2021年7月7日水曜日

またも、製造業の不正事件発生!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 三菱電機の不正検査問題の発生原因と対策について
 考えてみます。
 日本社会に根付いている奥深い価値観が底にあるのです。
ねらい:
 モグラ叩きを続けるのでしょうか??
 そうではなく、業務遂行状態の「見える化」が必要です。
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またもか!という感じですね。
あの三菱電機が!鉄道車両向け機器の不正検査報告をしていたことが
発覚したのです。
しかも現場では、30年以上も前からそれをしていたというのです。

私は、この製造現場における不正について、当時相次ぎ発覚した
2018年3月に、当ブログで取り上げました。

この件について分析しました2020年5月発刊の拙著
「新型コロナ騒動の反省 日頃から準備しておきましょう!!」
では、以下の事件が列挙されています。
 最近の日本の製造現場不正行為一覧

企業名

発覚年月

内容

東洋ゴム工業

2017.2

船舶バルブ用ゴム製品の不正検査

日産自動車

2017.9

無資格者による完成車検査不正

神戸製鋼所

2017.10

アルミや鉄製品のデータ改ざん

スバル

2017.10

無資格者による完成車検査不正

三菱マテリアル グループ会社3社

2017.11

検査データの改ざん

東レ子会社

2017.11

タイヤ補強材の品質データ改ざん

スバル

2018.3

燃費と排ガスデータの改ざん

スバル

2018.6

新たな燃費と排ガスデータの改ざん

宇部興産

2018.6

顧客と取り決めた品質検査を不実施

三菱マテリアル本体

2018.6

品質データ改ざん

日産自動車

2018.7

検査データの書き換え、測定条件の逸脱

スズキ

2018.8

測定条件の逸脱など

マツダ

2018.8

測定条件の逸脱など

ヤマハ発動機

2018.8

測定条件の逸脱など

KYB

2018.10

国の認定基準に適合しない免震装置出荷

川鉄HD系

2018.10

免震・制震装置の検査データ改ざん

日立化成

2018.11

製品の検査不正


これ以前では、2008年の新日本製鉄やJFEスチールによる
鋼管データ捏造があり、
これ以降では、曙ブレーキ工業の検査データ改ざん不正があります。

つまり、不正が問題になって、
今回のようにトップが責任を取るような重大事になっても
現場では、粛々と不正が続いていたということになります。

因みに,KYB(カヤバ)はあれだけの「おおごと」になっても、
会社はつぶれずにそれなりの業績を維持しています。
製品の品質自体は優れていて、世界の顧客から認められているのです。
(現場からは、「それ見ろ問題ないではないか!」
という声が聞こえてきそうです)

どう見ても不可思議な不正が続けられる原因について
前掲のブログではこう解説しています。
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1.組織の意向を重んじる。

一般に家族の一員は家族のためになるように行動するのですが、
それと同じように「会社のため」を考えて行動する意識があります。
そしてその思考は、周囲で共有されています。

これは忖度の発生原因です。
忖度以外にこの状況を説明する言葉がたくさんあります。

 以心伝心
 あうんの呼吸
 言わず語らず
 ツーカー
 暗黙の了解
 行間を読む

家族の場合には「ツーカー」は一般的でしょうが、
組織の場合にもこの思考が通用するのです。

ただしその思考が通用する組織は、新興企業ではあり得ません。
伝統的な組織だけです。
これが長ずると「お国のため」に尽くすとなる思考です。

今回問題を起こしているのは財務省を始めみな伝統的組織です。
現在はそのような企業は少なくなってきていますが、
福利厚生が充実して企業の一員が家族の一員のような状態なのです。
企業一家主義と言われます。

2.「本音と建前」「身内論理の正当化」→2元規律の許容
本音と建前が違う、ということは、
自分に都合のよいようにごまかすという意味では、
おそらく世界中の民族に共通でしょう。

しかし日本の場合は、もっと深い意味があります。
本音は身内の論理に従うこと、
建前は公式の正規の論理に従うこと、を意味するのです。

長い農耕生活の歴史の中で、村社会において形成された規律が
人々の体に自然体で備わっていて、これが本音の論理です。
これに従わないと村八分になります。

これに対して、支配者が自分の都合で決めて強制する規律が
建前になります。
国で定める法律もこの位置づけになります。

人々は、表面上、建前に従っているように見せますが、
本音では従っていないのです。
こういう2元規律の中で日本人の生活は行われてきました。
当然、自分たちの本音の規律が優先です。

アメリカにはこのような2元規律はありません。
伝統的な歴史文化がないのですから、
すべて後付けで自分たちが取り決める「法」の一元規律です。

この観点から、不正事件を見ると、極めて明快です。
単純に自分たちの身内の論理で事を運んだということです。

この身内の論理はどこかの企業の風土ではなく、
日本国民の思考風土ですから、
多くの企業で行われていて何ら不思議はないのです。

問題はなぜ今一挙にその不正が表ざたになったのか、です。
それは、神戸製鋼の事件をきっかけに、
ほとんどすべての製造企業のトップが
「うちは大丈夫か、徹底的に調べろ」と指示をしたからです。

後でバレルととんでもないことになるので、
トップは本気で調査を指示したのです。
身内の論理を超えさせる強い指示だったのです。

だから次から次へと「不正」事実が露呈したのです。
「そういうようなことはみんなやっていた」
ということが実態でしょう。

製品検査の不正は、
「正式の基準自体(建前)が厳しすぎるので実用上はこれで問題ない」
それが会社の利益につながるという判断です。
不正をしている、法に反しているなどという意識は
まったくないのでしょう。
ですから、何年も何年も引き継がれているのです。
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現場は「何も悪いことをしているわけではない」と思っているのです。
製造現場不正が問題になってから10数年経っても
この不正がなくならないのですから、根が深い要因です。

これの対策は、前掲拙著では以下の図のように整理しています。

「目的要因」は「コストを削減したい」ということなので
対策不要です。

「間接要因」としては、
報告を手で作成できるようになっているから悪いので、
「報告を自動作成する」が対策です。
今回の三菱電機でもその対策検討が述べられています。

「直接要因」は、「虚偽報告をする」ということですので、
厳罰化等によってこれを阻止するしかありません。

「環境要因」は、「事業採算に余裕がない」は対策不能です。
もう一つの「環境要因」「身内の論理優先の倫理観がある」の対策は、 
「内部統制の強化」によって、不正が行われないようにすることです。
この対策も事件が発覚すると、繰り返しその必要性が叫ばれるのですが
徹底は難しいようです。
身内の論理を否定するトップの強いリーダシップが必要です。 

管理階層の深い大企業では、
トップのリーダシップの浸透はたいへんだと思われます。
問題を起こしている製造現場は、すべて大企業で、
トップから見ると「ブラックボックス」になっているのです。

検査報告書の自動作成だけでなく、
業務遂行状態把握全般の自動化・見える化が必要です。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

日本は未だに、日本型ムラ社会です。官庁も、企業も、政府も、学校も、部活動も、PTAも、町内会も、もちろん田舎の村も。日本社会は大小の無数のムラ社会から構成されています。人はいくつもの村社会の中で暮らしています。村社会では、正義とか、個人の自由とかより、村共同体の目先の利益が優先されます。企業の不正事件はムラ社会の当然の現象です。論理より習慣、伝統、年長者の意見が尊重されます。空気を読めとか同調圧力とか、個人の自由は抑えられ、論理は退けられます。日本経済の凋落は、このムラ社会文化に起因すると思います。何しろ、論理が無視されるのですから。(日本の生産性は OECD 内で26位、韓国にも抜かれました。)このムラ社会文化は変わらないでしょうから、日本は変われないでしょうね。