せずに
苦しんでいたある女性は、
15年目に会った医師の
「私はあなたの物語を聞きたい、あなた自身の言葉で」
という一言を機に
正しい診断と治療法にたどり着いた。

コミュニケーション次第で
医師と患者は最良のパートナーになりうるのである。

ケアの基本は思いやり、
というあたりまえの出発点に立ち戻る秘訣は、
医師の思考方法にある切り口は
最後の1行まで刺激的。
(中略)
本書は医師の思考のエラーから身を守る
最強の防護策になるだろう。
            (以上、最相 葉月氏)

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