2022年12月6日火曜日

「縛られる日本人」

[このテーマの目的・ねらい]
目的:
 日本の人口減を緩和する育児休暇制度のあり方を研究します。
 一般的な日本のビジネス社会の通弊を再確認いただきます。
ねらい:
 育児休暇制度の普及について関心を持ちましょう。

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このタイトルは、
ライシャワー日本研究所のメアリー・C・ブリントン教授の
2022年9月発行の書名です。



「日本を愛するがゆえの警鐘である」とされています。
日本人、特に働く男性の意識に対して問題提起されています。

本書の帯にはこう書かれています。
人口が急減する日本。
なぜ出生率も幸福度も低いのか。
日本、アメリカ、スウェーデンの子育て世代へのインタビュー調査と、
国際比較データをあわせて分析することで、
「規範」に縛られる日本の若い男女の姿が見えてきた。
日本人は家族を大切にしているのか、
男性はなぜ育児休業をとらないのか、
職場にどんな問題があるのか、
アメリカやスウェーデンに学べることは――――。
アメリカを代表する日本専門家による書下ろし。

本書の章立てはこうなっています。
内容表示は代表例です。
著者たちの調査経験、一般的な調査データを駆使して
具体的な解説がされています。
このテーマにご関心ある方は、ぜひ本書をお読みください。

序章 日本の驚くべき現実
 結婚と出産が減っている
 日本社会は「労働ファースト、人間セカンド」?

第1章 日本が「家族を大切にする社会」だという神話
 若者の希望と現実はなぜ異なるのか
 2人目を持つことの障害と感じている要素
 家族のあり方に関する強力な社会規範
 
第2章 日本では男性が育児休業を取れないという神話
 育児休暇は男性が取得するものではない?
 実は手厚い日本の男性育休制度
 日本人の男女は女性の生路休業についてどう考えているか
 なぜ、男性の育児休業が好ましいのか
 育児休業を取得すると男性のキャリアに傷がつくという不安
 同僚に迷惑がかかる?

第3章 なぜ男性の生路休業が重要なのか
 男性の育児休業が重要な理由--世界の国々から学べる教訓とは
 夫の無償労働と夫婦の子どもの数の関係
 家事・育児に最も積極的な男性、最も消極的な男性
 妻が仕事を調整するのが当たり前?
 変わる女性、変わらない男性

第4章 日本の職場環境のなにが問題なのか
 女性の就労と出生率の関係
  1980年までは負の相関があったが、現在は正の相関である。 






















 単身赴任という悪しき慣行
 顧客絶対主義の弊害
 日本の会社員の過酷なプレッシャー
 時短勤務という両刃の剣
 育児休業と保育園

第5章 スウェーデンとアメリカに学べること


 





 (日本の制度はスウェーデンよりも進んでいる)
 (アメリカには育休の優遇制度はない)
 保育施設の充実度
 アメリカの職場での厳しい育休交渉
 スウェーデン、五つの政策の効果
   1)夫婦共同課税廃止、個人単位の課税へ
   2)18か月の育児休業期間を夫婦で分けあえる
   3)取得条件が極めて弾力的になっている
   4)公的保育施設の整備に多額の投資
   5)第2子の早期に出産促進  
 スウェーデン人の育児休業の取り方
 「仲間の影響力」と「上司の影響力」

第6章 「社畜」から「開拓者」へ どうすれば社会規範は変わるのか
 男性稼ぎ手モデルの限界
 提案①子どもを保育園に入れずらい状況をできるかぎり解消する
 提案②既婚者の税制を変更する    
 提案③さらなる法改正により、男性の家庭生活への参加を促す
 (育休取得を本人の申し入れによりではなく、義務化する)
 (提案の理由)
 文化の変化はあまりに遅い
 育児休暇を取得した男性への負のレッテルを解消できる
 企業の対応を促す効果が期待できる

著者の主張の要旨はこうなっています。
1.日本の育児休業制度はかなり良い条件である。
2.ただしその制度は本人の申し入れにより実現するものである。

3.多くの従業員(特に男性)は、以下の理由で取得を遠慮している。
 1)皆がとっていないので、はばかられる。
 2)上司・同僚によく思われない。
 3)キャリア上マイナス評価となる可能性がある。
 4)育休後、元の職務に戻れない可能性がある。
 5)上司・同僚に自分の仕事のしわ寄せが行く。
 注:このことに関する具体例が多数紹介されています。
 1)2)は著者の言う「縛られる日本人」の思考です。

4.男性が本格的な育児休暇をとることには大きな効果もある。
  職場での連帯感が強まる(助け合わないとお互いに休めない)。
  男性が女性の立場をより理解できるようになる。
  毎日の仕事から離れて「人生」を見つめ直す機会になる。
  仕事に対しても新しい発想を得ることができる。
  子どもに対する愛着が深まる。

5.日本文化の中でこの意識・慣習を変えていくには長い時間がかかる。
  そこで、育児休業制度の取得を法により義務化すべきである。
  そうすれば、従業員は遠慮せずに育児休業を取得できるようになる。

6.ただし、3.の4)5)が発生しないようにするためには、
  業務分担方法等の改善が必要となる。
  この点は、育休取得が前提となれば、会社側が対応するであろう。

この書を読んで、なぜ日本が男性優位社会なのだろう?
と考えてみました。
以下はその検討メモです。

米国は、
 自己責任制で、機会均等。
 基本的に差別しない、実力主義・成果主義である。
 特に、女性を引き立てるということはしていない。
 自由競争社会である。    
   
北欧は、
 女性の活動強化 男性の責任強化、真の男女平等を目指している。
 人間の基本的人権を認めるのは、
 1789年のフランス革命による人権宣言に端を発しているが、
 現在の北欧の女性重視制度は、社会的必要性から生まれている。
   
日本は 男性中心社会である。
 男性が働き、女性はそれを支える役割分担意識が強い。
 なぜそうなっているのか。
 原始時代の狩猟文化はそういう役割分担だった。
 しかし日本は典型的農耕文化である。
 農耕では、女性も一緒に働いている。男性が「エライ」わけではない。
 ではなぜ男女差別があるのだろうか。

 1)農耕の村(ムラ)社会を支えた「家(イエ)」の
 「家父長(=男性)制度」(男系社会)の風習・理念が存続している。
 男尊女卑という言葉もある。
 男系天皇制はその象徴である。女王は生まれないのである。
    
 2)脱農耕で工業化社会・都市化社会になったときに、
 男が働き女が支えるモデルができたのだろう。
 女工哀史はあるが、主婦が働く女工ということはなかった。
    
 3)日本はフランス革命のような人権革命を経験していない。
 代わりに明治維新がある。
 そこでは、外国に侵略されないために富国強兵政策がとられた。
 男女平等よりも国が強くなることが優先した。
 女性は当時の戦闘方式の歩兵戦争には向かない。
 レディファーストなどという概念はない。
 公の場に夫婦同伴で臨むということはなかった。
 女性に参政権が与えられたのは、戦後の昭和20年である。
 (欧米でも20世紀になってからであるが)

どの要因が効いているのでしょうか?
    
 

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