2016年8月22日月曜日

国民医療費削減対策の有効案 薬代削減対策は?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 高齢者の健康維持の難しさを研究していただきます。
 医療費削減の大きな柱である薬代の削減対策について
                        考えていただきます。

ねらい:
 何とかしたいですね。

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本項は、
學士會会報2016-Ⅲ号秋下雅弘東大病院老年病科教授の
「高齢者の賢い薬の飲み方・減らし方」を基にしています。
(そういう診療科があるのですね)


1.高齢者の心身活力低下状態

2014年、日本老年医学会は、
加齢によって筋力や心身の活力が低下した状態を
フレイル(Frail)と命名しました。

フレイルには、以下の3種類があります。

 身体的フレイル 筋肉の衰えや関節疾患
 精神的フレイル 認知機能障害や抑うつ
 社会的フレイル 独居や経済的困窮

(上野注:社会的フレイルははフレイルの定義に合わないのではないか?)


2.高齢者の薬物有害事象

 薬の効きすぎ
  治療要注意病
   高血圧:高齢者の場合、血圧を下げ過ぎると
                  脳の血流が落ち脳の機能も落ちる。
        降圧剤の効き過ぎで血圧低下して意識を失う。
   糖尿病:血糖値が下がりすぎて意識を失う。
        場所によっては命取りになる。
 多剤併用(ポリファーマシー)による副作用の発生
 副作用に対する新たな薬剤投与でさらなる副作用発生


3.高齢者の薬物有害事象が多い原因

(1)疾患上の要因
 多くの高齢者は慢性疾患を含む多くの疾患を抱えていて、
 多くの薬を処方され、薬の副作用発生要因となっている。

(2)社会的要因
 経済的に困窮した高齢者が投薬中断を余儀なくされている
 ケースが増えている。

(3)機能上の要因
 認知機能、視力、聴力が低下し薬を飲み忘れたり飲み間違えたりする。
 感覚が鈍化しているので、副作用が重症化するまで気づかない。
 臓器の機能低下のせいで、過剰投与となる。
  
 薬害が発生する老年期の状態
  消化管で吸収 = 正常に機能
     ↓
  血液循環に乗って目的の臓器や部位に到達 = 蓄積されやすい
     ↓
  肝臓で代謝  =  低下で蓄積
     ↓
  腎臓で排泄  =  低下で蓄積


4.薬物有害事象を避ける対策

(1)高齢者が注意すべき薬 
 これは患者側ではよく分かりません。
 1)筋弛緩剤
   筋力が低下し転倒や階段の昇降困難を招く。

 2)抗コリン薬 
   抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、H2ブロッカー等に含まれている。
   継続的服用は認知機能を低下させる。 

 3)ベンゾジアゼビン系の睡眠薬
   転倒、せん妄、認知機能の低下などの副作用がある。

(2)服薬管理と服薬支援
  かかりつけ医に一元管理してもらう。
  服薬数を減らす(1包にまとめる、など)
  服用法の簡便化(1日1回夕食後にまとめる、など)
  錠剤の形の工夫(上野?)

(3)本人の取組み
 1)医師にかかる際、次のことを守る。
  これは患者側でできる重要なこと!!

  a.むやみに薬を欲しがらない。
  b.他院や他診療科で処方された薬を正確に伝える。
  c.処方された薬はきちんと飲む。
  d.薬をやめたい時や減らしたい時は自己判断せずに医師に相談する。
 
 2)生活習慣
  a.規則正しい食生活を送る。
    きちんと朝食をとる
    1日の食事回数を決めて守る(1日2食とか)
  b.夜更かしと早寝を避ける。
   高齢者の睡眠時間は5時間!!
   早寝をすると夜中に目が覚め「不眠状態だ!」と意識してしまう。
  c.魚や野菜だけでなく肉も食べる。
  d.孤食を避ける
    うつになるリスクが高い。

このように整理するとやや無味乾燥ですね。

具体的な事例も紹介されていました。

75歳の女性が歩行困難としびれを訴えました。
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75歳の女性にみられた
歩行困難としびれの原因(専門診療科)


# 糖尿病性神経症   (糖尿病内科)
# 閉塞性動脈硬化症  (血管外科、循環器内科)
# 骨粗鬆症        (整形外科)
# 脊柱管狭窄症     (  〃  )
# 抑うつ           (精神科)
# 白内障           (眼科)
# 糖尿病性網膜症     ( 〃 )
# 廃用症候群      (リハビリ科)


→治るものは治したいが、そうでないなら、
 なるべく快適に生活できる方法を
 教えてほしい。 

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その原因には多数の要因があり、それぞれ専門医にかかると
たいへんなことになります。

高齢者は往々にして複数の疾患を患っていますが、
疾患ごとに個別に治療しても根本治療になりません。
単なる合併ではなく症候とも複雑に絡み合っているからです。
これを「老年症候群」と言います。

そもそもしびれによく効く薬などない、
ビタミンB12が処方されることが多いのですが
脚気以外には効かないそうです。

症状全体を包括的に捉えて、
「効果のある治療は施し、効果がない治療はしない」
という選択を考える必要があります。


「部分最適でなく全体最適」
「着眼大局、着手小局」
「木を見て森を見ず(の否定)」

などそういうことを勧めるガイドは多数あります。

この当たり前のことがなぜできないのでしょうか?
その原因を整理してみましょう。


1.複雑な要因が絡み合う老年期の症状に対する
  社会的経験蓄積ができていない。
  前期高齢者までの患者については
  エビでンスに基づいたガイドラインがあるが
  後期高齢者については明確なガイドラインがない。


2.医療現場が専門化されすぎている。
  この点については、当ブログでも何回か取りあげています。
  2011,11.29「医療過誤2:プライマリケア医は難しい」
  http://uenorio.blogspot.jp/2011/11/blog-post_7770.html  
  2014,11.24
   「総合診療専門医の世界に潜在意識の活用を考えてみては!」
  http://uenorio.blogspot.jp/2014/11/blog-post.html


  専門知識も必要としその上で総合的な判断ができなければならない
  という「総合診療専門医」の目標は、尋常の努力では達成困難ですね。
 
  解決策は,ITの活用です。
  優秀な人材が英知を傾けて取り組めば
  有効な診断支援システムができるのではないでしょうか。 

3.患者の名寄せシステムができていない。
  その基盤であるマイナンバー制度はできたのですから、
  あとは、そのマイナンバーを活用した
  医療に関する名寄せシステムを作ればよいのです。
  
  重複したり似たような投薬の整理ができるでしょう。
  これは、システム設計の困難性よりも
  「個人情報保護」に名を借りた抵抗勢力が障害です。
  
  でも国民医療費40兆円のうち、薬局調剤医療費だけで7兆円、
  これに入院医療費15兆円の一部を加えると
  おそらく合計10兆円に及ぶ「薬代」の改善に繋がることなのです。


  この問題解決には
  投薬の合理化に留まらず診療の合理化が必要でしょうね。
  そうなると、抵抗勢力は見えてきそうです。

4.服薬支援システムが未整備である。
  この点はこれからの課題ですが、  
  米国では、こういうIoT製品が実用化されているようです。

   砂粒ほどのチップを錠剤に組み込む。
   胃酸に触れると体内電気によってプロセッサが駆動され
   皮膚に付けたパッチ経由でモバイルアプリに送信。
   服用状態が把握できる。

   2012年米国で、
   処方された薬を飲まなかった人による救急外来、入院、診療の費用は
   2580億ドルに上るという報告がある資料に載っていました。
   26兆円ですから少し大きすぎる気がしますが、
   こういうことがかなりあることは確かでしょう。

   因みに、その資料では同じく米国で処方計画に従わなかったために
   毎年13万人が死亡している、とありました。

   そうすると、服薬支援は非常に重要なことですね。

ITで実現できることがたくさんあるのです。

安倍政権の1億総活躍社会も重要ですが、
既得権益の岩盤を崩す改革を積極的に進めないと、
国民が活躍する前に日本は沈没してしまいますね。

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