目的:
人の行動の解明の第1歩をご紹介します。
脳が本人を騙すという面白い問いかけを解明します。
ねらい:
そのような知見を社会生活に活かしましょう!!
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今回のテーマ名は、オランダで2021年に刊行されたベストセラーである
「勘違いが人を動かす」の第1章の名称です。
この著者は、行動経済学者エヴァ・ファン・デン・ブルックと
広告業界の「クリエイティブ・ディレクター」ティム・デン・ハイヤーです。
章ごとに1編とさせていただくことにしました。
第1章 脳にだまされる私たち
自分にとって都合のいいことばかり考えてしまう理由
第2章 なぜ人は怠けてしまうのか
「面倒くさい」を脱し「すぐやる人」になる方法
第3章 「想像の痛み」から逃げたい
不安やストレスに振り回されない技術
第4章 「人と同じ」じゃないと不安
「同町」と「社会性」を使いこなす
第5章 「今すぐいほしい」が「まだやりたくない」
「時間」を効率的に使うコツ
第6章 知らぬ間に注目している
誘惑の仕組みを利用する
第7章 報酬はどう与えるべきか
「アメとムチ」をうまく使うために
おわりに 「認知バイアスで人を動かす」ことは、倫理的にゆるされるのか、
など。
付録 人を動かす71の認知バイアス
今回はその初めの第1章です。
第1章の中見出しはこうなっています。
「私だけに当てはまる!」と誰もが思っている
「頭で考えて動く人」と「直感的に動く人」は決定的に違うのか?
現代の生活にそぐわない「衝動性」が遺伝子に刻まれている理由
「自信過剰」なのは当たり前
無知な人より、知識が豊富な人の方が自信を持てない理由
あなたを「勘違い」させる脳の仕組み
人間の意識は「脳がどう働いているのか」を把握できない
コラム:人はなぜ自信過剰になるのか
自分を過大評価するのは他人がいるとき
精神を鍛えるより環境を変えたほうがいい理由
失敗はおまえのせい、成功は私のおかげ
自己欺瞞の本質は、自分に噓をついて自分を騙すこと
「何の効果もない偽薬」が、現実に有益な効果をもたらす
「役に立たない」押しボタンが人を守る
「美味しいものは高い」のではなく、「高い」だけで美味しく感じる
頭ではわかっていても、脳に騙される
コラム:こどもがたくさん食べるお皿はどっち?
握手の前には手を温めた方がいい
どうですか、どれも知りたいでしょう?
ここでは、特に私が知りたいと思った項目をご紹介します。
それ以外の興味のある方は本書をお読みください。
本文413頁で、1870円です。
「頭で考えて動く人」と「直感的に動く人」は決定的に違うのか?
あなたは何かをするとき、
常に事実に基づき、d識的かつ慎重に行動するタイプだろうか?
それとも、頭で考えるのではなく、
状況や環境、あるいは遺伝子の働きに従って、
無意識的に行動するタイプだろうか?
実際には、
行動のメカニズムは前者と後者のどちらか一方にのみ依るのではなく、
両者の組み合わせによって成り立っている。
音楽は、
リズム、メロディ、ハーモニー、音質の組み合わせでつくられている。
同様に、
人の行動は身体的作用、文化、状況、性格が合わさって生み出される。
これらの要素は複雑に関連している。
たとえば、胎児のときに子宮内で栄養不足を経験した人は、
遺伝子の働きに影響が生じ、
ある状況下で特定の反応をする可能性が高まる。
このように、
人の行動は思いもよらないさまざまなものの影響を受けている。
つまり、
私たちは、必ずしも思い通りに行動しているわけではないのだ。
しかし、人はこのこの事実を素直に受け取らず、
別の思考に陥ることが多い。
戦争や搾取、大気汚染、社会の二極化などの大きな社会問題の中には、
解決策が明確だと思えるものがある。
そんな時私たちは
「なんで、こんな簡単な解決策を実行しないのだろう?」と疑問を抱く。
しかし残念ながら、行動の仕組みは、
そう簡単に答えが導けるものではない。
fMRI(MRI装置を用いて脳機能を測定する手法)や
脳波スキャンによって脳の働きを細かく観察したとしても、
どのようなメカニズムで人が行動を選択しているかを
解き明かすのは至難の業なのだ。
人間の脳は、3億年に及ぶ生物の進化の影響を大きく受けている。
そのため人の行動には、同族意識や、自己保存
(自らの生命を守り、発展させようとする、生物に備わる本能)、
短期的思考といったものが根強く関わっている。
私たちがどれだけ脳の仕組みに関する知識を増やしても、
頭で考えた通りに行動できないのはそのためだ。
私たちにできるのは、
必ずしも合理的なロジックで導き出されるわけではない
自らの行動の長所と短所について、賢く考えることくらいだ。
上野コメント
「頭で考えて動く人」と「直感的に動く人」は決定的に違うのか?
の結論は、決定的に違うということはない、
そんな簡単なものではない、
人はさまざまな特性を持っていて、
どれかが100で、どれかが0だということはない、
ということのようです。
現代の生活にそぐわない「衝動性」が遺伝子に刻まれている理由
古典派の経済学では、
人は選択肢のメリットとデメリットを天秤にかけて、
合理的に行動していると考えられていた。
しかし、
現代の行動経済学では、人間の実際の行動をよく観察した結果、
「人が何かの行動をするときには、
単なるメリットやデメリットだけでは測れない、
もっと複雑で高度なメカニズムが働いている」と考えるようになった。
確かに、脳は次に起こることを常に予測して、
取りうる選択肢のメリットとデメリットを比較し、
最適なものを選ぼうとする。
しかし、たとえば結婚を決断するときには、
メリットやデメリットといった合理性だけでは図れない、
もっと本能的で直感的な力が作用しているはずだ。
深く考えずに瞬時の判断ですぐさま行動に移すのは、
現代社会の管理職研修プログラムでは評価されないかもしれない。
だが、私たちの遠い祖先がサバンナで身を守るためには、
とっさの判断が不可欠だった。
これが、人に衝動性が備わっている理由だ。
私たちの遺伝子には
「どちらの選択肢を選べば自分の子孫を残せるか」
という基準で瞬時に判断する特性が、深く刻まれている。
しかし、この古代の衝動性は、現代人の生活にそぐわないことも多い。
たとえば私たちが住宅ローンの検討を難しく感じるのもそのためだ。
「30年後に幸せな老後を迎えるために」何かを考えることは、
とっさの判断が優先される脳の特性に反している。
つまり、
「自分は物事を合理的に考えている」と私たちは信じがちだが、
それは思い違いである可能性が高いということだ。
同じことは、自分のことを
「社交的」「愛情豊か」「直感的」などと信じている
場合にも当てはまる。私たちは,
自分が思っているほど、自分自身についてわかっていないのだ。
上野コメント
「衝動性」は自己保存本能から生まれたもので、
人(あるいは動物全般)の本質的な特性である、
その認識をして生活をする必要がある,ということなのでしょう。
あなたを「勘違い」させる脳の仕組み
脳は頻繁に私たちを勘違いさせる。
なぜか?それは私たちのせいではない。
私たちが勘違いしやすいのは、
脳が、目の前の現実のうち最も処理しやすいパターンに注目するように
進化しているからだ。
過去に認識したことのある何かと似ている物は、
同じものだと認識した方が効率がいい。
だが実際には、
そのパターンが現実を正確に映しているとは限らない。
そこで脳は広報担当者である「意識」を使って
「自分の行動は正しい』と言い聞かせようとする。
(上野注:面白い表現です)
どんな社会でも、
その一員になるためには一定の常識的行動が求められる。
そのため、適度な自信はあってもいいが、
同時に謙虚さも十分にもちあわせていなければならない。
当然ながら、信頼できる人間であることも必要だ。
さらには、年齢や社会的地位、ジェンダーや文化によって求められる、
人としての強さや他者への優しさも備えておかなければならない。
こうした特性を持ち合わせていないのに、
それがあるふりをずっと続けていくのは難しい。
一流の俳優でさえ、それを演じ切るのは簡単ではないだろう。
だから脳は、意識に対して
「自分はもともとそういう特性や性格の持ち主だ」
と言い聞かせようとする。
自分がそうだと信じ込めば、
周りもそういう性格なのだと信じやすくなる。
これが、自己欺瞞の力だ。
危険思想の主張者やカルト集団の指導者らは、
自らがつくり上げた物語を強く信じている。
だから、他人を惑わされるのだ。
上野コメノト
こういうことのようです。
著者の言う「脳」は本質・本能的なものです。
「意識」は、いわゆる「アタマ」でこうでなければならない、
と考えることとされています。
意識が「自己欺瞞」で自分をごまかそうとしますが、
本当はそうでない面を持っているのだ、ということでしょうか。
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