2023年12月12日火曜日

「なぜ人は怠けてしまうのか」ですね

[このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「勘違いが人を動かす」の第2章のご紹介です。
 いろいろな心理状態の実体の一部を確認いただきます。
ねらい:
 そのような知見を活かしましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー














「勘違いが人を動かす」の第2章のご紹介です。
第2章 なぜ人は怠けてしまうのか
の中見出しはこうなっています。

「20ドルもらうために27ドル払う」人
広告費を使わず売上を倍にするシンプルな方法
ビジネスと公共機関で使われるナッジ

キャッシュバック制度は意図的に「面倒くさく」されている
自殺者すら減らす「面倒くさい」の力
コラム:相手に面倒くさいと思わせたらダメ

意思決定の95%は自動的に行われている。
暴徒化した市民も「順路に従って」大人しく行動してしまう
「大量の情報」より「わかりやすい」ほうが効果的

「なぜなら」と言うだけでうまくいく
ダイエットを成功させたいなら「数字のない」体重計を使うべき
「複雑な問題だ」と考えることが「シンプルな解決策になる

選択肢は欲しいが、選びたくない
選択肢を限定されると、他の選択肢を忘れてしまう
絶対に選べない「ダミー選択肢」のすごい力

「何もしなくていい」ならそれでいい
知らないうちに「デフォルト」を選んでいる
なぜ2位じゃだめなのか?

習慣を変えるのは難しい
ブランドのリニューアルが失敗しがちな理由
新しい習慣をつくるのは「途中でやめるのはもったいない」という気持ち

人を夢中にさせる4段階の「フック・モデル」
認知バイアスを使って良い習慣を身につける方法
ねらうべきは「ぜんぜん知らない」と「全部知っている」の間

以下にいくつかの内容をご紹介します。

「なぜなら」と言うだけでうまくいく
テレビの通販チャンネルで、
こんなふうに商品が宣伝されていたとしよう。
「この商品には、
宇宙飛行士のために開発された技術が使われています。
ですから、きっとあなたの役に立つでしょう!」

よく考えるとおかしな気もするが、視聴者はこの手の宣伝文句に弱い。
この認知バイアス効果は
「ビコーズ・バリデーション」と呼ばれている。
忙しい脳が、「なぜ?」と疑問を持ったとき、
「なぜなら」という理由が与えられれば、
その中身は何でもよくなるという現象だ。

「先にコピー機使っていい?だって、コピーしないといけないから」
その人がコピーしなければならないことは、
割り込みをして他の人よりもコピー機を先に使うための
理由にはならない。
だがこのようなナンセンスな表現が、ハウスフライ効果を生む。

注:ハウスフライ(家ハエ)効果とは、本書で紹介されていますが
男子用小便器にハエの絵を描いたら、そこを目がけてするようになり
便器外への漏れが半減したという例のことです。

理由を告げずに「先に使わせてもらってもいいですか?」と言うより、
この無意味な「だって」をつけたした方がずっとうまくいくのだ。
卑怯?効果的?その通り。
筆者もこの本を宣伝するのに、
「いよいよ楽しみな夏がやって来ますね。
だから本書を買ってください」
といったビコーズ・バリデーションを使ってみようかと思っている。

実験によれば、
理由を告げずにコピー機の割り込みをすると
60%しか譲ってもらえないのに対し、
この無意味な理由を告げるとおその割合は91%に増えた。
もっともな理由「急いでいる」の場合は92%で、
無意味な理由の場合と大差はなかった。

上野コメント
何でもいいからもっともらしい理屈をつけなさい、
ということのようですが、
おそらくその言い方が大事なのではないかと思われます。
ぶすっとして言ったらダメでしょう.
愛想よく言えばいけるのではないでしょうか。

ダイエットを成功させたいなら「数字のない」体重計を使うべき
たしかに、たいていの物事は複雑だ。
だが物事をシンプルにする方法はある。
中略
米国の天気予報では、
気象予報士が「ゴミ箱指数」という面白い指数を用いて、
明日予想される風の強さを伝えることがある。
家の前のごみ箱が、庭の真ん中まで転がっていくか、
隣人の家まで行ってしまうか、
それとも見えないところまで飛んで行ってしまうのかーというように、
ゴミ箱がどれくらい風で飛ばされるかを風力の指数にしているのだ。

「南東の風邪、風力7」と言われるより、ずっとわかりやすい。
数字だけでは、私たちが天気予報か本当に得たい情報は伝わらない。

同じことが、体重計についても言える。
人の体重が何キロかを正確に知りたいのは、
麻酔科医か気球操縦士くらいだ。
ほとんどの人にとって、体重計に乗る時に気になるのは、
ダイエットがうまくいっているかどうかや、
週末の食べ過ぎが響いているかどうかだ。
「71.8キログラム」という数字はその答えにならない。
むしろ、数字は逆効果になることもある。
私たちが、小さな変動で一喜一憂してしまうからだ。
ダイエットがうまくいかないのはそのせいだ。

そこで、米国の科学者は数字のない体重計を開発した。
体重計に乗ると、数字ではなく、
過去2週間の体重の増減傾向のみが表示されるという体重計だ。
そう、物事はこんなにもシンプルにできる。
これほどシンプルにできないとしても、
あまり複雑でないように見せることは可能だ。

脳は、実際の労力ではなく、
その労力がどの程度かという見積りに反応する。
だから広告では、参加したり、遊んだり、
家具を組み立てたりするのがこんなに簡単だと謳われる。
こうした主張の後には、たいてい明快な箇条書きが続いている。

難しいタスクを細かいステップに切り分けると。簡単に見えるからだ。
優れた取扱説明書は、
このチャンキング(大きなものを小さく分けることを「チャンクダウン」、小さなものをまとめることを「チャンクアップ」という)
と呼ばれる原理を活用している。
組織で人を動かすために用いる
ステップ・バイ・ステップ式の計画も同じだ。

上野コメント
行動の目的(「何のためにそれをするのか」)を考えると
シンプルな解決策が出てきます、というご託宣です。

絶対に選べない「ダミー選択肢」のすごい力
とはいえ、
二択を提示して、意図しない方が選ばれてしまうこともある。
エコノミスト誌が
ウェブサイトで読者に定期購読の方法を選択させるときにも
まさにこの問題が生じた。

同社のマーケティング部門の意図は、
読者に高価格のほうの定期購読(紙版+オンライン版)を選んでもらう
ことだった。
だが、3分の2の読者が低価格な法(オンライン版のみ)を選んだ。
そこで、マーケティング部門は3つめのひどい選択肢を加えた。
これは、おとり効果と呼ばれる手法だ。

同部門は、高価格なほうの選択肢の「劣化版」のような選択肢
(紙版のみ、ただし紙+オンラインと同じ高価格)を追加したのだ。

もちろん、その選択肢を選ぶほどバカな人はいなかった。
だがその結果、突如として
過半数が高価格の選択肢(紙+オンライン)を選ぶようになった。

この劣化版は、優れたハウスフライ効果をもたらしている。
人は自然と、3つの選択肢のうち、
「高価格」と「劣化版」の二つに注目し、その二つを比べようとする。

「あれ?私がおかしいのかな?この選択肢は本当に意味がないの?
こんなのを選ぶ人なんているわけない。
もう一方の方がずっといいはずだよね?」
そして知らないうちに、
「低価格」(オンライン版のみ)の選択肢を検討するのを忘れて、
「劣化版」よりはるかにお得という理由で
「高価格」を選んでしまうのだ。

再び、友人たちと何を食べるかを決めるときの話に戻ろう。
あなたはわさびたっぷりの鉄火巻きが食べたい。
そこで、「ハンバーガーか寿司か」と友人たちに尋ねる。
だが、友人たちはハンバーガーを食べたがるかもしれない。

そこでこう提案することもできる。
ハンバーガー、寿司のテイクアウト、
値段は同じだけど職人が目の前で握ってくれる本場の寿司店、
どれがいい?」

こうすれば、友人たちは寿司のテイクアウトと、
職人が目の前で握ってくれる寿司に意識を向け、
この二つを比較するようになる
(ハンバーガーに注意が向かなくなる)。

あるいは、まったく違う質問に答えさせるという方法もある。
これは「選択の代替」と呼ばれている。
イングランドで、この手法をうまく利用した灰皿が設置された。

この灰皿には、
「世界一のサッカー選手はどっち?」という質問が書かれている。
容器は「クリスティアーノ・ロナウド」と
「リオネル・メッシ」に区切られていて、
喫煙者は吸い殻を捨てることで好きなほうの選手に投票できる。

もちろん、この質問の裏には
「吸い殻を地面に捨てるか、灰皿に捨てるか」
という本当の問いが隠されている。

この本当の問いを直接尋ねず、別の問い方をしたことで、
望ましい選択をする人(吸い殻を灰皿に捨てる)が大幅に増えたのだ。

上野コメント
人間の心理状態というのは、いろいろ興味深い面を持っているのですね。
マーケティングの世界ではかなり研究されているようで、
我々も学ばなければなりませんね。

0 件のコメント: