2022年12月20日火曜日

「男性中心企業の終焉」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 職場における男女差別の根源問題を確認いただきます。
 男性の育児休暇長期取得が当然にならなければいけないようです。
ねらい:
 皆様も
 男性が育児に積極的にかかわることについては賛成でしょうが、
 仕事との両立や日本の発展にどう結び付けるかが課題ですね。
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本テーマは、ジャーナリスト浜田敬子氏著の書名です。
この書名は、おそらく出版社が付けたものでしょう。
著者は、男性中心主義の会社はもう終わるぞという警鐘を鳴らしているのですが、出版社は「もう終わっている」と一歩踏み込んだ書名にしているのです。
(それにしても美人は得ですね)




 













著者は、朝日新聞社が発効している情報誌AERAの編集長
を務めた逸材です。
「はじめに」にこういう記述があります。

AERAに在籍した17年間、その後移籍したオンラインメディア
「ビジネスインサイダージャパン」、
そしてフリーランスになってからも、
私は幅広い年代の多くの女性たちを取材し続けてきた。

まだ、「寿退社」という言葉が当たり前で
結婚や出産が即退職を意味していた時代に辞めていった同世代。
就職氷河期で女性の採用が一気に絞られ100社回って
1社からも内定をもらえなかった女子学生。
長時間労働の職場で働く夫の働き方を変えることができず、
ワンオペ育児に疲れ果てていた女性。
どれほど成果を出しても後輩男性に先を越されていく女性。
夫の転勤で退職し、
再就職しようにも正社員としての就職先がなかった女性。
派遣社員で働きながら年齢が上がるほど条件を下げられ
ギリギリの生活をしていた女性。
退職後に離婚してシングルマザーになり、
コロナで一気に経済的困窮状態に陥り途方に暮れる女性・・・。

女性たちを取材していると、
一体何が「失われた」のかと思う。
もともと参加の機会も、再チャレンジの機会もなかったのだから。
均等法や育児休業などの法制度ができても、
『女性活躍」という耳障りの良い政策ができても、
大きく状況が変化し、改善しているとはとても言えない。
その結果が116位(上野注)という体たらくで、
今ではジェンダー後進国と言われるまでになったのだ。

注:この前段に以下の記述があります。
2022年7月に発表された、
「世界経済フォーラム」のジェンダー格差のランキングで
日本は世界146カ国中116位だった。
2009年から、順位は交代し続けている。
日本の状況が悪化しているというより、他の国の改善が早いのである。

本書はそのような問題提起の書なのです。
以下の構成となっています。
第1章 男子校的テクノロジー業界でD&Iに舵を切ったメルカリ
第2章 日本の「ジェンダー失われた30年」と加速する世界の動き
第3章 リモートワークが変えた意識。阻んでいた「出社マスト」
第4章 数値目標は逆差別か。「女性優遇」という反発への挑戦
第5章 経営戦略として本気でダイバーシティを進める経営者たち
第6章 ロールモデル不在と女性たちの世代間ギャップ
第7章 最後の壁は家庭と夫の家事育児進出

問題指摘は以下のように丁寧にされています。
各種調査結果の引用も多数あり、参考になります。
1.日本のビジネス社会は、長時間労働を前提としている。
2.短時間労働の対象者や、長期間の育児休暇を取得する者は
  成長キャリアから外される。
3.男性が長時間労働の条件で働く、子どもを抱える家庭では、
  男性は育児に関わる時間をとることが困難である。
4.その結果、育児は女性の役割となってしまう。
5.女性も仕事をする場合は、
  その女性は仕事と育児・家事をこなさなければならず、
  一般の社員と同じ勤務条件を実現することは困難である。
6.その結果、女性は
  意欲を持って取り組める仕事やキャリアから外されてしまう。
7.若い世代は男女とも、男性の長期間育児休暇取得に賛成である。
  育児休暇に対して積極的でない企業は
  就職戦線でも不利になっている。
8.その障害は、
  頑張って何とかやってきたという自負のある上司群である。
9.現在は、多様な勤務形態への過渡期であり、
  見習うべき先輩(ロールモデル=お手本)が不在
  という点もハンデである。
  今活躍している女性の成功者の条件は、
  現在の多くの女性が見習える一般的な条件とは異なっている。
10.これでは、
  女性の能力を活かす多様性ある企業となることができない
  と認識した一部のトップは改革に取り組=んでいる。
11.そうでない企業では、
  女性は差別された環境に置かれたままである。
12.男性の長期育児休暇取得は、
  男性の人生観や仕事能力の好転に貢献している。
13.したがって、
  日本社会としては男性の育児休暇取得を促進すべきである。

しかし、その解決策は述べていません。
会社・社会の意識が変らければならないと言っているだけです。
ジャーナリストという立場からはやむを得ないのでしょう。

これに対して
当ブログ別項の「縛られる日本人」のメアリー・ブリントン「教授」は、
問題意識はまったく同じなのですが、
育児休業取得を法律で義務化すべきである、と主張しています。

現在の制度は、
本人からの申し出でにより育児休業を取得することができ、
その申し出でを企業は拒否してはいけないとなっています。
これでは「縛られる日本人」は周囲に気兼ねして申し出でしない、
したがって、申し出でによらず育児休暇を義務化すべきだ、
というのです。一理あります。

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